リリーへの手紙 祖父から孫に伝えたい20のこと

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797332209

作品紹介・あらすじ

きみが大人になったとき、混沌とした世界で生きていくために…人類学者の祖父が孫娘の将来のために書いたいちばんわかりやすい人生の手引書。「愛とはなに?」「暴力は必要なもの?」「どうして不平等があるのか?」さまざまな謎を手紙形式でわかりやすく解きあかす。

感想・レビュー・書評

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  • リリーという名の孫への手紙、という体裁を取ってますが、決して読みやすい本ではないです。むしろ、本腰入れて読まないと大変、という感じ。

    個人的には、著者がフィールドワークとして滞在していたのがネパールの村落ということもあり、本に挙げられている例証はどれも非常に納得でき、スッと頭に入ってきました。ネパールを知らない人は理解に至るまで少し時間を要するかも、と思うと、この辺はもう少しだけ詳しく触れてくれても良かったかな、という気もします。

    面白かったのは以下のあたり。
    ・科学は、病気などの辛いことの「どのように」に対応しているが、「なぜ」には答えられない。宗教や魔術は、その「なぜ」に答えられるが、「どのように」扱えばいいかについては答えられない。そう考えると、科学と宗教の調和が必要となってくる。それを取り違えてしまうから、魔女や呪術による治療などというものが生まれてしまう。
    ・自由には、「~してはならない」という消極的な自由と、「~してよい」という積極的な自由がある。このうち積極的な自由は「どう行動すべきか」を指図することがあるが、これは本来は政治ではなく宗教の領域である。政治と宗教を兼ね備えようとすると、それはファシズムに陥る。
    ・世界の大多数の社会において、個人は他者との関係においてのみ権利を持ち、権利には必ず責任が伴い、生まれつき備わった内在的な権利などないのが普通である。そんな社会に、アメリカ式の「生まれつきの不滅の権利がある」などという無茶な論理を押し付けようとすると、その社会に無用かつ多大な混乱を与えることがある。
    ・その共同体に昔から存在していた、人権と相いれない権利、権利に伴う義務を忘れてはならないし、軽視してはいけない。それらへの配慮を欠くのは、権利を否定するのと同じぐらい危険な行為である。
    ・カーストや階級、人種というのは不平等であるが、「仕方がないこと」として諦めがつく。一方、「すべての人が平等である」というアメリカ式の考えは好い面もある一方で富の分配については極めていびつであり、たいていにおいて元々多くを持っていたものが勝つようにできている。この社会では、底辺に落ちても「生まれつき」という言い訳ができないため文句が言えず、教育で落ちこぼれたりしたら「物質的な満足もないのに他人に比べて愚かでもある」という二重の苦しみを味わうことになる。

    こういった本を読むと、一つの分野を突き詰めて学んでいく「プロフェッショナル」な視点とは別に、いくつもの分野を横断的に学び、各分野がどのような意味を持っているのかを組み立てて大きな全体像を理解する「ジェネラリスト」の視点の重要性に気づけます。
    少し時間を取られる本ですが、頭の体操としては好いので手に取る価値はあると思います。

  • 文化人類学者の著者が、様々な人間の営みについて、孫娘に対して手紙を書くというスタイルの本。家族とは?愛とは?友達とは?とか、戦争とは?民主主義とは?不平等とは?などなど。文化人類学者だけに、世界中の人間様式を紹介して、自分の世界の当たり前が、当たり前じゃないことを気づかせてくれる。ただ、日本に住む以上は変えられないことも多いなぁ、と思いながら読んだ。視野を広げたり、テーマを深掘りするにはいいけど、ココロの栄養価としての読み方だと物足りないかもしれないな。

  • 手紙形式で、平和・家族・恋愛などなど、色々語られている。あたしが印象に残ったのは、友達のところで、『友情は倫理の第一か条「人と接する際には、相手そのものを目的とし、相手を自分の目的の手段にしてはならない−とともにある。友達に「利用されている」と感じたら、その時点で友情は終わる。』ってところ。

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