格差社会の結末 富裕層の傲慢・貧困層の怠慢 (ソフトバンク新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797336481

作品紹介・あらすじ

「格差」は政策によって生み出された人工的なもの(=政災)か、それともグローバリズムに身を任せた自然な結果(=天災)か。今後、格差社会が深刻化するにつれ、犯人探しが大きな論点になってくる。格差が容認される社会から一転、多くの国民が格差に憤りを感じる日は訪れるのか?異色の元キャリア官僚による近未来社会のシミュレーションで、日本の将来像が浮き彫りになる。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年刊。著者は兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授(地方公務員・国家公務員の経歴有)。本書は、主に小泉政権の政治と格差社会の関連性分析、格差社会が生まれた要因と現状分析、そして処方箋を検討。小見出しに比喩表現が多く、主題が判然としにくい箇所もあるが、内容は興味深い。というより、私の希望願望を上手く文章化して、俄然著者ファンになってしまった。特に、第6章にある「トラスト」の回復への願いは大きく頷く点。著者の主張は、教育の機能回復、まずは、初中等教育の下支え(人的・財政的手当も含む)にある。
    ②社会人教育の拡充、③民間企業にジョブトレーニングを促す仕組みの形成など。他に、生活保護と雇用保険の隙間を埋める制度創設などがある。教育重視は大いに首肯するところだし、富裕層にも増税などの痛みを、貧困層にも安易に生活保護に逃げ込ませるのではなく、努力を促すシステムを構築することを求めるなど、膝を打つ主張がなされる。

  • 我らが「嵌められた公務員」先生の新作。
    前半はデータにもとづき、いつものキレがある批判的論調で気持ちよいが、後半若干くどい感じもある。
    出版社からのオファーがあってとのことなので、そのあたりも関係しているかも。
    謝辞のところで知った名前が続々出て来るのでちょっと驚いた。

  • 「格差」はほんとうに広がっているのか、それは小泉のせいか誰のせいか、というところはたしかに気になる。でもそれは出発点にすぎない。ぶっちゃけ長期的に格差は広がりつつあるし、この先も広がるだろうけれど、そのとき日本の大衆はどのような意志を示し、政府はどのようにそれを利用するか。そういうことを大胆に予言するところに、本書のおもしろさがある。

     しきりに「小さい政府を目指す」と強調した小泉政権だったが、欧州どころか米国に比べても日本はすでに「小さい政府」であるというのが著者の主張。国民は、格差拡大に不満はあっても「怒り狂う」ことはないだろう、というのが著者の予想。日本は、「ワークフェア」(働くことを福祉とする)国家を目指すだろうし、目指すべきだというのが著者の提言となっている。

     国家的にも、また企業としても、より教育・能力開発の負担を求める著者だが、たとえば本田由紀や、山田昌弘あたりの主張と比較してもおもしろいかもしれぬ。「企業はどういう能力の労働者を求めているか明らかにすべき」というのは、いやまぁそうなったらラクだろうけれど、それを企業がやるインセンティブがどこらへんにあるのだろうかとも思う。
     いや、言い切りがおおくて、勢いがあって、読みやすい。おもろいかおもろないかで言うたら、そりゃーおもろいほうだと思う。

  • [ 内容 ]
    「格差」は政策によって生み出された人工的なもの(=政災)か、それともグローバリズムに身を任せた自然な結果(=天災)か。
    今後、格差社会が深刻化するにつれ、犯人探しが大きな論点になってくる。
    格差が容認される社会から一転、多くの国民が格差に憤りを感じる日は訪れるのか?
    異色の元キャリア官僚による近未来社会のシミュレーションで、日本の将来像が浮き彫りになる。

    [ 目次 ]
    第1章 格差社会は「政災」か、それとも「天災」か
    第2章 本当に小泉政権は格差拡大の真犯人なのか
    第3章 「格差容認」から「格差への怒り」に変わるXデーの条件とは
    第4章 富裕層は追いつめられるのか―「小さな政府路線」の持続性
    第5章 格差社会への対応としてどのような政策が実行されるのか
    第6章 「経済の法則」と「社会の法則」の切り分けを―日本社会に信頼関係を再び

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    [ 参考となる書評 ]

  • 「格差」は政策が生み出した人工的なものか、グローバリズムに身を任せた自然な結果か。格差が容認される社会から一転、多くの国民が格差に憤りを感じる日は訪れるのか。元キャリア官僚による近未来社会のシミュレーション。(TRC MARCより)

  • 貧困層だからこそがんばれ!!って思う一冊。どうも小泉政権を事後考察しないとだめである。

  • (2007/11/17読了)
    良く言えば中立的、な本でした。とりあえず若者層で格差が広がっているのは、政府がなんと誤魔化そうと事実だそうです。地方格差も問題とは思うけど、公共事業のバラマキはやめとけ、と思います。国債をこれ以上発行するのはやめれ・・・。

  • 私達は信頼することによってこの社会を形作っている。今や資本主義社会で欠かすことのできない株券だって小切手だって信用なんだ。その会社が持つ力の信用。

    社会と私達の信用。
    社会から得て、社会に還していく。
    そんなサイクルが壊れたのは何時からだろう。必要のないお金を社会にお返しして、必要な人に還元する仕組みが壊れ始めたのは何時からだろう。
    必要もないお金を溜め込み始めたのは何時からだろう。
    自分だけ、自分達だけと勝ち組などともてはやされた砂上の摩天楼がテレビで騒がれる今日。

    誰かを薙ぎ倒して誰かの富を収奪するゲームは今の日本社会の有様だと思う。
    まあ、それもいいのかも知れない。
    でも、手痛いしっぺがえしが、既に現れ始めている。

  • 格差がマスコミで取り上げられるようになって久しいですが、この本は、格差を是とするでも、非とするでもなく、冷静に分析し、これから格差社会はどうなっていくのかを、様々なデータを基に予測しています。

    一昔前の日本は、大きな政府であって、あまりにも平等を重視しすぎたために、様々な問題を抱えていました。そこで、世界的な流れもあって小さな政府へとシフトしてきたのですが、そのことにより、規制緩和などが行われ、競争が激しくなったことから、格差が顕著になってきたと言われています。

    実際に、下層階級の人が増えており、格差が拡大していると言われていますが、非自発的にそうならざるを得ない人たちももちろんいるだろうけれど、自発的にフリーターなどのライフスタイルを選ぶ人が増えているのも、格差の要因の一つだと思います。(『下流社会』という本のなかにも、低所得の生活に満足している人が増えていると書いてありました)そういう人のために、はたして、手厚い福祉政策が必要なのでしょうか?

    しかし、実際には、頑張っても報われない人たちがいることも確かでしょう。そういう人たちには救済処置が必要です。では彼らを救うためにどうすればよいのか。この本にも書かれているのですが、格差を固定させないためには、消極的な雇用政策(日本では主にこちらに重きをおいて雇用政策がなされてきました)ではなく、積極的な雇用政策にお金を投入していくべきだと思います。

    消極的な雇用政策(例えば、失業保険を長期間受給できるようにするなど)はモラル・ハザードを招きかねませんし、根本的な解決にはなりません。

    例えば、職業訓練を受けさせるなどの積極的な雇用政策を実施するためには、多くの財源が必要となるでしょう。これを負担するのは、高額所得者だけでは間に合いません。ゆえに、中間層にも負担をしてもらうことになります。

    一部の人々だけでなく、日本国民全体で負担をすることで、やがては、自分たちに富が還元されることになるのです。

    私たちは、近頃、「日本のために働く」という観念が乏しくなってきていると、筆者は語っています。確かにその通りです。自分の利益ばかりを追求しているので、「増税反対」「所得税をあげたら、海外へ逃げるぞ」などという利己的な意見が出てきてしまうのです。

    国民全体が負担を負い、積極的雇用政策をうまく実施することにより、誰もが不満を持たずに納得できる格差社会、すなわち、ただ高所得者から多く税金を巻き上げるのではなく、また、低所得層の人々でも、頑張れば這い上がれる社会、格差間の移動がスムーズに行われる社会ができるようになるのだと思います。

    ・・・となぜか熱く語ってしまいましたが(笑)この本には、もっと理論的に、わかりやすく格差社会の行く末が書かれていますので、興味のある方は是非どうぞ。

  • 1格差社会は「政災」か、それとも「天災」か
    2本当に小泉政権は格差社会の真犯人なのか
    3「格差是認」から「格差の怒り」に変わるXデーの条件とは
    4富裕層は追い詰められるのか「小さな政府路線」の持続性
    5格差社会への対応としてどのような製作が実行されるのか
    6「経済の法則」と「社会の法則」の切り分けを日本社会に

    「職業威信」「学歴威信」「金銭(所得)」の三つではなく、本書はあくまで金銭面での格差を扱っている。
    何を単位にして格差を計るか、世帯か個人なのか。


    最後に筆者は「中間層の復活に期待をかける」という文脈でしめくくっているが、その中間層が富裕層にも貧困層にも物申す姿勢はどのようにしたらいいかは、書かれていない。物申すことに意義があるのなら、そのものの申し方まで言及しなければ意味がないと感じた。
    細かく章立てはされているが、主に「小泉内閣の評価」と「富の分配」について書かれていた一冊。

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著者プロフィール

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

「2018年 『没落するキャリア官僚 エリート性の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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