ウィキッド(下)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797342710

感想・レビュー・書評

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  • ミュージカルをご覧になった方は、一旦ストーリーを忘れてから原作に入った方が良いかもしれない。上巻もさることながら、下巻に入るとますます原型をとどめていないからだ。

    感想を問われるとそれが結構難しく、「面白かったかもしれないけど何だか凄かった」としか今は言えない。やっぱりフィクションのレビュー苦手かも…泣
    それにエルファバが息つく間もなく心の中で疑問や推測を打ち出すものだから、未だに把握しきれていない部分も多い。(逐一それらを拾っていくよりも、「今は読み進める方を優先しよう」としていた)

    それでも『オズの魔法使い』の前日譚であるという設定は守られ、引き続きあちこちに伏線が張られていた。「下巻を読み終わっても伏線を回収しきれていない」というレビューも見受けられたが、鈍い自分はそこまで気にならず。
    自分は自分で頭を整理しながら、心の中で打ち出されている考えをしたためていこうと思う。

    「過酷な試練のとき、重大な危機に面した時代にはいつでも、あくまで自分のままであり続ける者たちが犠牲となるのだよ」

    オズの国を支配する「魔法使い」勢に反旗を翻すエルファバだが、時機悪く企みは約15年も後ろ倒しになる。流転の日々を送るなか、ついに妹(「東の悪い魔女」と民衆から罵られていたが、実は独立国家マンチキンの統治者)が竜巻で運ばれてきた家に押し潰されるという知らせを聞く…。
    このくだりから物語は急変を迎え、『オズの魔法使い』の物語とクロスオーバーしていく。またエルファバ(或いは愛称のエルフィー)の呼び方もいよいよ「魔女」へと変わり、読者は嫌でもその悲しい変化を受け入れざるをえなくなる。

    「みじめで貧しい民衆にとって、どこで悪が生まれるかなんて故事来歴なんて必要ないんだよ。悪はただ現れるもの。最初から存在しているってわけさ。[中略]結局つまるところ、悪をどう定義するかってことさ」

    上巻のレビューでは「『ウィキッド』の話は湾岸戦争をモチーフにして生まれた」と書いた。
    経済危機のイラクが隣国クウェートの石油を狙って侵攻、撤退を辞さない姿勢にアメリカ率いる多国籍軍は容赦なく攻撃する。イラクとアメリカ勢、(本題に戻れば)エルファバとオズの魔法使い勢、果たしてどちらが「ウィキッド」なのか。何が本当の正義なのか。
    そもそも正義って一体何なんだ?
    こうした疑問を心に留めておかないと、民衆みたく思考まで操作されてしまいそうだ。

    「この話は実にさまざまな形で伝えられていて、誰が語るかによっても、その時代にどんな話がされているかによっても異なってくる」

    そうは言っても正義か悪かは視点によって異なり、『オズの魔法使い』と『ウィキッド』においてはエルファバの立場が逆転している。
    でも呪われた人生のせいで魂の存在を信じられなかったエルファバが、最後に魂だけでも救われ安らかでいてくれたら…。どちらの物語であっても、これだけは願ってやまない。

    • ahddamsさん
      なおなおさん、こんばんは。
      全体的にミュージカルと話が違っていて、書けば書くほどややこしくなったので色々端折りました泣 上手く書けなくてごめ...
      なおなおさん、こんばんは。
      全体的にミュージカルと話が違っていて、書けば書くほどややこしくなったので色々端折りました泣 上手く書けなくてごめんなさい(/ _ ; )
      フィエロは下巻の序盤で早くも退場してしまいます…最後の方で生存説をほのめかしていましたが結局違っていたので裏切られた気分でしたΣ(-᷅_-᷄๑)
      ギャップがあり過ぎて、原作はかなり重く感じるかもしれません汗 この後読む『オズの魔法使い』が一服の清涼剤になることを願っています…!
      2023/12/10
    • なおなおさん
      ahddamsさん、お返事をありがとうございます。
      ミュージカルとひだいぶ違うようですね。
      私の推しのフィエロの行方はミュージカルでもショッ...
      ahddamsさん、お返事をありがとうございます。
      ミュージカルとひだいぶ違うようですね。
      私の推しのフィエロの行方はミュージカルでもショックだったので、原作ではとんでもないことになってそう…心配。フィエロ…ううっ李さんっ!…笑
      「オズの魔法使い」、ahddamsさんがどのように読まれるのか、レビューを楽しみにしております(^^)/~
      2023/12/10
    • ahddamsさん
      なおなおさん、
      フィエロは生きながらえて欲しかったです泣 李さんのイメージをキープしたまま読み進めたかった…!彼の家族(本妻や子供達、妹)も...
      なおなおさん、
      フィエロは生きながらえて欲しかったです泣 李さんのイメージをキープしたまま読み進めたかった…!彼の家族(本妻や子供達、妹)も下巻から登場しますが、彼らの運命も過酷なもので作者はフィエロ一族に個人的な恨みでもあるのかなと思ったほどです( ; ; )やっぱり自分はミュージカル版ストーリーの方が断然好きですね♪
      ありがとうございます!^ ^読み始めたばかりですが、早くも心が洗われています笑笑
      2023/12/10
  • 着想は面白いし、登場するキャラクター皆それぞれに興味深さは“窺え”ます。

    主人公のエルファバは緑色の肌でもって生まれ落ちたその瞬間から過酷な人生を強いられており、性格は今時の言葉で言う“こじらせ女子”のよう。
    賢く責任感も強いが、頑固な偏屈。しかしそれは彼女が生きてゆく為に身に付けざるを得なかった鎧であり、実際の彼女はコンプレックスの塊故に他人との距離も上手く測れず、そんな自分自身を持て余してすらいる――といった風に。いじらしいのです。

    悪についての考察や議論、家族間の確執や愛憎、人格形成の過程、権力者による思想弾圧が世間に蔓延・浸透していく不気味さ、そして人生における唯一のロマンス、等々、部分部分では面白く読みました。
    しかし、一つの物語としてしっかり書ききられていません。(色んな種をホイホイ蒔いたくせに、最後まで育て上げて収穫していない。)
    一言で言うと、雑。ドロシーの道連れの三人(人外ですが)など、取って付けたような書き方ですし。そして翻訳にも所々違和感を覚えました。

    まぁ…
    読了し、人生は不条理に満ちていて、どれ程努力をしたって抗うことが不可能な時などは沢山あるのだ、という主題は受けとりました。それと権力というものの恐ろしさも。
    人々が身に起こった不条理を何とか受け入れるために宗教を活用する一方、エルファバは不条理をはね除けようと必死になり、当然神(宗教)の存在をも拒絶します。が、無情にも最後(最期)まで報われはしません。
    やるせなさが残る作品でした。

  • 綺麗なハッピーエンドのストーリーにまとまったミュージカル版が好きなら読まない方がいいよ、ってくらい話違うし、救われないし、描写もきついけど、私は小説版のウィキッドも好き。ダークファンタジーが好きな人にはおすすめです。

  • ★3.5 やっぱりミュージカルとは違う!でもこれはこれで面白い。下巻では舞台版の大体第2幕にあたる話。エルファバが「悪い魔女」になる過程、そして『オズの魔法使い』とのリンクが楽しめる。でも、くどいほど哲学的・宗教的・政治的な視点で描かれてるから内容を掴むだけで一苦労。個人的に、グリンダとエルファバの友情にあまり重きを置かれてなかったのが残念だった。でも「ドラゴン時計」について知れたのは良かったかな。まぁ…内容はともかく、WICKEDを読んでいること自体楽しくて仕方なかった。いつかBWか四季で観劇したい。

  • 前巻の収束を期待していたけど、思わぬ形でした。
    エルファバは結局地下に潜って何をしたかったのか、
    修道女になって何年も月日を費やし、その後許しを請えて何年も幽閉状態。家族とも自由に会えたのに、亀裂が深まるばかり。
    よくしたいのに空回りにばかり終わる。自分のしていることも過去の呪いと関連付けてしまって信じられない。
    苦渋をなめた人生だったのに悪い魔女と言われている、、
    信仰の有無にこだわり魂の有無にこだわり、哲学的な面もあったが、結末があまりにもまとまらずでとにかくエルファバがかわいそうだったという印象があった。
    登場人物が多く文体的に読みにくいのは前巻同様でした。

  • ファンタジーが苦手だった私が、初めてファンタジー面白いかもと思った本です。
    上巻の中程までは読みにくいなぁという感じで、あまり進まなかったのですが、それ以降はするすると読めました。

  • 下巻はストーリーがすごくすすむ

  • ミュージカルを先に観てしまったからか、なんだかイメージがちがいすぎてう~んというかんじ。本のほうがかなりブラックです。

  • 上下巻を通して読んでも、いまいち誰にも感情移入しきれずに終わった印象。
    一旦、悪とされたものには、最後まで救いがない。

  • 日本ではオズシリーズは『オズの魔法使い』のみが有名だが、実際はシリーズものの連続作品だ。この『Wicked』はブロードウェイの人気ミュージカルの原作で、日本でも劇団四季によって演じられている。ただし、ミュージカルはこの作品をベースにした別物と思った方が良い。
    出会いはちょうど日本で上演が始まったころ、USJで見たショートミュージカルを見たのがきっかけだ。

    物語はドロシーがオズにやってくるずっと前から始まる。どうして緑色の魔女が誕生し、そして、どうして悪い魔女となってしまったのか、そしてなぜ死なねばならなかったか。その一生を丹念に綴る。どうにもならない運命のやるせなさに心が締め付けられた。彼女は望んで緑色に生まれたわけではなかった。まして生んでくれとも頼んでいない。育ちゆえの直線的すぎる彼女の感情に、周囲からは疎まれ、悪と呼ばれ、その汚名を晴らすこともできずオズの世界から去った。数奇な運命に翻弄されながらも、その荒波にたちむかうまっすぐさは読んでいて胸が締め付けられた。
    ミュージカル版ではグリンダの存在がエルファバに対する救いであったが、この本では全くそれがない。まさしく悲劇。悪なんて決して捉えられるものではないのだ教えられた。

    同じ作者でこのシリーズはいくつも出ている。是非日本語訳を出してほしい。

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