- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797369700
感想・レビュー・書評
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数学者によるブラック-ショールズ方程式の解説が非常に興味深い。方程式をたてるにあたっての仮定と、実際の金融の動きは合っていないように思われる、との解説あり。p389-390
同様に、正規分布の章でも、統計的手法を使う人は、その裏にある前提条件とその意味合いを知っておかなければならない、と戒めている。p166
フーリエ変換の章の、パルス状のデータを効率的に記述できるドプシーウェーブレットが面白そう。今度調べよう。
全体的には知っている話が多い。数学的な話は、解説を言葉で行っているのでまわりくどい。面白いかどうかは、章によりけり(その方程式と分野に対する興味次第)。
だが、買って良かったか?と聞かれれば、上記のような話がちらほら入っているので間違いなく、買って良かった、と言える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
普通方程式といえば、数学であり物理であるが、この本は最後にこっそりブラック=ショールズ方程式があるのがミソ。
物理的に破壊する相対性理論の方程式と、経済的に破壊するブラック=ショールズ方程式が同列に並ぶというセレクションの妙を見るべし。 -
熱力学第2法則についての第12章「法則と無秩序」に、初期条件が時間の矢を決めるという説明があった。例えば1000個のガラスの破片が集まり、組み合わさって無傷の花瓶になり、空中へ飛び上がるという現象を起こすには、それに応じた初期条件、つまり、1000個のガラスの破片のそれぞれに相応の位置及び速度を与える必要があるが、そんなことは実際には不可能である。なるほどと思った。取り上げられている17の方程式の大半は、学校で習って知っていたが、改めて説明されると、理解が浅かったと思うばかり。本筋とは関係がないが、第12章では時間の矢との関係で「逆まわりの世界」が、シュレーディンガー方程式についての第14章「量子の不気味さ」では波動関数の解釈との関係で「高い城の男」が、それぞれ引き合いに出されている。ディックも古典になったのだなあと感心したが、これは単に、数学者である著者がSFも書いているからかもしれない。著者は、Scientific Americanに"Mathematical Recreations"という名前のコラムを掲載していたらしい。このコラムは、日本語版にも掲載されていたような気がする。著者の名前に聞き覚えがあるのは、そのせいか。2013年6月2日付け読売新聞書評欄。
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サイエンス分野の著述に定評があるイアン・スチュアート。彼の作品なのだから面白くないわけがない。数式が人類にどのような影響を及ぼしたか、17の数式と現代文明への活用、そして発案背景が詳述されている。
人によって好みは分かれるだろうが、私のお気に入りは「万有引力」「虚数」「相対論」だ。「万有引力」は自然法則を方程式で表すという人類が初めて味わう数学を、「虚数」は無限に拡がる人間の創造性を、「相対論」は思考を組みなおすという科学のダイナミズムを味わうことができる。
「多面体の公式」など難解な章もありながら、無味乾燥な数式がなぜ重要でどういう衝撃があって我々人類に何をもたらしたかがわかる本だ。 -
一般書のタブーと言われる方程式を真正面から記載、解説して見事に成功している。
各章冒頭の方程式と構成要素の説明、「何を表しているか」「なぜ重要なのか」「何が導かれたか」を1ページにまとめる手腕はさすが。
素養無しの人でも雰囲気が掴め、理系の人は理解が深まるだろう。
最後がブラック・ショールズ方程式という悪魔の式で締められているのも面白い。