教養としての「昭和史」集中講義 教科書では語られていない現代への教訓 (SB新書)
- SBクリエイティブ (2016年11月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797388398
作品紹介・あらすじ
★新しい昭和史の見方を伝える!
山川出版社の『日本史B 高校日本史』(81 山川 日B308)における戦前昭和史を、「教養」として読み直す!
実際の教科書と対比しながら、「大事なのに触れられていないこと」「さらっと記述があるだけだが、実は背景にこんなことが」という解説で、
歴史の本質がつかめる!
「そんなに簡単に平和な世の中から戦争の時代へとシフトするのだろうか?」といった疑問。それは、個々の事実をつなぐ様々な出来事が教科書では端折られてしまっているから。本書では、そうした隙間を埋め、かつ簡素な記述の裏にある今日的な意味に光を当てながら昭和史を振り返る。
・戦前昭和の歴史を学ぶことに今日的な意味が見出せない、そんな人こそ目からウロコの内容
・いま以上に先行きが不透明な時代に、先人はどのように行動し、それがどのような結果をもたらしたのか?
・二大政党制の機能不全ないし限界についても、戦前と比較して考えることができる!
・当時の国民目線になって考えるという意味で、現代を生きる私たちが戦前昭和を身近に感じられる点。それは、当時の日本も格差社会であったこと。
・当時の国民だとしたら? 新聞やラジオが戦争熱を煽っていくなかで、あなたは「それはおかしい」といえるのか。あるいは「おかしい」と発言すること自体、英雄的な、正しい行為だといえるのか。
感想・レビュー・書評
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日本政治外交史の専門家が、昭和史を語り下ろす。高等学校「日本史B」を引き合いに出しながら、教科書には載っていない背景等を分かりやすく解説。例えば、教科書では「協調外交=幣原」、「強硬外交=田中」といったイメージを持ちがちだが、幣原外交も田中外交も中国での既得権益や日本人居留民の生命と財産を守るということでは両者とも一致していたが、中国の情勢が大きく変化(北伐の開始、南京政府の樹立)があったために幣原と田中の外交も変化が生じたのだという。中高生が読んでも理解が深まるだろう。大人も、学び直しに最適。
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明治以降の歴史が学校教育で十分になされていないと言われるけれど、結局は今の政財界の闇に関わるので手がつけられないというのが本音だと思う。
幕末の志士だの明治の偉人だの呼ばれるのは今の政財界の創設に絡んだ人が多く、ヘタに英雄視するのは問題。
この本は昭和戦前史のみに限定した読みやすい本でした。
昭和でもこれだけ政財界はブラックなのに、明治・大正には触れられないよね。
いつの時代も官僚は優秀なのに国の方針を決定する政治家が政党間の足の引っ張り合いなどで国益に反するようなことをしているようだ。
総括して外交官経験のある人は視野が広くバランス感覚が良いようで、そういった経験のある政治家に力があるときは歴史的に良い判断ができているように感じました。
歴史は多角的にいろんな視点の意見を読んだり聞いたりして自分なりに学んでいく必要があると感じた1冊でした。 -
東2法経図・6F指定:210.7A/I57k/Inoue
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2020/5/18-6/4読了
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学習院の学長である著者が、山川出版社の『日本史B 高校日本史』にツッコミを入れていくスタイル。教科書の記述というのは概ね間違いはないのだろうが、解釈としてやや古い部分や簡潔な説明が原因で説明不足な所があり、結果として誤解を与える部分がある点に言及している。
日本史Bは進学校向けで日本史Aは非進学校向けなので、レベル的には高校時代に日本史Bをやっていてさらに深く勉強したい人向けであり、大学1年生の一般教養科目のサブテキスト的位置づけといったところか。文体的には学校の先生が学生向けに語りかけるというテイストなので好みは分かれるだろう。 -
本書では憲政の常道といわれた二大政党制の時代から現代の憲法論争や安保闘争に至るまでを取り扱っています。
本書の大きな特徴は、山川の教科書を引用しつつ、その行間には誰のどのような思惑があったのかという背景の説明に力を入れている点です。近現代史がしばしば丸暗記で済まされてしまうのは、歴史的事実をただ配列しただけという教科書のつくりにも原因があると思います。本書の読了後に教科書にあたるとその記述がより活き活きとした人間味のあるものに見えてきてます。
もう一つの特徴は、語り下しの形式で書かれていることです。そのため何度か同じ内容が繰り返されることがありますが、私のような素人からするとその都度確認できるためむしろ理解に役立ちました。
歴史は繰り返すと言われますがまさにその通りですね。それぞれが党利党略、組織利益を追求した結果、良からぬ方向に進んでしまった、ということが多くあったように思います。
現代政治のトピックとしては、保守と革新のねじれについての説明が大変わかりやすく腑に落ちました。保守政党がかかげる改憲と親米は本来であれば矛盾した立場であるはずです。このねじれは一体どこから生じたのか、歴史を紐解いて解説してくれています。
歴史を学び、同じ過ちを繰り返さないようにしたいですね。
本書は無味乾燥な丸暗記から脱却したい社会人、大学生の学び直しに最適な一冊と言えるでしょう。 -
すっごく個人的な理由で必要に駆られて昭和史を読んでますが、この本とても良いです。高校の日本史教科書の副読本とかにすればいいのに。
私、勉強はそこそこできたほうだと思うんですけど、好き嫌いでいえば日本史がめっちゃ嫌いでした。
日本現代史の第二次世界大戦参入までの教科書を読むと、非常に愚かなだけの登場人物たちが、私利私欲と無知だけの理由で、大量の犠牲者を出した物語に読めるので、テストの解答用紙は埋められても、正直「???」って感じでした。あれ、昔の人ってこんな思慮浅く愚かだったの?と。
この本は山川出版社の日本史Bの教科書を引用しながら、その行間の間に、何があったのか、その時の軍部は、その時の与党と野党の状況は、世界経済は、列強の事情は…等々の情報を非常にすっと入るリーダビリティの高い文体で書いています。
歴史って単純化しちゃいけないものの最たるものなのに、なんで、高校の歴史は、アンパンマン張りに単純化した歴史を教えるんだろう。そんなの想像力を削いで、アジテートされやすい大人を量産するだけなのに。
でも、この本プラス、まったく史観の異なる似たような本を副読本として、高校日本史教育をやったとしたら、果たして、良識ある教養人がたくさん排出されるのかな?っていうとまあ、わからない。歴史のイフを立てることは、価値があるけど、立派な動機も、根拠ある取り組みも、予定通りの結果を生むとは限らないから。この本が書く歴史みたいに。 -
軍国主義、国体、大東亜共栄圏などキーワードは覚えていましたが、第二次世界大戦に参戦した理由はボンヤリしていました。本書では志那事変を中心に太平洋戦争に突入していく様子、また、度々戦争回避する機会があり、参戦が必然ではなかった様子が説明されています。戦前の日本が二大政党制の弊害により意思統一しきれなかったことも説明されていて、現在の日本を考えるうえで大変参考になる書籍だと思いました。
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「今後は対米自主外交をしていくべき」との末尾の政策提言めいた部分を除き、本書の大部分を占める昭和史の解説は、当然ながら筆者の他の著作でも見かける内容だ。ただ、連続講義が元になっているのか、読みやすく幅広い。
1920年代の憲政会幣原外交と政友会田中外交は、中国での既得権益を確保する点では変わらないこと。1930年代の松岡洋右「満蒙は日本の生命線」発言時代、実は日本国内では満蒙への関心は薄れ始めていたこと。関東軍の独走を止められなかったのは民政党と政友会の党利党略構想も一因であること。5.15事件以降でも政党内閣復活の可能性はあったこと。日独伊三国同盟とその後の独の欧州での快進撃に乗っかり日中戦争を解決し、アジアで日本中心の新しい国際秩序を作ろうとしたこと。陸海軍の組織対立、「海軍善玉論」の虚構。第二次世界大戦は「ファシズム対民主主義」という単純な図式ではないこと。戦後の改革の一部の芽はそれ以前に日本の中にあったこと。
戦前は軍部が台頭し、日中戦争、太平洋戦争と意図的かつ一直線に進んだ、戦後の一連の改革はGHQが断行、と単純化するだけでは語れないことがよく分かる。 -
歴史の振り返る事の大切さについては皆が認める。しかしそれは教科書の暗記として表面の事象を知る事ではなく、背景にどの様な状況があったのか、本来の目的はどこにあったのか、何故意図したことと反対の方向進んでしまったのか、を知る事が必要である。
この本に書かれている時代は、自分が経験する以前の話ではあるが、今につながる出来事であり、歴史を振り返るにあたっての考え方とか観点を示してくれる良い導き手となる。