知のトレッキング叢書 日本人と漢字

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  • 集英社インターナショナル
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673074

作品紹介・あらすじ

中国からきた漢字を、情緒と繊細さをもって独自のものに変えてきた日本人。中国では漢字の音が重視されたが、日本では形や意味にもこだわった。歴史と共に変化する漢字の面白さを学べる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 最後まで楽しく読めました。

    笹原さんは随分と優しめに書かれていますが、漢字のダシにしたクイズ番組やWebニュースの見出しには僕も疑問に思う部分が多かった。

    同様にして、「ら」ぬきやコンビニ敬語も、説明できる背景があって受け入れられた結果であるのにマナーの押し付けで笑い者にされる。そう言うのは楽しくありませんねと、説いていらっしゃる。

    さて、中身はと言うとこれまた素晴らしく、驚きの連続でした。人よりかは注意深く文字に触れてきたつもりでしたが、全く別次元。書記文字に関しては、他の言語と全く異なる日本語です。この分野の研究がもっと進みますように。せっかくだから、つぎは記号論の本でも読んでみようかな。

  • これ面白い!単なる知識だけじゃなくて、国民性とか歴史とかについてもいろいろ考える材料がたくさん盛り込まれている。なるほどねー。音の中国人に対して意味の日本人かー。

  • 37頁:孔子には『易経』を繰り返し読んだというエピソードが残っています。陰陽五行説に基づく占いの書で,易占いのテキストともいえる書ですが,これを繰り返し読んだためにできたのが,「韋編三絶」という故事成語です。/竹簡を紐で束ねた『易経』を,熱心に何度も何度も読んでいたら,なめし皮の紐が切れてしまうことが三回もあった――当時の本の形態までよくわかることばです。
    ・この部分の記述を読んで,いくつか違和感を感じた。①『易経』は陰陽で森羅万象を説明していますが,五行論(五行学説)は余計じゃないですか?/伝(十翼)の中に,五行論による説明があるのかな?②現代の中国語学の理解では,「韋」は,「緯」のあて字で「よこいと(横糸)」と解釈するのがおおかたの見方なのではないでしょうか?③「なめしがわ」は一字で書くと「韋」「鞣」「靼」で,一説では毛があるのが「皮」で,毛をとってなめしたのが「革」なので,かな交じりで書くのなら「なめし革」がいいのではないでしょうか?木簡に付着したナメシ皮が出土しているのであれば,ごめんなさい。
    38頁:固性をもった
    39頁:『春秋左氏伝』……漢民族の「乳(ニュウ)」という語を,楚人は「穀(コク)」と言っていたことがわかります。
    ・中国語学では「乳」を意味する「穀」は「コク/gŭ」ではなく「コウ/gòu」と読むのだと思う。
    39頁:不律にはその発音から筆の意味があることによって付けた名だ,と由来が伝わっています。
    ・説明不足だとおもう。反切を知らない読者には理解しがたいのではなかろうか?また余計なことだが,森鷗外の子どもの名前に言及し,「於菟(オットー)」「茉莉(マリー)」「杏奴(アンヌ)」と「外国語で読みやすそうな名前」[実質はドイツを主とするヨーロッパ語か]との対応関係を説明しながら,「不律」だけ,「フリッツ」との対応を言わないのは,話が「筆」にそれたためか?(※66頁「文章の組み立てや流れというものは,必要に応じて,"崩す"ことも大事なのだ」という発想によるのかも知れない。)
    40頁:万里の長城の祖形
    ・「祖型」?
    45頁:陰陽五行説という考え方がありました。宇宙の現象は陰と陽の二元論ですべて説明できるという世界観,宇宙観によるものです。
    ・37頁を読んで感じた違和感の由来がわかった。著者のいう「陰陽五行説」とは「陰陽論」とイコールなのだ。要するに,著者は「五行説」の意味を理解していないのだと思う。
    62頁:たとえば「蘇」という漢字がありました。
    ・どういうことがいいたいのだろうか?素直に読めば,「蘇」という漢字は,今は使われていない,と読める。もちろん,日本では使われており,著者も「『紫蘇』の『蘇』でもあります」と説明している。文章のつづきとして考えて,「(三国時代につくられた漢字のなかには)たとえば「蘇」という漢字がありました」と読んでほしいのだろうか?しかし,『説文解字』にすでに「蘇」字は収録されている。なぜ,「ありました」なのか,わたくしには,わからない。
    ※上文(「陰陽五行説という考え方がありました」)を読み返して,気がついた。著者のもちいる「ありました」は,過去のことを表現していると理解してはいけないのだ。たぶん,著者の口癖のようなもので,現在のことがらも「ありました」と表現するのだ。
    64頁:先の「甦」なども,彼ら[鮮卑]がつくり,よく使ったことで広まった可能性があります。
    ・ここの論理構成もよくわからない。「騎馬民族の鮮卑は革でできたくつを履いている。革を部首にして旁(つくり)を「化」とすれば表せるぞ。これらを組み合わせて「靴」として,「クワ」と読ませればいいじゃないかと」。これって,鮮卑は形声字として,この「靴」という文字をつくったということですね。「甦」は「更+生(生き更える)」という会意字で,発想が違うのではないですか?/単に鮮卑もあらたに漢字をつくりだした,といいたいだけなのかな?
    67頁:[科挙試験の]詩作で何を見るのか。……まず過去の詩を覚え,型を押さえていることが求められたのです。
    ・詩作は,発音試験だったと思う。下文にでてくるが,隋代に『切韻』(601年)によって標準的な発音が示された。すばらしい文章を書けるが,オーラルコミュニケーションができないひとを任用しても,朝廷の仕事に支障をきたす。方言しか話せない人をふるいにかける試験が詩作だったと思う。
    72頁:漢字の本や語書を読んだり……
    ・「語書」?辞書?
    ★130頁に「圓」から「円」への史的変遷が述べられている。

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著者プロフィール

早稲田大学社会科学総合学術院教授
1993年早稲田大学文学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(文学)。
専門は日本語学(文字・表記)、社会言語学(文字論)、漢字学。

「2022年 『漢字系文字の世界 字体と造字法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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