ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)

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制作 : 三谷 宏治  酒井 泰介 
  • 翔泳社 (2013年8月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798132303

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ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)の感想・レビュー・書評

  • ベンチャーではなく、既に成功している大企業内で戦略的実験事業を起こすにはどうするるべきか、に焦点を絞った著作。
    コアコと呼ぶ従来の事業中心に動いている社内で、ニューコと称する戦略的実験事業を立ち上げるには、どのような手を打てばよいのか、事例を取り上げながらその要諦を丁寧に説いている。
    とても具体的なので、自分の経験とも照らし合わせながら思い浮かべることも容易であり、とても納得感が高い。
    新規事業立ち上げに取り組む人は必読ではないだろうか。

    以下、長くなるが後日の思い返しのために要点をまとめてみる。

    ------------------------------------

    成功しているコアコを持つ会社が社内で戦略的実験事業を立ち上げるためには、三つの課題を乗り越えなければならない。

    1,忘却
    第一はコアコの事業定義。戦略それ自体が、事業を定義する基本的な問いに答える社内常識になることがある。ニューコは自由に新しい考え方を追求しなければならないし、場合によってはコアコの売上げを食う必要もある。
    第二は既成概念を忘れなければならないこと。新たな競争力が必要かもしれないし、コアコが持つ競争力はニューコにとってさほど重要ではないかもしれない。
    従来事業には、進め方に関する安心感、仕事の基礎としてきた社内の人間関係、組織感、事業計画など拭いがたい記憶が数多く刻まれている。
    しかしビジネスモデルの基本三要素(顧客層、提供する価値基準、価値の提供方法)を見直さなくてはならない戦略的実験事業では、却って邪魔になる要素ばかりなのである。

    特に戦略的実験事業を従来同様に収益性で評価する問題点は二つある。
    第一に、収益を確定するためには費用を確定しなければならないが、あいまいさが残るので、ニューコがコアコから借用する経営資源のコストの計算には、常に恣意性が混じる。そのため、ニューコは収益性ではなく、少なくともビジネスモデルが確立するまではキャッシュフローが少しずつでも増えているかどうかで評価されるべき。
    第二に、ニューコがいつ黒字転換するかの判断が難しいので、この判断も恣意的になる。しばらくは赤字を大目に見られていても、その後はいわれ放題だし、コアコのビジネスサイクル(それがニューコのビジネスサイクルとは無関係であったとしても)や諸事情によって決定されることもある。


    2,借用
    ニューコがベンチャー企業と競争していくには、コアコの資産を借用するしかない。
    既存の顧客、流通チャネル、供給網、ブランド、信用、製造能力、そしてさまざまな技術などだ。これらはいずれも、ベンチャー企業にはのどから手が出るほどほしいものばかりである。
    これこそがベンチャー企業に対する最大の強みである。

    ただし「忘却」との微妙なバランス感覚が求められる。
    借用するためのコアコとの接点は三つ以上持つべきではなく、それによってニューコが決定的な競争優位性を得られるときにのみ持つべき。
    この接点に置くトップ、人材が借用のバランスを成功させる大きな鍵となる。
    特に支援部門(人事、IT、財務、法務、購買など)を共有するのは、コスト削減にはいいかもしれないが組織的DNAが移植されてしまい、「忘却」の課題を乗り越えられなくなる。


    3,学習
    新しい事業なのだから事業成果の予測など、殆ど当て推量にほかならない。
    少しでも早く予測精度を上げられれば、有効なビジネスモデルに絞り込んだり、試してみてだめだったことなどから抜け出せるようになるし、黒字転換までの時間も短くなるし、リスクにさらされることも減るし、競争を制する見込みも増す。
    この能力を学習していくことが重要である。
    必ずしも最も優れた計画を立ててスタートした者が勝つとは限らず、えてしていち早く学習し、適応した者が勝つ。
    戦略的実験事業の管理においては、学習という言葉は、ニューコの事業成果の行方を予測する力を向上させることを意味し、これが学習の課題の要諦である。
    そして、戦略的実験事業における重要変動要因を導き出し、学習する唯一の方法は、試行錯誤である。
    そのためにも計画はこまめに見直す必要がある。

    まさに散々提唱されているリーン・スタートアップの手法である。
    ベンチャー立ち上げにあるべきとして騒がれている手法が、大企業内で有効だということを10年以上前から著者は主張していたのだ。


    そして最後にこれらを具体的に進める方法tpしての理論型計画法(TFP:Theory-Focused Planning)を紹介している。
    概念的なグラフを使いながらの説明なので、実用に当てはめて考え易い。

    ステップ1 事業がどう動くかを表現する:どんな行動が成功や失敗につながるか?
    ステップ2 測定基準を決める:何を測ることができるだろう?
    ステップ3 目標を立てる:何が多面的に成功をもたらすのか?
    ステップ4 支出の基準をつくる:成功するには、いくら使う必要があるか?そしていつ?
    ステップ5 パフォーマンスを予測する:すでに組んだ予算で、どんな結果が期待できるか?
    ステップ6 重要変動要因を洗い出す:事業の成功や失敗を決めるどんな仮定を立てたか?こうした仮定を、どうすれば検証できるか?
    ステップ7 予測と結果とのズレを分析する:どんな証拠が集まったか?ロジックの各部分は正しかったか、それとも誤っていたか?重要変動要因は得られたか?
    ステップ8 計画を改定する:学習に基づいて、計画を改定する必要があるか?もしあるなら、どう変えるべきか?

  • 企業内での新規事業がなぜ難しいのか、納得感をもって理解できた。

  • 本書は、イノベーションや新規事業を起こす為の組織論である。また、いかにスティーブ・ジョブズのようなカリスマ依存ではなく、大企業の組織が継続的にイノベーションを起こすための仕組みの話である。

  • クレイトン・クリステンセンらと並ぶイノベーションの大家であり、「リバース・イノベーション」や「イノベーションを実行する」で知られる著者の「原点」ともいえるイノベーション実践論。

    大企業が全く新たな事業で成功するためには、既存コア事業で成功しているビジネスモデルを良い意味で「忘却」して組織的DNAの独立性は担保しつつ、既存事業との間で最低限の接点を持つことで重要なリソースを「借用」するとともに、不確実性の高い新規事業の特性から、既存事業にような目標必達型マネジメントではなく、仮説・検証・修正を短期で繰り返すことで得られる「学習」に重点を置くマネジメントが必要と説く。

    カリスマ的リーダーや、素晴らしいアイディアを生み出すことばかりに注目する「机上の空論」ではなく、実在の企業の事例分析から導かれた大企業が陥りがちな課題と、その解決策として組織的に実行可能な具体的手法が提示されており、高度な理論でありながら説得力と実現性を兼ね備えた良書となっている。

  • 大企業でどうやって新規事業を起こすのか?
    が具体的に書かれている本。

    新規事業というと、スタートアップやベンチャーがどうやってそれを立ち上げたか、みたいな形で語られる本が多いと思いますが、本書では、大企業がどうやって新規事業を起こすのかが、事細かに書かれています。
    チェックリストがあったり、理論方計画法(TFP)で計画を立てるやり方がかかれていたりして、超具体的で逆についていけないところもあります(笑)

    しかし、本書で伝えていることはシンプルで、対応すべきは3つの課題です

    ・忘却の課題
    ・借用の課題
    ・学習の課題

    とはいうものの、とてもじゃないけど簡単には対応できない!

    ・忘却の課題
    既存事業の事業定義を忘れ、既成概念を忘れることが重要。

    ・借用の課題
    既存事業の資産を活用する。ベンチャーにはない強み

    ・学習の課題
    新規事業の事業成果の予測制度をあげていくこと

    本書では、それぞれの課題にどう取り組んできたのか、成功例、失敗例含めて、ケーススタディが紹介されています。
     コーディングマイクロアレイテクノロジーズ
     ニューヨークタイムズデジタル
     ハズプロインタラクティブ
     IT大手企業
     アナログデバイセズ
    課題についての取り組みは、社内政治のどろっとした話も含まれていて面白いですが、やはり困難でとても難しいことがわかります。

    また最終章には戦略的実験事業を成功させる10のルールについて語っています。
    ・すべての偉大なイノベーションの物語において、優れたアイデアは序章に過ぎない
    ・組織全体の記憶の源は根強い
    ・大企業の戦略的実験事業は、その資産と能力を活かすことで、ベンチャー企業に勝てる
    ・戦略的実験事業には、重要変動要因がある
    ・ニューコの組織は、人事、組織構造、システム、組織文化などの点で、ゼロから新規に作り上げなければならない
    ・緊張をとなすのも、幹部の仕事である
    ・ニューコの経営計画立案は、独立して行わなければならない
    ・利害、影響力、社内政治、経営資源の取り合いや社内競争は学習を妨げる
    ・ニューコの責任は数字必達ではなく、学習である
    ・企業は戦略的実験事業を通じて画期的な成長力を蓄えることができる

    ということで、ぶっちゃけて言えば、
    大企業で新規事業を立ち上げるには、
    これまでの成功パターンや常識・経験を忘れ、新規事業用に組織を分け、既存事業との接点を増やしすぎず、0にもせず、その資産を活用し、かつ、新規事業と既存企業の両方を目配りする上級幹部を配置し、既存企業とは違う物差しで新規事業を評価し、フィードバックし、計画変更も含め柔軟に試行錯誤を繰り返す。
    ってな感じかなと読み解きました。

  • ■ストラテジック・イノベーション

    A.今日の市場では、過去とは質の違う変化が起きている。それに対応するには、「戦略的イノベーション」を行う必要がある。これは、ビジネスを定義する3つの根本的要素 ――「 顧客は誰か」「彼らにどんな価値を提供するのか」「それをどうやってもたらすのか」に取り組む試みである。

    B.戦略的イノベーションは、先例のない事業の実現性を試す「戦略的実験事業」によって推し進める。この戦略的実験事業を行う新規事業部を「ニューコ( NewCo )」、それに緊密に関係する既存の事業部門を「コアコ( CoreCo )」と呼ぶ。

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ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)の作品紹介

既存事業のDNAを活かしながら先例のない事業の実現性を試す-大規模な組織構成とリーダーシップの改編。新たなビジネスモデルを探り、爆発的な成長へと導く10のルール。

ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言 (Harvard Business School Press)はこんな本です

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