「幸せ」の戦後史

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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798701363

作品紹介・あらすじ

敗戦から3・11まで、ふり向けばいつも上を向いて歩いてきた。

豊かさと信じたものは、果たして何だったか。
戦後、人は何を求め、生きてきたのか。
家族・自己・労働に焦点を当て、歌、映画、小説から仕事、暮し、性、さらには宗教、アニメまでを題材に、60余年の社会意識の変遷を追う。

感想・レビュー・書評

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  • それぞれの時代に流行った曲・映画などの文化を読み解くことで、それぞれの時代を分析している本。

    全体的に暗いトーンで、読み進めるのが難しかったけれど、興味深く読んだ。

  • 社会
    歴史

  • この本は、映像、音楽、小説など大衆文化をそのときの社会と対比させ、その変遷をまとめたものといえる。「幸せ」というキーワードで論じれば、時の大衆は国(政府)や企業から虐げられてきたと批判しているように思える。
    著者の大衆文化に関する知識は極めて豊富であり、その引用、描写は見事である。ただし、社会との関連を述べるとき、国の政策や経済理論、企業の方針を一面的にとらえ結論づけているため、違和感を覚えるところがあった。文化を通じた歴史的記録の範疇を超え、そこに批判を加えるならば、個人・大衆を主体に企業の在り方を論じても、企業には企業の方針があり、社員は企業あってのものとの大原則があるわけであって、また基本的な経済学論理も無視できないであろう。この点では、雑学的な浅い内容のデータや論述を根拠に論理が展開されているので、説得力がない。
    結局のところ、文化論を述べているのか、社会論なのか、哲学・心理学なのか、焦点がはっきりしない本であった。学術性は薄く、大衆映像・音楽評論を基にした文化論に特化した本とした方が良かったのではないか。

  •  戦後の日本社会の変化を「労働・雇用・職場の変化」「家族意識の変化」「アメリカとの接触・共存から生まれた変化」の3つの観点から把握しようとした本。
     書名の「幸せ」は、日本が求め続けてきた”目標”の意味で使われており、古市憲寿著『絶望の国の幸福な若者たち』のように幸福感そのものの変遷を分析している訳ではない(本文に書ききれない思いを、膨大な註で記すやり方は古市氏に似ている)。

     孫崎享著『戦後史の正体』が主に外交と政治にフォーカスをあてていたのに対し、本書で扱っているテーマや社会現象はリストラから娯楽作品まで幅広い。また、読みやすさを優先するためか、客観的な事実よりも個人的な主観から出発しているものが多い印象を受けた。
     世相を写す事件や社会現象をふりかえりながら過去を分析する手法は、ややもすると後付け的なものになりがちだが、膨大な文献を参考にしながら著者の強い思いがブレずに書かれているので、説得力があった。

     個人的には、第二部(家族の変容と自己実現の台頭)や第三部(アメリカへの憧憬と包含化)もよかったが、第一部の日経連レポート「新時代の『日本的経営』」に始まる日本的経営の分岐点と、自己責任論から端を発している職場シンドロームの話が興味深かった。
     個々のテーマについてはもっと深く分析した書籍もあると思うが、それぞれのテーマをつないで俯瞰する視点を与えてくれたことを評価したい。

  • 本書では多くの文献を引用して特徴的な社会事象を集約されている。それらはどちらかというと「幸せ」とは逆の「厳しさ」をつなげることで表すことを試みている。表題の「幸せ」と「豊かな暮らし」の関係を、著者自身の言葉で読みたい。ただ、あとがきで少しはそれに触れてはいる。また原発事故と「戦後史」の関連も本文中で見解が示されるとよかった。




    メモ
    <雇用ポートフォリオ>
    日本経営者団体連盟(現在の日本経済団体連合会)は、1995年 5月、『新時代の「日本的経営』という報告書を出した。その中で、経営環境の変化に対応できるよう、柔
    軟かつ多様な雇用管理制度の枠組みを形成すべきと主張し、労働力を、「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の 3つのグループに区分。

  • 小熊英二「社会を変えるには」の次の読書が本書。たまたまなのですが、かなり重なって読めました。「平等と公平」そして「豊かな暮らし」を求めた「われわれ」が「われわれ」でいられなくなる今の日本。「失われた20年」に失ったものは、そもそも持っていたものではなくて、たまたま手にしたものだ、との想いに駆られます。中間層の復活という言葉がリアリティを持つ社会はノスタルジーだけでも効率だけでも作れない、ですよね。

  • 敗戦から2010年までの60余年「豊な暮らし」を追い求めた日本人の姿を流行歌、映画、文学等の風俗を通し、労働環境・家庭像・アメリカの夢と影と「豊な暮らし」を求め、挫折し、妥協してきた姿を見る骨太の本格評論。
    各章で取り上げる題材は既視感があるものだが、敗戦後の60年を一本のテーマの元に整理して並べると今まで見えなかったものが見えてくる。
    今年のベスト1だ

  • どう感想を述べたら良いか分からない。それぞれの内容はなるほどそういうことかと納得できるのだが、一冊の本の内容としてまとめることができない。今、自分の立っている場所、これから踏み出す一歩を考える時、振り返るべき通ってきた道、道しるべ、地図といったようなものか?

  • 2013.11.25市立図書館
    次予約有り延長不可のため、ざっと読んで返却。
    戦後60年にわたっての日本人の考える「幸せ」の正体を労働、家族、宗教、アメリカなどの視点からさぐる。
    冒頭で登場した「ふるさと」を歌った歌の内容の変化になるほどと思わされ、有名な映画作品の筋立てから時代による家族の変容をよみとる第II部第1章も興味深かった。社会学系で卒論や修論を控えた人にとってはあれこれヒントとなる本かもしれないと思った。

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著者プロフィール

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立し、企業の組織課題やコミュニケーション戦略を中心にコンサルティング活動を行なう。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役。国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー)、『情報文化の学校――ネットワーク社会のルール・ロール・ツール』(共著、NTT出版、1989)がある。

「2015年 『「若者」の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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