福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

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  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2012年3月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799311585

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福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書の感想・レビュー・書評

  • 事故の経緯についての周辺からの調査については、とてもきめ細かくまとめられていると思いました。事故調査報告書としては異例の早さで刊行されたので出版された直後に書店で手に取りそのまま読みふけりました。

    独立調査委員会、というのはすなわち民間の事故調査委員会を独自に結成して調査をしているので、公式に発表されたデータに基づくよりほかなく、どこまで掘り下げられるのかという興味のようなものを感じつつ読みました。

    最後まで読み切って思ったのは、民間の事故調査ではどうしても事故の過程で起こった細かな出来事を裏付けるようなデータを手に入れることは難しいのですね。実際に各原子炉がどのような経緯をたどってメルトダウンにいたり、また、水素爆発に至ったのか、それ以前に冷却系がどのようにフォールダウンしていったのかは推測の域を出ないように思いました。

    その代わりなのかもしれませんが、事故に至る組織的な背景や社会的背景、安全神話に関する解析には相当量のページを割いてあるように思い、自然科学的背景よりもむしろ社会科学的な解析に力点が置かれているようにも感じられました。

    実は読み終わってもう1年以上になるのですが、今回レビューを書くにあたってあらためてパラパラと読み返し、もう一度真剣に読みなおしてみようと思い始めたところです。

    まだお読みでない方はぜひどうぞ!

  • 非常に興味深く読みました。
    最終章の「全電源喪失を起こした11日から、(中略)破局に至るすべての種はまかれたと思われる」というショッキングな記述のように、初日の時点ですでに取り返しのつかない状況が起こってしまったこの災害について、安全管理、組織、社会の3つの視点からの分析と示唆が述べられています。
    結局のところ、それら3つの視点においてどれもがこの災害を引き起こすべくして起こったのだ、というふうに書かれていますが、共通している背景は「原発は絶対に安全である」という本来存在するはずのない、「安全神話」があったのだと思います。好む好まざるを問わず「安全神話」が(結果として)官民共同で作り上げられ、それを崩さないための新たなプロパガンダが作られ、さらには隠蔽までが生まれ、それが世に晒されたとしても、地域に根ざした原子力ムラに依存せざるを得ない住民は無下に原発を拒否する事もできず、「致命的な事故は起きないのではないか」という心理を作り出し、やはり「神話」は「神話」として塗り固められていく・・・という、まさに負のスパイラルが、誰にも止められない状態になってしまっていたのだと思います。
    こういった状態は、このようなプラント災害とは関わりがなかったとしても、一般企業のコンプライアンスや安全対策にも示唆を与えることと思います。
    そして、一刻も早く、地域住民の方々がもとの生活に戻れるようにできる限りのことをするとともに、祈っていきたいと思います。

  • 内閣府や国会の事故調とは別の,民間による調査報告。事故の技術的側面だけでなく,各機関の対応(含リスコミ),歴史的・構造的要因の分析も含んだ幅広い内容。
    事故当時の政府要人や,政府職員・専門家など,約三百名へのインタビューをもとに,事故の原因を究明していく。かなり大部で,くまなく読みこんだわけではないけれど,五月雨式の報道を通してしか触れられなかった事実を,まとまったかたちで見ることができたのは良かった。
    官邸の介入はかなり「想定外」のことだったらしい。撤退拒否のように,それがいい方に作用したことも,福一に乗り込むみたいに,悪い方に作用したこともあった。菅さんは慌てふためいて張り切り過ぎてしまったという感じだろうか。
    あと,オンサイトでの自衛隊・警察・消防の活躍(主に放水)も「想定外」。彼らはあくまでもオフサイトでの後方支援の役割を担うはずだった。オンサイトの対応は東電自身が行なうことを想定。結果的には,実力を有する組織された部隊が,臨機応変に活用されたということか。
    SPEEDIについては,事前の防災計画で十分に活用されず,事故発生後の緊急時対応では価値が認められなかったにもかかわらず,社会的に過度な期待が集まってしまったことがまずかったと評価。このことが,政府不信を増長してしまった。
     なんにしても,これだけの事故だったのだから,ぜひとも教訓を学んでいかないといけない。

  • この手の報告書にしてはとても読みやすいです。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:543.5//F84

  • 福島第一原発の事故調査について、おそらく最も手厳しい調査である。なぜなら中立の立場から、客観的分析能力の高い識者を選りすぐっているからだ。実に示唆に富む内容で、仕事に直結していると言っても過言ではない。内部統制、コンプライアンスを徹底するという問題意識があれば、本書は仕事の種の宝庫である。読み手により、様々な読み方、解釈があるだろうが、リスク管理を日々行っているのであれば、本書は転ばぬ先の杖となる。

  • 全体的に,事故後の報道に出て来たことをよく整理していて,こんなに安価に報告書が出ていることは驚きです。

    細かい事項にも言及していて,よく整理しています。今回の事故で話題になった専門性のある事項もいろいろ記録しています。

    関係者の方々も自己点検のために一度読んでみるとよいでしょう。

    ps.
    少し読んで行くと,だんだん違和感が高じてきます。議論が表面をなでるだけで本質的な事項に踏み込もうとしていないような気がします。

    おかしなことにも遭遇します。法律や規格,規則の不十分さ,理論や技術の不完全さを掘り下げていない。初歩的な手法であるなぜなぜ分析,FTA, FMEAやHAZOPを使って問題を掘り下げた形跡が見られない。

    安全関連規格を適用して設計しているはずなのに,なぜ事故を事前に防ぐ手立てをしていなかったのか。ヒューマンエラーについて言及しているが,ヒューマンエラーがあったとしても安全に運用できる設計をしているはずなのに設計の法を問題にしない姿勢が不思議。事故運用を想定した設計だったはずなのに,どういう仕組みで何を本来の在り方から変更したのかの解明が不十分かも。

    専門家も入ったはずなのに,どういう手法をどこまで使って検証して報告を書いたのかが明確でないのはなぜなんだろう。

    調査報告書であって検証報告書ではないからだろうか。
    評価は調査報告書としては星5つ。検証報告書としては星1つ。

    技術的な検証を記載していないので,技術系の出版社から出ることはありえないのだろう。

    よくこれだけ安価に調査報告書をまとめたという努力は評価したい。次の印刷で「検証」の文字を削るとよいかもしれない。

  • こういうのを第三者というのだろう。
    様々な要因が複雑に絡み合う事故で、ボリュームがかなりあるが、それぞれのセクションで論点が明確に提示されているので理解しやすい。

    なにが起こっていたのか、何が問題だったと考えられるのかについて、可能な限り情報を積み上げた上で書かれている。

  • 先日、国会の事故調査委員会が出した原発事故の調査報告書が出た。そこにはこの事故をしっかりと『人災である』と規定しているという。国会内の調査委員会なので、実はそこまでは期待していなかった。これから概略だけでも目を通すべきだと思っている。

    その前の、五月実は民間が出した事故調査報告書を読んだ。

    この中のものを読んだだけでも、あの原発事故が非常に構造的なものから起こったもので、それは大飯原発が稼動しようが野田がなんと言おうが全然改善されていないということが明らかである。

    私は全国民がさわりだけでも読むべきだと思った。というような感想を読んだ直後に以下に書いた。

    「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」
    ざーと読んだ。疲れたが、いつかやらねばなぬ事だと思ったので、兎も角、細かい所は飛ばしながら読んだ。急いでいる人は、冒頭の北澤宏一委員長のメッセージだけでもいい。結論の多くはそこに書かれている。あと少し余裕がある人は、最終章「福島第一原発事故の教訓」がいい。此処に所謂全体の結論が書かれている。この報告書全体を通じて、課題、調査内容、結論という風に分けて書いているので、所々むつかしい文章はあるが、総じてわかり易い報告書だったと言っていいだろう。Webで読む事ができるので、多くの人はそこだけ読んだ方がいいかもしれない。検証内容を私は検証しているわけではないし、米国評価には不満がある。しかし、エリートパニック、絶対安全神話、SPEEDI、最悪のシナリオ、原子力ムラ等々の問題にキチンと切り込んでいるのは、評価出来る。

    この大部の報告書をWebで読むのは、限界があるので、私は少し高いが一家に一冊持っていても良いと思う(せめて、1000円以下にはするべきだ)。これから新たな知見が加わった時、それが全体の中でどういう意味を持つのか考え易いからである(例えば東電幹部の証言は拒否されてこの中には入っていない)。

    疲れた。例えば、この様な記述があり、私は暗澹とする。

    福島第一原発は、レベル7の大災害であったにもかかわらず、そして約11万人の人々が今も避難生活を余儀なくされている悲劇であるにもかかわらず、急性被曝による犠牲者はこれ迄存在していない。官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである。
    事故から時間が経つにつれて、事故のシミュレーション解析が進み、高温で溶解した核燃料の大半は、原子炉圧力容器を突き破って、格納容器のコンクリート床にまで沈みこんでいることが推定されている。「最悪のシナリオ」にきわどいところまで向かっていた可能性は十分にあった。(396p)

    そのときには、3000万人の首都圏の住民の避難が始まる。その時日本がどうなるのか、想像が出来ない。岡山にいる私も、おそらく今の生活はなかった。一年経って、日本が何も変わっていないのに、暗澹とするのである。

  • 東京電力が調査に協力していないことから、推測も多く、また少しドラマチックにつくってあるという印象。表紙の体裁や、巻末のスキャンした資料等からも見てとれます。「官」が信用失墜した中、では「民」ならいいのか。簡単な二極ではありません。出版経緯も不透明。清濁併せ呑んだうえで、自分で考えなければいけない時代の象徴。

  • プロローグ、すごく重かった。

  • 機能不全。それに尽きるのではないか。政府、監督官庁、東京電力。
    そのすべてが本来やるべきことが出来ていない。

    首相であった官直人はリーダー・シップをはき違え、細々としたことに
    まで口を挟む。そのいい例が原発事故翌日の現地視察だ。国家の
    非常時に危機管理の最高責任者が、現地に赴くことになんの意味が
    ある?

    原子力安全・保安院は早々にメルトダウンに言及した職員を更迭し、
    以降はメルトダウンに言及せず。言い方を様々に変えて取り繕う。
    しかも原子力の専門家でもない人間ばかりが在籍している不思議。

    原子力安全委員会のデタラメ…じゃなかった斑目委員長が「水素
    爆発の可能性はない」と断言した直後に水素爆発。官邸からの
    一切の信用を失う。

    そもそも「安全神話」が出来たであろう安全対策の見直しに足枷を
    かけていたのではなかったか。「原発は安全です」。そんなスロー
    ガンに自縄自縛になっていた原子力ムラ全体が引き起こした
    人災ではないか。

    原子力安全・保安院も、原子力安全委員会も、原子力ムラ安全・
    保安院であり、原子力ムラ安全委員会だ。ひとり、東京電力だけの
    責任ではない。政治家にも、官僚にも、責任はある。だが、結局
    それはうやむやになるのだろうな。

    本書は国会の事故調とは別に、民間シンクタンクによる調査と検証で
    ある為、東京電力と福島県の協力が得られていない。その部分では
    完全なものではないが、この国の機能不全を記録として残したこと
    は評価出来る。

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