「学力」の経済学

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799316856

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りて読んだけれど良い本だったので購入しようと思います。
    とりわけ,一番心に残ったのは「学校で平等を重視した結果,ー手をつないでゴールしましょうという運動会などーの影響を受けた人は,他人を思いやり,親切にし合おうという気持ちに欠ける大人になってしまう」ということ。なんとなく心当たりもあり,納得してしまった。

    それ以外にも,
    ・教育についてみんなが主観で語りすぎ。(ゲームがダメとかは主観でしかない)
    ・インプットへのご褒美が効果的。
    ・もともとの能力を褒めるのはあまり効果がない。
    ・本来手段であるはずのものが,制作目的化している。(タブレット配布を目標にするとか,これはほんとばかばかしい)
    等等いろいろ心に残りました。

    あとデータは積極的に公表すべきと感じました。

  • タイトルから「高学歴の子の親はどれだけ子供に金を注ぎ込んでるのか? 私学または民間の教育業界のお金事情とは?」みたいな話かと思ったら、違った。

    経済学の研究手法を教育に当てはめていく、っていう本。

    この本が言いたかったこと。

    ・全ての人が教育を受けてるから、教育について議論する時に「自分の時は〜」とか主観や経験論が混じりがち。1億総評論家。
    ・欧米では教育に関する実験が行われているが、日本は何故か教育に実験的なものを持ち込むのを良しとしない文化がある
    ・教育に関するデータは、なぜか国は一般に公開していない。
    ・子どもの学力は遺伝や家庭環境によるところが大きい。画一的な教育を行う公立学校で、子どもの学力向上なんてたかが知れている。
    ・教師に研修しても教員の質はあまり向上しない。教員免許を廃止し、質の高い教育ができる人を教師にした方が効率的だという研究結果がある。
    ・社会に出てから必要なのは学力ではなく人間力。

    …っていうことを、欧米の研究結果を基に論じている。

    教育もデータやエビデンスに基づいて考えていこうよ!という著者の考えには賛同するけれど、いちいち「こういう実験ではこういう結果になって、だからこうすべき」と論文を引っ張ってくるのに少し辟易した。

  • 教育にまつわる都市伝説的なものを鵜呑みにしないようにしようと思いました。

    この本では、どういった教育のシステムが子供の学力向上の役に立つかを、調査、研究の結果を示しながら紹介しています。例えば、教員の数を増やして少人数学級にしても学力には大きな影響はないという結果が出ているそうです。

    他にもゲームやご褒美、お小遣いのあげ方など、今まで私が考えていた常識とは違う研究結果が明らかにされていました。筆者が言うように多大な税金を使って行う公教育のレベルでは特に、科学的な根拠が必要だと思いました。

    また、個人レベルでも参考になることはたくさんあると思いました。子育てをしたことがある人はそれなりに自分の経験があるので、自分の感覚で「子育てはこうあるべき」ということを他人に押し付けがちです。私にも感覚的な部分があります。感覚を頼りにするのが大切な場面もたくさんあります。

    ただ、感覚と同時に、科学的考えを必要とする場面もたくさんあります。子供を産んだ時、母子手帳の乳幼児の健康や心理について書いた部分がとても役に立ちました。今まで乳幼児の研究をしてきた人の叡智や、悲しい事故や事件が起きた時の教訓などが客観的に記されていたからです。

    小、中、高、大と教育は続きますが、ママ友や両親、ネットの話などを聞くことは多いと思います。いいと思ったことは柔軟に吸収しつつ、自身の気持ちが他人のムードに流されないように、新しい、信用に足る教育の仕方を吸収する気持ちを持ち続けようと思います。

  • 教育に関する事実を「データ」として分析し、どのような教育をすればより効果があるかの研究「教育経済学」。

    「子供に勉強させるには」
    「読書と成績の因果関係はあるか」
    「少人数クラスの方が成績が上がるか」

    などの教育に関する疑問にデータから答えを出していくのだけど、なんかもうすこし驚きのある内容かと期待していたらわりとそうでもなかった。でもこういう研究があるんだなー!ていうのは面白い。

  • ゲームやテレビが子どもに悪影響を与えるか
    子どもを褒めて育てるべきか
    ご褒美で釣るのはよくないのか
    … …

    などの巷でよく聞く子どもの教育に関する疑問を、実験データに基づき明かしてくれている。
    本書で紹介されているのは海外のデータばかりで国内のものはほぼ無い。日本では教育に関するデータ取りを最近までしてこなかったというから驚いた。(では文科省は一体何を持ってゆとり教育など行ったのだろうか…という疑問が浮かぶ)

    非認知能力の重要性について説いている章が面白い。
    非認知能力は意欲、忍耐力、社会性、自制心などの所謂「人間力」と呼ばれるようなものを指し、学力と同じくらい将来の年収や労働市場での成果に大きく影響するのだそうだ。子ども時代に取得すべきは優先度を付けるとしたら学力よりこちらではないだろうか。その気になれば学力は後付け出来るけど大人になってから非認知能力を鍛えようとしても難しい(体感的に)

    子育て世代の一般教養として知れて良かった内容だった。
    '22,8月現在Kindle Unlimitedで読めますよ〜

  • ランダム化比較試験を通して社会を定量的に科学する手法に魅力を感じ、自分もできるようになりたいと感じた。このような研究を通して、相関関係と因果関係の違いをはっきりと見分け使いこなせるようになることが、自分がもし修士課程に進むならその意義だろうと感じた。
    内容も、幼い頃の教育の効果が高いこと、インプット(目に見える具体的な行動)にご褒美をあげることが効果が高いこと、自制心ややり抜く力といった非認知能力がキーであること、等子どもの教育に大いに活きるヒントもあった。

  • 『感想』
    〇教育効果をエビデンスで示すことができないのは仕方のないことだとつい思ってしまう。教育なんてものは10年や20年で成果の出るものではなく、人の人生のどこかで活かされるのならばよいものだから。

    〇本人の努力よりも、遺伝や家庭資源がものをいうとなると、教育力向上に努力することの意味を考えてしまう。

    〇アウトプットよりインプットを褒めろとか、近い将来に対しご褒美を挙げろとか、その方が効果があるのだとしても、それは人の弱さから来るところであって本当の力につながるのかっていうと難しいよね。

    〇今頃大卒は高卒より生涯収入が1億円多いなんて幻想じゃないだろうか。それを果たせるのはごく一部で、大卒という肩書に胡坐をかくだけでは力のある高卒に勝てないのでは。

    『フレーズ』
    ・アウトプットではなくインプットに、遠い将来ではなく近い将来にご褒美を与えるのが効果的。(p.41)

    ・子供をほめるときには、もともとの能力ではなく、具体的に達成した内容を挙げることが重要。(p.51)

  • 教育のあるべき姿を、科学的に明らかにしようという著者の情熱が感じられる本。

    エビデンスがないまま、日本の教育政策が決定される現状を疑問視しており、教育における実験の重要性を学ぶことができた。加えて、「非認知能力」「学習環境」が、子供の成長にどのような影響を与えるのか理解することができた。

    ただ、著者も指摘するように、元データの大半が欧米諸国の実験結果であるため、研究成果を、文化が異なる日本の教育システムに還元できるかは不透明。
    とはいえ、教育現場の問題改善には、机上の議論に徹するよりも、積極的な改革をして、現場でその都度修正する姿勢が望ましい(分析データの取得も可能)と感じた。

    総括すると、本書の価値は、”子供の教育の在り方”を学ぶよりも、”硬直・閉鎖的な教育システムに対する問題提起にある気がした。
    そして、個人的には「貧困家庭の子供」に問題があるというよりも、それを見過ごして改善しようとしない「裕福な家庭の大人」に問題があるのではないか?と思いました。

  • この本は、著者が知っておかないともったいないと考えていることを紹介しようと書かれた本だそうです。

    著者がもったいない、と記している通り、育児をしているとみんなが一度は出会うであろう疑問に対する答えを教えてくれます。ご褒美で釣ってもいいのか、どんなご褒美がいいのか、褒めて育てるは本当か、子どもを勉強させるには?など、たくさんの研究データとともに紹介しています。

    本の中で印象に残ったのは「因果関係」と「相関関係」の違いです。その違いは当たり前のことですが、普段の生活では意識していないと、うっかり相関関係を因果関係と思ってしまいがちです。もっともらしい話こそ、一度立ち止まってどっちの関係なのか確認しないといけないな、と思いました。

    文章はとてもわかりやすい表現で書かれており、読みやすいです。迷っている方は是非読んでいただきたいと思います。

  • やっぱり中室先生は分かりやすいなと教育社会学の研究をしている者からしてみても思う作品の代表だと思う

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