「学力」の経済学

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著者 : 中室牧子
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2015年6月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799316856

「学力」の経済学の感想・レビュー・書評

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  • 教育経済学という新しい分野から教育のあり方を記している。これまでの教育関連の本は、著者の経験に基づいたノウハウであり、あくまでも著者の主観的な視点で記されている。一方で本書は、「経済学」の一分野であるため、データが神様であり、それらを経済学の理論や手法を用いて分析した結果を示している。
    そういう意味では、他の教育関連の本とは一線を画した名著であると思し、理系の自分としてもこれまでの教育関連本の中で最も信頼に値する内容であると思う。

    ・関関係は2つの出来事のうちどちらが「原因」で、どちらが「結果」であるかを明らかにするものではないのです。「相関関係」があるということは、必ずしも「因果関係」があることを意味しません。つまり、読書をしているから子どもの学力が高い(因果関係)のではなく、学力の高い子どもが読書をしているのにすぎない(相関関係)可能性があるのです。
    ・「目先の利益や満足をつい優先してしまう」ということは、裏を返せば「目の前にご褒美をぶら下げられると、今、勉強することの利益や満足が高まり、それを優先する」ということでもあります。実は、子どもにすぐに得られるご褒美を与える「目の前ににんじん」作戦は、この性質を逆に利用し、子どもを今勉強するように仕向け、勉強することを先送りさせないという一つ戦略なのです。
    ・ご褒美は欲しいし、やる気もある。しかし、どうすれば学力を上げられるのかが、彼ら自身にわからないのです。ご褒美は、「テストの点数」などのアウトブツトではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきだということです。
    ・アウトプットにご褒美を与える場合には、どうすれぱ成績を上げられるのかという方法を教え、導いてくれる人が必要であることがわかります。
    ・ご褒美という「外的インセンティブ」を与えると、好奇心や寒心によってもたらされる「内的インセンティブ」を失わせてしまうのではないかと心配します。しかし、こ褒美(外的インセンティブ)が子どもの「一生懸命勉強するのか楽しい」という気持ち(内的インセンティブ)を失わせてはいなかったのです。
    ・自尊心と学力の関係はあくまで相関関係にすぎず、因果関係は逆である、つまり学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしているのだと結論づけたのです。ほめて育てても子供の自尊心を高めることは出来ないということです。学生の自尊心を高めるような介入は、学生たちの成績を決してよくすることはないのです。
    ・子供はもともとの能力(頭がいいのね)を褒めると、意欲を失い成績が低下する。一方で努力を誉められた(良く頑張ったわね)子供は成績が向上する。
    ・私たちの推計によると、1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響は、まったくテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらないことが示されています。一方、1日に2時間を超えると、子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなることも明らかになっています。
    ・「父母ともに勉強するように言う」のはあまり効果がありません。むしろ、母親が娘に対して「勉強するように言う」のは逆効果になっています。逆に、「勉強を見ている」または「勉強する時間を決めて守らせている」という、親が自分の時間を何らかの形で犠牲にせざるを得ないような手間暇のかかるかかわりというのは、かなり効果が高いことも明らかになりました。
    ・とくに苦手教科の克服には、同性同士の教師と生徒の組み合わせのほうが有効であるなど、類似の知見が得られているものがあります。
    ・学力の高い友だちの中にいると、自分の学力にもブラスの影響があるのです。実は、学力の高い優秀な友人から影響を受けるのは、そのクラスでもともと学力の高かった子どものみなのです。中間層やもともと学力の低い子どもたちは、何ら影響を受けないことがわかっています。それどころか、自分のクラスに学力の高い優秀な友人がやってきた場合、もともと学力が低かった子どもには、マイナスの影響があるということを示す研究もあります。学力の高い同級生の存在が、学力の低い生徒の自信を喪失させ、大学への進学意欲を失わせたことを明らかにしました。レベルの高すぎるグループに子どもを無理は、逆効果になる可能性すらあるのです。
    ・ルームメイトから「成績」に対して受ける因果効果はほとんどない一方で、「行動」に対して受ける因果効果は大変大きなものだということがわかりました。その最たるものが飲酒です。
    ・習熟度別学級は、特定の学力層の子供達だけではなく、全体の学力を押し上げるのに有効な政策である。
    ・人的資本投資の収益率は、子どもの年齢が小さいうちほど高いのです。就学前がもっとも高く、その後は低下の一途を辿っていきます。そして、一般により多くのお金が投資される高校や大学の頃になると、人的資本投資の収益率は、就学前と比較すると、かなり低くなります。ただし、人的資本とは、人間が持つ知識や技能の総称ですから、人的資本への投資には、しつけなどの人格形成や、体力や健康などへの支出も含みます。必ずしも勉強に対するものだけではないのです。
    ・社会収益率が7~10%にも上るということは、4歳の時に投資した100円が、65歳の時に6000円から3万円ほどになって社会に還元されているというつことです。現在、政府が失業保険の給付や犯罪の抑止に多額の支出を行っていることを考えると、幼児教育への財政支出は、社会全体でみても、非常に割のよい投資であるといえるのです。
    ・修学前に質の高い幼児教育を受けたことでIQや学力テストで計測される「認知能力」は上昇しても、小学校入学とともに小さくなり、ついに8歳前後で差がなくなってしまう。一方で、「忍耐力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなもの「非認知スキル」または「非認知能力」と呼ばれる「生きるカ(学歴・年収・雇用などの面)」は、長期的に大きな影響をもたらしました。
    ・非認知能力は成人後まで可鍛性のあるものも少なくないということがわかっています。重要な非認知能力のひとつである「自制心」も、何かを繰り返し継続的に行うことで向上します。たとえば、先生に「背筋を伸ばせ」と言われ続けて、それを忠実に実行した学生は成績の向上がみられました。「背筋を伸ばす」のような意識しないとしづらいことを継続的に行ったことで、学生の自制心が鍛えられ、成績にもよい影響を及ぼしたのでしょう。
    ・もうひとつの重要な非認知能力である「やり抜くカ」は、「心の持ちよう」が大切である。「しなやかな心」を持つ、つまり「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」ということを信じる子どもは、「やり抜くカ」が強いことがわっています。
    ・きちんとしつけ(非認知能力)をすることよりも、テストで100点をとらせること(認知能力)のほうが大事だという価値観が、私たちの社会に根づいてしまっているようにも感じます。しかし、非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されています。非認知能力は、人生のかなり長い期間にわたって、計り知れない価値を持ちます。しか最近では、非認知能力を鍛える手段として、部活動や課外括動にも注目が集まっています。目の前の定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには慎重であるべきかもしれません。
    ・「教育を受けることの経済的な価値」を具体的にいうと、「高校を卒業後すぐに働き始めた人と、大学を卒業してから働き始めた人の間では、生涯に稼げるお金に1億円の差がある」ということ。大学に行けば宝くじで1億円が当たるのと同じ価値があるということ。
    ・学力(中3)に与える影響の割合は、「遺伝」「家庭環境」「その他」の順で35%、34%、30%である。教育年数の場合は27%、47%、26%の順であり、所得の場合は30%、41%、29%の順である。

  • 経済学の視点で教育を見た本。
    巷で言われていることは本当に教育としての効能があるのか科学的に実験し、思考した。

  • これから子どもを育てる身としては大変参考になった。ただし、あくまでも参考にとどめ、宗教のように信じ込み、その通りに行動するのは危険だと思う。書いてあることは統計上の結果なのだからある程度、正しいに違いないが、こどもはひとりひとり異なるのだから、まずは自分の子どもを真剣に観察し、我が子にとって良い選択をすることが大事だと思う。

  • リンゴとオレンジを比べても意味がなくランダム化比較試験が重要であり、日本は教育政策を決める際に経済学的視点が抜けているという主張。
    ・今勉強しておくのがあなたのためを伝えるのが効果が一番高い
    ・目先の利益を用意してインプットを褒める
    ・能力ではなく努力を褒める
    ・小学校就学前の幼児教育がいちばん投資回収率が高い
    ・学力をつける過程で得られる非認知能力(特に自制心とやりきる力)が重要
    ・先生の質が大事

  • 非認知能力の話は、成績や学力が下がったらとりあえず塾に行かせる傾向の多い日本ではかなり軽視されてると思うんですがどうだろう。要するにどれだけ勉強できてもやる気とコミュニケーション能力に欠けてたらなんの意味もないよね、という話なのですが。ご褒美のあげ方や学力テスト、教員免許の話はふむふむ、と納得したしおもしろかった。恣意性云々はさておき、教員や親など教育関係者は一読して損はないかと。

  • 教育をデータに基づいてみていくことの重要性がよく分かる本。
    一般向けに書かれていて、内容も親しみやすく、平易な文章でとても読みやすい。
    子育て中の人や、「これだから日本の教育はダメだ」とよく語る人に、ぜひ読んでもらいたい。

    ー目次ー
    第1章 他人の成功体験は我が子にも活かせるのか?データは個人の経験に勝る
    第2章 子どもをご褒美で釣ってはいけないのか?科学的根拠に基づく子育て
    第3章 勉強はそんなに大切なのか?人生の成功に重要な非認知能力
    第4章 少人数学級に効果があるのか?科学的根拠なき日本の教育政策
    第5章 いい先生とはどんな先生なのか?日本の教育に欠けている教員の質という概念
    補論 なぜ、教育に実験が必要なのか
    ー目次 終わりー

    (感想)
    この本を読みながら改めて思うのは、教育について、何が問題かとか、どうすればいいか考えるとき、個人的な経験や「印象」をもとに語られることが、あまりに多いということ。
    この本に書かれているように、しっかりデータをとって、それをもとに分析した上で、「印象」にふりまわされないようにすることは、教育政策を考える上ではもちろん、親が我が子の教育を考える上で、とても大事。

  • 面白かった。子持ちなら読んでおいて損はない。

  • 教育経済学とは、教育を経済学の理論や手法で分析する学問。

    東大学生の親の平均年収は1000万円。

    教育においても(経済や医学と同様)1人の体験談ではなく、個人の体験談を膨大に集めた中から生まれる規則性に着目すべき。

    精度の高い科学的根拠に基づく分析が求められる。
    「読書をするから勉強ができる」は一見正しいようで因果関係があるとは言えない。どちらも高いという相関関係があるだけ。勉強ができるから読書したくなるのでは?
    親の子供に対する関心が高いからどちらも高いのではないか?(第三の要因)

    勉強したらご褒美は意味ある?
    行動経済学として、人間は遠いご褒美より近いご褒美に影響を受ける。なので、将来意味があると説明するより近くにご褒美を用意した方がこうかある。

    本を読む、宿題をするという具体的手法にご褒美が効果高い。テスト高得点にご褒美は、子供がどう行動すれば良いかわからない。

    誉めて自尊心を伸ばして学力が高まることはない。誉めるべきは才能ではなく、行動。「頭がいい」ではなく「よく頑張った」

    ゲームをやめても、それは勉強時間にはならない。

    統計として「勉強しなさい」と言うのは無意味で、誰でもいいから「時間を決める」と「横で勉強を見る」に効果がある

    クラスメイトの影響を受けるのは「成績」ではなく「行動」。優秀な子がいても優秀にならないが、飲酒する問題児がいれは飲酒の可能性は高くなる。

    幼児教育で非認知能力を高めることが最も重要

    教育の金額的価値を伝えると効果高い。大学行くだけで、生涯賃金が1億円違う。

    データを開示するべき。南アフリカはデータを開示するだけで世界各国から研究され、解明が進む。全国学力調査など国のお金を投じて調査したからには、国全体に結果を開示すべき。

  • 日本の研究者にデータ開示を。もっと教育は考えられる必要がある。

  • 個人的な体験で語られがちな教育の分野に関して、経済学者がデータを基にして、既存の教育に関する通説(ご褒美で子供を釣るのはまずい?ゲームをやると暴力的になる?)の是非を主に統計データから判断しようとするもの。

    要点は以下の通り

     因果関係と相関関係を混同しないように
     短期的かつ行動に対しての報酬(ご褒美)が最も動機づけとしては強い
     ゲームが子供の行動に悪いとは言い切れないゲームは1日1時間程度であれば問題ない。ただし、長時間の場合は悪影響が見られる。
     子どもの学力に影響力が大きいのは学校教育以上に、親の年収と遺伝
     子供の友達(学力が高い子)の影響力は学力が近いときのみ有効。また悪い行動は非常に感染しやすい
     学力以外の非認知特性(自制心、やり抜く力、勤勉さ)は学力以上に重要
     小人数よりも教員の質をあげるほうが費用対効果は高い
     日本の教育に関してはエビデンスに基づいたものが非常に少ない

    ある程度関心があったんで知っていることも多かったし、内容に関しては7~8割がた同意。

    データから通説の是非を検証しようとする姿勢はいいのだが、統計の基本的に見方にそれほど熟知しているわけではないのでどの程度正しいのかはちょっと不明。

    また筆者も言っているがほとんどがアメリカのデータであるだけに日本で同内容のことがいえるかどうかは疑問点が残る。

    ベストセラーだけあって専門的なことを書いている割には非常に読みやすい。

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ゲームは子どもに悪影響?教育にはいつ投資すべき?ご褒美で釣るのっていけない?思い込みで語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

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