JAが変われば日本の農業は強くなる (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799317266

作品紹介・あらすじ

60年ぶりの改革が始まる!政治と結びついた既得権益「悪玉論」はいま、本当か?6次産業化した農業が、日本の明日を変える!

感想・レビュー・書評

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  • 日本の農業政策の変遷や現状を知るための良書です。本書では、JAが設立された経緯、JAの業務内容などについて説明されています。

    ①JAとは何か
    小規模農家を主な支援として、農家が農機を購入する際の資金援助や販売販路の確保をしている

    ②営農事業よりも信用事業の売り上げが大きい
    全国の単協のうち約6割は黒字経営で、そうした単協の大半が信用事業で利益を上げている。信用事業で利益を上げているパターンである。地方や郊外では金融サービスが行き届いていないために、地域の人はJAをメインバンクとして活用している。また、ゆうちょ銀行はローンや貸し出しを行っていないために、JAが地方の人の拠り所となっている。

    ③減反政策について
    深刻なコメ余りを背景に1970年代初頭より減反政策が実施されてきたが、それには大きな弊害がある。それは、全国で画一的に生産量を減産していることである。米の消費量が多かったり、米のニーズが高い地域では減反する必要性は無いにも関わらず、すべての都道府県で画一的に生産調整がなされてきた。2018年度までに減反政策を廃止する方針を安倍内閣は打ち出しているが、これは現実に即している。現代では、高齢化に伴い、米の生産量が需要量に追いついてないためである。

    ④JAの株式法人化について
    自民党政権はJA改革の柱として、JAの株式法人化を掲げているが、破綻リスクについて熟議がなされていない。米は、耕作を放棄してしまうと、土地を再生するために、さらに1年が必要となる。他の産業と違って、農業は土地を定期的にメンテナンスする必要性がある。このため、農家が離農した後の土地を再度農業用地として使用する際には、コストと時間がかかる。

    ⑤食糧自給率はあてにならない
    食の安全保障という名の下、食料自給率の向上がわが国でも盛んに議論されているが、食料自給率という指標の信用性については取り上げられていない。例えば、アメリカの酪農家がカナダから飼料用の小麦粉を輸入している場合には、アメリカの食料自給率はどのように計算するべきなのだろうか。

  • 抵抗勢力、敵の如く扱われるJAを捉え直すに十分な一冊。
    (1)米作だと収入はある程度安定するけれど他の作物ならの収入は不安定という現実が米作からの転換が進まなかった最大の要因です。
    (2)694ある単協のうち、黒字化は6割。JAの信用事業は地域に根ざした小回りの効くサービスを提供しており、コーポレィティブバンクに近い。
    (3)JA全中や全農が価格を決定している部分は全農作物の40%。米に限ると20数%。
    (4)日本の食料自給率は2014年度カロリーベースで39%。減反による麦、大豆、飼料作物への転換は4%自給率の向上に繋がった。

  • 以前、講義を受講したことのある杉浦先生の著書、著者はJAグループ自主改革有識者会議の座長という立場にあるが、JA寄りではなくあくまで中立的な立場で書かれている。端的に言えば、政府の責任部分についてもJAを悪者にし、自らを正当化している一面と、TPP問題時などの政府に反対する声を小さくさせたい一面が伺える。ここまで書くとJAの味方と思われるかもしれないが、JAの悪いところもある。過去の財産で食いつなぎ、現代を生きていないからだ。現代は情報があふれかえり、過去のように仲間を形成しないと情報が得られない時代ではない。また保守的な組織であるため、全て自前で揃えようとし、他と協力しない。これらを踏まえ、独立できる農家を支援し、量で勝負しなければならない部分で力を発揮し、アンテナを広く張り、協力していくことが必要である。

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著者プロフィール

中央大学大学院戦略経営研究科教授

「2023年 『欧州金融規制 分野横断的側面からの分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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