▼あらすじ
江戸川乱歩の長編最高傑作衝撃のコミカライズ!!
貿易会社に勤める普通の青年・蓑浦金之助は学生時代から諸戸道雄に求愛され続けていた。
諸戸は、金之助の許嫁・初代に対して求婚してくる。
そんな中、初代は何者かに殺されてしまい!?
初代を殺した犯人は!?
そして諸戸の狙いとは――!!
***
原作も環レン先生の作品も大好きなので迷わず購入しました。
正直、あの長編小説を一冊でまとめるのは無理があるだろうと思っていたのですが、なかなかどうして上手くまとまっているじゃありませんか。
確かにページ数の関係でストーリーは全体的に駆け足気味だったと思います。
端折ってる部分もあるので説明不足な点、分かりづらい点があるのも分かりますし、特に後半からラストにかけての怒涛の展開は「孤島の鬼」の見所でもあるのでもう少しじっくり描いて欲しかったという不満も少なからずあります。
ただ、それでも読み終わった後に「面白かった」と真っ先に思うくらいには楽しく読めましたし、何よりラストのアレンジが素晴らしくとても胸に沁みました。
原作のラストは読者を突き放すイメージで読み終わった後に呆然となりましたが、こちらのラストは原作に沿いながらもじんわりと切なさが広がるような良い終わり方で、そこだけ何度も何度も繰り返し読んでしまいました。
最後にやるせない気持ちが残るのは原作の時と変わりませんが、それでも原作よりも良い終わり方だと私は思います。
あと、やっぱり絵柄がとても良かったですね。
「孤島の鬼」の世界観にぴったりな絵で、雰囲気もかなり出ていたと思います。
何より諸戸のビジュアルがイメージ通りで大変感動しました。
蓑浦に劣情を向けるシーンも原作のイメージを崩し過ぎず非常に魅力的に描かれていて、洞窟のシーンは「いいぞ、もっとやれ!」状態でした(笑)
(因みに原作ではDキスまではしていなかったはず…笑)
それに諸戸の父親と母親についても、あの醜悪な見た目のキャラクターをよくここまで表現出来たな、と感心しました。
私は原作を読んでもぼんやりとしか想像出来なかったので、環先生の絵で「これだ!」とピントがハッキリした感じです。
…とまぁ、原作を読んでいるからこそ色々な発見や感動があって楽しめた部分もありますので、もしかしたら原作を読んでいて、尚且つ原作が好きな方の方が楽しめる作品かもしれません。
私も原作を知らずに読んでいたら、ストーリーについては物足りなさや説明不足感を感じると思いますし、何より蓑浦に対する怒りと諸戸だけ死ぬ救いのない展開に感動よりもまず後味の悪さを覚えていたと思います。(現に私も初めて原作を読んだ時は後味悪過ぎて数日間落ち込みましたから…笑)
ただ、原作を読んだ上での感想としては所々引っ掛かりを覚えつつも個人的にはかなり満足した作品でしたので評価は★5です。
環先生が「孤島の鬼」を手掛けると知った時から期待はしていましたが、期待以上の素晴らしい作品でした。
死ネタは苦手ですが、原作共に何度でも読み返したい作品の一つです。