PSYCHO-PASS LEGEND 追跡者 縢秀星

  • マッグガーデン
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800003669

作品紹介・あらすじ

西暦2113年。人間の精神を数値化し、最適幸福が追求できるようになった未来世界。犯罪者とその予備軍"潜在犯"を取り締まる治安維持組織"厚生省公安局刑事課"に所属する"執行官"縢秀星は、その夜、厚生省ノナタワーの地下区画へとその足を踏み入れていた。牙を剥く凶暴な獲物たちを追い詰めるために。暗がりを進む縢に躊躇はない。獲物を求めて「地下」へと潜る行為は、彼にとってひどく馴染んだものではあった-。5歳で潜在犯判定をうけ獲物を追う猟犬となった男、縢秀星に焦点をあてる、オリジナルTVアニメ「PSYCHO‐PASSサイコパス」スピンオフシリーズ「PSYCHO‐PASS LEGEND」長編ノベル第1弾!

感想・レビュー・書評

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  • 縢秀星の人柄がよくわかる。彼視点でみた他のメンバーのことなどもわかって面白い。

  • psycho-passシリーズ、縢秀星の施設入所中~人生の最期までを、不思議の国のアリスになぞらえながら描いた作品。

    秀でた星なんて名づけられるくらいなんだから、相当両親に愛されて、期待されて生まれてきた子なんだろうに、5歳で施設収容されて、7歳になる頃には面会にすら来なくなった両親はどんな気持ちでいるんだろうと切なくなってしまった。それでもゲームを差し入れたり、息子への関心が無くなったわけではない描写がところどころなされているのが、余計に悲しい。プレゼントが遅れたのが自分の誕生日を忘れたかもしれないからなんて理由、7歳の子どもが考えて、ましてやそれを確かめるすべもないなんて残酷すぎる。

    そして、公安局の執行官になってからの生活に入ってからは、仕事を純粋に楽しむ様子が読み取れた。多少の無茶や怪我をゲーム感覚でとらえられてしまうところは、執行官として体を張る彼の強さでもあり、幼いころの経験の少なさから来る恐怖心の薄さでもあるんだと思う。また、最初は舐めてかかって返り討ちにしてきた狡噛や、施設入所して以来ほぼ初めて接する年代であろう征陸に対して、割とすぐに打ち解けてしまうところは、彼の生まれ持った性格なんだろうなと感じた。先述の2人はもちろん、口うるさい上司と評する宜野座に対しても、からかってやろうとしたり、時々気遣う場面も見られることから、彼にとって職場の人間関係はとても恵まれたものだったんじゃないかと思う。個人的に、口うるさい上司という表記に、いちいち「ガミガミメガネ」のルビが振られるのが、いかにも縢目線という感じで微笑ましかった。彼はここで、初めて出来た本当に信頼できると感じた仲間たちを、自分自身が幼いころまともに体験できなかった「家族」と重ね合わせていたのかもしれない。

    そして、様々な事件を経て、エピローグの彼の人生のラストシーンにつながる。「アリスがウサギを追う」不思議の国のアリスのお話を、まさになぞっていくようにして、彼はノナタワーの地下に降りていく。獲物を追い詰め、追い立てていく描写は、読んでいてこちらも手に汗握るくらいリアルだった。その分、姿のない怪物に出会ってしまった時の読者としての絶望感も一入だったけれど。

    アニメで彼の人生の結末がわかっていた分、仲間に恵まれ、持ち前の明るさと人懐っこさを見せる小説本編を読んでいてつらいところもあったけれど、本来施設で一生を終えていたら絶対に叶わなかったことを体験して、誰かの思い出や記憶に残った彼の人生は、きっと幸せであったんじゃないかと思いたい。縢秀星というキャラクターが、誰よりも自分の置かれた環境を楽しむ幼さを持ちつつ、どこか達観した大人っぽさのある魅力的を持っていることが伝わる作品だった。

  • 「やってらんねーよ、クソが」といって死んでいったのが、悲しいけれどカガリくんらしいとも思えたり。たのしそうにお料理を朱ちゃんにふるまうシーンや青柳さん、唐之杜さん、六合塚さんに囲まれながらゲームするシーンでほっこりしたのがせめてもの救いでした。

  •  ネタバレあり。帰りしな見つけて購入して気づけば読み終えておりました。ものの一時間というところでしょうか。分厚くもないですからね。

     縢秀星くんの、ちょっとした自伝。
     それはノナタワーでの道中での彼の心象であったり、サイコパスが濁っていると判断をくだされたそのときの心象であったり、初めてこの仕事に就いたときの心象であったり。
     不思議の国のアリスをゆえんとした、ちょっとした盤上というのか。繰り広げられる足取りは、御伽噺をなぞらえていて、それは折りしも槙島たちが読む作品の数々や、『サイコパス』という作品が紡ぐ雰囲気である。
     というか此処最近なかなかどうして『不思議の国のアリス』に縁があるのか、……w

     まずは縢くんの、施設にはいったときの一例。
     同じくしてサイコパスが濁ったということで真反対にぶちこまれた性別不詳の同い年の人間と、脳内でチェスないし将棋で勝負をするという、なんつう頭の良いことをやる少年たちなんだね、こいつらは。
     男の子にも女の子にも見えるその子は、縢くんと幾度か勝負をしたのち、演技か本気かはわからぬけれど施設を脱走しようとし、それを縢くんは防ぐのでした。
     ひとたび脱走が知られたとなるや、矯正施設たるもの信頼が地に落ちますから、縢くんが脱走に失敗したその子がどこに行ったのか尋ねた際に、職員はどうという顔をするでもなく
    「そんな人間はいなかった、きみの真反対はずぅっと空室だったでしょう」
    とそらとぼけるのです。
     そうして場面はうつり、初めての執行官としてのお仕事をパーフェクツにこなし、宜野座さんたちとのなれそめが過ぎ、またもやアリスにかかわりのある事件に巻き込まれ、そうして、冒頭のノナタワーでの事件に戻るのです。
     その際の彼の心象は、なんともいえぬもので、光に包まれてしまった彼の、そのいきざま、みたいなものがつらつらと書き記された、ただそれだけのお話でした。
     料理をしているときのよろこび、初めて生きている素材にふれたときのよろこび、そういったものを感じ取ることができますから、やはり彼のいきざまに少しでもふれたいと思った人からすると、とてもとても感慨深いものではと、思いました。
     個人的には、オーウェルとかの極端な時代よりかは、いやなにも言うまい。此処でフィリップ・K・ディックと言ってしまえばアニメとおんなじ、槙島さんと同じやないかw
     個人的にどの時代が好みかといえばまあアレやもしれないけれどカフカがすきなんですが暗いのであんまりおすすめできないハハハ。オスカー・ワイルドもいいかな一応ほら幸福の王子書いたし。……ドリアングレイとか身も蓋もないほうが有名だけれどもさ。世界観でいったら『星の王子様』が大好きなのでなんだったらサン=テグジュペリの世界でもいい。ていうか『星の王子様』って存外『サイコパス』の世界観に合うのではと思うのだけれど駄目かしら。恋愛ものならオースティンいいよねオースティン、自負と偏見凄くおもしろいんですけど誰か語り明かしてくれませんかね。

     とりあえず、パーカのその子、脱走に失敗したであろうその子の正体は、いったい、なんだったのでしょう。
     一瞬、じつは槙島かしらとも思ったのですが、まぁ年齢が合わないのと(とはいえ公式設定資料集を含め年齢は不詳ではあるけれども、これで未成年だったら笑う)、彼は端正な美青年なので流石に性別不詳に見えるというのはむつかしいかなあ、と。
     というかだったらサイコパス本編でそういう子を出していればよかったのにと思いましたがそれはまた別のお話。

     ただ、ほかの方々の言う、
    「縢くんを殺そうとしたやからはグソンの集めた精鋭であって関係なんてない」
    は、違うのかな、とも。
     グソンと槙島さんが暴動を起こす際に、
    「彼らはこの世界を変えたいと願う」
    だとか
    「この世界に飽き飽きして、槙島の見せる世界を待ち遠しいと思っていた」
    だとか、そういった旨の話を、グソンが槙島さんにしたはずです。
     パーカの子は、
    「ゲームをしよう」
    と言っていました。
     生き死にを賭けたゲームという意味でなら、シビュラシステムという根本をどうにかするという意味でなら、この世界では同じ意味を持つでしょう。
     だったら、パーカの子がグソンたちに付き従うことを望むのも(幾度となく縢くんの前から姿を消しましたけれども)道理ではないでしょうか。
     もしくは、パーカの子の意思を継いだだれか、なのか。
     なにごとにも、意味はある。
     縢くんの生きた時間……人生とやらも、最期がどのようなかたちであれ、五歳のときから施設に閉じ込められていたとはいっても、なにがしかの意味はあるのだと、そう言いたいのか。
     再三にわたって縢くんの前から姿を消したパーカの子や、Gがぐにゃりと歪んだような印象的ななにかのしるしや、それらが意味なく続いたわけでもない、のか。
     それとも、意味なく続くものはあるのだ、なのか。
     ただそうするとどうにも縢くんが報われないので、個人的には前者であると信じたいです。

  • ※激しくネタバレると同時に、伏線とか拾えず考察とかもできず、ひたすら主観的感想しか述べられないので全然違ったらごめんなさいと先に書いておきます。

    必死こいて毎度ラフ絵表紙の限定版を購入しております。今回限定もカラー表紙なのかと思ったら、クリアシートが重なってるだけだった。個人的にはありがたい(同じ装幀を崩されたくない)。

    ギノ先生を追い越して縢が先に発売されました。
    スピンオフシリーズだから、縢の描かれなかった部分とか、過去とかなんだろうなぁと思っていたのだけど、いや確かに間違ってないんだけど、あのシーンにはじまりあのシーンで終わるのか…スピンオフってもうちょっと救われるもんだと思ってた自分が馬鹿だった…。

    なんて冒頭から若干重くはなりつつも、やはり過去の生い立ちから執行官となった頃の話など。周りとの関係性というよりも、縢が周りとどういう関わり方をし、どう考えていたのかが描かれる。飄々と明るく振る舞ってはいても「執行官」であるからにはそれなりのものを秘めている訳で、そんなキャラクターだからこそ、本当には何を考えどう思っていたのかは、より重要。

    キーとなる幼少期に出会った少年から連なるように、執行官となってからも度々「ゲーム」が仕掛けられる。それがあの少年によるものなのか、予言の通り「アリス」に囚われた縢の運命なのか。
    自分の理解力やら伏線回収能力やらが劣る所為なのかもしれませんが、施設での少年との関連性辺りはふわっとしたまま。これ以上のピースが無いのなら、やっぱり兎を追い続けるべくしてという落とし所なんだろうか。しかしそう考えてしまうと、あまりにも縢の人生とは…せめてもう少し救済措置を与えて欲しかった…。もしくはいっそとどめでもいいから、件の少年との決着のようなものをつければ、あるいは「意味」のようなものを見いだせたような気がする…というのも所詮は視聴者のエゴなのか…(苦)。
    そんなやりきれない呪縛に囚われたまま、唯一の幸福エピソードみたいなのが朱ちゃんとのディナーとかまた…うう…。

    生い立ちはわかったけれど、どうにも呪縛のように小さな小骨を残すような事件の羅列と、最後のシーンへの流れがいたたまれない。
    …スピンオフというかメディアミックスは小説版のみと思ってたんですが、これコミカライズも何もかもあらゆるネタ拾っとかないと繋がらないとかじゃないですよね…やめてそういうの…。

    とりあえずスピンオフに救いは無いっていうのと、新しい情報が得られてわかる部分も増えるけどわからない部分も増えるものなんだと思って、おとなしくギノ篇を待ちます…ぐぬう。

  • おもしろかった。
    が、読むとあのラストの哀しさが倍増します。(泣)
    だって、なにひとつのこらず消されるなんて~~~!!

    目次のノーデータが、進むにつれて
    そうじゃなくなっていくとこが、ゲームっぽいつくりでおもしろいなあっと。
    ただ単に、最初っからいつの話か分かんないようにしているなら、
    あの後の話があるのかも、っとあわーい期待はしっかり裏切られ・・・・。
    そうか、やっぱあれが最期なのかあ。
    うう、泣ける。

    子ども時代の少年との思い出話は少々、彼、を思い起こさせるもの、あり。
    アリス、の物語をバックに、うまーっく物語をつないでるなあ。まあ、結局のところ伏線らしきものは
    なにも回収されず、そこは、彼の最後とともに少々不服。まあ、本編があってのことなので、あんま好き勝手にはできないってことで。
    制約のある中でのお話、と考えれば十二分に楽しませて頂きました。

  • 本編やその他の展開をかなり多く踏まえて書かれたように思われるので、ノベライズとしてとても良くできていると思った。
    青柳監視官が女騎士のシーンで、個人的にはグッときてしまった。

    アニメ本編の合間にこういう一係の活躍ややり取りがあったのかと思うと、もっと本編で見てみたかったと思うことしきり。ノベライズ企画が今後もトントン拍子で続いていって欲しい。
    カガリくん……泣

  • 縢秀星の人生を描きたかったんだなあっていう作品で、個人的にはすごく好き。
    そもそも縢くんが魅力的すぎる。
    アニメ見てた時から好きだったけど、小説に手を出し始めてから余計に大好きになった。どんどん魅力的になる。
    個人的には、asylumの縢くんエピソード見てからこっち見てほしい。要所要所に、asylumの要素があるので。

    あー、にしても、小説版いろいろ読んで思うのは、アニメだけを見ているのはめちゃくちゃ勿体ない。
    サイコパスシリーズは、小説があってこそだ。

  • この著者の他の作品を知らないので申し訳ないけれど、体言止め多すぎて序盤イライラしました。強調したい言葉でもないのに使われても意味がないから。

  • 縢くんがアリスなのを理解しました(笑)

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著者プロフィール

シナリオライター、小説家。代表作として「スチームパンクシリーズ」(Liar-soft)、『殺戮のマトリクスエッジ』(ガガガ文庫)、PSYCHO-PASS『追跡者 縢秀星』(Nitroplus Books)、Fate/Prototype『蒼銀のフラグメンツ』(KADOKAWA)などがある。

「2014年 『灰燼のカルシェール What a beautiful sanctuary』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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