いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)

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著者 : 中山七里
  • 宝島社 (2013年1月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800205513

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いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • この作品にショパンコンクールのファイナリストとして登場する
    全盲の日本人ピアニストのモデルとなった辻井信行さんを
    在学されていた音楽高校の文化祭でお見かけしたことがあります。
    ステージではなく、狭い教室で。

    あるクラスが催した音楽喫茶でのことでした。
    教室いっぱいに並べられた机と椅子。
    教室備えつけのピアノは、もちろんグランドピアノなんかじゃなくて
    かなり年季の入ったアップライト。
    そしてそのピアノでショパンのエチュードを奏でていたのは
    辻井さんではなくて1学年下の女の子でした。
    そう、辻井さんは下級生の演奏を聴きに来ていたのです。

    辻井さんの演奏は、それまでもTVや演奏会で何度か聴いて感銘を受けていましたが
    この時ほど感動したことはありません。
    だって、全身で音楽を感じていたのです。 草花がおひさまの光を浴びるように。

    フレーズの切れ目で、演奏者と一緒に深く息を吸い込む。
    ハーモニーの余韻を残したいところで、思わずそこにはないペダルを踏む。
    高音へと駆け上がるパッセージと一緒に身体が椅子からふっと浮き上がる。
    音楽を聴くよろこびを凝縮したかのような、あの数分が忘れられません。

    この本の主人公ヤンががんじがらめになっていた「ポーランドのショパン」に代表されるように
    クラシック音楽を演奏するにあたって、音楽史や作品の背景を学ぶことは必須で
    「正統な」音楽を継承することこそが使命と信じて、今この時も
    必死に指を動かしたり、厳しく指導したりしている音楽家がたくさんいることでしょう。

    でも、難しい音楽理論で武装しなくても
    人と人とのつながりの中で育まれた感情から生まれた音色に
    一度でも心を動かされたことがあるひとなら
    この物語の終盤、岬先生によって奏でられるノクターンを
    おとぎ話と切り捨てることはできないと思うのです。

    『さよならドビュッシー』・『おやすみラフマニノフ』で
    岬先生に救われた人たちが立ち直った姿を見せてくれるのだけでもうれしいのに
    今度は、言葉を交わしたこともない見知らぬ誰かを、音楽の力で救ってしまう岬先生。
    やっぱり素敵です!

  • 音楽を言語化するというのはかなり至難の業だと思うのだが、
    中山七里氏はそれを見事にやってのけたことに驚嘆した。
    これまで読んだ彼の作品は、どうにも所々の表現や台詞、言い回しが大時代すぎて、物語に入り込めずに断念したのだが、この作品は違った。
    ショパンコンクールに出場するそれぞれの弾き手のキャラクターもしっかり書き分けられているし、主人公である地元ポーランド人のヤンの心情描写も見事だ。
    冒頭に書いたように、何よりピアノの旋律の表現をこれほど的確な言葉を使いながら心に伝わるものにする日本語表現には恐れ入ったと言わざるを得ない。
    ミステリーとしては、さほど念入りな伏線を張った作品という気がしないが、
    この音楽表現だけでも一読に値する。
    うーん。他の作品(スタートとかヒートアップとか)では
    どうしてあれほど陳腐な表現にうんざりしてしまうのだろう、不思議だ。
    音楽関係作品以外の彼の日本語には違和感を覚えるので、とりあえず岬洋介シリーズの
    「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」はチャレンジしてみよう。

  •  今回の舞台は、ポーランド。あの伝統のショパンコンクールです。

     ショパンの、エチュード、ノクターン、ソナタ、協奏曲、これを奏でる描写を丁寧に丁寧に書き上げていく中山さんの筆力が素晴らしい。
     私は、ネットでショパンを検索しまくって、曲を聴きまくりながら読みました。ものすごい臨場感。私もコンクールの観客になった気分だった。


     そして、今回は、第1作と第2作の主役二人も登場。ルシアが再登場してるのは嬉しかった。彼女がまた、ドビュッシー弾くところが見たいです。


     最後に岬先生が決勝で弾いたのが、曲目にはなかったショパンのノクターン第2番変ホ長調。これは、私も弾いたことがあります、岬先生!!
     突発性難聴の発作が起きる中、演奏をやめずに曲を変え、テロで犠牲になった少女のためにノクターンを奏でる岬先生。
     なんて素敵なんだ。


     音楽の持つ力、文章の持つ力。
     この作品は、2つの素晴らしい力を同時に味わうことのできる、本当に素晴らしい作品だ。


     いつも冷静でクール、だけど熱い情熱を持つ岬先生に、ブラヴォー!!!

  • 実はところどころで微妙に引っかかる部分もあったけど、一気に読み終えての感想はやっぱり☆5にしたい。

    舞台はポーランドの都ワルシャワ。
    権威ある国際ピアノコンクールであるショパンコンクールが開催され、我らが岬先生もコンテスタントとして出場します。
    岬先生の出番は思いの外少なくて、ポーランド人のヤン目線で物語は進んでいくのだけどね。
    高い音楽性とショパンへの情熱で全力の戦いが繰り広げられる一方で、市内では爆発テロが頻発して、ついにはコンクール会場でも殺人事件が起きてしまう。
    何ともスケールの大きなミステリーだったりもします。

    コンクールのファイナリストたちはいずれも個性のある弾き手たちで、ショパンの解釈も奏でる旋律も色とりどり。
    予選を1次2次と勝ち進んでいく白熱具合は、読んでいても緊張感が昂ります。
    ミステリー部分はちょっと突っ込みたくなる感じもあったけど、物語を盛り上げる舞台装置的要素としては悪くないし、完全にメインはピアニストの矜持とそのぶつかり合いだものね。

    ワルシャワが舞台というのがなんともいえずよかった。
    アウシュビッツへ行くために半日ほど滞在しただけだったけど、駅前のスターリンビル禍々しい印象と、かわいらしい旧市街地は大戦で破壊され再現されたものという事実が思い出されます。
    歴史に翻弄された土地だものね、不屈の国民性というのもうなづけます。

    ショパンのノクターンと云えば、浅田真央ちゃんが今シーズンのSPで使用した曲。
    すぐにあの美しい旋律が再生されて、わたしも癒されました。

  • 相変わらず音楽の表現が素晴らしく綺麗。これだけ音を言葉で表現できるのってすごい。
    岬先生がショパンコンクールに参加したポーランドでテロが起こるんだけど、ミステリー部分はこのシリーズ共通だけど短め。
    ミステリー読み込んでる人はこれだけの記述からヒントを拾って誰が犯人かわかるのかな?

  • 一気に読んだ。この著者の音楽描写は凄いね。僕はショパンのタイトルを聞いても、どの曲か全然分からないけど、それでも、文章だけで物凄い演奏を聴いた気になるというのは、尋常な表現力ではない。ミステリーとしてはこの小説は弱いけど、そんなことは問題ではない。音楽小説だよ、これは、

  • 映画化された「さよならドビュッシー」を観たときにシリーズ最新作の本作が刊行されていることを知り、文庫化なんて待ってられず、即本屋に駆け込んで買ってしまいました。

    しかし本作はスケールがデカいというか… 音楽界ではほぼ無名だった岬洋介がポーランドのショパンコンクールに推薦されるは、コンクールと並行してテロリストとの闘いが進行するはで、前作まであった身近な世界観が一気に遠い存在に感じられ、これまでの2作とは大きく雰囲気が変わった印象があります。

    読中はコンクールとテロという、一見交わることのなさそうなイベントがどのように交差するか。犯人は一体誰?そこに岬洋介がどのように関わってくる?この辺りが”気になるポイント”として、終止頭をよぎりながらページをめくっていました。

    結局、劇中発生する事件はかなり終盤で急転直下で展開するため、あっさりとした印象を受けてしまいました。が、本作の主人公というべきポーランド人ピアニスト、ヤン・ステファンスのアイデンティティへの葛藤や、彼を含むコンクールに参加した何人かの演奏描写など、ミステリパートよりピアノ(音楽)バトルや一人のピアニストの成長物語の方に興味を惹かれました。

    それもあって、パキスタンでの人質救出エピソードなどに「それは大げさすぎやろ」と思いつつ、総合的には非常に満足な読了感。もう少し岬洋介が音楽的にも推理的にも活躍する描写が欲しかったという気もしますが、もう一人の主人公として活躍するヤン・ステファンスの成長ぶりが目覚ましくて、(本作における)岬の薄い存在感を補って余りあるそれがありました。

    最近ドラマ化された人気小説シリーズに比べると、キャラの印象などは薄味かもしれませんが、個人的にはそれらシリーズよりもお気に入り。スケールアップしすぎて次の展開が難しそうですが、末永く続いてほしいと祈っております…

  • ピアニストには憧れが、、、だから血生臭い話は敬遠したいのですが。。。

    宝島社のPR
    「橋本愛主演の映画化で話題、「さよならドビュッシー」シリーズの最新刊が登場! ポーランドで行なわれるショパン・コンクールの会場で、殺人事件が発生。遺体は、手の指10本が全て切り取られるという奇怪なものだった。コンクールに出場するため会場に居合わせた岬洋介は、取り調べを受けながらも鋭い洞察力で殺害現場を密かに検証していた。さらには会場周辺でテロが多発し……。 」

  • 岬洋介シリーズ、3作目。

    2作目の「おやすみラフマニノフ」をすっ飛ばしてしまったが、ほとんど問題なく読めた。とは言え、ほんの少しサービス的な場面はあるので、シリーズ読者にはきっと嬉しい演出のはず。

    今回は海外、ショパンコンクールが開かれるポーランド・ワルシャワが舞台。そのコンクールで優勝を必定とされる若きピアニストのヤン・ステファンスが主人公。岬先生がテロ事件の犯人を暴いたり、奇跡を起こしたりする場面もあるにはあるけど、今作品の大半は、コンクールを通して、ヤンが真のピアニストへと成長していく過程の描写で占められ、読みどころとなっている。正直、ピアノも子供の時に齧った程度だし、クラシックにも疎くて、ほとんどの曲が曲名だけでは分からなかったけど、何故か雰囲気は伝わってくるので、素人ながらその描写は凄いなと思わずにいられない。

  • いきなりワールドワイドでテロ絡みで驚きましたw。そして相変わらず演奏描写が巧みで、よくもこれほど曲を言葉で表現できるものだなぁと感心しきりです。今回主役のヤンがピアニストとしても人としても成長した姿を見れて清々しくありました。ショパンコンクール結果が、多分そうなると想像してましたが少々不満でしたので^^;岬先生のノクターン演奏への思わぬところからの評価が救いです。そして岬先生の体調が心配です。今後も続きありますでしょうか?

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いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)の作品紹介

ポーランドで行なわれるショパン・コンクールの会場で、殺人事件が発生した。遺体は、手の指10本が全て切り取られるという奇怪なものだった。コンクールに出場するため会場に居合わせたピアニスト・岬洋介は、取り調べを受けながらも鋭い洞察力で殺害現場を密かに検証していた。さらには世界的テロリスト・通称"ピアニスト"がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。そんな折、会場周辺でテロが多発し…。

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