振り込め犯罪結社 200億円詐欺市場に生きる人々

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800218971

作品紹介・あらすじ

「捕まるのは末端だけ。金主は絶対に、捕まらない」暴力制裁、関東連合との関係、資金洗浄と詐欺マネーの行方…振り込め詐欺10年の興亡を追った衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 詐欺犯罪が組織化するとこんな風になるんだというか、すごい練られ方。「あんなオレオレなんかに引っかかる方が悪い」なんて言葉、あれだけの被害が出ていたら確かに空虚だと思うが、実態なこんなだったんだなぁ。

    彼らの中に、死ぬとき平均3000万貯蓄をため込んで死んでいく老人からあるカネを奪うのと、すでにカネが無い人にカード作らせたり、更に高利の借金をさせたりするのとどっちが悪かというロジックで研修する人達がいる。著者もそれに反論できないのだけれど。
    うーん、そういう風に考える人、多分子供から喰われることに疑問を感じないということ、なんだろうな。

    「まず駄目なのが、くさい奴。くらいっていうのは難しいんですけど、何を話させても芝居がかった感じに聞こえちゃう奴がいるんですよ。これ致命的で、くさい以外に『棒』『棒読み君』『大根』とか言われます。残念だけどこれは本人頑張ってもめったに改善されませんから、結構早い段階でクビになりますね」

    結果が分かる詐欺業界だからこその評価だと感心してしまった。確かにコールセンターにも、いる。

  • 岡田斗司夫さんがおすすめしていたYouTubeを見て読みました。この本が出版された当時に読んでいたなら、相当なインパクトがあったのではと感じました。
    かなり垣根の低い非合法なビジネスに、臨場感を感じながら一気に読めました。
    非合法なビジネスのルポも、いろいろ広げて読んでみたいと思わせる作品でした。

  • 2013年の発行なので今から10年前の情報だが、裏社会の犯罪の構造を解き明かした力作だ。特殊詐欺に手を染めるのは、どういった人々なのか?どんな手法でお金を騙し取るのか?想像を絶する中身だった。企業並みの規律や構造を持ち、働く人たちもまるで会社勤めのような形態。法律の規制がかかれば、それを出し抜く工夫をして、利益を得る。それにしても驚くのは、詐欺とわかっていてお金を出す人。三度も騙されて、まだ狙われる人。個人情報流出、名簿というのは、怖いものだとつくづく思わされた。知ることは大事。騙されないため、被害に遭わないためにも、読んだ方がいい一冊だ。

  • 振り込め詐欺被害が依然として深刻である。振り込め詐欺は詐欺被害を出すだけでなく、大麻や危険ドラッグのような依存性薬物と同じく半グレなど反社会的勢力の資金源になる。被害防止は資金源を断つ上でも重要である。しかし、プレミアムフライデーに見られるような民間の働き方を無視した公務員感覚では振り込め詐欺被害防止効果は低いだろう。

    振り込め詐欺は手口が大きく報道されているにもかかわらず、被害が中々減少しない犯罪である。依然として被害者が出る理由は、被害防止の訴えが説得力を持たないためだろう。何しろ警察官自身が振り込め詐欺をしている。京都府警山科署勤務の巡査長は2018年11月に特殊詐欺対応を名目として70代の高齢男性から現金1180 万円をだまし取った。

    神奈川県警第1交通機動隊の巡査(24)は2019年10月に「振り込め詐欺の犯人を捕まえた」ため、キャッシュカードの保全措置をすると偽り、高齢者からキャッシュカードを受け取った。この日の夜にカードから横浜市都筑区内のコンビニで50万円が引き出された。これらは警察が特殊詐欺対策をしていなければ起こらなかった犯罪である。市民が警察のメッセージを聞かなくなることも無理はない。

    内容面でも民間感覚を理解していないと感じられる。振り込め詐欺の典型的なパターンは息子を名乗る人物から電話がかかり、「今日中にXX万円を用意しないと、契約できず、会社を首になる」というものである。振り込め詐欺被害防止のアナウンスは、「このような依頼にだまされないようにしましょう」というトーンになる。しかし、これは引っ掛かりそうもないような単純な手口であるが、その時となると気が動転してだまされてしまうという問題ではない。

    どうも詐欺被害防止のアナウンスを見聞きすると、「今日中にXX万円を用意しないと、契約できない」というような事態が起こりうるという民間の現実を理解していないように感じられる。この種の依頼は嘘だと頭から決めつけていると感じられる。この種の依頼を信じることが愚かという感覚が背後に見え隠れするが、民間感覚への無知を物語る。

    納期意識に欠ける公務員仕事ならば今日中にできなければ明日やればいいという働き方で済むかもしれない。しかし、民間では今日中にできるかできないかが問題です。今日できなければ明日やるということにはならない。今日できるか、できないかになります。できないならば会社を辞めた方が良いということもあるだろう。それが民間感覚の責任の取り方である。

    今日できなかったら、頑張って明日遅れを取り戻すという次元の話ではないこともある。昭和の「頑張ります」精神は有害である。頑張ることを強要するならばパワハラ(パワーハラスメント)になる。頑張ることを強要させられるならば、やはり辞めた方が良いとなるだろう。辞めることで救われる。

    中には「自分は頑張っても無理な人には頑張れとは言わない。頑張ればできる人にだけ頑張れと言う」として頑張ることの強要を正当化する差別主義者もいる。これは差別的なパワハラになる。頑張っても無理な人に「頑張れ」と言っても結果に結びつかない。それは単なる精神訓話にしかならない。むしろ頑張ればできる人に頑張れと言うことこそ人を苦しめるパワハラになる。

    頑張れと言う人を軽蔑し、無理するなと言う人に感謝する。頑張ればできると言う人を敵視し、できなくて当たり前と言う人に好感を持つ。目の前の問題を解決するという自分の点数稼ぎのために個人に負担や我慢を押し付ける輩は最低である。

    目の前の自分の仕事を解決することしか考えない公務員感覚では振り込め詐欺被害さえ発生しなければ良いとなり、その確認で今日中の作業ができなくても知ったことではないとなる。そのような公務員感覚で振り込め詐欺被害防止を訴えても、民間には届かない。

    このように考えた背景にはプレミアフライデー(Premium Friday)という勘違い働き方改革施策がある。長時間労働対策として月の最終金曜日の早帰りを推奨する施策であるが、月の最終金曜日は月の最終営業日になることが少なくない。

    グローバル化により、四半期決算という短期的な視点が重要性を増しているが、四半期の最終営業日にもなることもある。その日でなければできないこともある最も忙しい日に早帰りを強要することになる。これを問題と認識しないことが公務員感覚ならば振り込め詐欺被害防止もピント外れになる。

  • 振り込め詐欺が第一世代、第二世代と変遷を経ながら組織化されていく様子が稼業人へのインタビューにより詳らかになる。

    第一世代:五菱会というヤクザによる業態
    縦社会が厳格なヤクザ組織のやり方により芋づる式に捕まり撲滅

    第二世代:分業制になり、下が捕まっても上が捕まらない図式に。本の内容はここがメイン。
    振り込め詐欺株式会社のような組織になる。

    金主=投資家
    番頭=社長、管理職
    プレイヤー=営業職社員
    名簿屋 道具屋 研修=業務提携の専門職
    ダシ子=事務員(逮捕リスク大)

    といった感じだ。一歩ミスれば逮捕という極限状態で業務を行なっているため危機管理や連携プレーが見事である。

    第三世代:携帯電話や口座認証のセキュリティがあがりより手法が巧妙に。

    手段が電話から対面へと変容していく。名簿もより精度があがってゆく(国勢調査などを装い電話で調査したり)。

    また、名簿屋 道具屋を店舗内で囲い込むようになる。


    ざっとこんな感じだろうか。


    詐欺が出来る位なのだから頭が賢く一般社会でもやっていけるような人も多いと感じた。興味深いのは、裏社会にもヤクザ、半グレ...と種類があり棲み分けている点だ。ヤクザは下の面倒を見る、詐欺集団の半グレは逮捕されたら下をきる。そもそもの考え方が違うからこそあい容れないが切っても切れない縁がある。半グレの間で問題が起きるとバックについているヤクザが出てきて話をつけるからだ。

    日常生活を送っていると決してわからない裏社会を垣間見ることができて興味深かった。

  • 「振り込め犯罪結社」鈴木大介著 読了。詐欺犯罪者側の視点で描かれており、まるでコンゲーム小説を読んでいるかのような感覚におちいる。詐欺電話をかけるための研修があるとは。特殊詐欺被害が減少しないのも当然か。対策も難しそうだ。

  • 面白かった
    振り込め詐欺に関して考えを改めなくちゃいけないなと思った
    そして、学生時代に漠然と考えていた方向にやはり進んでいるのだと思った
    深堀していろいろと考えたい
    あとは、違う人が書いたのをほんとに読みたい
    この人の書いたのだけが情報源だと
    この人が偏っていた際にまずいので

  • 振り込め詐欺がもはや犯罪の範疇を越え、社会現象とでも言うべき状態になっていると認識した。恐ろしいことだ。

  • 振り込め詐欺側からの視点で書かれた一冊。
    丹念な取材による登場人物達の心の真相にはそれを行う動機や背景が書かれていて興味深かった。また、協力者達や人心掌握術などこれがこう言う世界なんだと改めて感心した。また、犯罪世界の人間の循環や非情な世界は現場を生き残った人間に更なる追い打ちをかける、暴力団とはまた違う犯罪世界の深淵を見せていただいた書籍でした。

  • 詳しく取材していると感じました。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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