蟻の菜園 ―アントガーデン― (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
3.49
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800230645

作品紹介・あらすじ

婚活サイトを利用した連続不審死事件に関与したとして、殺人容疑がかかる円藤冬香。しかし冬香には完璧なアリバイがあり、共犯者の影も見当たらなかった。並外れた美貌をもつ冬香の人生と犯行動機に興味を抱いた週刊誌ライターの由美は、大手メディアを向こうに回して事件を追いはじめる。数奇な運命を辿る美女の過去を追って、由美は千葉・房総から福井・東尋坊へ。大藪賞作家が満を持して放つ、驚愕と慟哭の傑作サスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • いつも静かで控えめなのに誰もが認める美貌の持ち主の冬香が車中練炭殺人等連続不審死事件容疑の疑いを持たれるけど、彼女にはキチンとしたアリバイがあった。しかも騙し盗られた多額の金が彼女の周りには無いのだ。
    世間が騒ぐこの事件に絶好のネタとして強い興味を有する週刊誌女性記者の由美が核心に迫って行く展開はなかなか面白い。中盤までのストーリーがグイグイ興味を引っ張ってくれて流石だと思っていたが、終盤にかけて全貌が明らかになってくると少し拍子抜けしてしまった。
    辛く悲しく重苦しい生い立ちの姉妹が、事件惹起に至る過程では動機が凡庸で腑に落ちなさ過ぎて残念でございました。

  • やっぱり外さない柚月裕子。次の展開が気になり、あっという間に読了。途中からカラクリは予想が付いたものの、それでも十分に面白かった。

    フリーライターの由美は、世間を賑わせている『連続婚活不審死事件』を追うことに。容疑者は円藤冬香。美貌の女性だ。由美は、これほど魅力的な女性なら男にも金にも不自由しないのではないか?なのに何故という思いに突き動かされる。

    冬香の過去を探っていくうちに壮絶な過去に直面する。物語は由美が事件を追っていく様子と、冬香の幼少期が交互に展開されていく。
    冬香の境遇があまりにも可哀想で、どうしても冬香に肩入れしてしまい、このままなんとか逃げ切って欲しいと思わずにいられなくなる。

    普段、私たちがこうしたニュースを見ると、その事件の本質を理解せず、容疑者に対し『よくもこんな事件を起こせるものだ』と完全に悪と見做し、被害者に寄り添った見方をしてしまう。冬香がしたことはもちろん許されることではないが、それでも冬香をこうしてしまった背景にも目を向けるべきだと思い知らされただけに、由美が書く記事の視点には救われる思いがした。

    これからも、ただ面白いだけの物語ではなく、読者に問題を突きつけて欲しい。

  • 今回も読み応え充分。「わたし」が何となくわかってきた頃、全容が明らかに。

  • 連続不審死事件の容疑者、冬香の過去に興味を持った記者の由美は、当時父親から虐待されていた姉妹に辿り着く。

  • 交際相手を次々に殺害したと思われる女性の過去をフリーライターの主人公が追う。実際にあった事件を彷彿させるところもあり、中盤までは物語に引き込まれたが、後半はトリックが読めてしまったこともあり、何となく消化不良。
    でも、作者の新しい一面が見えた作品。

  • 「蟻の菜園」と呼ばれる、蟻と植物の共依存によって成り立っている事象がある。蟻は地上ではなく樹木の上に巣を作り、その巣に数種類の着生植物が生える。蟻たちは着生した植物の果実を食料にし、植物は蟻の廃棄物を栄養源にして生きている。どちらが欠けても生きてはいけない。

  • 2022.4.9読了
    途中までとても面白く、ページをめくる手が止まらなかった。
    でも、なぜお金が必要になったかがわかったあたりから急激に冷めてしまった。
    それでも、「わたし」の正体が気になって読み進めるが、それについての描写も唐突に感じた。
    この設定を活かすなら、もう少し伏線のようなものがあれば良かったように思う。

  • 破滅的境遇を生きた者でなくては理解し得ない内容かもしれない。結婚詐欺で逮捕された冬香。フリーライターの今林由美が過去を暴く。冬香は荒狂うDVの父親によって姉とともに育つ、母親は既に他界。姉は「いのちの電話」により助けられるが、姉妹離れ離れになり福祉施設で育つ。数年後に父親から性的虐待を受け殺害。過去に姉を助けた公務員と警官は姉の犯罪を知りどう感じたか。2人は改名して生きて行くが、姉妹愛以上に共依存の関係になり犯罪を助長し、破滅する。宮部みゆきの火車、松本清張のゼロの焦点を彷彿とさせる傑作。

  • 子どもに対する暴力を扱った話ってとても多くて、またか という気がしないでもないが、柚月裕子ですから、グイグイと引っ張って読ませますね。読んでる間は、読んでないときも不快感がいっぱいでした。この虐げられた状態から逃げ出すための殺人という加害者に一分の理ありというのも、東野圭吾作品ほかよく見かけるものです。「砂の器」スタイルですね。ここでは硬い絆で結ばれた姉妹という設定で同情的になるんですね。
    やはり長編のほうが読み応えがあります。

  • 読んでいてズーンと心が重くなる話。
    ライターの主人公と、ちょっと嫌な感じの年上の記者とのやり取りが
    唯一その重さを緩和してくれる。
    謎の部分にはわりと早いうちに気付いてしまい、
    後半に明らかになる妹の動機の部分や
    タイトルの意味が明かされる最後は
    取ってつけたような感じがして残念。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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