検事の死命 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800232069

作品紹介・あらすじ

郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う「心を掬う」。獄死した佐方父の謎の核心が明かされる、感涙必至の帰郷小説「業をおろす」。大物国会議員、地検トップまで敵に回して検事の矜持を貫く「死命を賭ける」。検察側と弁護側双方の、絶対に負けられない裁判の火蓋が切られる「死命を決する」。全4話を収録した、佐方貞人シリーズ最新刊。圧巻の人間ドラマが、胸を打つ!

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった
    佐方貞人シリーズ第三弾。前作同様、短編連作。
    そして、本作は、前作の続編が含まれますので、「刑事の本懐」読んでから読みましょう。

    ■心を掬う
    郵便物の紛失事件。これを郵政監察官と追いますが、この仕事に対する取り組み方がすごい。
    自ら汚れ仕事も厭わず証拠集めを行います。
    そして、きっちり落とし込みます。
    自分ならできない(笑)

    ■業をおろす
    これが「検事の本懐」の「本懐を知る」の続編。
    なので、前作読んでから、これ読みましょう。

    十三回忌で明らかになる父親が刑に服した理由。
    弁護士の職業倫理と正義の問題に悩んでいた父親。
    まさに業をおろすことが出来ました。

    ■死命を賭ける
    ■死命を決する
    「罪はまっとうに裁かれなければならない」
    その信念が浮き彫りになります。

    混雑した電車内で痴漢行為で女子高生に取り押さえられた中年男性。
    しかし、頑なにその容疑を否定。
    さらに、痴漢された女子高生から「金を払えば示談に応じる」と囁かれたと主張。
    女子高生による冤罪なのか?
    被疑者はその地方の資産家で名門一家
    一方女子高生は過去恐喝容疑で補導された前歴あり
    どちらかが嘘をついていることになります。

    そんな事件を佐方が、様々な圧力にも屈せず、(たかだか、痴漢の事件にもかかわらず)、検事生命を賭けて弁護人と戦います。

    裁判はどうなる?
    という展開です。

    佐方の信念が読み取れる物語。
    まっすぐな生き方に心打たれます。

    とってもお勧め!

  • 面白かった〜。読み終わるのが寂しくなるくらい面白かった。

    佐方と伊原の裁判でのやり取りは、ヒリヒリした。佐方の冷静沈着な感じは、「罪はまっとうに裁かれなければならない」が根底にあるから些末なことでは揺さぶられない…ということなのか。

    業をおろす…は前作、前々作から寂しく引きずってきたモノに終止符が打たれたようで ホロッとした。

    佐方貞人シリーズ最高です。

  • 「自分は、罪をまっとうに裁かせることが、己の仕事だと思っています」
    終始ポリシーを曲げずひたむきに事件と向き合う佐方シリーズ第3弾。
    今回は第2弾の続編的要素もあり、読んでスッキリできた。
    特に短編4話中、後半2話にグッときた。

    女子高生が被害を受けた痴漢事件に対し、我らが佐方が検事生命を賭け罪を裁く。
    勿論いかなる圧力にも屈しはしない。
    検事としての死命を決する闘いは、佐方のクロスカウンターが鮮やかに決まりゾクゾクしっぱなし。
    「秋霜烈日の白バッジを与えられている俺たちが、権力に屈したらどうなる。世の中は、いったいなにを信じればいい」
    死命を賭ける男達の男気には惚れ惚れする。
    佐方シリーズを年内に無事読み終えられて本当に良かった。

  • 罪はまっとうに裁かれなければならない。

    『検事の本懐』に続き、佐方検事の活躍を描く第二弾。
    4つの作品から成る本書は、佐方検事の人間性を知る上で大変興味深いもの。

    特に、『業をおろす』は、十三回忌の場にて、彼の父・陽世が無実の罪で獄死した理由が、古き友の住職・英心から初めて語られる。

    弁護士の職業倫理と正義が対立した場合、どうすれば良いのか?
    死して語らず、父・陽世の苦悩と人間性が明らかとなる。
    感涙必須の物語です。

    一気読み、確実です。

  • 単行本を読んだが、文庫でも再読。解説は西上心太。

    『検事の本懐』に続き、ヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代の活躍を描いた連作短編集。これまで『検事の本懐』が柚木裕子の最高傑作だと思っていたのだが、訂正しなければならない。間違い無く現時点の最高傑作はこの作品である。

    『心を掬う』は、佐方の事件解決に賭ける並々ならぬ信念と類稀なる洞察力を描いた秀作。

    『業をおろす』は、『検事の本懐』に描かれている『本懐を知る』の解決編。まさか解決編が用意されているとは思わなかった。『本懐を知る』でも泣かされたのだが、『業をおろす』でもまた泣かされた。佐方貞人の背景を知る上でも鍵を握る作品であり、『本懐を知る』を先に読み、『業をおろす』を読んだ方が良いだろう。

    『死命を賭ける』と『死命を決する』は、二つで一つの物語になっている。検事としての死命を全うするために権力には決して屈っせず、信念を貫く佐方とその上司の筒井の姿が素晴らしい。

    作品を出す度に成長し続ける柚木裕子という作家から暫く目が離せないようだ。

  • 3作目も検事時代のお話。あれ?「ヤメ検弁護士」はどこへ…(笑)
    どの作品も良かった。正義や職業倫理について考えさせられるものばかり。
    うーん、やっぱり長編が読みたいなぁ。
    2019/9/8読了

  • 弁護士と検事という似て非なる役割を持つ法曹関係者。司法試験合格後にどちらの道を選んでも、本人の意識次第で善にも悪にもなるという教訓に満ちたシリーズです。
    愚直なまでに己の倫理観を全うする佐方検察官の姿に心を打たれます。

  • 佐方貞人の生き方をストレートに表現した短編が4つだが、「業をおろす」では父陽世の汚名を晴らすイベントを企画した住職の英心の度量に心を打たれる.広島弁が出てくるので、各人の心の中が的確に掴める感じだ.最後の2編は、痴漢容疑の武本弘敏の裏面を炙り出す貞人の執念とそれを支える上司たちの動きがうまく絡んだ好著だ.出自だけにしがみついてそれを誇示するしか能のない一族と、出世欲に取りつかれた学歴万能型の上役をうまく蹴散らす貞人の活躍は、読んでいてスカッとする物語だ.面白かった.

  • 父親の事件のくだりは前回の繰り返しでくどい感じはあったが、痴漢事件は、体制に負けない佐方の姿勢が読んでいて爽快だった。

  • 佐方の父の横領事件の真相(本懐を更に一歩進める形)に迫る章では思わず涙ぐんでしまった。
    そして, 佐方・筒井が検事生命を賭けた死命の章(刑事部・公判部編)は顛末を見届けられてスッキリ。南場の佐方への想いが嬉しく, 判決後のふくろうに居合わせたくなった。
    正直なところ, 佐方程の正義を貫いて欲しいかと言われると難しいが, こういう志をどこかに携えていてほしいと願わずにはいられない。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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