【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段

著者 :
  • 宝島社
3.15
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本棚登録 : 731
感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800250858

作品紹介・あらすじ

メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない現代美術家・川田無名。彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。来歴などは完全に伏せられ、類似作が約六億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。しかし唯子は突然、何者かに殺されてしまう。アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運びだされた理由を探るべく、動き出す。幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る-。2016年第14回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。美術ミステリーの新機軸!

感想・レビュー・書評

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  • アートに対する深い愛情が感じられる作品でした。

    語り手はギャラリーの若いアシスタント、佐和子。
    姿を見せない川田無名の作品だけを扱うギャラリーで働いています。
    川田無名の作品はコレクターの間で評判となり、
    莫大な値がつくようになります。
    ある日、川田無名が若い時に描いた貴重な作品がギャラリーに搬入され
    その直後にギャラリーのオーナーが殺害されるという事件が起こります。
    佐和子は事件の真相に迫ろうと奔走することになるのですが…。

    この小説はアートミステリーですが、謎解きとは別に
    途中で語られる美術マーケットの描写がとても面白いです。
    作者は、芸大を出て実際にギャラリーで勤務した経験があります。
    あるインタビューで興味深い発言をしていらっしゃいました。
    ZOZOTOWNの当時の社長、前澤氏が63億円で絵を落札したこと
    姿を現さないことで有名だった河原温さんの訃報に触れたこと
    この二つからインスピレーションを得たと。

    話の中心にある川田無名の作品についても、新鮮な視点を感じました。
    作品は墨で描いたもので、色のついた絵画ではありません。
    墨絵でもなく、書で描いた絵のようなものだと想像しました。
    「伝達手段としての漢字から概念を剥奪し、
    原型である自然の風景に戻そうとした」と表現されています。
    作品の中で、あるコレクターがこのように語ります。
    「宗教みたいなもので、先生は私の神で、私は先生の信奉者だ。
    美術品の購入は、信仰の商品化かな」

    ミステリーとしての作品を期待する読者からは
    あまり高い評価を得ていないように感じますが、
    私は、わくわくしながら読みました。
    知らない世界に、少しだけ足を踏み入れさせてもらった。
    読書って、楽しい!

  • 一切人前に姿を現さない、世界的に人気の高い現代芸術家・川田無名。
    彼とコンタクトを取り、彼の意思の代弁者として作品を独占的に扱うギャラリー経営者・唯子が、何者かに殺されてしまう。
    唯子のギャラリーに勤めていた私=佐和子は、唯子の遺した仕事を引き継ぎ、アジア最大級のオークションへ出品される無名の初期の傑作の行方を見届けようと香港へ…

    一色さゆりさん、初読。
    『このミス』大賞受賞作とあったので手に取った。
    うーん、ミステリ?佐和子の自分探し?
    犯人はこのヒトしかいないでしょ…と思い、その通りの結末で、何なの…?というか。

    現代アートでは、作者自身が手を下さなくても良く、アーチストの意図を汲む工房の人々が作品制作を担うのだというくだりは面白かった。
    作者は芸大出身でギャラリーや美術館に勤務するかたわら作家活動をされているということで、他の作品もその経歴を活かした作品のようだが…

    期待が大きすぎたのかもしれないが、ミステリとしても業界の内幕モノとしても、物足りなかった。

  • されど死ぬのはいつも他人
    現代アート、まさかとは思ったが、やはりマルセロ デュシャンの名言でしたか。
    犯人は予想通りでしたが、衝撃のラストでしたね。
    現代アートの価値は難しい。難問に対する作者とギャラリストの考え方も良かったです。

  • 読んでいる途中はミステリーか忘れてしまうくらい美術に関して深く掘り下げられており、新たな作風だった

  • 最後の怒涛のネタばらしがあまりにも急速で、畳み掛けられるように納得させられた感があるが、ミステリアスな無名や、唯子さん、主人公と、登場人物それぞれのキャラが立っていて読み応えがあった。
    神聖不可侵に思われる美術も、一度世に出てしまうとここまで影を帯びるのだと思うと興味深い。

  • 途中ちょっとウトウトしちゃったけど、結末には満足

  • この本を読みながら、息子が、108歳の篠田桃紅氏の書道アート展へ行ったと、話していたのを思い出した。
    白と黒の空白の良さを感じる事が、出来たと、・・・
    美術やアートに疎い息子が、感じ取る芸術の素晴らしさが、感動へと導くのだろう。

    この本では、作家、コレクター、画商の繋がりやオークションの事柄が、詳しく書かれており、今まで、只、オークションの落札金額だけしかニュースにならない部分しか見ていなかった。

    川田無名という画家、誰にも顔を知ることもないのだが、ギャラリーのオーナーである永井唯子だけが、知っている謎の画家である。
    今や、売れっ子であり、世界のコレクターが、咽から手が出るほど欲しいと言われる作品を生み出している。

    ギャラリーに勤めるアシスタントの佐和子が、主人公である。
    そして美術館のオープンパーティに招かれた唯子と佐和子であるが、唯子は、別れた後 殺されてしまう。

    はじめから、中心人物的な人の殺人から始まり、無名という謎の人物の生死もわからない状態。
    そして、画廊の裏側の確執など、・・・
    展開が、どうなるのか?と、思いながら読み進む。

    オークションの話になると、誰が、落札するのだろうと、気がもめたが、電話での落札も可能なのだ。
    金額の凄さは、小説だから、これだけの額に設定出来たのだろうか?と、思われるほどの価格である。

    佐和子の父親の「価格と値段の違いは?」には、なるほど!と、思いながらも、価格は、需要と供給のバランスに基づいた客観的なルール―での設定であり、値段は、本来価格を付けられないものの価値を表すもの・・・・

    落札の金額とは、値段という事なのだと、改めて気付いた。

    最後の唯子の夫である佐伯が、香港を拠点として仕事をすると言って来た時に、佐和子は、唯子のマンションへ整理に行くのだが、そこで荷物が届く。

    その荷物の中身で、全てが明らかになって聞く過程が、少し、簡単に説明で終わっているのだが、佐伯が、犯人であることの証明が、出来た後の 佐和子に公衆電話からの「作品を大事にしてくれ」の最後は、上手い終わり方だと思って、本を閉じた。

  • ミステリー

    近代美術作品に纏わる作家と画商、コレクターをテーマとした物語。
    マーケットへの売込みやオークション、美術作品の梱包に至るまで新鮮で、美術に対し真摯な姿勢の主人公が犯人へとたどり着く。

    美術館も自粛で暫く行っていないけれど、落ち着いたらまた訪れたいですね…

  • 構成がとても美しくてよかった

  • 久しぶりに読んだミステリー。

    読み終わると同時にふぅっとためいきがでた。

    単調に思える展開、最後にたたみかけるような謎解き。

    アートなど、知らない世界を少し覗き見た感じがした。

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著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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