- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800254856
感想・レビュー・書評
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予想の200%以上に平和なお話でホッとしました。
ムッとくる所とか、残念な気持ちになるところが全くなく安心して読めました。
逆にいうと出来過ぎている、と言うことなのでしょうが、
作中もありましたが
それはそれで物語なので好きなのです。
盛り上がり的なものは正直薄いけれど、
それこそ作中の姉の小説のようで、
その平和さ、日常さがいいなぁと思わせてくれる。
そしてなぜか、本当になんでもないところで不意に泣きそうになってしまった。
出てくる人がみんな良い人で、
あ、嫌だなという登場人物がいなかったのも気持ちがよかった。
よく<姉>というキャラクターが出てくると
それは姉という立場を被った暴君のようなキャラクターが多く
何かのメタファーなのか?と思うほどだったりする。
なんだかんだ<姉>だから、で許されているのも好きじゃなかったりして、それは自分が姉という立場だからなのかもしれないけど、誇張して姉というキャラクターを描く作品だったらどうしようと思っていただけに、ごく普通の<姉>(ひと)でとても安心した。
作中で千葉くんが言う、
人生って何かって考えた、というの。
すごくわかって、バカをバカに思わないようにしたというのも、100%ではないかもしれないけどわかって、
人ってそういう時期を通過するのかな、と思った。
邪気がなく、誠実、直向きな、優しい印象の本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
姉が小説家というだけで どこにでもいそうな大学生の お話。でもなんだか皆が皆 相手を思いやり温かく、続きを読みたくなります。続編が出たら良いなぁ。
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このような生活パターンって憧れるな。
小説家だと見たもの、経験したことがすべて自分の糧になるんだろうから、あれこれ体験しておいて損はない商売なのかも。
小説家でなくても心豊かになると思えば、チャンスがあれば何ごとにもチャレンジですなぁ。うん、そうありたい。 -
すっごく癒される小説だった。
登場人物がみんな健やかに育っていて、何も歪みがない。
作家のお姉さんも真面目で穏やかで、朗人もクールで落ち着いていて、彼女も料理上手で気配り上手で。
そして千葉くん。飄々とブレずに育ってきてる。
とにかくこういう作品は落ち着く。小路さんの小説っていいですね。 -
小説家の姉・美笑に頼まれて一緒に暮らすことになった大学生の弟・朗人。
朗人は、父母から姉の恋について探るよう秘密のミッションを帯びていた。同時に、急に一緒に暮らすと言い出した美笑に対して何か隠しているのではないかと疑問にも感じていた…。
すごく穏やかで良い話。悪い人が出てこない。美笑と朗人、朗人の恋人・清香、朗人の幼なじみの友人・千葉の関係性が良いと思った。
それぞれの人の捉え方が素敵。
特に、千葉が朗人に対して語った思春期に感じた"群れて、人を傷つけたりするバカな連中を見下したりしないよう努力した。自分とは違うレベルにいるしそこから上昇することはないだろうけど、それでも精いっぱい人生を生きていく愛おしい連中なんだって思うように努力した"という考え方がグッときた。
確かに、人を平気で傷つける"バカな連中"ってどこにでもいる。むしろ、大人になってもいる。そういう人間を自分だったら、「所詮、そういう人間」って見下していたなぁ。
そういう人間でも好きになるよう努力するって難しいけど、大事な考え方かもしれない。
中学生にも読んで欲しい小説だった。 -
★でもまあ、「姉は小説家だからね」で済ませてしまえばいいかとも思う。(p.246)
(一)小説家になって一人暮らししている姉が防犯? のために「僕」にしばらく一緒に暮らしてくれと言うがなんか隠してると直感的に思った。
(二)僕と、姉さんと、僕の恋人の清香と、幼馴染で友人の千葉の、なんだかふんわかした日常風景で(小説家の姉がいるというあまりないシチュエーションとはいえ)読んでて楽になっていきます。
(三)「きっと、気持ちなんか少しでいいのよ」(p.236)と姉さんは言った。そんな小説でした。
■簡単なメモ■(★は主要語)
【一行目】物心ついた頃から僕の部屋は二階の四畳半で、畳の上に深緑色のカーペットが敷いてあった。
【朗人/あきと】→竹内朗人
【天野ゆう】作家。同じ新人賞で姉さんの二年先輩。年齢は四歳上。背が高いが高いところに手が届くくらいしかメリットがないと自分でいう。知識量が多く話題が楽しい。朗人は心のなかで「女タモリ」と呼んだ。《私なんて小説書いてデビューしてなかったら、ただのオタクな引きこもりで百科事典にはぁはぁしてる変態女よ。》p.117
【大西実可子/おおにし・みかこ】朗人が高校のとき恋愛感情を抱いていた女子生徒。とある小さなトラウマの原因となった。
【大人】朗人の、いいことを言うときに使えるメモ。《大人になるっていうのは自分の幼い頃を思い出すってことなんじゃないか》p.5
【家族】朗人の、いいことを言うときに使えるメモ。《家族って実はバラバラになってから初めて家族というものを楽しめるんじゃないか。》p.75
【気持ち】姉さん「きっと、気持ちなんか少しでいいのよ」/「好きな気持ちや、嫌いな気持ち。尊敬する思い。そういうのって少しだから毎日をちゃんと過ごしていけるような気がする。あんまりにもそれでいっぱいになっちゃうと、その反対に何かがこぼれていっちゃう」p.236
【木本達男/きもと・たつお】編集長。男性。姉さんの最初の担当者だった。《種は何でも蒔いておきたい》《将来の作家の種、有能な編集者の種、良き読者の種、あるいは自分の大好きな作家がさらに飛躍するかもしれない種。》p.103
【ケンタ】千葉の飼い始めた猫の名前。ケンタッキーを食べたくなって外出したときに見つけたからだとか。
【佐々木】高校の同級生。書道部部長。美笑のファンらしい。
【幸せ】《幸せな未来を想像することは、気持ちがいいと思う。今、わかった。》p.246
【小説家】《小説家になって、自分でいちばん驚いたことのひとつは、今までの人生で常に人間観察をしていたんだなってことだそうだ。》p.61。小説家にはヘンな人が多いそうだ。それはまあ、そうでしょう。
【竹内朗人/たけうち・あきと】「僕」。背が高く一八八センチある。千葉「何かが起こる一瞬前に本能で察知して、お前は必ず一歩下がるんだ。しかも誰にも気づかれないように」p.112
【竹内美笑/たけうち・みえ】「僕」の五歳年上の姉さん。小説家になった。猫好きだが軽い猫アレルギー。
【千葉大貴/ちば・だいき】親友とまでは言い難いが「僕」とは幼稚園から大学までずっと同じ。最も長い時間を過ごした友人ではある。笑顔がいい。モテるが女性と食事するのは嫌い。ものごとを分析するのが好き。父親は市役所の職員。清香《いつでも微笑んで人当たりはいいけれど、熱量を持たないっていうか》p.38。熱量を持たないのは朗人も同じように見えるが? 最近猫を拾ったので飼えるマンションに引っ越した。《お前だって知ってるだろ。俺には荷物というものがほとんどないのを》p.67。清香「千葉くんって飄々としてるってずっと思っていたんだけど、あれは何か違うところを見ているからそう感じるのかなって最近思った」p.129。姉さんのことを「あねさん」と呼ぶようになった。つけているコロンの香りとか、小さなことにもすぐ気がついて動けるところが「僕」はちょっと苦手。
【特別】《何をもって特別とするかは気持ち次第で、見方次第で全然変わってしまうんだ。フィクションという嘘じゃないけど、〈ある出来事〉という日常の中での特別なものは存在するんだ》p.179
【姉さん】→竹内美笑
【橋本みお】編集者。姉さんの新しい担当。ベリーショートの超美人。「ナントカ48」とかでセンターを取れそう。姉さんより二歳年上。
【日々の坂】姉さんのデビュー作。とても地味。姉さん自身もとても地味な人。
【僕】→竹内朗人
【松下清香/まつした・きよか】「僕」の彼女。島根出身。父はスーパー経営。「僕」と知り合う前から美笑のファンだったので付き合いだしてから弟だと知って驚いた。母親の実家が京都で料亭をやってるらしくとても料理上手。
【美笑/みえ】→竹内美笑 -
穏やかな小路さんの世界。お姉さんの小説は、きっと小路さんのような作品なんだろうな。偶然、多いよねぇ。でも読んで幸せな気持ちになれるなら、それでいいと思う。優しい気持ちになれる話。
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お姉ちゃんと僕の兄妹の日常を物語にしている。読み終わった時に、ほんの少しのミステリーが入っていたことに気づいた。
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優しい世界...。千葉君とお姉さんについての話で物語は終わったけれど、主人公の将来のことをもう少し知りたかった。偶然が多い姉の小説の中では、千葉君の担当編集者になっているのかもしれない、と考えてみたりして。
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ゆるゆると静かに心地よく日常の物語は進む。少し特異なのは姉が小説家というだけ。みな優しい。小野寺文宣の作品も軽々と買いてしまう。すごいなぁ。