血の季節 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800258564

感想・レビュー・書評

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  • 実は読んでから20年以上経ち、その時めちゃくちゃハマって、それ以降、著者の作品を片っ端から探して読んでいたけれど、この本は貸したまま返ってこず。その後、絶版になっていたのが再販され、すかさず購入したものの、まだ読んでない。ゴシック、吸血鬼、そういうキーワードだけれど。

  •  1982(昭和57)年作。
     帯の宣伝文句に「復刊希望! 幻の名作ベストテン第2位」「ホラー×ミステリの隠れた大傑作がついに復刊」と書かれていて、「ふうん、そうなんだ」と買ってみた。
     通読してみて、なるほど、これは面白い。
     まあ、確かにミステリにもなっているが、それよりもホラー小説としてよく出来ている。ヴァンパイアという、確かに日本の風土には相性の悪い主題を使いながら、戦時に青春期を迎えた主人公の追想がなかなかの深みを持って描かれ、説得力があった。
     昭和20年春の東京大空襲の場面もなかなか鮮烈だ。あとがきを読むと、1934(昭和9)年生まれの作者も同様に空襲を体験したようだ。どうも私が最近読む小説にはしばしばこの「東京大空襲」の場面が登場するのは奇妙な暗合だ。
     この衝撃的な空襲と、そこに至る時代の暗がりとが、物語が暗みへと墜ちて行くプロセスとが同期して、見事な効果を生んでいる。
     良い小説。しかし、この作者は「これ1作きり」の人だったのかもしれない。

  • 幼女誘拐殺人を追う警察の視点と犯人の独白で進むストーリー。
    「このミステリーがすごい! 2014年版」の企画第2位の復刊。

    ミステリーともホラーともなんとも分類できない世界観。
    というより、少年時の耽美な回顧録といった印象が強い小説だったな。

  • 記録

  • 「犯人」の回想シーンや逮捕につながる経緯など、物語部分は普通。種明かしというか、推理パートの運び方はちょっと目新しくて、おっ、と思ったけど、それだけで、何だか物足りない感じで終わった。
    200906

  • 3

  • 古い作品だからか、吸血鬼の描写など既視感があった。主にミステリーの要素が強く、あらすじにあったようなホラーとの融合は感じられない。
    最後のドキッとする後味の悪さはいい。警部が闇堕ちする展開もあるかと思ったけど何もなくて拍子抜けした。

  • お勧め度:☆5個(満点10個)。いやあ、なんかちょっと読みづらかった。40年前の青山墓地での幼女惨殺事件を題材として展開していく・・・が、最初は読み易く面白そうと思ったけど、次第にホラー色が強くなり最後にはドラキュラ?西洋色が強くなった。ちょっと理解不能。ただ単に犯人の独白が続き少し飽きる。もう少しわかりやすくならなかったのか?とも思う。ミステリーとホラーは紙一重みたいなものだから雰囲気は理解できるけど、ドラキュラは無いんじゃないか・・・。ちょっと私には合わなかったような気がする。リアリティなさ過ぎ!

  • なるほど、タイトルの意味はドラキュラをモチーフとしてる作品だったからなのか。

  • ○ 総合評価  ★★★☆☆  
    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
    〇 熱中度   ★★☆☆☆   
    〇 インパクト ★★★★☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★☆☆☆☆

    〇 メモ
     オビに記載されている紹介文は「吸血鬼+サイコパス+警察小説。彼女はもう,この時点ですべてやっていた。」(恩田陸)。2014年の「このミステリーがすご!」で「復刻希望!幻の名作ベストテン」の第2位の作品だそうである。
     この作品は3つの時制から構成されている。序章と終章は,弁護士の視点から描かれている。「青山霊園内幼女殺人事件」の弁護人である弁護士の視点である。
     序章と終章の間は,昭和12年から昭和20年までの「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者の回想と,昭和50年代の「青山霊園内幼女殺人事件」の捜査が描かれる。
     このミステリの肝となる部分は,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者である人物や,その回想に出てくるラドラック,ヘルヴェティア公国の公使夫人,ルルベル,Kという少年が,「吸血鬼」だったのかという点である。
     終章では,2通りの解決が示される。1つはラドラックが吸血鬼であり,公使夫人,ルルベル,Kという少年のいずれも吸血鬼になり,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者である人物も吸血鬼だったという解決。もう一つは,吸血鬼など存在しないとう解決。いずれにせよ,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者は,狂人ではなく,刑事責任を負わせることができるという結論となる。容疑者は死刑になるのだが,「「ギロチン」ではないな」と呟き,その死体は,駐日外国公使館でメイドとして住み込み働いていたという老女に引き渡される。
     最後の部分でも,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者が本当に吸血鬼になったのではないかと思わせる描写で終わる。とはいえ,吸血鬼であるというような断定的な記述はない。いわゆる,リドル・ストーリーのような体裁となっている。
     さて,この作品。面白かったかと言われると…どうだろう。1982年の作品という古さもその原因の一つだと思うが,サプライズがない。「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者が,吸血鬼だったのかどうか。その点をあいまいに終わらせるというリドル・ストーリーとしての体裁そのものはそんなに古臭くない。ただ,叙述トリックがあるわけでもなく,読者を驚かせようという仕掛けもない。戦時下の少年の描写や,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者の逮捕までの刑事の視点の描写のいずれも,小説としては上手い,読ませるデキだと思う。全体的に評価の高い小説だということは分かるのだが,あまり好みの小説ではない。ただ,微妙な読後感も併せて,心には残る小説である。トリックらしいトリックは,作中で犯人が仕掛けるようなものもないし,作者から読者対して仕掛けるようなトリックもない。ミステリというより小説としての面白さが評価されている作品だろう。作品としては耽美的な描写とリドル・ストーリーという描き方が少しミステリっぽくはある。小説としての出来がよい分,描写が繊細でしっかり読む必要がある。ミステリとして先を読みたいと思わせるような仕掛けがなく,先が読みたくて仕方ないと思わせるような構成になっていないので,熱中度は低め。キャラクターは人間描けているという点では評価できるが,序章と終章に出てくる弁護士や博士,回想に出てくるルルベルやKという少年,捜査の場面に出てくる刑事などのキャラクターは弱い。
     好みの作品ではないが,インパクトのある作品であり,評価としては★3としたい。

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著者プロフィール

1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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