どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

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著者 : 中山七里
  • 宝島社 (2017年5月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800271044

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どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • 天才ピアニストにして名探偵の岬洋介が、高校時代に遭遇し、その真相を暴いた最初の事件。
    メーンは殺人事件の犯人捜しだが、むしろ、転校した高校の音楽科で、岬とクラスメートとの間でその才能の違いによる諍いを巡る、青春小説の趣き。
    『連続殺人鬼カエル男』を読んだ直後では、これが同じ作者の作品だとは、とても思えない。
    そしていつもながら圧巻なのは、岬のピアノ演奏を言語で表す著者の語彙の豊潤なこと。恩田陸著『蜜蜂と遠雷』と比較してしまう読者も?
    彼が弾く『月光』と『悲愴』の場面では、家にあったレコード(ピアノ・フチードリヒ・グルダ)を思わずかけながら、読んでいた。
    しかし、演奏のどの部分が著者の文章に対応するのか、半可通の読み手にはわからなかったのが実情(笑)。

  • 岬洋介シリーズのエピソードゼロ。クラスメイトの殺人事件に巻き込まれた岬先生の話で、何故『ベートーヴェン』なのか、勘が鋭い人は察することでしょう。ミステリーというよりは、音楽科という特殊なコースに通う学生たちの青春ものとして楽しめました。また文庫版には岬先生の父親、岬恭平が主人公の書下ろし短編『協奏曲』もあり、御子柴礼司が名前だけ登場というサービス満点仕様になってます。

  • 久々に岬シリーズ
    相変わらず演奏の描写が鬼気迫る
    今回ミステリはちょっとうーんという気がしたけど。。。
    難聴になってしまったのはこの時代なのね
    嫉妬に狂ったクラスメートは本当にくず。恥ずかしい限り
    サイドストーリーも良かった

  • 『さよならドビュッシー』や『いつまでもショパン』で
    おなじみのピアニスト探偵・岬洋介の高校時代
    高校生ながらも大人びて、純粋な岬洋介
    友人で心優しい鷹村が、ハラハラするくらい愛おしく
    若さゆえの残酷さが、悲しく感じる
    軽快なミステリーで、サクサクと読み進められる

  • おお、新作が出ている、と購入。
    この人の音楽ミステリー(と言っていいのかわからないけど)好きだなぁ。

    音楽というか芸術にかける、かけたい人間の挫折と夢みたいなものを容赦なく描くよなぁ、と読んでいていつもおもいます。勿論、努力は必要。さらに才能がなければ食っていけない世界で、大多数はただの一般人で終わるんだけれどももしかしたら、という可能性を捨てきれない。なんてシビアな世界に生きるんだろう…と身がすくむ感じです。
    さらに言えば音楽科、なんて狭い枠に閉じ込められた彼らが揺蕩っていた平穏というぬるま湯にいきなり飛び込んできた液体窒素みたいな才能の塊。そりゃあまあ、事件も起きるだろうなぁ。

    まあでもこのお話に関しては殺人事件や真犯人がどうとか言うよりも才能のある岬君とまだ大丈夫だろう、まだ良いだろう、と許されたような気になっていたモラトリアム真っ最中のクラスメイトとの考え方の差や確執がメインなんだろうなぁと思いました。犯人とか動機とかはともあれ、自分がただの凡人であると知るというのはある意味残酷な事だよなぁ…という事が重かったです。
    でも、だからこそ天賦の才を持った人を尊敬できるんだろうな、とも思うんだけれどもそれは自分がそれなりに年を取ったせいだろうか?

    とりあえず面白かったです。次もあると期待して、楽しみに待ってます。

  • ミステリーではあるけれど、謎解き要素は薄め。クラシック濃度が高め。あの岬洋介、高校生の物語。
    本作品を通してつきつけられる「才能ある人の存在」。もつ者ともたざる者、その差は残酷だ。私はもちろんもたざる者で、語り手に同調する部分が大きかった。現実から目をそむけて、諦めて、諦めきれなくて、嫉妬して、距離をとって…。岬が才能に自覚的でもっと嫌な奴なら良かった。無自覚だからこそ、クラスメートの嫉妬・憎悪をいっそうにあおってしまったのかもしれない。人の嫉妬を、読者という一歩引いた立場で見ると、とても醜い。でも、これが当事者であれば、その醜さに気づけるだろうか?案外、彼らに同調してしまうのかもしれない。ずっと、胸に小さなしこりを感じながら読んでいた。
    でも、もつ者であるはずの岬も、一方ではもたざる者。この展開、満を持してのベートーヴェンなのだったと思う。

    そう、確かにミステリー要素は薄め。でも、さすがは中山七里さん、粋な仕掛けをありがとうございます。

  • ◆どこかでベートーヴェン
    表題作。
    「岬洋介」シリーズの過去編に該当する作品です。
    岬先生が高校生の頃の話で、初めて殺人事件に遭遇します。

    高校時代の岬は、「天然でKYなコ」というイメージです。
    作中で酷い目に遭いますが、黙って耐える芯の強さやピアノに関しては頑固な面があります。
    そして、無意識にBLっぽい空気を作る困ったところもあります。

    当作は、岬と仲良くしていたクラスメイト・鷹村の視点で物語が進行します。
    鷹村は複雑な家庭の中で育っていて、既に自分の才能に見切りをつけています。
    見た目や頭、ピアノの腕前が優れていて、子供のように純真な心を持つ岬に羨望や嫉妬心を抱いています。

    鷹村は、何度も「ノンケなのに」と思いながら岬にドキドキしています。
    あまりにもしつこいので、「もう分かったから」とウンザリしたくらいです。
    「おやすみラフマニノフ」の晶くんとの方がBLっぽいと思いました。

    父親の転勤がキッカケで、岬は音楽科のある高校に転校します。
    加茂北高校は新しい学校で、山を切り開いて作られていました。
    加茂北高校には音楽科が併設されていて、ピアノでは逸品と言われるベヒシュタインが置いてあります。

    音楽科の生徒は、真剣に「プロになる」という志は持っていなくて、学力は普通科よりも劣っていました。
    岬という天才型のピアニストが現れたことで、クラスメイト達は劣等感に苛まれます。

    夏休みに入っても、音楽科の生徒達は発表会の練習をする為に登校しています。
    大雨のせいで電話は不通になり、学校の傍にある崖が崩れてしまいます。
    しかも川は荒れて橋が壊れたことで、校舎内にいる先生や生徒達が閉じ込められます。

    岬は危険を顧みずに、倒れた電柱を橋替わりにして渡ります。
    そのお陰で、鷹村達はレスキュー隊に救助されます。

    実は、同じ時間帯に殺人事件がありました。
    被害者は音楽科の生徒で、サボって教室を出てからは「帰ったのではないか」と思われていました。

    大雨の上、川が荒れているので、出歩いている人は滅多にいない状態だった。
    校舎のある側から見て、対岸の下方の道端で死体が発見された。

    以上の理由で、岬が殺人容疑を掛けられます。
    しかも、被害者は岬に絡んだり暴力をふるったりしていたので、「殺害の動機は充分ある」と警察は決めつけてきます。

    しかし、岬の父親が有能な検事ということを知ると、警察は掌を返すような態度を取ります。
    「浅見光彦シリーズにもこんな流れがあったな」と思いました。

    事件の真相は、「その辺にある石で殴ったら、被害者が体育館側にある崖から落ちた」でした。
    「そんな単純なオチだったの?」と絶句しました。
    水嵩が増えた川によって、被害者の死体が発見された現場まで運ばれたようです。

    「『岬洋介』シリーズは、事件は二の次だから」と言い聞かせました(笑)
    当作のメインは「岬少年の暗黒時代」ですから。

    岬先生は、クラスでの苛めよりも突発性難聴やクラスメイトの死に胸を痛めています。
    基本的に、岬先生は浮世離れした感じの優しい人ですが、暴力に対して抵抗する力があったり強かな面があったりします。
    物語が進むと、精神的に参っているのか、セリフに皮肉が入っている気もします。

    「さよならドビュッシー」でも思いましたが、苛め方が昭和のドラマか少女マンガですね。
    被害者・岩倉よりも、板台や美加の苛め方が胸糞悪かったです。
    私の偏見かもしれませんが、「イケメンピアニストに殺人容疑が掛かったら、女子は味方に回るのではないか」と思いました。

    鷹村に関しては、モヤモヤするところがあります。
    鷹村は早い段階で犯人が分かっていましたが、好きな相手だったので岬には黙っていました。

    岬がクラスメイトから苛めを受けている時、唯一、鷹村が庇っていました。
    友情というよりも保護欲によってだそうですが、「早く事件にケリをつけた方が、岬が責められなくて済むんじゃないか」と思いました。
    本当に犯人や岬が大切ならば、すぐにでも「僕がやりました」と言うんじゃないかしら。
    そんなことをしても、岬に嘘だと見破られそうですが。

    犯人も岬を庇っていたし、想いを寄せていたのに、事件のことをダンマリしていたのね。
    早く自白すれば、岬が責められなくても(以下略)。
    それでは話が即終わってしまいますけどね。

    そもそも、鷹村の恋心(?)はダダ漏れですが?

    「エピローグ」は蛇足な気もします。
    次作の仮タイトルが「もう一度ベートーヴェン」らしいので、鷹村が絡んできそうですね。


    ◆コンチェルト
    「どこかでベートーヴェン」と同じ時期(厳密には、殺人事件が起きる前)の話で、岬の父親が主人公です。
    以前は埼玉で検事をしていましたが、ある事件の判決で負けてしまい田舎の地検に飛ばされます。

    アリバイは立証が難しく、前科持ちで近所からの評判は悪い。
    極め付きは、凶器に指紋がベットリと付いている。

    調書を読む限り、すぐにでも起訴出来る案件なのに、岬検事は腑に落ちません。
    息子・洋介の意見を聞くことで、違和感の原因が明らかになります。

    「明らかに怪しい人間は、大抵犯人ではない」

    「息子が怪しい?でも、心から父親の死を悲しんでいそうだから被害者が自害したのか?」

    ミステリをよく読む人間ならば、上記のように考えそうです。
    但し、容疑者の指紋をどうやって調達したかまでは分かりませんでした。

    これまで、岬先生の父親は「厳格で冷酷な男」という印象がありました。
    「母親は父親のせいで精神的に追い詰められて亡くなった」と勝手に思っていましたので。

    検事という仕事に誇りを持っていて、息子が優秀なこともあって「同じ道を進ませたい」と期待しているようです。
    「頑固で不器用な人だなあ」と思いました。
    当作を読んだことで、「最低なオヤジ」と思っていた岬先生のお父さんの好感度が上がりました。

  • 本作は、岬洋介が高校生の頃に高校で起こった事件です。本作は、設定がわざとらしいというか・・・進行上必要だからとかなり強引な展開に感じました。それに、そんな理由で殺人までするかねという根本的な疑問。従来のシリーズが良かっただけに、本作は残念です。

  • いつまでもショパンで岬先生ももう音楽活動は難しいな…と思ったも束の間、続編が出た!
    読んでみたら時代を遡って高校時代の岬洋介くんが大活躍する。そう来たか!ズルイな…でも嬉しい。

    田舎の高校の音楽科に天才的な技術を有する転校生が現れる。彼の才能は認めるものの己の才覚の無さを見せつけられるようで皆彼から距離を置く。しかも岬くんは殺人事件の容疑までかけられる。
    岬くんもお友達の鷹村くんも高校生にしては賢すぎるけど…まあ、いいか。

  • 岬洋介氏が高校生だったときの,人生初の事件.どちらかというと音楽とミステリィ,以上に音楽にまつわる人生訓,に比重を持っていかれている感は否めないが,物語への登場と退場での演奏風景描写は絶品.読了後に題名の哀愁が胸に染み込む.

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どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の作品紹介

加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに"最初の事件"に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が…。

どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)はこんな本です

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