新版 環境と文明の世界史 (歴史新書y 41)

  • 洋泉社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800302854

作品紹介・あらすじ

現代型新人の誕生から異常気象の現代まで-地球環境の視点から人類史を辿る壮大な試み!

感想・レビュー・書評

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  • 【由来】
    ・図書館の新着資料を確認していて興味を持った。

    【期待したもの】
    ・環境についての基本知識。

    【要約】


    【ノート】
    ・環境学、地政学、歴史、経済学、経済史学が入り交じって色々と面白い。これらを総称して「環境史」と言うらしい。J.ダイアモンド的な匂いがする。色々な分野の知見が縦横無尽に展開され、学際の面白さってのはこういうことかと感じ入った。

    ・「○○文明は**の侵略により滅ぼされた」なんて教科書では数行で終わっている歴史の常識が、鉄を生産するために火力が必要で、そのために森が伐採され尽くしたことが滅亡の一因、なんてのが大変おもしろい。鼎談形式なので、それぞれの説に対する精緻な検討や背景が語られているわけではないが、少なくとも彼らの間では、そのような考え方が共有されてるわけで、自分にはダイアモンドの著作よりも面白く読めた。ただ、世界史についての基礎知識がないので、その面白さは半減しているのだろうなと思う。きっと、自分の目には、この鼎談によって落ちるほどのウロコすら、まだこびりついていないってことなのだろう。

    ・本筋から外れるが、本書を読んでて浮かんだ疑問。「国家」という概念は昔からあるものではないらしいが、では、その頃の人々にとって「ふるさと」という概念はどのようなものだったんだろう?いつからあるものなのか?つまり、慣れ親しんだ地域から隔離された状態がないと「ふるさと」「郷愁」は想起されないでしょ。古事記の「からこるむ」は、ふるさとを想っている?ちなみに「おもなしにして」ということなんだけど、その頃、そういう境遇の子どもたちは共同体で面倒を見てくれたんだろうか?でもそれが社会的コンセンサスだとすれば、この歌のように心配はしないよなあ。

  • 学校教育の中で培ってきた歴史観が覆される。なんて言っても、私自身、歴史の授業で何を教わったかなんてほとんど覚えていないのだけど。それでもこの本を読んでいると、教科書に書かれているのがいかに表面的なことであったのかがよく分かる。だいたい歴史の教科書だって、1つの発見(発掘)によって書き換えなければならないことが多い。まったく絶対的なものなどではない。本書では異分野からの3人によって、環境の歴史をテーマとして多面的な発言がなされている。それにしても3人そろって西洋文明を悪く言っているのは面白い。ちょっと日本を持ち上げすぎかなとも思うけど。ヨーロッパは家畜の文明、日本は稲作の文明。前者の方がエネルギー消費が多い。家畜を育てるためにまたその飼料が必要となる。肉食が文明を滅ぼすのかも知れない。古代、鉄をつくるために木を切り倒してきた。中国では木を燃やして鉄鍋をつくった。そして中華料理をつくった。食べきれないほどたくさんな量を。お皿に盛られた料理を残すのが礼儀だそうだ。私などは米粒1つ残さないようにしつけられたものだけど。ヨーロッパは長年森を食いつぶしてきた。木を切って樽をつくってワインを貯蔵した。森がなくなってしまったことを悔い改めて新たに森をつくった。スイスの森林の9割が人工林なのだそうだ。こんなエピソードが満載。読みながら思わずうなずいてしまう。日本には昔ながらの森がいまも多く残っている。21世紀、日本人だからこそできることが何かあるのではないかと思えてくる。産業革命以来、人間は楽な方へ楽な方へと向かってきた。これは便利だと使っていたものが後に有害であったと分かる。同じことを何度も繰り返していながら気付かない。気付いていてもやめられない。これ以上便利にする必要があるのだろうか。これ以上発展する必要があるのだろうか。ちょっとスローダウンしてはどうだろう。少し不便でもゆったりした時間を過ごしてみてはどうだろう。環境の歴史を学ぶことで、21世紀の生き方のヒントが得られることだろう。さらに古くなりますが、安田喜憲著「森を守る文明・支配する文明」(1997年発行、PHP新書)も非常にわくわくしながら読んだ覚えがあります。

  • ネアンデルタール人やマンモスのいた時代から、現代まで20万年にわたる人類の歴史を、環境という視点からたどってみるという試みの本である。
    発展という名のもとに行われてきた、とどまるところを知らぬ資源の大量消費は、森林の喪失、水の枯渇環境の汚染、伝染病の発生などを招き、各地に栄えた文明を衰退、滅亡させてきた。
    それなのに、いまだに人類はその愚を繰り返そうとしているが、それは今や地球規模の問題となっており、一文明の滅亡ではなく、地球自体の滅亡を意味するものだと警鐘を鳴らしている。
    とはいえ内容的に言えば、あまり環境という視点にこだわらずに、かつて中学や高校で習った文明史のおさらいとして読んでみても面白いのではなかろうか。

  • 「西暦536年の謎の大噴火と地球寒冷期の到来」を読んで以来、地球環境の変化がヒトの活動影響だけでなく、地球環境自体が過去何千年・何万年も大きく変動していることが気になりだしました。その時、書店で目に入ったのがこの本。
    個人的に大当たり。環境とヒトの文明の鼎談本。そのため読みやすく、分かりやすく、新しく知る事実もとても多かったです。
    ヒトが地球環境を守ると言うことがどういうことか、考えてしまいます。
    これまで自然とヒトは共存せず、ただヒトが生きるためには自然を破壊せずに生きられなかったのかなと考えたりします。

  • 今読んでいる最中ですが,今のところ文句なしの五つ星です.知らなかった話がたくさん書いてあり,大変勉強になります.

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著者プロフィール

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授、東京農業大学教授を歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

「2022年 『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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