バッドエンドの誘惑~なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか~ (映画秘宝セレクション)

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 119
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800311818

感想・レビュー・書評

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  • 後味が悪い、救いのない映画。そんな映画に惹かれてしまうのは何故だろう?気鋭の映画評論家が挑む、衝撃のバッドエンドムービー評論集。タイミングの悪さ、先の見えない絶望、イヤな女に子供の不幸、そして美しい残酷で彩られた国々の映画。後味の悪い映画を分類し読み解くことで、映画の新しい魅力を導き出す。
    バッドエンド映画は、もちろん見終わったらズーンと沈んでしまうのだが、たまたま運の悪い方に進んでしまった人間の悲劇を通して、たまたま運の悪い方に進んでしまった人間の心理を紐解くことで、現実の人生がバッドエンドにならないようにサバイバルするために役立てることが出来る映画です。
    「タイミングの悪さが原因で運命が悪い方向に進んでしまった映画」では、スティーヴン・キングの「ミスト」の主人公の判断の速すぎたこととタイミングの悪さが悲劇に繋がったこと、「ミスティック・リバー」ではあと1日待てなかったことが悲劇に繋がったことを通して、適切なタイミングを図ることと正しい決断をすることの難しさが学べる。
    「支配され支配する者同士のせめぎ合いをテーマにした映画」では、「恋するリベラーチェ」のかりそめの愛情で恋人を支配する者と相手に対する嫉妬と怒りで人生を狂わせる男を通して、「愛」というゲームでは欲望で割り切る者が勝つというゲームの非情さと報われなさが学べる。
    「わずかな喜びのために尽くしても報われない映画」では、「ぼくのエリ」での吸血鬼少女に血を調達したりする初老の男と吸血鬼少女に恋する孤独な少年を通して、「ヒメノワール」でのいじめで人生が狂い残虐な殺人に手を染める森田を通して、わずかな喜びのために手を汚すまで尽くしても報われない残酷さが学べる。
    「世界イヤな映画紀行」では、韓国映画の凶暴なバイオレンスと恨みや怒りなどのねちっこい描き方の情念、メキシコ映画の心理的な暴力性、イギリス映画の階級社会の格差がもたらすイヤな感じ、デンマークやオランダの映画の特徴を、具体的な作品を例にあげて解説している。
    イヤな映画が好きな人には、参考になる映画解説本です。

  • "映画を終わった後味の悪さの魅力を語ったユニークな本。ただ、その宿命のためあらすじを語らなければならず、これから見たいと思っていた作品は飛ばし読むほかない。
    思いのほか、観ている作品が多かった。自分もバッドエンドの誘惑にしびれるタイプかもしれない。"

  • 嫌な映画好きにはたまらないガイドブック。入手困難な作品もある。副題の嫌な映画に惹かれる理由は解明されないが嫌な気分になる映画が紹介されてるのは凄く良い。スター80が見てみたい。

  • バッドエンド映画を紹介してくれています。ネタバレ含むので、タイトルをメモ。ほとんど観てない。楽しみだ。

  • 一時期、後味の悪いミステリー小説、通称イヤミスなんてのが
    流行った。本書はその映画版。観終わった人をイヤ~な気分
    にさせる映画の紹介本。

    なんだけどね、思ったのと少々内容が違った。この副題だから
    観る側の心理分析でもあるのかと思いきや、全編これイヤ映画
    のあらすじ紹介の本だった。

    まぁ、どれだけその映画がイヤなのかはあらすじを書かないと
    分からないと思うけどね。文章が途中から1人称になったり、
    映画で国柄を語ってみたりと、いささか読むのに労力が必要
    だったのは、著者の文章が私の好みに合わないからかもね。

    取り上げられている映画をほとんど観ていないのも影響がある
    のかもしれない。「サンセット大通り」と「ミスト」くらいしか観てない
    ものな。

    ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの「暗黒街のふたり」なんてバッド
    エンドの映画だと思うんだよね。モーガン・フリーマンとブラット・
    ピットの「セブン」の結末なんて救いがないし。

    フランス・ロシア合作の「パパってなに?」なんて「あ、これで終わり
    か」と思った後に「なんでそう来るか」って終わり方だったし、スペイン
    映画「蝶の舌」は美しい映像なのに結末はやり切れなかった。

    単純に楽しめる映画も好きだけれど、バッドエンドの映画も決して
    嫌いではない。フランス映画にこの手のバッドエンドが多いと思う
    のは私の偏見かな。

    本書は内容的に私には合わなかったけれど、このタイトルは秀逸
    だと思うわ。

  • まったく未見の作品ばかり。今後進んで観たいかというと、そうではないが。

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著者プロフィール

映画評論家。愛知県生まれ。共著に『鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979』『金田一耕助映像読本』『映画秘宝EX 映画の必修科目』シリーズ(いずれも洋泉社)、『戦う女たち――日本映画の女性アクション』(作品社)、『日本映画は生きている(5) 監督と俳優の美学』(岩波書店)など。

「2014年 『映画系女子がゆく!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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