茶の本 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)

  • 致知出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800910370

作品紹介・あらすじ

日本人の心のふるさとを知るための書。全文をとことん読みやすくした101分で読める本。

感想・レビュー・書評

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  • 茶道は、不完全な物を崇拝し
    至上の美を追求する宗教

    ✏︎岡倉天心がボストンでの生活を通じて、日本の茶の文化を世界に伝えるために書いた本。原文は英語。

    ✏︎西洋における完璧な美を芸術とする考え方と、東洋における不完全な物から美を追求する姿勢を芸術と捉える考え方の違いが印象的でした。

    ✏︎利休が育てた美しい朝顔の花畑を秀吉が見にくる際に、利休は一輪の朝顔を除き、全てを刈り取ってしまった。秀吉は、一輪の美しい朝顔をもとに、秀吉自身の心で朝顔を楽しんだ。

    ✏︎不完全なものから何かを成し遂げようという姿勢を学び、何気ない慌ただしい日常の風景からも、美しさや儚さを感じることのできる余裕のある人間なりたいと思います。


    ✏︎茶道は、「至上の美を追求する宗教」

    ✏︎茶道は本質的に「不完全なもの」を崇拝する。それは、私たちが「完成されないもの」と自覚する人生において、それでも「実現可能な何かを成し遂げよう」というはかない試みを続ける存在だから。

    ✏︎中国において、少なくとも4〜5世紀には、お茶は普通に愛飲される飲み物になっていた。そのご、中国国内で理想のお茶を求めて壮大な文化が繁栄していたものの、13世紀にモンゴル民族に征服され、元となったことで、茶の文化が途絶えてしまった。

    ✏︎しかし、日本においては、飛鳥時代792年に聖武天皇がお茶を振る舞って以来、他の国に征服されることはなく、茶の文化が生き続けてきた。よって、茶の文化の理想の頂点は、何と言っても日本における茶の湯文化の中にある

    ✏︎道教の「道」は「時間の流れ」のこと。「道」は宇宙的な変化の精神であり、そのもの自体が常に新しい形を作って生まれ変わろうとする、永遠の成長を示す。

    ✏︎茶道のあらゆる理想は、人生のもっとも小さな出来事にも偉大な概念を見出さそうとする、禅の思想が生み出したもの。

    ✏︎道教が茶道の美の理想の根底を作り、禅はそれに理想を与えた。

    ✏︎私たちの心は、芸術家たちが色を乗せるキャンバス。芸術作品は私たち自身であり、私たち自身が芸術作品。芸術作品の価値は私たち自身の中にある。

    ✏︎茶人は、「芸術は、それを自身の生き方に反映させる人によってのみ、理解できるものだ」と考え、自分が一つの美的な存在になるよう、厳しく自己を律していた。

  • 天心先生の気概と道教の導きを感じずにはいられませんま。

  • 茶の本3冊目(笑)

    現代語訳なのでわかりやすいけど、英文をそのまま訳した日本語の言い回しで、肝心の内容は角川の新訳の方が印象に残ったなぁ

    そっちの新訳の方をもう一回読もうかな。

  • 英語のまま読んでみたいな。1906年に岡倉天心の書いた本。ひしひしと東洋の文化への理解や関心が無かった時代への彼の怒りを感じる。今の時代では、伝わってきているよ、良かったね天心さん。
    最近茶道を習いはじめて改めて読んでみた。学ぶより体験するほうが感じることは多いけど、改めて文章から感じたのは、儚く脆く苦しい世の中を、昔の人たちも、小さなオアシスをつくり、創造性想像力を発揮して、美しさと愛を追求しながら生きようとしてたんだなと。生きるための芸術。必要なのは物じゃない頭脳でもない。美を愛を生を楽しむ心だ。

  • ずっと気になっていて初めて読んだ

    P49,50
    15世紀のにほんにおいて茶道に発展したのはもとは禅の儀式
    中国南方の禅宗の一派
    菩提達磨の前に集まり、うやうやしい聖餐をとるような形で、一つの鉢に入れたお茶を皆んで飲みました

    まさに今の濃茶の姿

  • 茶道の入門書ではなく、茶道の本質・根本をわかりやすく解説しています。

    茶道をしている人だけでなく、始めようとする人に、読んでもらいたいですね。

  • お茶の話から日本人としての心まで書いてある

  • 『東洋の理想(The Ideals of the East-with special reference to the art of Japan)』
    『日本の覚醒(The Awakening of Japan)』
    『茶の本(THE BOOK OF TEA)』

    岡倉天心が生前、発表した著作です。天心三部作。すべて英文で書かれています。
    3冊並べればわかると思いますが、亜細亜文化、日本文化に関する内容が書かれています。『茶の本』はけっして茶道についての本ではありません。日本文化は「茶」に集約される、と天心はいいます。「茶」は象徴であって、本質は日本文化論になっています。

    天心は江戸時代末期に、すでに開港していた横浜で生まれ育ちました。幼少のころから英語に親しみます。後年、
    「俺はアメリカ人より英語がうまい。アメリカ人よりアメリカの歴史を、社会を知っている」
    と豪語したそうですが(実際にそれだけの語学力もあり、博学でもありました)そんな天心が、英語で亜細亜文化、日本文化を世界に発信しようとしたのが一連の著作であり、その集大成が『茶の本』だと言えると、僕は考えています。

    つづきは⇒ http://amba.to/1zpry4O

  • 読み始め、100年前の本とは思わず読んでいたが、話の全て、言葉の一つ一つが現代に通じる力強さを持っていた。
    完成しようとする過程に意味があるというメッセージ。また、その空間把握の方法がとても美しいと感じた。

    以下は、自分の覚書かつねたばれなので読まないでください。
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    道教と禅と茶の関係
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    ・道教は悲哀や苦悩に溢れた世界にも美を見出そうとする宗教
    ・与えられた役を演じきるには、それぞれが役を与えられている芝居の全体を知らなければならない。老子の言葉では「虚」の概念。柱、屋根などで構成する空間それ自体が私たちに意味があるもの。
    ・もし自分自身をその「虚」に変えられるなら、他人との間でどんなことが起きてもそれを支配できる
    ・禅は道教の教えをさらに強調したもの。
    ①自分自身の心で働きかけるものしか実在しない(個人主義)と考える
    ②言葉を避け、外部のものを排除する。
    ③物事に小さいもの、大きいものといった区別がない(→草むしりのような世俗的できつい修行の中にも価値)。
    ・これらの考え方は茶にも通じる。
    ・茶道のあらゆる理想は人生の小さな出来事にも偉大な概念を持たせようとする禅の思想から生まれた。
    ・道教:茶道の美の根底、禅はそれに実践を与えた。

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    茶室は「すきや」
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    茶室は「すきや」である。この「すきや」という言葉に様々な意味がこめられた。
    ・好き屋:禅にある「すべてのものは移り変わる」「精神が物質を支配する」という論理は、家を「一時身を寄せる場所」とみなす考え方。こうした微妙で質素なものの中に個人の趣味で美しさを見出すのが茶室。決してそれは模倣ではない。
    ・数寄屋:非対称の家。完璧さを求める過程、成長への可能性に生きる力や美を感じとる力をみつけた。
    ・空き屋:虚が万物を支配する。本当に意識を集中させるには無駄なものは一切排除する。美をコレクションのように展示する西洋の文化では本当に美は感じ取れない。
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    芸術鑑賞
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    芸術家たちの考え方を学ぼうと考えるのでなく、自分の魂が惹かれたものを収集する。

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    利休の最後の瞬間
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    毒を盛って秀吉を殺そうとしたという噂から、秀吉から死を命じられる。その後、茶室に客を招待し、自分の飲んだものは、「不運な者の唇に汚された」からと割って終わる。そして句を読んで自害する。

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    日本への伝来は奇跡
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    729年に聖武天皇がお茶を振舞った史実。
    抹茶は1191年に栄西によってもたらされ、15世紀足利義政の時期に完成。
    その後明では満州人の侵略によって抹茶文化は消滅。煎茶にとって代わられる。一方で、日本では17世紀の伝来まで煎茶の文化はなかった。だからこそ、日本では茶の文化が独自の発展を遂げた。

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著者プロフィール

1863~1913年 美術評論家・思想家。本名は覚三。文明開化の風潮の中で、フェノロサとともに日本美術の復興に尽くした。東京美術学校開設に尽力し、のち校長となる。その後、日本美術院を創立し、明治日本画家の指導者として活躍、ボストン美術館中国日本美術部長などを務める。英文著書による日本文化の紹介者としても知られる。著書は本書を構成する『茶の本』『日本の覚醒』に加え、『東洋の理想』の三冊が代表作。

「2021年 『茶の本 日本の覚醒 矜持の深奥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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