ロバート・マセロによる宗教・歴史ミステリ。
上巻同様、疫学者のスレーター、ハーレーとチャーリーの兄弟、ロマノフ王朝第4皇女・アナスタシアの各視点で物語が進む。
日本人にとってはあまり馴染みがない皇帝の家族とその没落について、比較的詳細に記された上でフィクションを積み上げていて、どこまでが史実でどこからがフィクションなのか曖昧になってくる。思わずウィキペディアなどで調べたくなるほどリアリティがある。
実際の舞台は架空の島と架空の港町だが、スペイン風邪の宿主の発見がアラスカだったり、アナスタシアを巡る様々な伝説があったことを踏まえ、非常に説得力のある物語となっている。
スレーターを襲う不運がまるでスレーターだけの責任であるかのような周囲の手のひらの返し方が個人的には唐突すぎて面食らう。
よくありがちなウィルスが蔓延して大変なことになって収拾がつかなくなり、御都合主義的に無理やり結末まで持って行きました、という話ではないことは好感が持てるが、逆に危機的状況に追い込まれて先がどうなるのか、というハラハラ感には欠ける。