物語マーケティング

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著者 : 福田敏彦
  • 竹内書店新社 (1990年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784803500394

物語マーケティングの感想・レビュー・書評

  • 物語とは、世界を理解するために精神にかけるメガネ。これをかけることによってはじめて、人間は行為や出来事のつながり、因果関係をナルホドと納得でき、それをスリルや笑いや感動を持って受け止めることができる。このメガネがなければ、出来事は何の脈絡もない、無味乾燥な事実の羅列になってしまう

    いかに競争に勝つために差別化するのではなく、いかに持続性を実現するかが企業のテーマ→物語は反復に耐える

    消費とは、集団的な価値観に影響され、集団の中の演技として営まれているもの
    消費とは、ある集団の文化の決まり(コード)に沿って自己表現を行うもの、演技行動の一環

    物語は、複雑な社会を単純化して、行動のモデルを提供してくれる

    神話が呪術が交換の空間に物語としての表現を与えて、もっと価値のあるものにするという役割を果たす(トロブリアント諸島のクラ)

    物語の消費に対する役割
    ①感情を喚起する
    ②理解を助ける
    ③記憶に残る
    ④行動へ駆り立てる
    ⑤矛盾を解消する 広告は人間の置かれている状況についての本質的な二律背反の状況を再記述し、次にそれに対する解決法(商品の購入)を提出する(ラングホルツ・レイモア)

    物語の構成
    物語内容(ストーリー)…WHATの部分
    物語行為(ディスコース)…HOWの部分、物語のどこを強調するのか、「換喩」「隠喩」などのレトリックの駆使、表現するためのメディア(話し言葉、書き言葉..)
    物語状況…全体として、文化、コミュニケーション、経済、社会と関わる部分

    ①機能のレベル(登場人物の行為の型が物語全体に対してどのような役割=機能を果たしているか)
    ②行為のレベル(登場人物の行為の型の相互関係)
    ③物語行為のレベル(物語の語り方)
    ①が②に、②が③に組み込まれ、物語が発展して行く
    (ロラン・バルト)

    機能は対になって展開する ex. 欠如ーその解消、課題=課題の達成、禁止と違反、
    登場人物も対で形成される 

    ストーリーには4つのタイプがある cf. ドニーズ・ポーム
    上昇型 商品によって問題が解決される
    下降型 問題解決よりも欠如感を強調するタイプ
    循環型 あんなこともあった、こんなこともあった、と回想したりするタイプ
    複合型 ある人物にとっては上昇だが、ある人物にとっては下降というようなタイプ
    上昇型は、機能の消費が想定される欲求度の高い商品、画期的な技術革新による商品に適している。下降型は、意味やイメージの消費が想定される成熟型商品に適している

    <グレマスの行為者モデル>
    送り手 → 客体 → 受け手
         ↑
    援助者 → 主体 ← 反対者

    広告では、ターゲットである消費者を主体として、かれらの望む対象(成功、愛、賞賛、差別化など)を得るために企業ないしは商品が援助者として活躍するというストーリーを設定することができる

    <物語のスキーマ>
    コントラクト → コムピタンス → パフォーマンス → サンクション
    ①コントラクト 現代の秩序・状況の変化が起こり、送り手と主体の間で、新しい秩序を目指してある話し合いないしは取り決めが行われる
    ②コムピタンス 主体が、受け手のために、客体を求める上で、ある能力(魔法の力など)を授かる
    ③パフォーマンス 主体が、送り手との取り決めによる対象を求めて行動する。苦難が待っている。反対者との戦い、補助者の援助などがある
    ④サンクション 最初の取り決めが成功すれば報酬が、失敗すれば罰が、送り手から主体に与えられる

    物語行為(ディスコース)
    ①私の語る物語 存在領域の一致ー不一致
    ②全知の語り手による物語 外的遠近法ー内的遠近法
    ③作中人物に反映する物語(作中人物の意識を通して物語の現実が映し出される) 映し手的人物ー語り手的人物

    物語とレトリック
    換喩=隣接関係 ex. 鳥居で神社 =統辞的  叙事詩、写実主義の小説、キュビズムの絵などに使われる
    隠喩=類似関係 ex. ライオンで王者 =範列的  叙情詩、ロマン主義や象徴主義の小説、シュールリアリズムの絵、フロイトの夢の象徴

    物語のはじまり
    何かが足りない(欠如)、もしくは、何かが多すぎる(過剰)

    物語の母型
    貴種流離 ex. 十戒のモーゼ、光源氏
    復活 ex. キリストの話、天の岩戸
    通過儀礼 ex. 子供から大人、少女から老女

    物語のダイナミクス
    人間が「欠如感」と「過剰感」を共に抱えているから。欠損人間(ラカン)。人間は、これを世界をシンボル化して再構成し、解釈し、表現し、欠如を補う
    物語の構成原理は「対立」、物語らしい魅力をもたらすのは「越境」
    越境には2つのタイプ ①こちら側から越境してあちら側へ行く ②あちら側から越境してこちら側へやってくる
    欠如と過剰
    対立と越境
    禁止と侵犯
    日常と非日常
    光と闇
    文化の維持と革新
    越境、異化、異語、異人、異界、異形、詩的言語、自己否定の契機発見、現実そのものの相対化(おちょくりや構造の暴露)

    現在の秩序が受け入れられている物語
    現在の秩序が拒否されている物語 (グレマス) ex. モーレツからビューティフル

    文化の維持・革新には、レトリックが重要な意味を持つ
    文化を維持する物語は、物語の構成要素の時間的なつながり=統辞が優勢となり、レトリックとしては換喩が多用される

    文化を維持する物語は日常言語の延長にある
    文化を革新する物語は詩的言語の延長にある

    異化 ロシアフォルマリズム by シクロフスキー
    日常とは異なる表現を与え、非日常にいったん意識を落とし込むことによって、却って日常のリアリティを生々しく喚起させることを目的とした行為、作用
    詩的言語

    どんなにすばらしいストーリーを作っても、それに読者や観客の想像力・創造力がうまく結合しなければ優れた物語は成立しない→物語の最終作家は、消費者
    「意味の移動」という次の2つのプロセスが不可欠
    ①文化として構成された世界から意味を抜き出してこれをモノやサービスに付着させ、消費材として形作る
    ②消費材から消費者へ意味が移動してはじめて、消費材は消費されることになる →消費者のシンボル行為 所有をアピールする、消費材の手入れ..

    消費者に語るべきものをあげる

    意図的に不在や未決状態をつくりだすことによって、不在を充填し、解決するプロセスを消費者にゆだねる、あるいはストーリーの意味生成への消費者の積極的な参加を期待する
    ex. セデルマイヤー 「よくあるのは、問題の解決方法はこれ以上考えられないと一方的に押しつけてくるタイプですが、私はそうではなく、ある示唆はするけれども、最終的に決めるのは皆様ですよというかたちにして、余裕を残しておきます」

    物語状況…物語そのものの外で物語と関係してくる部分
    文化のコード
    コンテクスト
    メディア
    送り手 企業の動向
    受け手 消費者の動向、マーケティングではターゲット分析

    創造的行為(星野克美)
    ①意味解釈(市場解説)
    - 記号観察
    - 意味解釈
    ②記号生産(市場創造)
    - 意味生成
    - 記号生産

    メディエーター 異なるものの中間に立って両者を媒介して、新しい何かを生み出す

    物語マーケティングの表現・伝達
    ①マーケティング目標の設定
    ②ポジショニング
    ③ターゲットの設定
    ④コンセプトの設定
    ⑤商品戦略
    ⑥価額戦略
    ⑦流通戦略
    ⑧販売戦略
    ⑨その他 企業が社会へ発するあらゆる情報が物語になりうる ex. トップの言動、タレント社員の活躍、創業者の伝説、ビルのデザイン、オフィス環境、研究所、儀式、奨励、社内報、休暇..
    これらが、その企業にまつわる英雄伝説、コメディ、ファンタジーなどを生み出す母体となる

    ストーリーにはサスペンスや意外性が不可欠

    欠如と過剰を抱え、対立によって世界や事物をとらえ、文化という奇妙なものをつくりあげる人間という動物の本質は変わらない。物語なしでは、消費者は自分の取り巻く世界を理解できないし、夢や感動を体験できないし、商品やメディアへのリピートを行わないであろう。ただし、物語内容のエレメント、物語行為のメディアやレトリック、物語状況としてのコミュニケーションのコードやコンテクストは大きな変化の中に置かれるはずである

    一般の物語と物語広告の相違点
    「対立」「螺旋」に、「説得」「媒介」「凝縮」が加わる
    モノの世界とシンボルの世界といった全く異質の世界を結びつける役割を持っている。つまり広告にはモノと高度な芸術的価値、あるいは経済的価値と文化的価値といった、全く無関係なものを媒介させていく性質を持っている


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物語マーケティングの作品紹介

今や、物語づくりは小説家やシナリオライターの専売特許ではなく、メディアは紙やスクリーンとは限らない。マーケターによる、消費社会全体を舞台とした物語づくりが課題となっているのである。本書では、物語論をはじめ、記号論、コミュニケーション論、社会学、精神分析、文化人類学、民俗学、そしてマーケティングなどの知見を動員して、これについて考えようとしている。

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