- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784806137597
作品紹介・あらすじ
日航再建問題や羽田空港の国際化など、今年の経済を見る上での重要キーワードが「航空ビジネス」。今後の日本における理想的な航空システムのあり方までをわかりやすくまとめます。
感想・レビュー・書評
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・基本的業界構造:経済危機、政治不安、天災はダイレクトに人の移動に影響しやすい。航空機利用が低迷すると、構造的な問題である、高い人件費(パイロット、CAなど)、航空政策の問題(航空憲法という保護政策による競争抑制・公益性確保、廃止後のお見合い)、航空機小型化への乗り遅れ(首都圏の内陸部は土地確保困難、騒音による24時間運用困難、埋立の船舶への影響、横田基地との空域問題による便数限定)に耐えられなくなる
・最近の競争環境:大手のスケールメリットを生かしたコスト削減とネットワーク効果vsLCC(サウスウエストは輸送方式をハブ&スポークではなくポイントトゥポイントに。ハブ&スポークは本来貨物向きで、旅客に乗継の手間、時間的ロス、定時性を保てないリスクを強いる。シンガポールは国・財閥バックアップ。エミレーツはオイルマネー)
・産業の重要性:観光立国実現、地方経済活性化、国際物流効率化のために、航空産業の発展が不可欠。供給制約等の撤廃、外資導入、公租公課の削減が必要
・国内に複数の航空会社があることのメリット:運賃の競争環境、自国の利便性を優先するサービス、外交・経済リスクの分散
・航空産業の発展状況は、それ相応の技術力や資金力が必要なため、その国の経済発展度合いを象徴する
・実質カルテルの大手に対する地方の不信、地方航空会社立上げの機運
・オランダ、シンガポールは国土が狭く資源も少なく、観光貿易立国として外資外貨獲得を目指す、日本に近い国詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
JAL破綻、LCCの参入、地方空港数問題など、航空業界は変革の時を迎えている。本書ではメディアからの断片的な問題点の裏にある本質的な問題を教えてくれる。
JALの内情については、「沈まぬ太陽」や新聞、雑誌なので明るみにされている。 これらは主観的な視点で書かれていたり、枝葉末節な論議になっている場合があるので、それら全てを丸呑みには出来ないが、民間企業になったとは言え国に依存している企業体質や、社員の危機感の薄さという要因はそのとおりだと思う。
無論、JALだけが悪いのではなく、日本の航空行政を仕切ってきた国の舵取りの方が大きな問題であると思う。
その他、オープンスカイ構想に代表される空の自由化や、ATI(Anti-Trust Immunity)のための航空アライアンス組み方など、航空業界の裏側を平易かつ分かりやすく述べており大変勉強になった。 ちょうど大きな流れがかわろうとしている時期だけに、此の様な航空業界の全体像を知ることは非常に有用である。
最終的には本書で言わんとしていることは、日本の航空業界の強化に努め、世界に通用する一企業として成長させることと、観光事業を広げ外からお金を集めることが今の日本には重要なこと、ということかと思う。