- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784806145196
感想・レビュー・書評
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この本は、「通説」と「真実」の2項目に分けて、少ない文字数で、やさしく表現しているので、とっても読みやすく、しかも内容は、常識を覆すような所があり、おもしろかった。
偶然、エコノミスト誌の『2050年の世界』と合わせて読んだので、よけいに理解しやすかった。
榊原氏の予測では、
2050年のGDP
1位 中国
2位 アメリカ
3位 インド
4位 日本
読んでて恐い話も出てくる。
ユーロ圏の財政危機から金融危機が発展するのではないかという懸念とは別のところで、世界同時不況という火種が燻っており、世界大恐慌が近づきつつある、とか。それは、中国が不況に陥ったとき。
また、閉鎖的な経済では、中央銀行の影響力は非常に大きいが、グローバル化した世界においては、日銀が単独でできることや、その影響力は限定的になる、という。各国の金融政策が協調した場合は別だが、一国の経済政策だけで一国の経済をコントロールするのはムリ、という説明は、オレもそう思っていた。白川元日銀総裁の「日銀のできることには限界がある」という説明は当たり前のことだと思うんだけど。
市場原理主義から国家資本主義へのシフトが始まる、という話には驚いた。中国のような国家によって制御される資本主義が、他国にも広がっていく可能性がある、というのだ。そういう話は、ホントかウソか知らないけど、はじめて聞いたよ。
「現在の日本経済はデフレではない」と断言してることに驚く。
消費者物価指数は下がっているが、それは電気製品や自動車などの耐久消費財の価格が下がったから。耐久諸費財の国内需要は飽和状態で、生産能力も向上しているので価格が下がるのは当然だという。食品などは、殆ど値下がりしていない。物価が下がっていることは、物価の安定と理解すべきだという。
日本銀行はゼロ金利を続けているし、相当量の量的緩和をしており、日銀の金融政策のせいで日本がデフレになっているというのはウソだ。
また、日本国債の格付けは間違いで、格付け会社は信用できないという。たしかに、オレも、アメリカの格付け会社の勝手な格付けはウサンくさいと思ってた。
それから、日本国債の暴落は当面考えられないそうだ。
榊原氏自身も、金融資産の殆どを日本国債の形で保有している、とのこと。おどろきー。
成長戦略はもういらない、というのは、ああ、そうなんだなと納得。
耐久消費財もインフラもいきわたり、人口は減り、グローバリゼーションも進展してる中で、新たな成長シナリオなど、そもそも時代錯誤なのだ。
読んでて、オレの考えてることが完全にひっくり返されたところもあるし、うすうす感じていたことが、明確に書かれてて、あーそうだったのか、と思ったところもあり、全体としては、読んで元気が出たよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミスター円が経済ニュースを徹底分析してくれている本です。「円高」にまつわる誤解とプラスアルファで日本人だけが気付いていない「世界同時恐慌」の危機について。
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アベノミクス前の経済評論家の予想は、円安は適正で戻らないという話と世界恐慌の煽り文句ばかりでした。現在の状況がよいか悪いかは別として、結局過去の事実の解説をするだけで、予想なんて当たりもしない。気楽な商売だと思った。201311
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円高思想
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元大蔵省国際金融局長、同財務官を歴任した、榊原英資氏の著書です。1ドル80円を割り込んでいた円を、わずか4〜5ヶ月ほどで、100円台までに引き上げ、ミスター円と言われているだけはあります。とても完結に、世の通説の数々の間違いを指摘しています。
この本を読めば、経済にとって何が大事なのかが、明確に分かります。これだけグローバリゼーション化した時代では、日本のだけのことを考えるのはなく、他国との関係性を考えていくことが、経済にとって大事だというのが分かりました。
まさしく今、政権が変わり、円高から円安に動いていますが、その政策は国内だけを見ているもの。この動きが、今後どうなっていくのか、この本を読んだおかげで、興味深く見ることができそうです。 -
為替取引参加者が多い中で、通貨当局者は言わば無力。為替はコントロール不可であることを示し、変動には柔軟に対応する事と、その国の力をみていくことを説く。為替の変動をみていけば、どんな変化が今起きつつあるかはよく分かるとのこと。13年の世界同時不況の可能性を示唆。さて、どう動くか。日本は、世界相手に商売をしていくのだから、市場に近いところでモノ作りし、為替変動リスクを回避していくということだと思う。
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通貨にまつわる通説に対し、榊原氏が見解を述べている本。
基本論調として、世界同時恐慌のリスクがあること、実質レートでみるとそれほどの円高ではないことから、円保有が肯定されている。 -
再読
2023/02/122度目