英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは

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  • 中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806146308

作品紹介・あらすじ

今までのやり方では、いつまでたっても英語は話せません。SLA(第二言語習得論)が実証するもっとも科学的・効率的な英語習得の正しい手順。成功の秘訣は大量のインプットに、少量のアウトプット。

感想・レビュー・書評

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  • 「ある人にうまくいったやり方が、他の人にもうまくいくとは限らない」と英語学習法に関する方法に対して疑問に感じていた点を指摘している点で引き込まれた。

    ではどうしたらいいか。大量のインプットと少量のアウトプット。

    興味のある、つまりある程度わからない表現でもカバー出来る分野に絞って、音声と文章を大量にインプットする。音声については聞き流しと詳細に聴くことの二つをやった方がいい。

    そして本当の意味でのアウトプットは、言いたいこと、つまり「意味」を言語表現に変えるという心的プロセス。音読やシャドウウイングではダメ。

    そのためにはアウトプットは話すことでも書くことでも構わない。でも話す練習もしないとスピードが要求される会話が出来ないので、同時になった方がよい。そしてアウトプットを日常的にやることで、インプットの質を高く保てる。

    ちなみにインプットで音声、文章どちらも6割は理解出来るものにしないとあまり意味がない。

    後半にあるQ&Aは精神論ばかりの英語学習に疑問を感じている方は必見だと思います。

  • 読みやすくはあるが,SLAについて書いたのかエッセイを書いたのか,どっちつかずな印象.著者の個人的体験(と英語学習におけるFAQ)に交えて,SLAをトピック的に紹介する本.人に勧めるために読んではみたが,同著者の「外国語学習の科学」の方が良い.

  • 確かに白石先生の新刊『英語は科学的に学習しよう』は一般向け。これは高校生にも読みやすいはず。学級文庫や学校図書館にも置いて欲しい1冊。これの英訳版(あればの話)を使って授業しても面白いのではと突拍子もないことを思ってみたり。

    言語はルールでは割り切れない。また、ルールと例外の中間的なものもたくさんある。 (p.199)

  • 英語学習を科学的に行う方法について(タイトルまま)。

    具体的な方法についても述べられており、実用性が高い。外国語学習に成功する学習者の特徴についてもQ&A形式で触れられていたが、自力でなんとかなるのは、動機づけの強さと、効果的な学習方法、だけなので、なかなか難しいと感じる。

  • SLA(第二言語習得論)に基づく科学的英語学習法らしいのですが、はっきり言ってよくわからない。
    そもそもSLAについて科学的に導き出された外国語学習理論らしいのだが、一番大事なはずの「SLAが科学的である」部分についての説明がなく、逆に科学的根拠がないように感じる。
    理論的なことは最低限に抑えるとは言っても、必要な部分だと思うのだが。

    本書の基本的なスタンスは、
    ・ヒアリング重視:大量のインプット+少量のアウトプット
    ・使える英語が大切:知識より使えることが究極の目的
    という感じ。

    ただ、文法否定を強調したいあまり、「文法はすべて理解することは不可能だから、文法の学習をしても使える英語は身につかない」とは言い過ぎ。
    ヒアリング重視にしても、英語なら基本的な知識(文法を含む)があるからなんとかなるのであって、例えばアラビア語とか極論的には犬語・猫語が聴いただけで意味を理解したうえで話せるようになるかといえばまあ不可能なのは自明。
    ここらへん科学的には説明されているんでしょう。

    それ以外については、
    ・好きな分野に注力し、分野を絞る
    ・理解できるものを反復する
    ・文法(形式)より、使える(理解できる)を重視
    ・インプットにおいては、最初から全部理解するではなく、分かる情報だけ取り出す
    ・語彙力はやさしいものを多読する
    という感じで、他の英語学習本に書いてあるのと大差がない。

    【引用】

    英語の学習も(車の運転と)同じです。英語が使えるようになるには、実際に英語を「聞く、読む、話す、書く」ことが必要なのです。つまり、どんなにたくさん単語や文法の「知識」を身につけても、それが実際に使える知識になっていなければ、多大な努力は無駄になってしまう、ということです

    また、英語に限らずどんな言語でもそうですが、言語のルールというのは言語学者が一生懸命明らかにしようとしても解明できないものがたくさんあるのです。ですから、それをすべて理解してから使えるようにするというのも、実は不可能です。よって、ルールを全部覚えてから、使える練習をするというのでは、いつまでたっても使える英語は身につきません。

    文法を完璧にしてからでないと使える英語の練習をしないというのは極論すぎる。
    自分の主張を通したいがための屁理屈だ。

    学習者の個人差はさまざまです。年齢、適性、得意分野、学習スタイルなど。つまり個人の経験は個人の経験以上のものではないということです。

    国語力は外国語能力、特に複雑な言語を扱う能力(CALP=認知学習言語能力)にとっては非常に重要であるということはSLAでは定説になっています。

    SLA自体が科学的かどうかは別として、英語学習の低年齢化は問題があるということでしょうか。

    英語で書かれたものを読めるということは、日本語でしか読めないのに比べて入ってくる情報の量や質、新しさが圧倒的に違うということが言えます。

    このような違いを意識して考え出されたのがESPです。例をあげれば、薬剤師のための英語とか、看護士のための英語とか。当然、使う単語や、表現などは恋愛映画のそれとは相当異なります。 ですから、TOEFLなら、TOEFLに特化した学習をしたほうが効率はよいのです。まあ当たり前のことですが、けっこう見落とされていることです。

    母語話者でも、大人の場合は新しい単語は、ほとんど文脈の中で前後関係から推測して覚えるわけです。文自体は、簡単なものがよくて、覚えようとする単語以外はすべて知っているもののほうがいいです。

    基本は、同じ問題集を何度もやって、必ず満点が取れるようにすることです。

    集中して聞く場合に大事なのは、ある程度理解できるレベルのものを聞くことです。少なくとも60%くらいわかるものを聞かないと、あまり意味がありません。

    集中して聞くことの難しさは、内容がつまらない(またはわからない)とすぐに他のことを考えてしまうことです。その対策としてシャドウイングを使いました。英語を聞いて、少し遅れて同じことを言う、もともとは同時通訳の訓練法です。これをやるには、少なくともある程度集中しないとできないので、集中を促すテクニックとして有効です。

    何か自分の興味のあるものを見つけて、それに力を注いでいくことによって、人間いくらでも変われるということがあると思います。

    (1)まず、自分の興味分野だと、動機づけにつながります。つまらないことを聞くよりも、面白いことを聞いたほうがいいに決まっています。
    (2)次に、自分の興味分野というのは、すでに知っている内容が多い。ですから、英語表現がわからない場合でも、背景知識でカバーできるので、内容理解につながりやすいのです。そして、知らない単語、表現なども、推測できるようになります。
    (3)さらに、似たような内容について、何度も聞くことになるので、単語も同じものが何度も出てきて、単語の習得が進み、雪だるま式に理解度が高まるようになります。

    英語で情報を入手しろと言われても、自分はまだそのレベルではない、という感想を持つ方もいると思いますが、応用言語学の世界でよく言われるのは、「教材が難しいときは、タスクをやさしくしろ」ということです。つまり、難しい英語の材料を全部理解する必要はなく、その中からわかる情報を取り出す、というタスク(作業)をすればいいわけです。

    文法を全部理解できなければいけない、全部日本語に訳さないといけない、という考えは、まず捨ててください。

    音読はリーディングであって、それを音声化したもの、リピーティングも聞き取ってそれを音声化するだけです。シャドウイングも同じことです。最後の「音を出す」というところ以外は、インプットなのです。

    インプット理解が重要であり、インプットがなければ習得ができない、ことはわかっていますが、インプットだけで習得できるかというと、必ずしもそうではない。アウトプットの機会、その必要性がないと習得できないからです。

    実際問題として、言語というのは文法がわからなくても単語だけで理解できる場合のほうが多いようにできているので、聞いて意味を理解しているだけだとなかなか文法に注意がいきません。
    それはある意味、文法がそれほど重要でないということにもなるのですが、文法は重要なときは本当に重要なので、身につけておく必要があります。
    母語習得の場合にくらべて、第二言語習得は多読をしてもなかなか単語力が増えないと言われています。
    これはなぜかというと、知らない単語の割合が多すぎると、未知語の意味を推測できないからです。母語の場合は、知らない単語の割合が普通は非常に少ない。だから、多読の最中にどんどん新しい単語を覚えられるわけです

    僕は今までの著作から文法反対論者だと思われているかもしれませんが、文法学習の功要を否定しているわけではありません。文法も精読もどちらも役には立ちます。ただ、それはSLA的に言えば、「周辺的」重要さでしかない。日本では、インプットをあまりやらず、文法ばかりやっているので、バランスをとらなければならないという主張です。比率をおおざっぱに言えば、多読を8割、精読2割くらいでいいでしょう。

    正しい英文を書くには、文法学習も有効です。中学高校の文法をおさらいしておくとよいでしょう。また、文を書いたあとに「自分で」添削してみることをおすすめします。

    質問の「文法をマスターする」というのは、おそらく、学校で教わった文法を知識としてマスターするという意味だと思います。しかし、ここでの落とし穴は、「知識として知っている文法は使える」という前提です。しかし、実際は使えない場合がほとんどなのです。
    それは、母語話者の言語能力とは違って、暗示的な能力になっていないからです。これを暗示的に身につけるには、大量のインプットが基本となるのです。しかし、大量のインプットだけでは、習得が進まない部分がある、もしくは時間がかかりすぎるということもわかっています。その部分を意識的な文法学習で補えばよいのです。
    文法学習に多大な期待をする必要はありません。基本的なものをおさえておき、あとは、インプットとアウトプットでどこまでいけるか学習を進める。足りないところを文法で補うという態度がもっとも効率的だと思います。

    母語の読み書きの力があると、それが外国語の読み書きの力に転移するというのは、SLAの世界では定説になっています。ですから、母語の力があったほうが、英語の学習もうまくいく可能性が高いと考えたらいいでしょう。

  • 同じ著者の「外国語学習の科学」を読んだ後に読んでみた。「外国語学習の科学」が第二言語習得論の分野を俯瞰できる内容であるのに対して、著者のパーソナルヒストリーを交えながら「大量のインプット理解と少量のアウトプット」「内容に興味の持てる教材を続ける」を原則にした学習法を紹介している。自分のこれまでの学習経験とあっているのでとても読みやすい。

  • SLA(Second Language Acquisition:第二言語獲得研究家)の第一人者である著者の本。
    この業界では有名な人らしい。

    いわゆる体験記ものとは違い、語学学習を科学者の立場からみて、効率的な語学学習のアプローチを享受するもの。
    構成は前半が筆者の体験記、後半は世間一般でいわれている語学学習の疑問に関してQandA形式で答えるというもの。

    研究者が書いたものの割には筆者の体験談が半分ぐらいをしめるので非常に読みやすい、ただし「英語は科学的に勉強しよう」というタイトルの割にはやや体系性が弱い気がする。そのかわり読みやすい。

    一般向けの本なので仕方ないのかも・・・

    以下肝心の英語学習のポイントに関して端的にいうと以下の通り(自分が関心のあったもの)
     大事なのは「大量の意味のわかるインプット(リーディング&リスニング)+少量のアウトプット」
     自分の興味のある分野のインプットは興味も向くので特におすすめ
     文法は補完的に使う+例文暗記がおススメ
     アウトプットは日記などがおススメ
     リスニングでは発音パターンを勉強しておくとよい

    英語学習に関しては真面目に書かれたもの、学習歴、指導歴が長い人のものをよむと代替にかってよっている。

    ある程度王道といわれているものはこれなようでこれを軸に学習を進めたほうがよさげ。

  •   「『第二言語習得論(SLA)』という学問分野の知見を、一般の英語学習者向けに還元するという目的で書かれ」(p.5)たもので、同著者による岩波新書『外国語学習の科学』が理論を紹介したものであるのに対し、著者が「具体的にどのような道筋で英語ができるようになったか」(p.26)を語った、「ある意味、SLAのケーススタディ(事例研究)のような性格」(同)を持った本。「音読や例文暗記は効果があるのか」や、「物まねが得意な人は英語も得意か」、「日本人は英語が苦手で特に発音は下手なのか」といった一般的によく提起される問題を30近く集めて、一応の回答を与えた章もある。
     英語本の主要ジャンルの一つになっている「私はこうやって英語を身につけました」という学習法紹介の本があるが、学習者の個人差を無視しているため、「個人の経験は個人の経験以上のものではないということ」(p.30)には、ほんと共感する。語学だけでなく教育一般に言える話だが、「私はこうだった、私はこうやってできた、だからあなたも…」ということがどれくらいその聞き手の役に立つアドバイスなのか、ということはよく考えないといけない。同時に、「出来る人に出来ない人の気持ちは分からない」ということがよく言われるように、やっぱり自分の経験をいかに客観的に見て、ビリーフ(こうすべきだ、といった信念)から解放されることが難しいか、ということもよく分かる。それだけに、著者が個人の学習歴を語りつつも、その1つ1つをSLA理論で裏付けしようとする感じが、ユニークだった。
     それにしても、高校の英語の授業で、先生に「がん」呼ばわりされた、という著者のエピソードが面白く、当時はスイッチが入ってなかっただけ、「スイッチが入るまでは力が出ない」(p.106)という部分が印象深い。言語習得上の動機づけの重要さという観点でも印象的だが、それよりも著者にそんなことを言った先生は、まさか著者が将来アメリカの大学で教授になるなんて思いもしなかっただろうな、という風に思った。今おれは教師をやっていて「こいつ全然ダメだな」と内心思う奴もいるけど、そういう奴が想像もしないようなすごいことをするんだろうな、と思わずにはいられない。あとは文法を身につけるのにはアウトプットが必要、ということも分かる。ただ、「身につける」というのが、どういうことなのか、整理しないといけないと思う。つまり、入試問題に答えることができる、ということではなく、スピーキングやライティングで「使える」というのが「身につく」ということだと捉えて、そのために必要に迫られたアウトプットが必要、ということが確認できた。だから英語教師としては、そのアウトプットをさせるための「タスク」を考えないとね、という流れを、英語教師は作ることになる。あとは「多読だけではなかなかつかない語彙力」(p.140)というのも、納得だ。多読しても、同じ単語が何度も出て来ない限り、あるいは記憶がうっすらあるうちに別の本でまた同じ単語が出て来ない限りは覚えないものだと思う。著者のretrieveの機会を作るように「ポーズを入れながら音声として吹き込んで、それを繰り返し聞く」というのは結構、良い方法だと思った。「まだ音読の効用についてはっきりとは実験で示されていない」(p.148)という部分が意外で、たとえば『英語音読指導ハンドブック』(鈴木寿一、門田修平)なんかは、多少なりとも音読、シャドーイングが効果があることを示す実験結果が載っていたように思うが、あれはSLAの研究としては認められないものなのか、とかちょっとモヤモヤする。英語教育界では最近、音読指導は要のようになってきていて、少なからずおれも音読をやらすので、この辺の検証が待たれる。最後に、「英語はどうしてこんなに例外が多いの?」という質問に対して、「言語はルールで割り切れると思っているのが大きな間違い」(p.199)であり、さらに「ルールと例外だけという考え方も間違っている」(同)というところが、まったくその通りだと思った。「ルールと例外の間に、さまざまな中間的なものがあります。」(同)という、連続体、スペクトラムを設定することができる、その曖昧さへの耐性がある、ということが大事、ということが確認できる。言語はルールで割り切れる、という考え方が「言語の本質についての誤解」(p.200)というか言語学習の不幸の始まり、とも言えるような気がする。(15/08/30)

  • 大量のインプットと少量のアウトプットに代表される様に、説得力ある内容ばかりでした。試す価値大アリ!

  • 英語の学習者、英語の先生にお勧めの一冊です。
    他の英語学習書に出てくる勉強方法を
    SLA(第二言語習得論)の観点で説明しています。

    「他人が成功した勉強方法が自分に合うのか」
    これについてはずっと疑問に持っていた事でした。
    本書で記載があり、スッキリしました。
    他の英語学習書に出てくる「これで点数が上がった」などの
    謳い文句に対して、元々の英語基礎力がある人でしょう
    と冷ややかだったためです。

    「モチベーション」
    ストイックにコツコツとできる人は少数だと思います。
    だからこそ、英語をみんなで勉強する。
    また、憧れの人を見つけるなど他人の力を借りる大切さがわかりました。

    「大量のインプットと小量のアウトプット」
    上記の「モチベーション」に併せて人前でアウトプット(話)することで使える英語にしていく。そして、バランスが大切であると記載があります。これはスポーツや音楽に置き換えるとわかりやすいと思いました。練習ばかりではダメ、試合/発表会ばかりでもダメ。

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