股旅フットボール: 地域リーグから見たJリーグ「百年構想」の光と影

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  • 東邦出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784809406959

感想・レビュー・書評

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  • 日本のサッカーの地域リーグおよび、そこに所蔵するいくつかのチームについて書かれたもの。地域リーグとは、「九州」とか「関東」とかの地方ごとに開催されているサッカーのリーグ戦のことだ。地域リーグの下にも県リーグや県内のブロックリーグ(例えば県北リーグとか)、さらにその下には、市のリーグが、それぞれ数部構成(1部・2部とか)で存在している。だから、市のリーグの2部とかだと、J1から数えると10部くらいになったりする。地域チームの場合、上を目指すチームには元Jリーガー等がプレーしたりしていることも珍しくはないが、それでも企業チームで仕事を持ちながらプレーしていたり、あるいは、別の職業を持ちながら、要するにアマチュアとして、地域のクラブチームに参加・プレーしたりする選手も多い。
    本書は、2008年の発行でやや古い本であり、今とはサッカーのリーグの構成が異なる。本書が書かれた2008年には、日本のサッカーリーグは上から、J1・J2・JFL・地域リーグ、という構成であり、地域リーグはJ1から数えると、J4にあたった。それ以降、J3リーグが出来たので、現在では、地域リーグはJ5という位置づけとなる。
    J5とかJ10等と書いたが、サッカーの場合、あなたがクラブチームをつくったとして、そのチームが強くて、財政基盤もしっかりしていて、スタジアム保有などの規定を満たすことが出来れば、あなたのチームはいつかJ1で戦う可能性がある。更にACL(アジアチャンピオンズリーグ)を勝ち抜いた場合には、世界クラブ選手権に出場することが出来、ヨーロッパチャンピオンズリーグの勝者と戦って世界一のクラブになる可能性もある。それは、とても難しいことであるが可能性はあるのだ。実際に、2008年、本書で地域リーグを戦っていた、ファジアーノ岡山、カマタマーレ讃岐、町田ゼルビア、V.ファーレン長崎、FC岐阜、ツェーゲン金沢、といったチームはJリーグに、その後昇格している。野球と比較すると、これがサッカーの非常にユニークな特徴だということがよく分かる。読売巨人軍やソフトバンクホークスが、地域リーグへの降格を経験したり、あるいは、都市対抗野球のチームがプロ化してNPBに加入したりする可能性はゼロである。「サカつく」という人気ゲームがあるが、それは、ある一定のリアリティがあるからこそ、人気があるのではないかと思う。
    本書の筆者、宇都宮徹壱は、JFLや地域リーグでの戦いを描いた本を何冊か書いている。いずれも面白い本であり、サッカー好きにはお薦め(ただし、2008年発行の本書はさすがに情報が古すぎた)。

  • 2005-2007年頃の、地域サッカーを題材にしたルポルタージュ。
    同じ方の『フットボールの犬』が文庫になったのを知り、久々に再読。

    サッカーへの愛にあふれた一冊、です。
    泥臭くてウェットで、それだけに心に響くものが伝わってきました。

    Jリーグの100年構想に基づく、地域に根付いた「サッカー」、、
    華やかさだけではない、その光と闇を丁寧に浮かび上がらせてくれています。

    スポーツを地域からボトムアップしていくことは、社会貢献にもつながって。
    その可能性を感じさせてくれるのは、読み応えがありました。

    ん、今回取り上げられた「わが町のクラブ」の数々に、
    10年後に再び巡り会ってみたいものである、なんて。

    なにはともあれ、サッカーを生で観たくなる、そんな衝動にかられます。
    地元のスポーツクラブ、あらためて探してみよう、うん。

  • 日本サッカー4部「地域リーグ」における、サッカージャーナリスト・宇都宮徹壱さんの取材記録を綴った一冊。

    日本にはJ1、J2の2つのリーグがあることはよく知られていますが、その下にはJリーグ以下の最上位であるJFL、そしてそれに続く地域リーグがあります。今までのJFLは『アマチュアリーグの最高峰』という位置づけでしたが、各地で「サッカーで町おこしを」「わが町にJリーグを」という活動が活発化した結果、『Jリーグ予備軍』へとその姿が変化していきました。しかし、現在のJリーグのほとんどが元企業チームである一方、地元のスポンサーを募った地方クラブチームの経営は苦しく、それぞれが苦悩を抱えていました。さらに、地域リーグからJFLへの間口が狭い結果、昇格への足がかりとなる全国大会では「あとは上に行くだけのチーム」や「今上に行くと経営面でチームの存続が危ぶまれるチーム」などそれぞれのクラブチームの思いが交錯し、数々のドラマが…

    アツく語ってしまいましたが、サッカーバカ以外にはあまりオススメできないかもしれません…サッカーバカには超絶オススメです。

  • ☆気づき

    サッカーファン必見の一冊。
    そして、
    夢を忘れない為に読む一冊。

    地方にJリーグクラブを作る為に奮闘する人達がカッコ良く描かれている


    久しぶりによんで良かったo(^▽^)o
    枕元に置いておきたい一冊


    Ash

  • これが書かれた当時から状況は大きく変わっているが、だからこそこの本の存在意義がある。地域リーグ時代の長崎や岡山の話がきちんと書籍化されて残されているということは極めて重要。
    ロッソ時代の熊本、バンディオンセ神戸などの名前を見られるのも、部外者的には嬉しい

  • 購入して読み。
    宇都宮徹壱の本なので。

    2005年から2007年までの、日本サッカーの4部(地域リーグ)について書かれた本。
    自分の地元の岡山ファジアーノ(いまはJ2)、お隣香川のカマタマーレ讃岐(いまはJ2)も取り上げられてて、なるほどーと思いながら読んだ。ファジアーノは社長の木村正明の影響が大きいよな、やっぱり。

    当時と違って、今はプロはJ1・J2・J3の3部構成、でその下にJFL(アマチュア1部)、アマチュア2部・3部・4部がある、っていう構成になっている。

    プロと違って環境が悪く、サポーターの熱意も長続きしない。なかなか厳しい環境の中でもがく各チームの様子が描かれている。

    その後の各チームの様子をwikipediaで調べてたらあっという間に時間が過ぎてしまった。

    2015年版の股旅フットボールを読みたい。

  • 少し古いけど地域リーグのサッカーを取材したエッセイ。カマタマーレ、ツエーゲン、ファジアーノ、ゼルビアなど今ではJに上がったチームの記事が興味深い。

  • 地域の抱える課題をサッカーという視点で切り取った意欲作。できればリアルタイムで読みたかった。

  • 2008年この本のに出版された地域リーグでJを目指すチームの現状を描く宇都宮徹壱氏のルポ。
    北海道から九州までの各地域リーグから1チームずつを実際にクラブの元へ足を運んでの取材することで、Jリーグ百年構想の光と影を見つめなおす。

    2012年になりJ1・J2併せて40チームとなりJ2とJFLの入れ替え制度が導入された。また2014年にはJ3が開始されることも決定した。そんな国内サッカーの構造が大変革を遂げている今だからこそ、地域リーグからJを目指してクラブチームが群雄割拠し、一丸となってJを目指していたこの時代を振り返ってみようと本書を手にとった。

    本書の構成は北海道から九州までの地域リーグからJを目指すと標榜しているクラブを訪れて、地域リーグでのクラブ経営の実態や選手たちのプレイ環境などについて取材が各1章ずつ。また、2006年・2007年の地域決勝大会(地域リーグからJFLに昇格するための大会)や2007年の全国社会人サッカー選手権大会に密着してアマチュアサッカーの勝負の世界に迫る章で、それまで訪れたクラブの全国での現在地を確認している。

    特徴は各地にフットボールの種をまこうとしているフットボール関係者に対する宇都宮氏の愛ある眼差しであろう。地元のフットボール選手の受け皿となり、彼らが全国で活躍できる舞台を用意したい。もしくは実業団の撤退などによって衰微しつつある地域のフットボール文化を永続的なものとして根付かせたい。そういった想いをもってサッカー協会や高校などと一丸となりJを目指し地域リーグで奮闘している彼らに対し、同じフットボールを愛する者として文章で時には激励し時には叱咤する。日本の「草の根」にいるフットボールファミリーの幸せを願ってそれぞれのクラブ訪問記は描かれている。(実際は地域リーグは草の根よりはだいぶ高い位置にいるのであるが。)各クラブの現状はまちまちである。ノルブリッツ北海道やFCMioびわこ草津のように充実した練習環境をもつチームもあれば、ファジアーノ岡山のように練習環境や資金面で満足いく状態に達していないクラブをある。しかしフットボールの力を信じ、正統に地域に根を張り然るべき努力を続けていけば明るい未来が見えてくるという、百年構想の楽観主義に対する共鳴が伺える。
    一方で地域決勝大会や全国社会人サッカー選手権大会の取材では、地域リーグの過酷な現状も見えてくる。Jを目指すチームが増えたことによる競技力の急激な向上と経営陣のプロ化であったり、Jという目標を見据える一方で全国リーグを戦い抜く体力がないクラブ経営の現状といった部分についても触れている。なかには本書冒頭で取材したクラブが最後の地域決勝大会では経営の失敗により存続の危機に窮しているといったショッキングな記述もあったりする。(宇都宮氏はこの部分について深くは触れていないが。)

    全体を通して本書を取り巻く雰囲気は前述のとおり、楽観的で愛あるものになっている。欧州を巡り当地のフットボール文化を目の当たりにした宇都宮氏にとって、そして本書を手にとるような人種にとって日本でも同じような文化が根付かせるために奮闘しているフットボールファミリーの姿は、様々な不安はありつつも基本的には応援したい姿であったのだ。今となってはこのJリーグ拡大に対する楽観主義は懐かしいものになりつつある。今思えば本書が発売され、大分トリニータがナビスコカップで優勝した2008年はこの百年構想主義とも言えるフットボール文化への楽観のピークであった。2008年末にはFC岐阜の経営危機、2009年には大分トリニータの経営危機と相次いだ地方クラブの経営問題の中、フットボールクラブと資金という問題が一気に噴出することとなる。
    やや後出し的に言うことを許していただければ、本書の発売後に発生したこういった問題の根底にあるのは、そのまま本書で触れるべきであったが触れていない内容でもある。それはフットボールと地域社会の関係である。フットボールを社会にどのように還元するのか、フットボールファミリー以外に対する目配せはできているのかということである。宇都宮氏の本業はサッカーライターであることもありサッカー協会や地元高校との連携といった競技面での取組についてはよく触れられているが、一方で自治体や地域経済界との連携についてといった側面については切り込みが少ない。J2ライセンスや今後導入されるであろう新ライセンスでは競技場についてのハードルがしばしば問題になり、自治台に大きな負担をかけている。2008年前後の時期にJリーグを目指す下部のクラブと地域社会の関係を探りたいと思ったが、そういった向きにはあまり参考にならずに残念だった。

  • ☆☆$$興味深い内容。Jへの難しさを痛感。$$

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著者プロフィール

写真家・ノンフィクションライター。1966年生まれ。東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、テレビ制作会社勤務を経て、1997年に「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追いかける取材活動を展開。2010年『フットボールの犬 欧羅巴1999‐2009』でミズノスポーツライター賞大賞、2016年『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』でサッカー本大賞を授賞。現在、個人メディア『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信中。

「2022年 『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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