サヨナラ、学校化社会

著者 :
  • 太郎次郎社エディタス
3.59
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本棚登録 : 255
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784811806662

作品紹介・あらすじ

★「こんな不況でよかったね。
 親や先生は将来のためにがんばりなさいと言うけれど、
 そんな生き方はみんなカラ手形になりました」
★義務教育から大学院、2年間のオーバードクターを含む24年の学生生活。
 そして偏差値四流校から東大までの教師生活。
 学校教育の受益者にして被害者という上野千鶴子が直言!
★評価に怯える優等生シンドロームの東大生、
 子育てに追い込まれた「音羽の母」。
 学校的価値に覆われた息苦しい社会をどう超えるか。
★学校はけっして人生のすべてじゃない。
 こちらがダメならあちらがある、会社がつぶれても私は生きられる……
 多元的な価値を見いだし、生き抜く「知恵」をつけよう。
 これは希望のメッセージです。
【2015.5.22】四六判の紙書籍は品切になりました。筑摩書房より刊行されている文庫版か、電子書籍版をごらんください。

感想・レビュー・書評

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  • 人間教育とかいいから学校は知育に特化すべきって同意すぎる。

  • 2024.02.22 古い本ではあるが、十分に納得かつ共感できる素晴らしい本。たくさんの気づきを得ることができた。上野先生の本は、やはり面白い。

  • 上野研究室 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network
    https://wan.or.jp/ueno

    太郎次郎社のPR
    東大生をも覆う評価不安。母親たちの苦しい子育て。「将来のために今を耐える」学校的生き方は終わった。自分が「面白い」とうなずける生き方を誰もが獲得するために、上野千鶴子が学校と教育を斬った語った快読の一冊。
    http://www.tarojiro.co.jp/product/4190/

  • 370

  • 2002年刊行。内容は首肯するところも多く、こういう情報発信の底意はわからなくはないが、学校化社会の象徴というべき東大の禄を食む教授の発言としてはどうかと思う。東大生の問題点を指摘しているなら尚更。

  • この本は、私が学群の2年生のときに、とある授業の参考図書として読んだ本です。主な内容は学校教育に関してなのですが、筆者であり大学教授である上野千鶴子は、自身の教授生活を振り返りながら、現在の学校制度が「だれも幸せにしないシステム」(p. 57)であると声高に主張しています。
     当時の私はそれまでほとんど教育に関する文献を読んでいませんでしたが、早くして手にしたのがこの本だったこともあり、非常に大きな衝撃を受けました。上野が本書において痛烈に批判しているのは、「学校化社会」です。「学校化社会」とは、「学校的価値が学校空間からあふれ出し、にじみ出し、それ以外の社会にも浸透していった」(p. 50)社会のことを指しており、今の日本社会に広く当てはまる現象だと思われます。そして上野は、これからの教育が目指すべき社会とは、このような学校的価値で一元化された社会ではなく、社会的価値が多元化した、自尊感情が奪われることのない社会であると述べています。
     「教育」と「学校」とが強く結びついて語られることの多い昨今ですが、本書は「教育」についてより柔軟に考えることのできるきっかけを与えてくれます。

    (ラーニング・アドバイザー/教育 OYAMADA)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1260883

  • 生涯学習論を学んだ人間にとって、イリッチの「学校化社会」、ブルデューの「階級の再生産」、そして「ヒドゥンカリキュラム」など、本書で取り上げられる数々の生涯教育哲学とも呼べる言説たちは耳障りがよい。
    それに加え、上野先生の現場から得た知見、研究から培ってきた独自の考え方が織り成され、本書は教育学関連でも類を見ないバイブルとなったことは言うまでもない。

    奇しくも本書が刊行されたのは2002年4月1日であり、私自身が大学に入学した日ではないか。しかし、何故か本書を学生時代一度も読むことはなかった(研究室にもあったのに)。理由は定かではないが、大学卒業から10年が経とうとする今のタイミングで読めたことは何か因果なことなのかもしれない。

    思うに、結局のところ、今の社会は「学校化社会」から一向に抜け出す気配すらない。みんなやっぱり学歴、偏差値で序列化されることが好きなんだろう。

    あと、本書の内容からは直接的には関係ないのだが、気づいたことがある。
    昨今よく感じることは一人ひとりの嗜好や興味があまりにも多様化かつ複雑化しているということ。たぶん本書が刊行された10年以上前よりもそれは顕著になっている。
    本書に書いてあったことだが、人はあまりにも異質度の高いものであれば認知的不協和を起こすという。しかし、本来であれば異質度が高く、認知的不協和を引き起こすものであっても、ジャンルの細分化が起きている現代社会においては、それを理解するように振舞うことが一種の作法になっているのではないかと。つまりは細分化され本来ならその道のプロにしかわからないようなこと、特にアートや音楽など様々な分野の中で、人はそれをわかったような気分になっているだけではないだろうか。
    これも暗黙のうちに人は予定調和的な同調システムに知らず知らずに組み込まれているようでならない。自分ではオリジナリティ、独自性の追求、ライフスタイルの充実と思っていたとしても。

  • 学校の弊害や、それによって生み出された生徒たちが学校化社会を作っていることに対して警鐘を鳴らしている本。学校的価値、業績原理と国民化が諸悪の根源であるとしている。いくつかの非常に有意義な発見があった。近代の学校は、国家が整えた1つの制度で、そこで人間がある規格にはめられ標準化されるーーそれを国民化と言うが、生まれも環境もバラバラな人間を、均質な日本国民に仕立て上げていく授業が行われた。同じような国民化の装置として、国民皆兵による軍隊をあげることができるが、この2つはともに、従順な身体を作る装置だと言うことができる。
    学校での競争は決して白紙の状態で、公正・平等に行われているわけではない。初めからゴールで差がつくようになっている。ブルデューは、学校とはもともと階層差のある子供たちを下の階層に再生産するための、ふるい分けの装置だ、と言っている。しかし、学校での成績と社会的な階層とは密接に関係していて、上の階層の出身者は成績上位に、下の階層の出身者は成績下位に落ち着く傾向があり、本人の努力とは言い切れないほどの関連性がある。それが学校での成績によって「あいつはがんばってたから」と納得され、社会的にも正当化されてしまう。
    イリイチは、学校に行くということはシャドウワークだと言った。あんなにつまらない、かったるい、ストレスの多い一日を過ごしていることを、労働と言わずしてなんというのか。子どもたちは毎朝、カバンを持って出勤しているのと同じである。賃金を払われないシャドウワーカーが、学校在籍中の子どもたちである。
    未来のために今をガマンする生き方はやめよう!偏差値の呪縛から自分を解放し、自分が気持ちいいと思えることを自分で探りあてながら、将来のためではなく現在を精いっぱい楽しく生きる。作者からのメッセージはこれにつきる。

  • 読んでて自分が批判されている気分になる本笑

  • 図書館で借りた。

    著者が教育の現場で感じてきたことのエッセイのようなもの。現在の教育に危機感を感じている。

    いま我慢して将来に備える、ということを強いるシステムはどこか歪んでいると思えた。学校が敗者が敗者であることを敗者自身に納得させる装置として機能していることも触れられる。今の就職活動で大企業に学生が集中するのは、二流だと認めたくないからなのかとも考えた。

    学校は最低限の知育だけでいいという主張はその通りだと思う。何でもやり過ぎなのが今の学校で、子どもの価値観に多様性が生まれづらいからもっと学校以外の価値に触れられる場を増やしたい。

    著者の社会調査法の講義でやっていることがすばらしかった。学生にデータを集めさせ、分析させる。同じデータを著者が見て学生達が見落とした視点を次々に指摘する。その差はどこから来るのか? 教養の差、扱った事例に対する知識の差だと教える。だから本や新聞、ニュースを見るようにしなさいと言う。
    目の前で明らかな差を見せれば、そこにそれを手に入れたいとか格好いいと思わせられるはず。学生と教員は何が違うのか、子どもと大人は何が違うのかという問いに対する答えはこんな風に差を見せつけることでしか伝わらないと思う。言葉での説明よりも受け取る側に実感させることは大切だろう。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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