月亭可朝の「ナニワ博打八景」: 金持たしたらあかん奴

著者 :
  • 竹書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784812436202

感想・レビュー・書評

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  • 私、実は落語に興味を持った。
    友人…とても大事な。
    その人が、落語を嗜むひとだった。

    噺をいくつも聴かせてもらって、実は笑点なんかも
    好きだったりして…落語絡みのアニメで夢中になり。

    そうして。

    上方落語、いいなあと思うに至った。

    でもね、意外と、知ろうとすると何からとなる。
    私、関西生まれ東京育ち。
    歌舞伎が大好きで…躾は関西流で受けた女。

    江戸の義理人情の世界。
    上方のものの考え方。

    どっちにも親昵していたら、そりゃどっちも
    聴きたくなるわよ。落語。

    で…どんな方がお上手?と伺ってみる。
    名前とお顔、両方解る方。
    いたりいなかったり。

    カンカン帽をお召しで、丸メガネ。
    黒羽織におひげの、黙ってたら船場の旦那衆。
    お口開いたらガラガラと面白い感じの…

    あれ、お名前がわからないわ。

    と言ったなら、その、大事な友達。
    それは月亭可朝師匠。
    と教えてくれた。

    そしてこの本面白いよと。

    落語の入門にはちょっと違うけど
    入り口に、おもろいお人もいるもんだと
    読んでみたら…と誘われた。

    で…他事にかまけて置いていたけど
    読みたくてうずうず。両手に包帯だし…
    ええい読んでしまおう、休日の朝の三時間。

    一気読み、でありました。
    むちゃくちゃ面白い。

    身内にこんな方がいたら、そらかなんわ
    と思うだろうけど…。

    でもこの方、小汚いところがないの。
    きっとやさしい。

    この本自体は、ね。
    テレビ番組の紹介が昔ので、知らないのも
    あったりだけど、可朝師匠と博打好きの一面
    スポットを当てた評伝小説。

    別に博打だけ打ってて
    芸が面白いわけじゃないと思う。
    お稽古もしないで成り立つ芸じゃないから。

    びしっと面白う鍛えられた芸があっての
    博打好き、女好き。

    けどね、
    関西言葉で語られる、その口吻が思い浮かんで
    たまらない味です。

    ほんまでっせとおっしゃるだけでおかしい。
    その芸が師匠のだったとは覚えてなくて
    なのにその言い振りと声だけ覚えていた私。

    このひとが言ってらしたのか!って。

    古典落語の描く義理人情
    恋のゆくたて
    怖い怖いお話も。

    東西どちらのも、日本人なら、ああと思い当たる。
    わかるわかると膝が打てればこその古典芸能。
    いまの時風をバッサリ切るのも面白く。

    両方できるのが落語のいいところかも。

    こんなおもろいおひとが牽引し
    情とばかな遊びに花を咲かせて磨いた芸なら
    泣いたり笑ったりさせてくれないわけがない。

    席を立った時、ああこれ、私の周りにもある。
    ああ、自分だけじゃないのね。あほなのは。

    可愛げ賢げのあるあほでいよう。
    明日も死なずに、この世へのお暇までもう少し。
    もう少しのおつきあいを頂いて、生きようと
    思えるなら。

    落語、そのお友達に誘われたのを大事に
    聞きに行くのもいいもんだなと思うのですよ。
    大して知らなかろうとも、まあ聞いてみたい。

    立川談志さんとご縁のある所に住んでいるのだし…。(お二人は仲良しでいらしたんですって!)

    大好きな朝顔とか、金魚に流水のお扇子もって。

    秋だったらお扇子はいらない?
    何をおっしゃいますやら。桔梗の柄のを持つの。
    レースのハンカチと扇子と、心意気と…それから、楽しく聞くぞって茶目っ気をバッグに。

    たぶん可朝師匠なら、そんな瀟洒なものは結構。
    お好きな柄の手拭いもっておいでとお笑いになる
    かもしれないけど。

    抱腹絶倒の男。

    たまらんおっちゃんのおはなし。

    ぜひどうぞ。

  • 最後の芸人。無頼だけど、まろやか。可朝師匠の高座は、綺麗な風が吹いているかのような清々しさがあった。

  • 「破天荒」ってのはこういう人を言うんだろう。
    サラリとまとめてあるので、通勤本にはよかったかも。

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著者プロフィール

演芸評論家、小説家。1948年生まれ。
立教大学卒業後、放送作家、ルポライターを経て演芸評論の道に。
1980年からは小説を書きはじめ、「芸人小説」というジャンルを切り開く。
2003年~2014年、落語立川流の顧問をつとめる。
著書に『江戸前の男』(新田次郎文学賞)、『浮かれ三亀松』(以上、新潮文庫)、『流行歌 西條八十物語』(大衆文学研究賞、ちくま文庫)、『談志歳時記』(新潮社)、『芸人という生きもの』(新潮選書)などがある。

「2016年 『深川の風 昭和の情話それぞれに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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