ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察―

  • 名古屋大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815803551

作品紹介・あらすじ

近代的なネイションの底にあるものは何か?ナショナリズムはまもなく乗り越えられるという楽観的な見方を再検討するとともに、現在再び生命力を増しているエスニックな要素の起源を探り、前近代的な文化とアイデンティティの運命を明らかにした、待望久しい名著の邦訳。

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  • ナショナリズムとは政治的な境界線(国家)と民族的な境界線が一致すべきという1つの政治的原理。国家とは秩序を強制する制度。▼産業社会で生産活動を維持するためには、お互いの意思疎通が必要。商談をする。機械の操作マニュアルを読む。そのためには同質的な文化(読み書き力)が必要。すべてのメンバーに同質的な文化を身に着けさせるためには学校教育が必要。教育は多大なコストがかかるため国家が行うことになる。標準化された言語・歴史を教育で学ぶ。こうしてネーションへの帰属意識が生まれる。アーネスト・ゲルナーGellner『民族とナショナリズム』1983

    ネーションは近代の産物。ナショナリズム運動は1700年代後半から、ナショナルな感情は1400~1500年代から。国民国家は近代から。しかし、前近代にもナショナルな一体性はあった。ギリシア人やローマ人の異文化へのまなざし。ネーションは無から生まれない。▼ネーションの素(ethnie)。集団の名前。共通の血統神話。歴史の共有(とくに黄金時代の記憶)。独自の文化(言語、宗教、慣習、民族伝承、建築、衣服、食物、音楽)。領域(聖地、故郷、発祥地、風景)。連帯感。(※ゲルナーは近代の産物であると強調した一方、スミスは近代以前に起源を求めた)。ただし、これらネーションの素は、ネーションほど強固な共同体意識で結びついていたわけでも、明確な境界があったわけでもない。▼資本主義への移行が、ネーション形成を後押しした。高度な経済統合、中央経済の周辺経済の統制、官僚制度、国家による教育。アントニー・スミスSmith『ネイションとエスニシティ』1986

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 原題:The Ethnic Origins of Nations (Blackwell Publishers, 1986)
    著者:Anthony D. Smith(1939-2016)
    訳者:巣山靖司・高城和義・河野弥生・岡野内正・南野泰義・岡田新


    【目次】
    序章

    第1章 ネイションは近代の産物か
      1 「近代主義者」 と 「原初主義者」
      2 エトニ・神話・象徴
      3 エスニックな共同体の持続性

    第I部 前近代におけるエスニックな共同体
    第2章 エスニックな共同体の基礎
      1 エトニの諸側面
      2 エスニシティ形成のいくつかの基礎
      3 エトニの構造と持続

    第3章 歴史の中のエトニとエスニシティ主義
      1 独自性と排除
      2 エスニックな抵抗と刷新
      3 外部からの脅威とエスニックな反応
      4 エスニックな神話力の二類型

    第4章 農業社会における階級とエトニ
      1 「社会的浸透」 の問題
      2 軍事的動員とエスニックな意識
      3 エトニの二類型
      4 エスニックな政治体

    第5章 エスニシティの存続とその消滅
      1 位置と主権
      2 人口統計学的連続性と文化的連続性
      3 エトニの解体
      4 エスニシティの存続
      5 エスニックな社会化と宗教の再生

    第II部 近代におけるエトニとネイション
    第6章 ネイションの形成
      1 西洋の革命
      2 領域的なネイションとエスニックなネイション
      3 ネイション形成
      4 エスニックなモデル
      5 エスニックな連帯か政治的市民権か

    第7章 エトニからネイションへ
      1 エトニの政治化
      2 新しい聖職者
      3 自給自足と領域化
      4 動員と包摂
      5 新しい想像力

    第8章 伝説と風景
      1 郷愁と後世の人々
      2 過去の感覚
      3 「歴史劇」 としての、ロマンティックなナショナリズム
      4 詩的な空間――風景の利用
      5 黄金時代――歴史の利用
      6 神話とネイションの建設

    第9章 ネイションの系譜
      1 パルメニデス学派とヘラクレイトス学派
      2 ネイションの 「古さ」
      3 エスニシティを超えて?
      4 小民族の世界?
      5 エスニックな動員と地球規模の安全保障

    索引

  • 「フランスの貴族や、・・・、ハンガリーの貴族の間での、強烈な領域への愛着」や「熱烈な血統意識」(p.42)は他集団と峻別されるある集団の意識というものが階級的なものでありえることを示唆している。それを踏まえて、「定住化という変化に伴う精神的外傷と、定住の結果生じてきた新しい共同体の生活様式とは、定住化という発展の道を選んだ者を、選ばなかった者から分離するように機能した。」(p.43)という言葉を読みかえるなら、グローバリゼーションという変化に伴う精神的外傷と、グローバリゼーションの結果生じてきた新しい共同体の生活様式とは、グローバリゼーションという発展の道を選んだ者を、選ばなかった者から分離するように機能している、ということができよう。そのグロ-バリゼーションの道を選んだ者とは、現在における知識集約型産業に従事している国際的エリート層、特にその産業をマネージメントする階層のことである。現代民主主義との関係では、「エリートの反逆」(ラッシュ,クリストファー)という表現は、エリートのナショナリズムに対する反逆にこそ使用されるべきである。

  • ナショナリズムの3大古典の1つとも言われて、ゲルナーの「民族とナショナリズム」やアンダーソンの「想像の共同体」の考えをとりいれてまとめた本でもある。

    スミスの考えでは、近代以前には、エスニックな共同体(エトニ)が存在し、共同体にはそれぞれに固有の歴史などがあってまとまっている。これが近代以降の産業革命によって、西欧の考えである、ネイーションとしてまとまっていくとするのである。

    考えとしては、ゲルなーとアンダーソンの折衷案ともみられることもあるが、古代オリエントの民族の興亡史、欧州の民族間の対立などを挙げながら立証することはよいと思った。

  • 読むたびに違う考えが浮かんでくる本。難しい。

  • 和光311.3//16 The ethnic origins of nations, Blackwell 1988

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