- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784819111317
作品紹介・あらすじ
原発は止めるべきか。電力は足りるのか。ギモンに答えるエネルギー原論。
感想・レビュー・書評
-
ブログやネットの動画でも話題になっている武田邦彦先生が、過去の原子力に関する経験をもとに、福島原発事故とこれからのエネルギーに対するあり方について書かれた一冊。
原発に対して、単に感情的に反対を唱えるのではなく、正しい知識に基づいて自分で判断する事が重要だと提案している。専門家なので、かなり細かいところまで記述されており、わかりやすい書き方をしているので、原発や今後のエネルギーを考える上では非常に役立つ本だと思う。
本当だとすれば、絶対に改めてもらわなければならない事も書いてあり、かなり内容に驚かされる部分もあった。また、自販機やパチンコの節電が意味がないなど理由を聞いてもちょっと同意出来ない内容はあったが、全体的に著者とは同じ考えである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世の中で当然の真理だと思われていることには「ウソ」もかなり意図的に含まれていることが最近になってようやく分かってきましたが、その一つに環境問題があると思います。
「石油資源がなくなるので原子力を推進しなければならない」というのは、この数十年信じられてきた代表的な例だと思います。
この本の著者である武田氏の本を最初に読んだときには、疑心暗鬼でしたが、ダイオキシン、環境ホルモン、地球温暖化等、彼の言っていることは正しいような気がします。もっとも彼の反対の意見の立場の本も読むようにしたいと思っていますが。
この本は、震災後に話題になっている原発についての解説がされています。日本の経済成長に必要な電力を賄うにはどうすべきか、そのためには地球温暖化の原因やその是非も含めて、今後も考えていきたいと思います。
以下は気になったポイントです。
・福島原発はまだ太平洋側に建っていたから助かった、もし風下に大きな都市があったら、もっとたくさんの人が被害を受けていた(p16)
・東京電力管内は夏場のピークのために6000万キロワットは必要で、それ以外は4000万キロワットですんでいる、その差額は冷房に使うのでそこに知恵を絞ればよい(p19)
・放射線が福島原発からでなくなってから、燃料などの持ち出し完了までは、およそ10年程度かかる(p29)
・事故前までは専門家は被ばく量の規制値を年間1ミリシーボルトとしていた(事故後は年間100ミリ)、理由は厳しいほど学者、天下り官僚も得をする、基準が厳しいと抵触するところが多くて、検査・認可業務が増える(p33)
・4号機は、使用済核燃料プールに使用中の核燃料を入れて、定期検査をしていた、それが終われば原子炉に戻して使う予定であったが、その途中で地震が起きた(p35)
・宇宙には最初、水素ができた、水素同士が反応して重水素に、さらに、リチウム、炭素となり、最後には鉄になる、これを核融合という(p46)
・核融合は猛烈な熱がでるが、核分裂はそれに比べて小さい、ウランを使用して核分裂させる原爆よりも、水素を利用して核融合させる水爆のようが凄まじい(p47)
・COP15は世界がCO2規制に乗り出すはじめての試みであったゆえに失敗した、京都議定書は日本しか履行していない(p59)
・イギリスがマイナス8%で署名したのは、石炭火力から北海油田による発電に切り替えたので、2000年には1990年比較で13%削減できると見込んだので(p61)
・ドイツがマイナス8%に署名したのは、東ドイツの発電所をとめることで、マイナス19%を見込んだため(p62)
・1回の欧州旅行で消費する石油をレジ袋に換算すると、一人当たり平均使用量の300年分、エコバック(数百億円市場)はポリエステルが使用され、資源の無駄遣い(p67)
・ソ連が危険な発電所(黒鉛炉)をつくったのは、原爆が欲しかったから、軽水炉ではプルトニウム239以外にプルトニウム240が生成される、これが1%入る原爆にならない(p72)
・ダムによる環境破壊とは、ダムの水が澱んで、落ち葉が落ちて、水が腐敗して硫化水素が発生、土砂がせき止められて貯水池にたまってダムが詰まる(p87)
・日本のように人口密度が高い国では、人間が使うエネルギーと自然が再生産するエネルギー比率は、人間が消費するエネルギーのほうがきわめて大きい(p88)
・ドイツは太陽電池に期待して投資してきたが、総額12兆円で使用電力の0.25%しか得られないと報道され、今後が注目される(p94)
・地球が誕生した時の石油の原料(CO2)と現在の酸素の量から、論理的に炭素の量を計算すると、石油系エネルギー寿命は500万年、そこから地形的に掘れそうなところを抽出すると、8000年程度(p109)
・地球である元素で量の多いものは、水素、炭素、酸素、ケイ素、鉄、になる、その水素と酸素が反応して水、炭素と酸素で二酸化炭素、ケイ素と酸素で二酸化ケイ素、鉄と酸素で酸化鉄ができる(p111)
・官僚の責任が問われないようにするには、1)地震の専門家が最大震度を推定、2)建築家がそれにあわせて設計、3)電力会社が運転する、である(p129)
・地震から1時間後に福島原発は完全に運転不能になったが、地震直後ではなかったので、制御棒が入り核爆発は阻止できた(p137)
・事故が起きた時に全責任を持つのは、保安院である、東京電力の施設を認可し、運転状態を監視し、国民に代わって原発の安全をまもるために指導しているので(p155)
・水素エネルギーに多くの税金が投入されたことがあったが、地球のような小さな星では水素はないので、ブームは終わった(p205)
2011/6/20作成 -
原発のことについて詳しく書かれています。
このような本をよく読んで原発の知識を得た上で今後の原発について考えるきっかけになればいいと思います。 -
科学者として研究者としての著書に感銘しました。
どれだけ技術や新しいプロジェクトが始まっても・・・それを支える人の知識や理解が進まなければ、不幸な結末へ向かってしまうことが多いのかもしれません。
我が国は残念なことに、技術発展をきちんとマネジメントできる人材が乏しい。悲しいことです。 -
内容についてはかなり検証が必要
というより、トンデモ本?? -
勤務先のビルの節電が切ない。便座の暖房切、冷水のまま。冷たいです。過剰な節電は心をむなしくする。省エネは大切だが。
-
う~ん、武田先生でも甘い見通しで「9月には人が入れるようになって一ヶ月くらいで放射性物質の流出は止まる」なんて予想は大外れ。放射性物質はその後も出続けています。
武田先生はたとえがへたくそじゃないですか?ぜんぜんわからない。 -
今後の日本のエネルギー問題は事実を見て、覚悟を決めウソを廃し、日本にとっての最善策を考える。安全な原子力は日本の技術を持ってすれば、可能であるが、巨大な技術をマネジメントする力が必要。技術と思想を分けてとらえることが大事
-
テレビの露出が激しくなったせいか、テキトーなことを言っているように見えてしまう損なオジサンだと思いますが、本の内容の方は、いえいえそんなことありません。
武田さんはしっかりとしたデータと事実に基づいて発言したり文章を書く人なので、この本も「かなり確からしい」という前提で読みました。
原発は震度6で壊れる。「えーっ!」と思うかもしれないけれど、だってそういう風に設計されているのだから、震度6で壊れるのが科学的に正しい。「そりゃそうだ」と思ってしまいますが、これって意外とすごい指摘なのでは。
また、放射能の暫定規制値を設定しておきながら、事故が起こると「ただちに人体に影響が出るものではない」と公式発表してしまうことについて、「基準値を超えているのだから危ない」という指摘も至極真っ当。結局、武田さんは当たり前のことを当たり前に指摘しているだけなのだと思います。それをちゃんとデータや事実に基づいて話している。それは、できそうでなかなかできないこと。これからも、武田さんには色々と発言していってもらいたいです。
ただ、石油が8,000年もつというあたりは、ちょっと語調が弱いような気がしましたが、気のせいでしょうか。
原発のことだけ知りたい人は、本の半分ぐらい読めば終わってしまうかもしれません。バイオマス燃料とか温暖化とかにも言及しているので。もし温暖化に対する武田さんの意見を知りたければ、この本よりも「偽善エコロジー」を読んだ方が良いと思います。 -
武田さんが常々主張していたことや、福島の原発事故以降ブログで発表し続けていたことが一冊にまとめられているような感じです。
既読感はあるけれど、こうしてまとめて読むとより理解しやすいです。