実戦ボトムアップ・マーケティング戦略

  • 日本能率協会マネジメントセンター
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784820718277

感想・レビュー・書評

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  • 現場レベルの戦術から積み上げて考える、ボトムアップ型の戦略策定の指南書。マクロ環境から落とし込んでいくマイケル・ポーターの競争戦略の理論などとは対称的に、現実を踏まえるからこそ生きた戦略になる、という発想。内容としては、野中郁次郎氏の知識創造企業の考え方に近しいものとなっています。理論ではなく、現実的に戦略が必要になる(しかも少しでも早い実践が求められる)場合に参考になる内容です。

    以下、要点と解釈を整理します。

    ○ボトムアップ・マーケティングとは
    ボトムアップ・マーケティングは、一言で言ってしまえば現場での戦術レベルからの積み上げによって決定されるマーケティング戦略。現場での試行錯誤=戦術の結果から、最適な組織としての戦略に昇華させ、そして再び現場レベルの戦術に落とし込んでいく、というアプローチで行うもの。つまり、現場中心のマーケティング戦略といえます。

    なお、言葉の定義を整理すると
    ・戦術とは
     「顧客の心の中で、競合に対して優位性を得ることができる斬新な切り口」
     「成果を得るための手段、手法」
    ・戦略とは
     「首尾一貫したマーケティングの方向性」
     「成果を得るためのプロセス」
    といった定義になります。戦略が方向性を示すものであり、その実行手段として戦術を組み合わせていくことが必要になります。

    いままでは、戦略を考えてから戦術を考える=トップダウン型 が主流だったわけです。しかしこれでは現場で起きている未来への小さな変化やイノベーションを戦略に反映することができません。特に現在のように、ソーシャルメディアが発展し、日常生活やデイリーワークにイノベーションのチャンスが多数ある中で、現場の声がフィードバックされないことは大きなロスにつながる可能性があります。そこで、
     ・まずは目の前の顧客に対する戦術を考える
     ・その戦術を生かすための方向性=戦略を探る
     ・示された戦略に従い、成果獲得のための実践へ
    といった、ボトムアップ型(厳密にはボトムアップ・ダウンですが)が必要、ということなのです。


    ○ボトムアップ・マーケティングのアプローチ
    本書では第2章以降でボトムアップ・マーケティングのアプローチが整理されています。

    ≪最初の戦術策定≫
    ①現場に出向く
    戦術は成果を得るための手段であり、現場で必要になります。そのためにはまず、現場を知ることが必要となります。具体的に現場で何が起きているのか、何が必要なのかを徹底的に観察し、考えることが求められます。安易な判断や支持は必要ありません。真摯に現実を受け入れることが必要となります。なお、事例には三現主義(現場・現物・現実)を重視するホンダが取り上げられているあたりは、野中郁次郎氏の知識創造企業を連想させます。

    ②時流を観察する
    ものごとの流行り廃りではなく、大きな社会の流れ・傾向を見据えることが必要となります。将来の予測ではなく、現在起きている流れに着目することが求められるのです。そして現在の流れから、未来を自分の手で創造するために何をすべきかを考えるべきなのです。

    ③焦点を絞る
    全ての問題を一度に解決することは困難です。成果を得るために解決すべき現場レベルでの問題を、時流を読んで汲み取り、絞り込むことが必要になります。

    ④戦術を決める
    焦点を絞り込んだら、競合よりも顧客にとって価値のある存在になるための手段を決定します。それが戦術です。ここで注意すべきは“競合はいない”としてしまうことです。競合がいない状況など、ここまで高度化した社会においては(少なくとも消費者心理・顧客心理という観点からは)あり得ません。顧客の心をつかむために、単に顧客志向になるだけでなく、またプロダクトアウト的な志向になるのではなく、如何にして斬新な切り口を見つけるかが必要となるのです。このあたりは、コトラーのマーケティング3.0に通じるものがあります。


    ≪戦略の策定≫
    ⑤戦略に組み込む
    策定した戦術を戦略に組み込んでいきます。もともと戦略が存在するならば、④で策定した戦術に基づいて戦略を修正しなければいけません。戦略がないならば、戦術に基づいてマーケティング全体の方向性を定めることが必要になります。

    ⑥変化を加える
    戦略を戦術に組み込むことで、戦略の内容や名前だけでなく、商品やサービスの内容、価格、提供方法、プロモーション方法(いわゆる4P)の修正が必要となってきます。より有利にマーケティングを展開できる方向性を探るのです。

    ⑦戦場を変える
    4Pの修正でも戦況が好ましくないなら、戦う場所を変えることが必要です。いわゆる、リ・ポジショニングというものであり、住み分けと呼ばれるものです。真っ向勝負だけが戦略ではありません。むしろ、市場を切り分けて自らが優位になるポジションを探ることは、現代経営の常識的なアプローチといっていいでしょう。

    ⑧戦略を試す
    策定した戦略が妥当であるか、成果に結びつくものになるのかを試す必要があります。市場や顧客の反応をみたり、自分たちが本当にその戦略に対応できるだけの力があるのかを確認したり、競合よりも有利になるのかを確認することは必須です。いわゆる、ふぃイージビリティ・スタディというものです。

    ⑨戦略を決定する
    部下という立場であれば、ここでは意思決定者への提案というプロセスになります。リーダーという立場であれば、周囲の支持を得ることが必要になります。シンプルに、必要なことを必要なだけ伝えることが肝心です。難しい資料ではなく、要点を抑えた一枚の紙が必要なのです。

    ≪戦略の実行へ≫
    ⑩経営資源を獲得する
    戦略を実行するための経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を確保します。このとき、注意すべきことは“分散させすぎないこと”です。成果を挙げるために十分な経営資源を集約しなくては成果になりません。ちょっとだけ、片手間に、といった感覚では失敗するリスクが高まるのです。得るべき成果の大きさに応じて、投入する経営資源も調整することが必要なのです。いつでも“選択と集中”は必要なのです。

    ⑪戦略を実行する
    策定した戦略を再び戦術レベル=計画に落とし込み、実行します。このとき、経営資源と得るべき成果のバランスを考えて実行方式を考える必要があります。一気に勝負するならば大量に経営資源を投入しビッグバン型で、段階的に進めるのであれば最少人数に絞り込んで経営資源を投入するロールアウト型でえ展開していくことになります。ただし、いずれも成果を得るための積極的な姿勢は保たれなければいけません。

    ⑫軌道に乗せる
    実行した戦略が継続的に成果を得られるように、ビジネスプロセスを安定化させることが必要です。属人的な要素を排除し、情報共有を促進して、全体の機能を最適化させていくことが必要なのです。

    ⑬損失を断ち切る
    戦略に問題があるのであれば、手を引くことも必要です。その要因は、
     ・戦略が間違っている
     ・自らの力量以上のことをやっている
     ・想定外の事態が起きている
    の3つに絞られます。いずれかの問題が起きているのであれば、戦略を止め、損失を少しでも早く断ち切ることが必要です。


    最後に:正々堂々と戦う
    これらボトムアップ・マーケティングを行うためには真摯な姿勢が一貫して必要となります。目先の利益だけでなく、自らが何を求めるのか、現場で何が起きているのか、この先何をすべきかを真摯に考えることが必要なのです。このあたりも野中郁次郎氏の賢慮型リーダーシップにつながるものがあります。今後の経営には、システマティックなマーケティングだけでなく、哲学のあるマーケティングもあわせて必要になってくるということなのでしょう。実際にハーバードでは、競争戦略のマイケル・ポーター氏と知識創造企業の共著者である竹内弘高氏が共同でクラスをもっていたりするわけですから。

  • ・戦術とは、顧客の心の中で競合に対して優位性と知覚される斬新な切り口である。
    ・心の中に存在していない競合は無視してかまわない。
    ・戦術は単一のアイディアあるいは切り口。1つだけであり、それ以上ではない。
    ・成功した製品の多くが市場の主流に逆行したもの
    ・他のみんながしていることとは逆のことをする方法をともかく考えること
    ・現場に出向き、些細なことに十分気を配れるように専念する。そして属する市場に影響を与えるかもしれない長期的な変化を示す時流を観察する。そして焦点を絞ること。
    ・ゼネラリストよりスペシャリスト
    ・製品ラインの拡張が優れた戦略であるのは、スペシャリストできる競争相手が全く参入していない場合。
    ・カテゴリーを支配している時は、自らが競合。自分獅子を攻撃するような製品を売り出すべき。
    ・ポジティブな面を宣伝して売り込むのと同じくらいネガティブな面を売り込むことは重要。信用を与えられる。
    ・ヴァージニアスリムはどの広告も25歳くらいの時流に乗っている女性をイメージして、若い女性をターゲットにしているが、実際の市場はそのようなライフスタイルを望んでいる中高年の女性。
    ・ボトムアップの戦略は面白くない。面白いのは戦術。
    ・ネーミングは大変重要

  • ホンダ・GM・チキンラーメン・カップヌードル・コカコーラ・マクドナルド・ディズニーなどなど、私たちなじみの製品事例が満載でわかりやすくマーケティングの真髄を教えてくれます。「自社で満場一致のコンセプトは、どれも他社の誰かに使われている」という一文が印象に残りました。

  • ・戦略はボトムアップ型でたてるべきであり、トップダウン型ではないということだ。言い換えると、ビジネスで実際に行われている戦術を熟知し、それに深く関与することを通して、戦略を立案すべきである、となる。

    ・今日のマーケティングはコンセプトの戦いであり、製品ではない。戦術の本当の基準は、事業を推進していくコンセプトあるいはアイデアがあるかどうかである。シティバンクのCEOは「アイデアは米国の産業界にとって新しい通貨だ」と述べた。

  • p24 
    「戦術とは、顧客の心のなかにで競合に対して優位性と知覚される斬新な切り口である。」
    まず、戦術には競争優位性のある斬新な切り口が不可欠であり、それが成功の機会をつかむことになる。このことは、必ずしも良い製品やサービスを意味するものではなく、むしろ必要なのは差別化の要因である。より小さい、より大きい、より軽い、より重い、より安い、より高価である、などは差別化の要因となりえるだろう。異なる流通システムもしかりである。
    さらには、その戦術はマーケティング活動が実践される全領域に於いて競争優位性とならなければならない。

    p25
    次に、戦術には斬新で競争力のある切り口が必要だが、それが顧客の心の中で近くされなければならない。言い換えれば、マーケティングの戦いは見込み客の心の中で繰り広げられれているということだ。


    p26 「戦略とは何か」
    戦略とはゴールではない。人生と同じように、戦略はゴールではなくその過程が重要視されるべきだ。

    p27
    我々の定義では、戦略はゴールではなく、首尾一貫したマーケティングの方向性である。

    まず、戦略は選ばれた戦術に焦点が合わされているという意味で首尾一貫している。

    次に、戦略は首尾一貫したマーケティング活動を内に含んでいなければならない。製品、価格、流通、広告など、マーケティングミックスを構成しているすべての活動が徹頭徹尾戦術に焦点を合わせていなければならない。

    そして最後に、戦略は首尾一貫したマーケティングの方向性でなければならない。戦略がいったん立案されれば、方向性は変えられるべきではない。

    戦略の目的は、戦術を活かすために経営資源を集結することである。つまり、すべての資源を一つの戦略的方向に投入すると約束することによって、ゴールの存在でそれとなくっかる制限を気にせず、戦術を最大限に利用できる。

    p28
    戦術とは競争優位性のことであり、戦略とはその競争優位性を維持する働きをする。
    戦術とは、製品、サービス、または会社の範囲外にある。その会社が作る製品でないことでさえある。これに対して、戦略とは内部的だ(戦略は組織内部で非常に大掛かりな再編成を必要とすることがよくある9.
    戦術はコミュニケーション志向であり、戦略は製品、サービス、あるいは会社志向である。
    ボトムアップ・マーケティングの原理は単純だ。具体的なものから一般的なものへ、短期的なものから長期的なものへと進んでいくことである。
    ボトムアップ・マーケティングにおいて「一つ」であることの意義にも注目してほしい。機能する戦術を一つ見つけ出し、そしてその戦術に戦略を組み入れることだ。一つだけであり、二つ、三つ、あるいは四つではない。

    p31
    ドミノ・ピザがこのように強力なピザチェーンになったのは、宅配という戦術を戦略に結びつけた結果である。宅配に限定した全国規模のチェーン店を築き上げることによって、「三十分で配達することを保証します:」というコンセプトをドミノ・ピザは同業者よりも早く先取りできた。

    p32
    戦略の目的とは、仕掛けた戦術に競合が反撃いてくれるのを妨げることである。

    p43
    最初に決めなければならないのは、「何の」戦術を使うかである。つまり、競合に対して、優位性となる斬新なアイデアを知覚させる戦術を選ぶ必要がある。次に、その戦術を首尾一貫したマーケティングの方向性の中に組み入れる方法を決める。

    p46 観察であり、判断ではない。
    現場に着いてすぐに問題は始まっている。
    観察は容易なプロセスではない。人間はすぐに判断したがる。多くの場合、頭の回転の速いことは有利だが、現場に出向くこ時はそうではない。じっくりと物事を見て、簡単にそのことを判断してはいけない。事実を尊重しなさい。たとえそれが自分獅子の期待に反するとしてもだ。

    物事を自分自身の概念で見てしまう心の傾向に打ち勝つ方法の一つは、自分が見た事実を紙に書きだして見ることだ。その後、書いたメモを読んでみると、自分のこころが居易したアイデアが世界で最も妥当なアイデアになるかもしれない。

    現場はどこか
    マーケティング競争の前線とは、皆さんが期待するような場所ではない。スーパーマーケットでも、ドラッグストアでも、顧客のオフィスでもない。見込み客の心なのだ。前線である現場に出向くとは、顧客や見込み客が考えていそうなことを探れるポジションに自分自身を置くことを意味する(良い漁師になるためには、魚になったつもりで考えることだ)。

    p75 致命的な欠陥b
    多くのマーケティング計画に見られる致命的な欠陥は、戦略が「将来を予測する」ことに基づいていることである。

    時流を推定するのと同じぐらいたちが悪いのは、将来は過去の再現だと想定する日常的な習慣である。

    p85
    マーケティン戦争における勝者と敗者を観察すると、成功した製品の多くが市場の主流に逆行したものであることがわかるはずだ。

    言い換えると、皆がある一つのタイプの物を作っているのであれば、丁度逆の物を作ってみることだ。

    p93
    どんな場合でも、ゼネラリストがスペシャリストより優れているのかもしれない。しかし、人間の心は違ったふうに考える。すなわち、人間の心はスペシャリストの方がゼネラリストよりも優っていると考える。心臓のダブルバイパス手術を受けるとすれば、一般医と心臓外科医、どちらの医者を選ぶだろうか。

    スペシャリストが人間の心の中では上位にいる。

    p99
    ボトムアップ・マーケティングで実践しようとしていることは、心を変えることではなきう、すでに心の中にある知覚を利用することだ。
    第一歩を見出すためには、詳細なものをつかみ、それを一般化しなければならない。実際には一般化し過ぎるぐらいにしなければならない。
    マーケティングとは、単純なアイデアが複雑なアイデアを打ち負かすゲームであり、たった一つのアイデアが多様性を打ち負かすゲームだ。

    p107 製品ライン拡張の矛盾
    ①製品ライン拡張が優れた戦略であるのは、スペシャリスト的な競争相手が全く参入しない場合である
    ②製品ライン拡張がまずい戦略であるのは、競争相手が強力に反撃してくる場合である。


    p120
    戦術は自社志向ではいけない
    戦術は顧客志向ではいけない
    自社と顧客しか存在しない未開拓な市場などない。げんじつは、並み居る競合によってしっかりとあるいは何らかの形で握られてしまっている消費者の集まりが市場だ。
    したがって、マーケティング実施計画とは、自社の顧客を惹きつけて話さないと同時に、一方で競合から顧客を奪い取る策なのである。
    新製品を出すときには未開拓の領域が数多くあると考えるのも正しくない。新製品の潜在的市場をそうていすることはできるが、彼らのうち誰かがその新製品を買うだろうなどとおう保証はない。
    未開拓の市場の顧客ニーズやウォンツに訴求することについてさかんに話されているにもかかわらず、実際にはむしろ既存の市場を狙い、壕を構えている競合に対して製品を売り出すマーケターがほとんどなのである。

    p122 側面攻撃という特別なケース
    我々が意図する側面攻撃は、明確に差別化された新製品を投入することと定義する。典型的な側面攻撃の動きとは、価格の観点から高価格にするか低価格にするかである。

    p137
    ポジティブな面を宣伝して売り込むのと同じくらい重要なのがネガティブな面を売り込むことだ。ネガティブな面に触れることは、戦術に信用を与えることになる。

    p143
    戦術を戦略に転換する真髄は、社内あるいは製品に変更を加えることであり、取り巻く環境を変えようとすることではない。

    p154 社内を変える、市場ではない

    コカ・コーラはその影響による損害を食い止めなければならない。「昨日を防御することは、明日を創り出すことよりもはるかに危険だ」とはピーター・ドラッカーの言葉である。
    優れた戦略は、まってましたとばかりに一つの要素を追加されてしまうことが時にありえる。そして、その要素がコンセプトの戦術的な力を向こうにしていしまう。
    仮に読者の皆さんがホリディ・インの社員で、マリオットホテルやハイアットホテルと競争するために、新しいタイプのホテルに関わる戦術と戦略を作り上げたとしよう。そして、上位クラスにふさわしいホテル名、クラウンプラザを考えついた。悪くない。
    しかし、驚くなかれ、ホリデイ・インの最高経営責任者あるいは彼の取り巻きの何人かが、そのホテル名にに企業名を付けて「ホリデイ・イン クラウンプラザ」とすることを望む。
    おっと!上位クラスのホテルのアイデアではなかったろうか。クラウンプラザの名前はホリデイ・インの大衆的レベルまで引きずり降ろされてしまう。

    p168
    戦術を戦略に君入れることは例外なく変更を加えることを意味する。エイボンの例にように、加えなければならない変更点は市場そのものではない。変えなければならないのは、自社あるいは自社商品である。

    何が変えられず、何が変えられるのか。市場は変えることができない。マーケティング上取り組んでも市場の構造や顧客の購入様式はたいして変えることはできず、見込み客の心を変えることなど実質的には不可能である。

    p172
    戦略に組み込んでいく戦術と現在の名前がうまく合わないのであれば、その名前を変えなさい。これは、ボトムアップ型プロセスの戦略的側面の重要な要素の一つである。

    p175 優れた戦略は真似をするこtが難しい。

    p186
    「直火で焼きます。揚げません」というコンセプトは効果的な戦術であるが、優れた戦略ではない。それは情緒的なレベルまで高められていないからだ。それこそ、優れた戦略でしか維持できないレベルなのである。その戦術はこころにしっかりと打ち込まれる必要がある。

    p187
    「大人になったらバーガーキング」というのが、直火焼k戦術が戦略に進展した形である。

    p188 ターゲットが市場ではない
    コミュニケーション戦術上のターゲットは必ずしも市場と同じである必要はない。
    この原理を示す良い例としてマルボロの広告がある。

    p208
    最初に、戦術的コンセプトが「興味を引く」ことを確かめなければならない。好意を持たれるのが退屈だという評価よりも、おもしろいけど嫌われるという方がましだ。

    p201
    興味を引くことの定義は「新しい」ことの定義と同じだ。興味を引くためには、コンセプトが他と「違う」ことが必要だ。例えば、「人間が犬に噛み付いた」というように。

    p211
    どのように戦略をおもしろくするのか。それはもちろん、トップダウン型の思考である。ボトムアップ型のやり方では、戦略をおもしろくしようなどとはしない。
    最初におもしろくて興味を引く戦術を選ぶ。
    「一枚の値段でピザ二枚」これは興味を引く。
    「一晩で間違いなく、確実にそこに着かなければならない時」おもしろい。
    「子供たち、大人になったら直火焼き」興味を引く。
    興味をそそるものは、もちろん製品やサービスと密接な関係がなければならない。そして、広告はマーケティング戦争において重要な戦術的武器であるため、そのアイデアは興味を引く広告のアイデアでなければならない。
    それが、広告で使われる戦術がビジネスの戦略を決定する利用である。

    p212 営業部隊に売り込む
    戦術的アイデアは、氾濫する情報をかき分けて見込み客に到達し、彼らの心にしっかりと刻み込まれるほど十分にシンプルでなければならない。そのために、営業部隊にとっては逆にあまりにもシンプルに映ってしまう。
    営業部隊が実施計画を全面的に指示してくれないのであれば、それがどんなに素晴らしい計画であってもうまくはいかない。
    したがって、営業部隊に対して実施計画を試すということは、彼らにその計画を売り込むことであり、彼らの意見を聞くことではない。もし売り込みに失敗し、営業部隊に受け入れられなければ、実施は困難となる。
    営業部隊への売り込み、すなわち実施計画のプレゼンテーショに最善を尽くしなさい。その計画にかける皆さんの強い意気込みも重要だ。販売員は売れることを確信させてくれるセールスプレゼンテーションには心惹かれる。

    p213
    「このコンセプトはニュースとなりえるだろうか」と自分で考えて見ることだ。

    p215 競合を調べる
    「論理チェック」と呼ばれる方法を試してみることはできる。
    これは、提案の論理性を調べるため、その内容を逆にしてみて、それが主要な競合にとって適切かどうかをみてみる方法だ。
    「エイビスはレンタカー業界で二位に過ぎません。だから、より一層の努力をします」
    この内容の逆は何だろうか。
    「ハーツはレンタカー業界で一位です。だから、成功に安んじて、一生懸命取り組む必要はありません」
    エイビスの立場からしたら、完璧だ。

    p220 シンプルに説明する
    注意することは、マーケティング実施計画を「数字」に頼って提案しようとしてはいけないことだ。マーケティング担当者に起きた最も悪いことの一つに、表計算ソフトの発明がある。表計算ソフトは、オーバーヘッドプロジェクター以来、最もおもしろくなプレゼンテーションを作り上げてしまった。

    シンプルに説明すること。幸い、ボトムアップから、つまり単一の戦術うから壮大な戦略へと実施計画を創り上げていけば、シンプルになるだろう。皆さんが提案するのは、印象的であるばかりでなく、効果的でもある。大胆な一撃である。

    p239
    「計画はボトムアップ型で、実行はトップダウン型で」これが我々二人が進める方法だ。だが、ほとんどの企業はその逆を行なっていると言える。

    p243 戦術的に運営される会社
    企業は変わることができる。だが変化は一夜にしては起こりえない。
    変革の第一段階は、競争優位性を生む戦術を見出し、その戦術を戦略に組み入れることである。

    p244 「ビッグバン」アプローチ
    第一印象は一回で決まる。二度チャンスはない。価値あるアイデアははじめから価値があるとわかるはずだ(もし皆さんのアイデアが価値のないものならば、現場に戻り、価値のあるアイデアを見つけなさい)

    p254
    いろいろな事業部門は、現場で何が起こっているのかを知っており、多くの戦術的な成功を経験しているのかもしれない。しかし、ボトムアップ・マーケティングのゲームをするように組織化されていない。つまり、戦術的な成功を一つの企業戦略へと転換できないのだ。

    p258
    今日のビジネスにおける最大の機会は、権限分散のプロセスを逆にすることである。効果的なマーケティング実施計画を始めるのに十分に大きく、そして強力であるために、各部署を統合しはじめなければならない。

    p264 シェアを目指す。利益ではない
    市場が誕生した後の第一の目標は圧倒的な市場シェアの獲得である。あまりにも多くの企業が、市場での地位を固める前に利益を出すことを欲する。

    p265
    マーケティングレースの「ねばねばした執着さ」、つまり企業またはブランドが毎年毎年同じポジションのままであるという傾向は、絶好なポジションを第一に確保することの重要性を強調している。ポジションを優位にすることは難しいかもしれない。しかし、いったんそうすれば、その新しいポジションを維持することは比較的やさしい。

    p269
    マーケティングの戦いにおいて努力がたりないために負けることはほとんどない。戦いに敗れる理由は三つある。
    ①戦略が間違っている
    ②実力以上のことをしてしまった
    ③想定外のことが起こった
    市場の性質が変わった、競合が優勢な戦略を考案した、ということも起こりえるだろう。

    p270
    勝ちを得る戦略は、たいてい非常に早い段階から成功の何らかの兆候を示すことを歴史は示している。初期の兆候が期待に反していれば、成功する機会は少ない。

    p274 自らをドロドロした市場の中に置く

    p278 皆さんはどうだろうか?
    マーケティングは単なる勝利のわくわく感でも、敗北の激しい苦痛でもない。マーケティングはゲームでもあるのだ。そして、正々堂々と徹底的に戦うこと、それ自体が報酬なのだ。
    正々堂々と徹底的に戦うためには、底辺から出発しなければならない。それはたぶんトム・モナハンがしたように物理的な底辺からではなく、精神的な底辺からスタートすることである。
    勝ちたい戦闘の戦術に専念しなければならない。競合、そして心のナキアにある彼らの強み、弱みに焦点を合わせなければならない。心の中という戦場で競争優位性を生む一つの戦術を探し出さなければならない。
    それから、その一つの戦術を核として首尾一貫した戦略を練り上げるために、進んで前略を注がなければんらない。
    外部の機会をうまくモノにするには組織内を積極的に変えなければならない。外部の環境を変えることはできない、またそんなことを試みてはいけない。代わりに組織を変えることだ。
    万人に受けるなど無理だ。戦力を分散させ、小規模な戦闘を数多く戦う誘惑には抵抗しなければならない。そのような戦闘は資源を消耗させ、大きな勝利を成し遂げる能力を奪い取ってしまう。
    さらに、戦略がうまくいかないのであれば、その戦略を変えることをいとわないことだ。誰も将来を予測することはできない。人生は賭けであり、マーケティングも賭けなのだ。
    しかし、もし皆さんが正しい考え方をし、現場に出向き、競争優位を生む戦術を見つけ、その戦略へと組み入れていくならば、成功する機会は大いにある。


    ==目次==

    第1章 戦術が戦略を決定する
    第2章 現場に出向く
    第3章 時流を観察する
    第4章 焦点を絞る
    第5章 戦術を見出す
    第6章 戦略を構築する
    第7章 変更を加える
    第8章 戦場を変える
    第9章 戦略を試す
    第10章 戦略を提案する
    第11章 経営資源を確保する
    第12章 実施計画を立てる
    第13章 軌道に乗せる
    第14章 成功を予感する
    第15章 馬力をかける
    第16章 損失を断ち切る
    第17章 正々堂々と戦う

  • 「戦略からではなく戦術から」と、いう本。私見では、やはり両方バランスよく考える事が重要なのか…

    競争は顧客の心の中。かなり感銘を受けました。

  • 知らずに手にしたが、昔読んだ「マーケティング戦争」の著者が新しく書いた本だった。

    その本を読んでマーケティングの奥深さ、自分自身の考えの浅さを感じさせられた。

    今マーケティングに関わる仕事をしているが、改めてもっと勉強しなきゃと感じた。

    アイデアに関する本にも書いてあったが、『アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである』というものに対し、この本では『戦術とは顧客の心の中で競合に対して、優位性と知覚される斬新な切り口である』と述べられている。

    確かにビジネスの競争は戦争用語で語られることが多いが、その戦場は目に見える場所ではなく、見込み客の心の中である。

    如何に製品、サービスが競合よりも優れているか認識されるかが重要。

    一つ一つの戦術が一貫性を持って、同じ方向に進んでいけるかで目標を達成できるのだろう。

    また、この本では会社組織において、トップダウン思考の場合は、見込み客の心の中を変えることが重要と考える傾向が強いが、そんな事は絶対に出来ず、その方向に向かう為に自分自身(会社組織)を変えることが(変わる事)が大事とも。

    なるほどと思いながらも、一社員のレベルでそこまで出来るのか?と疑問にも思う。
    だが本物の戦争と違い、失敗しても命まで失うことはない。
    目一杯努力して、見込み客の心の中で、競合に対しての優位性と知覚される斬新な切り口を見つけ出してみよう。

  • まずは現場を見て、戦術から戦略を組み立てろと。
    著名な著者で、言っていることは正しいく、参考になる。戦術は現場からボトムアップで組み立てて、実行はトップダウンで一気に行えと。が、事例が古い。古いと思ったら、原著が書かれたのが1990年とのこと。(本書にはどこにもその記載がなかったので、ネットで調べました)。
    ただ、その後の日本での事例を追加していて、その部分は新しいものが多く、面白い。

  • 戦略から考えるのではなく、競争優位性として知覚されるアイディアである戦術を戦略に転換す(ボトムアップ)する。という考え方。

    印象的だったのが、「戦略からスタートし、戦術を作り上げようとするとだいたいうまくいかない。それは、それらの戦術が『機能するからという理由』から選ばれたのではなく、戦略を『援護するため』に選ばれたから。」という一説。
    かなりドキッとしたし、自分の偏りがちな思考に気づかされた。

    前半と終わりの方は同じ話が繰り返される感じで、ちょっと根気が必要だったが、中盤の事例を交えた様々な思考プロセスの話は読み応えがあった!

    得た気づきをクセづけられるように、意識して仕事に取り組んでいこう。

  • 戦術から戦略を考える事を推奨している実践的なビジネス書。具体化から抽象化へ、抽象化から具体化へ、と同じで、どちらからということではなく、どちらからも必要では?と思いながら読んでる最中です。あらゆるビジネスマンにオススメです。

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