社長失格

著者 :
  • 日経BP
3.86
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感想 : 169
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822241308

作品紹介・あらすじ

おれが書かなきゃ、だれが書く。注目のベンチャー企業は、なぜ倒産したのか。迫真の告白ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の特質が一時の成功と倒産に至ったのだと綴られており、その考えに共感した。
    迷いなく自信を持って行動を起こせる人が成功すると思う。
    ただ筆者は、自己破産は罪であり、一生背負っていくという考えである。失敗すれば人生終わり。日本はその風潮が根強いように思う。
    そのせいでベンチャー企業は未だハードルが高いイメージがあり、そのことは日本経済の成長に影響を与えているのではないかと感じる。

  • 起業を志す人間が必ずといっていいほど読んでいる本書は当事者の生々しいまでの記録です。倒産するということはどういうことなのか?この貴重な記録を『痛み』と共に記した筆者には本当に感謝の念が堪えません。

    本書を初めて読んだのは20歳前後の事と記憶しております。何がきっかけで存在を知ったのかは失念してしまいましたが、注目のベンチャー企業の倒産というまさに天国から地獄を綴った当事者による告白手記であり、読んだときにずいぶんと衝撃を受けたことを思い出します。僕自身も、ここまで壮大な失敗劇とは申しませんが、東京で当時手がけていた仕事を破綻させ、都落ちする体で地元へ出戻らなければならなかったということを経験しているので、本書の教訓を生かしきることは出来なかったことになるのですが、今回再読してみて、最初に読んだときには見えなかった様々なものが内容から理解できたような気がして、ひとつの大きな収穫であったと思っております。

    ここには筆者である板倉氏の生い立ちから起業。そして倒産までの壮大な『悲劇』が生々しいまでの筆致で綴られておりまして、起業を志す人間にとってある種の『バイブル』として現在に至るまで脈々と読み継がれております。氏の手がけていたハイパーネットという企業は、今読み返しても当時としては誠に先鋭的なビジネスモデルで、インターネットを使った新サービスで脚光を浴びた理由も、よくわかりました。1996年3月期には売上高約7億円、経常利益約2億円を記録。大手証券会社であるソロモン・ブラザーズ(当時)や大手銀行の住友銀行(当時)などから融資の申し出が殺到し、本書のハイライトでもあるマイクロソフトの会長であるビル・ゲイツ氏が板倉氏に面会を求めてきたこともその証左なのでしょう。

    これとはまったく関係がありませんが、現在、インターネットで靴を販売しているザッポスを率いるCEOトニー・シェイ氏もかつては『リンクエクスチェンジ』というインターネットを使った広告会社を経営し、マイクロソフトに買収されたという経緯があり、歴史に『イフ』は存在しないことは百も承知ですが、もしかしたらそういうこともあったのではないかと読みながらそんなことを考えてしまいました。

    ゲイツ氏との面会から約2年後、会社が『死』を迎えるまでの記録が本当に読んでいて辛くなるほど詳細に記されております。それは本人にとって『地獄の日々』であったことは容易に推察されますが、本書の最大の『価値』とは『ハイパーネットは挫折したのか』。この命題について、当事者中の当事者だった「元社長」が倒産の理由を1冊にまとめたことであると思っております。全体的な内容として、こういう話はうらみつらみが大半を占めると思いますが、むしろ淡々と、自らの『失敗の本質』を振り返っており、そこが本書が読み継がれる要因なのでしょう。

    本書が世に出てからも、様々なベンチャー企業が日本に生まれ、いくつかは大きな成長を遂げ、その裏側では『死屍累々』の状況が現在でも繰り返されているかと思われます。ここで浮き彫りになっていることはアメリカなどに比べて、日本という土壌に『ベンチャー企業』がいかに育ちにくいか?ということであると思っております。

    そして、僕が最も印象に残っている箇所は銀行の貸しはがしに遭い、資金集めに奔走する筆者がすべてが終わって悟ったことに
    『ぼくは大組織がどんな論理で成り立ち、その組織を構成する人間が何を行動規範としているかを学ぶ機会を逸してしまった』
    という箇所でした。後に僕が板倉氏本人のツイッター(現在はBOT)に話しかけ、板倉氏と直接やり取りをした最初の言葉でも、ありました。現在、板倉氏は再起業し、事業に奔走されていると伺っております。氏の前途が洋々たることを祈りつつ、ツイッター上にて僕のぶしつけな質問にも、実に丁寧に答えていただいた板倉氏にこの場を借りて感謝御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

  • 以前読んだ、DeNAの南場智子さんの著書『不格好経営―チームDeNAの挑戦』で知り、いつか読みたいと思っていました。

    『ベンチャー』や『インターネット』が大きく成長・普及していくその時代に、波に乗って大きくなっていく会社。しかし様々な綻びが出てきて翻弄されていく板倉さん。

    技術面の話は解らない部分もありましたが、とにかく面白い。始めからジェットコースターのようなスピード感があり、ものすごい熱量があり…ページを捲る手が止まりません。

    時代は違えど、特に起業、経営に興味のある方は一度読んで損はないのではと思いました。

  • 以前から気になっていて、手に汗握るストーリーですね。ネットバブル時代のスタートアップの名著とも呼ぶべきかと。

    マイクロソフトの成毛さん、古川さん、アスキーの西さん、docomoの夏野さんなど今でこそ著名な方々の若かりし頃が名前付きででているのですごい時代だったんだろうなと改めて思います。まさか夏野さんが副社長をしていたことも知らなかったです。

    「終われもの」とあわせて読むと、あらためて社長業は、「人」と「お金」に右往される職業であり、慎重にならないとなと考えさせられます。

  • どの選択肢が正解なのか、時間が過ぎなければ分からない。自分ならどう決断を下すのかを考えながら読んだが、それだけでもものすごいプレッシャーを感じる。本書を読んで、社長として会社を切り盛りしていくのには、何かを生み出すという閃きの才能だけでなく、経営者として会社を運営していく力量が必要なのだと改めて感じた。板倉氏は終始お金の心配をしていた。しかし、大金を手にするにつれ、私生活が派手になっていく様子を見て悲しくなってしまった。

  • 良書。
    読んでいて緊張感がある上に学びも多い。

    新しいアイデアが事業になり、それを成功させるための様々なプロモーションや提携、マーケティング活動が生々しく描かれている一方で、金融改革といった外部環境の前には太刀打ちできなかったこと、内部である自社組織を蔑ろにしてしまった失敗談の描写のコントラストが心に刺さる。
    時代の波に踊らされたと言えばそれまでだが、その波に乗って踊れる人間はごく僅か。波から落ちない人間ではなく、落ちたとしても這い上がれるだけの力を持っている人間こそ挑戦すべきだと考えさせられた。

    起業家と経営者は求められる能力が異なるというのは、言われてみればそうだが、気づけていない視点であった。

  • これは壮絶。読み物としてテンポ良く読み進められ、最後の銀行からの取り立て劇は必死さや大変さ、混乱がよく伝わってくる。
    時折「ぼく」の反省が出てくるが、反省の深さが浅いため得られるものは少ない。純粋に読み物として面白い。

  • 面白い。
    会社潰す経験なんて出来れば御免だからこそ、疑似体験しておきたい。
    良質な反面教師的ケーススタディ。「自分ならどうするか?」を考えながら読むとなお有益。

  • 早過ぎた、というより、やっぱり日本では組織って大事。

  • スピード感があって飽きさせない。文章も統一されていて読みやすい。

    著者は大学をほとんどいかず、ずっと会社の創業をしてきた。自分を燃やせる壮大なビジョンを求めていた。PCゲーム作成からIT分野に強く、挑んだのはプロバイダ。加入者に無料でインターネット接続を提供し、そこに広告を連動させる。その顧客データを分析し有効な広告を打てる事が企業に広告を出させるメリットになる。

    それが金策が回らず破産するのは、金融行政が変わり、銀行が自己資本比率を高める必要があった事が外部要因としては大きいが、当人も自身の経営責任と何度も述べるように、収益を固める事を優先せず拡大に走り続けた事と、人材をマネジメントできなかった事だろうか。

    それでも実際の経験から裏打ちされた言葉は含蓄がある。
    「ぼくには一つの理念があった。それはいかに自分の事業をつぶせるかである。」
    「新規事業を立ち上げるに当たってぼくには一つのセオリーがあった。それは小さくテストして大きくスタートするというものである。」

    それにしても、1996年にこの広告付き無料プロバイダが日本で一定の地位を得ていたら、その後のビジネス界はどう変わっていただろう。孫正義はいなかったかも知れないし、既成のメディアと組んで闘っていたかもしれない。今第4のメディアと言われるインターネットが広告とセットになったTVのような提供をされていたら、日本のITは進んでいたのか、遅れていたのだろうか。

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