コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822245641

感想・レビュー・書評

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  • 世界の物流を支える「コンテナ」はどのような経緯で発明され、普及したのか。一人の企業家のアイディアが、利害関係者間の泥沼のような抗争の果てにイノベーションとして結実するまでの壮絶かつ壮大な物語。

    コンテナ登場以前の海運業は、様々な形状の貨物の荷積みや荷卸しといった労働集約業務がボトルネックとなり、コストが高止まりしていた。そこに目をつけた一人の企業家が、同じサイズの箱に詰めて人の手を介さずに運ぶという画期的なアイディアを思いつくが、労組の反対、行政による規制の壁、同業他社や異業種との争い等、様々な難問に行手を阻まれる。

    それでもコンテナによる物流の自動化と標準化は、関係者の努力に加え、規模の経済性という市場の論理も相まって海運・港湾事業の構造を一変させ、最終的には鉄道やトラック運送も巻き込み、グローバルなサプライチェーンを実現することになる。単なる物流オペレーション改革の歴史に留まらず、マクロ経済、グローバリゼーション、労働争議、経営戦略論、組織行動学など、実に多くの経営的要素を含んだ、読み応えのある良書。

  • 単なる箱の存在が、色々な変化をもたらす要因の一つとなっている歴史を興味深く読めた。今着ている服もコンテナによる恩恵を受けているおかげで、安価に手に入れられてると思うと感慨深いものがある。

    発明者のコスト意識に対する徹底した姿勢にも、刺激を受ける内容だと思います。

  • 物流から、労働組合、規格、港湾の話などいろいろ。
    ツイストロックは良くできてるなと思います。

  • コンテナ化の影響はそれほど大きくないとしている論者もいるとのことである。確かにコンテナが開始された1956年以降のグローバル化がすべてコンテナ化に起因するとは勿論思わないが、輸送コストの劇的な低下によるグローバルサプライチェーンの実現と定時性・予見性の確保は経済のグローバル化において大きな役割を果たしたと考える。

    1.8万TEUどころか2万TEUを超える船が建造される今をリードするコンテナ会社を見ると、やはり先行者利得というものはあまりなく、第二集団で利点を最大化した方がいいのではないかと思ってしまう。すでに環境問題への対応という新たな局面に入っている中で、コンテナ輸送がどのように変容していくのか新しい時代に差し掛かっているのだと思う。

    最後に、この本の主人公とも言えるマルコム・マクリーン氏。規制で諦めるのではなく、むしろそれを逆手に取るかのように邁進していく切れ者さとバイタリティーに魅了されました!

  • 1956年3月、トラック運転手からスタートしたアメリカの陸運業者マルコム・マクリーンはコスト削減と交通渋滞回避のため、トラックから箱だけ切り離して船に乗せる海上コンテナ輸送を始めた。ただ、そのことを成果に結びつけるのは容易ではなかった。陸上、海上輸送の兼業を禁止する規制当局との戦い、埠頭を牛耳る沖仲士組合の山猫スト等の抵抗をおさえての苦闘が続く。その後、相次ぐリスクの高い企業買収、莫大な設備投資、ベトナム戦争の兵站輸送でチャンスをとらえ、世界最大級の海運業者に。ただ、最終は大きな負債を抱えて倒産、公の場から姿を消した。2001年5月死去された時は、世界中のコンテナ船が汽笛を吹聴し弔意を現わしたと言う。コンテナ自体が使われ始めたのは1920年代、港湾荷役がボトルネックで普及しなかった。その使い方に工夫を加え、巨大なクレーンと広大なトラックヤード、コンテナ船の最適化等、コンテナリゼーション=トータルロジスティクスを構築し、物流革命を引き起こした。ビル・ゲイツは毎年その年に発行された本から推薦書を数冊紹介しているが、「2013年に読んだ記憶に残る7冊」の中の1冊として本書を紹介。「コンテナ出荷への移行がどのようにして世界の経済やビジネスに大きな影響を与えたかについて非常に読みやすく書き上げています。読了後、私のコンテナに対する見方は完全に変わりました」。物流人は、読んでおくべき本の中の1冊。

  • モノの輸送に一大革命をもたらした、コンテナの発明とその普及に纏わる物語。その立役者は、トラック一台から運送会社を起業した業界の風雲児、マルコム・パーセル・マクリーン。

    1956年、マクリーンのアイデアルX号がニュージャージー州のニューアーク港からヒューストンへとコンテナ58個を輸送したのがコンテナ輸送の始まり。以来、補助金や規制に守られた海運業界の古い体質、港での荷の積み降ろしを担う日雇いの港湾労働者=沖仲仕達(積み荷を掠めとるなどゴロツキ同然の荒くれ者達で、組合によって強固に守られている)の激しい抵抗、保守的で先見性に欠ける行政、コンテナの規格化を巡る業界内の混乱、海運業者同士の過当競争と業界再編、とまあ、気の遠くなるような紆余曲折を経て、しかし、その経済合理性故に着実に世界的に普及していったコンテナ輸送システム。

    コンテナの普及は、とにかく輸送コストを劇的に下げた。経済学者は「モノの移動は基本的にコストがかからないと考えてよい。もはや輸送が生産プロセスの重要な一要素であると考える必要はない」とまで言っているという。それに伴い、沖仲仕達の仕事は失われ、コンテナ港に向かない港湾都市(ニューヨークやリバプール)は凋落し、コンテナ輸送の設備投資ができなかった老舗船会社は倒産し、都市周辺にあった製造工場は、安い土地と安い人件費を求めて地方に移転・分散した。今や大型コンテナは「一国の経済をグローバル・サプライチェーンに結ぶ媒介役を果たしている」とまで言えるのだとか。まさに破壊的イノベーションだったんだなあ。

    現在、世界中に張り巡らされている物流ネットワークに、これだけの壮大な歴史があったとは知らなかった。また、「アジア諸国が「世界の工場」となった大きな理由は、大型コンテナ港が林立し輸送コストを世界一安く抑えていたから」であり、一方「アフリカの国々は貧弱な港しか持たず、コンテナ船も滅多に立ち寄らない」ため「世界最低水準の人件費も製造業にとって魅力にはならなかった」という著者の見方も面白かった。

    読み応えのある物語だった。

  •  コンテナ自体よりも、コンテナを含む最適化された運送の体系、「システム」を確立することが難しかったことがよく分かった。そして、いったんシステムが作られた後の、不可避な全体の移行の様子がよく説明されていた。
     沖仲仕の労働組合ごとの、機械化への対応の違いが興味深かった。西海岸では強力なリーダーにより早々に機械の導入が決められたが、東海岸では港ごとに意見が相違して時間がかかった。しかし結果的に労働者の得た補償は東海岸の方が多くなったようだ。このことをもって経済的発展と個々の労働者の利益は必ずしも一致しないと言えるだろうか?西海岸の労働者の方が、未来のない職業から早期に足を洗って次の職業につくチャンスを得たのだとすれば、そうは言い切れないだろう。

  • 伝統的に軽視されがちで一見地味あるが、実はものすごく重要で世の中に大きな影響を与えるものとして、「ロジスティクス」いわゆる物流があると思う。幾多の戦場で勝敗を決する重要な要因となり、ときに国家や企業の競争力を決定的に左右する要因となるこの概念が、20世紀後半に劇的に変わった要因が、まさに本書の主題である「コンテナ」だろう。
    翻訳ものなので、特有の違和感がないとは言えないが、それを補って余りあるダイナミックな物語に引き込まれて、次々と読み進めてしまった。

  • 現代の大量生産、大量消費の社会を支える要素の一つにコンテナという存在がある事や実感した。
    日本の高度経済成長を支えた工業製品の輸出を行う事ができたのも、コンテナの普及で運送コストが劇的に低下した事を考えるとコンテナ様様だと思う。
    しかし、逆に日本国内の工場が海外に転移した要因もコンテナにあると思うので、難しい。

  • コンテナがいかにして物流や社会を変えたか、それに付随する様々な困難(当局、労働組合、技術)をどう克服したかが物語調に書かれているので読みやすかった。
    一番衝撃を受けたのは、その先駆者の起こした企業は既になく後発の企業が多くのシェアを占めているということだった。
    p.298「海運会社は…独自技術が次々にヒット商品を生み出し数十年にわたって高利益を上げ続ける…所詮無理…」
    そのほか原油価格の上下、世界経済の浮沈に伴う物流量の減少など、が主に影響していた。いずれの場合でも、うまくいっている時もあればそうでない時もあるので、最後は運なのだろうか。

    ○キーワード
    マルコム・マクリーン
    デンマークのマークス海運
    台湾のエバーグリーン海運

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