資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822246419

作品紹介・あらすじ

世界の構造改革のバイブル。1962年初版、フリードマンが最も愛した著作、待望の新訳。郵政改革、教育バウチャー、規制撤廃など絶対自由主義の政策の意味を説いた名著。

感想・レビュー・書評

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  • 自由主義について考える上ではずせない1冊

    自由主義や資本主義、競争はよくないという論調が政治家、テレビなどで語られるが、本当にそうなのか。(特に競争という言葉は本来の意味と違う理解がされているように思う。)

    その意味を知らずして良い悪いの判断はつかないはずだが、それらはあまり語られない(語られると都合の悪い人がたくさんいるからではないだろうか…)

    フリードマンは本書を記したのは1962年であるが、彼が廃止を提案した政策には以下のようなものがある

    1 農産物の買取保証価格
    2 輸入、輸出関税
    3 産出規制
    4 物価、賃金統制
    5 最低賃金や価格上限
    6 産業規制
    7 ラジオ、テレビの規制
    8 社会保障制度
    9 事業、職業の免許制度
    10 公営住宅
    11 平時の徴兵制
    12 国立公園
    13 郵便事業
    14 公営の有料道路

    いずれも今の日本、世界で議論されているものばかりで驚く。
    TPP(1,2)、保育園の認可制度(6)、電波の独占(7)などホットな話題だ。小泉さんの郵政民営化(13)も今や国営の道に向かいつつある。
    道路公団の民営化(12)も十分なのかはまだ疑問だ。

    問題を指摘されながら実現されずにいるのをみると、既得権益と戦うのはいかに大変かが分かる。

    実は僕たちは世の中からうまいことだまされているということに気づかせてくれる1冊ではないかと思う。

  • シカゴ自由学派のフリードマンは、経済活動への政府の介入を最小限にとどめ、自由な経済活動を主張した、シカゴ経済学派の中心人物として高名です。
    本書を読むと、個人的自由というものに対する透徹した考え方がひしひしと伝わってきます。例えば、次の一節。
    「自由人は、国が自分に何をしてくれるのかを問わない。その代わり、自分の自由を守るために、政府という手段を使って何ができるか、を考える」

    続けて彼は、こう言います。「権力はよからぬ意図を生みやすく、また磁石のように、悪しき意図を持つ輩を吸い寄せる」。フリードマンが、個人の自由意志に絶大な信頼を寄せていたことは、「偉大な業績を生み出したのは、個人の才能であり、大勢に逆らって貫き通された不屈の意志であり、そして個性や多様性に寛容な社会であった。」という表現からもよく分かります。

    一方、企業の役割が株主価値の最大化以外にない、と言い切ってしまっていますが、今日企業に期待される経営におけるESGの重要性やSDGへの貢献への要求の高まりは、本書が執筆された1962年時点ではまだ予測不能な現象だったのでしょうか。

    フリードマンの経済、政治の在り方に対する主張は、今日の米国のリバタリアニズムにも大きな影響を与えているような気がします。別の本の感想でも書きましたが、当人の孫がシーステッドという洋上自由都市を提唱しているというのは、一家に自由信奉の精神が脈々と受け継がれているからでしょう。

  • シカゴ大学経済学者でありノーベル賞受賞者でもあるミルトン・フリードマンの主要図書。政府による公共投資、規制、増税、保護貿易など、資本主義に制約を与える事項を批判し、徹底して自由を推奨している。当時、信奉者の多かった社会主義やケインズ経済学と真っ向から対立する意見を50年以上前から唱えていた先見性は驚きである。(今では世界の常識ではあるが、当時は異端視されていたようである。)競争的市場第一主義のシカゴ学派を代表する書籍といえ、必読の一冊と考える。
    「政府の仕事は、個人の自由を国外の敵や同国民による侵害から守ることに限るべきだ」p25
    「そのうちいつの間にか、政府は進歩より現状維持を、多様性より可もなく不可もない均質性を選ぶようになるだろう」p27
    「自由よりも福祉や平等が重視されるようになり、めざす目標を達成するのに、民間の自主的な取り組みよりも国家に頼ろうとするようになった」p30
    「(市場は差別を排除するから)競争資本主義が維持され強化されたとき最も恩恵を受けるのは、黒人、ユダヤ人、外国人など少数集団である」p61
    「経済の安定のためにも成長のためにもいま必要なのは、政府の介入を減らすことであって、断じて増やすことではない」p92
    「人は自分が多数派の時に他人の言論の自由を奪うのは平気でも、自分が少数派の時に言論の自由を奪われるのは大いに気になる」p114
    「私の知る限りでは、ケインズ理論を裏付ける系統的なデータや一貫性のある証拠は存在しない」p167
    「競争原理が働く制度を導入すれば、優秀な先生に報い有能な人材を呼び込めるようになるので、現在の(教育の)多くの問題点が解決すると期待できる」p188
    「人種や宗教や皮膚の色などを理由に差別する人は、他人を不利に陥れるだけで自分は不利にならないと考えられている。これは、輸入品に高い関税をかける国は他国を不利にするが自国は有利になるという見方と根は同じである。だがどちらもまちがいだ」p211
    「ある職種なり産業なりで労働組合が賃上げに成功すると、そこでの雇用は必ず減ることになる」p234

  • 自由主義な経済学者があるべき資本主義を語った本。自由に対しての主義が一貫しているため、価値観が自分と異なっていても拒否感は生まれない。
    主張をシンプルにすると政府が自分達への領域を出来るだけ排除し、市場に任せるべきというもの。市民の直接利益に反する行為を強いるものへ徹底的に拒否する。アメリカの自由主義を垣間見た気がする。だが、展開される論理は前述したとおり読んでいて拒否感は感じず心地よく感じるのは、自分にとってのマイナスも自由主義のためならば選択するという考えだ。ぶれない。
    ぶれない意見には、やはりパワーがあると感じた。

    ・自由は傷つきやすい花のようなもの
    ・権力の集中は自由を脅かす
    ・市場は抜け道を探す。利益を追う。国営はそうならないだろう
    ・自由社会での政府の役割は「ルールを変える手段を用意すること」だ
    ・政府が事業を行う事に認めても独占することに正当性はない
    ・通貨に関する政府の責任を全うできる環境を用意する一方で権限を制限する環境を用意しなければならない
    ・通貨は中号銀行に任せるには重大すぎる
    ・最低限の教育を義務付けることは外的効果を考えると成すべき事項
     しかし学校教育を政府が運営する正当性はない
    ・金を出せば口を出すのを当然と考えているらしいが、両者は切り分けれるはずである。政府の役割は最低基準を満たしていることを監督することである
    ・労働者は給与の均等化を歓迎し、能力給に反対する。優秀な人物は多くないからだ。政府が加担すればいつまでも続く
    ・教育は人的資産に対しての投資である。だがリターンを得るのが非常に難しい。
    ・人は人格や行動で評価されるべき。この考えに一致しない人々を軽蔑せざるを得ない。だが、逆に外面で評価する人々を市場にした場合、雇用を外面で判断する事への制限は経営側の機会損失である。自由への干渉
    ・肌の色のような価値基準をよろしくないと思うなら皆を説得すべき。国家の強制力に頼るべきではない
    ・独占は好ましくないが、政府関与は最も避けるべきだ。元に戻せない
    ・市場でどれが一番良いかを選ぶのは消費者であり、生産者ではない
    ・現状維持の罠。想像力を働かせなければ
    ・自由を信奉するなら過ちを犯す自由も認めなければならない
    ・貧困を救済するなら、それだけを目的とするべきである。農民を救うなど特定の誰かを救う事を考えてはならない

  • 反リフレ派のエコノミストが、医療制度について、この本の中で言ってることと、ほぼ同じことをツイートしてるのを見かけた。
    フリードマンは過去の人なのに、その言説は、リフレーション派からはもちろん、反リフレ派からも、取り上げられてる。

    オレは、フリードマンもマネタリストも大嫌いだ。
    ヘドが出る。

    世界をここまでイビツな格差社会にしてしまった元凶は、コイツだ。

  • ハイエクの「自由の条件」と並ぶフリードマンによる新自由主義の古典的な著作。

    新自由主義的な政策は、私にとっては仮想敵みたいなものなのだが、イメージだけで批判しても仕方がないので、一応、読んでおこうと思った。

    原著は1962年だが、ベースとなっている講義は1955年ごろとのことということなのだが、今読んでも古びていない。どっちかというと批判的に読んでいるのだが、説得力は結構あって、ちょっと納得したところもいくつもあった。

    どういう思想であれ、それを生み出した人の思考は、深い。単純に経済学者が、なんでもかんでもマーケットメカニズムに任せておけば大丈夫みたいなことを言っている訳では全くない。

    フリードマンの思考は、哲学的には、リバタリアンという自由にもっとも価値をおく立場。経済活動だけでなく、さまざまな活動、思考などの、できるだけ人間が自由に選択できるようにしようとしている。なので、できるだけ政府の役割を最小限にしようというのが基本的なスタンス。

    そこからスタートして、現在、政府、規制などなどが関与している活動をさまざまな分野において検証しながら、なんらかの政府の活動が可能なものとそうでないものを仕分けていく感じ。

    その際のロジックの切れ味は鋭く、フリードマンの主張に賛成しないまでも、彼の土俵につい上がって、「いやそこまではできないだろう、このあたりじゃないか」みたいなことを考え始めている自分がいたりする。

    今となっては、新自由主義の政策が破壊的な結果を生み出したかを知っているわけだが、それを単にお役御免にしてしまうのではなく、じっくりと彼の主張を吟味して、自問自答することが必要かな?

    とくに個人の自由より、集団での利益が重視され、事細かな管理、統制、規制に向かい個人の選択を制限する方向に進みがちな日本においては、フリードマン的な思考は大事なものをもっているかもしれないと思った。

  • 経済学部 上野勝男先生 推薦コメント
    『アメリカ流経済学の思想とロジックを明快にまとめた書物。グローバリズムと市場原理主義(もしくは新自由主義、あるいは「ネオリベ」)は、現代世界の抗しがたい一大潮流。市場原理主義に賛成するにも反対するにも、必読の書です?』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/478267

  • 市場の原理に委ね、政府の介入余地を減らすことが、個人の自由度を高める。政府の施策は利益の偏りが生じる。少し難解でした。

  • 現代経済において必ずしもマッチしないところはあるが、この本の内容と考え方は理解しておいた方が良いだろう。

  • 本書が出版されたのは1962年。

    本書第2章に、政府がやる理由がない政策が14列挙されている。
    ●農産物の買取保証価格制度
    ●輸入関税または輸出制限
    ●農産物の作付面積制限や原油の生産割当てなどの産出規制
    ●家賃統制
    ●法定の最低賃金や価格上限
    ●細部にわたる産業規制
    ●連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制
    ●現行の社会保障制度、とくに老齢・退職年金制度
    ●事業・職業免許制度
    ●いわゆる公営住宅および住宅建設を奨励するための補助金制度
    ●平時の徴兵制。
    ●国立公園
    ●営利目的での郵便事業の法的禁止
    ●公有公営の有料道路

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