職業としての政治/職業としての学問 (日経BPクラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822247225

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦に敗北したドイツ。革命運動に走る多くの若者たちを前に、ウェーバーが静かに訴えたことは-。

感想・レビュー・書評

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  • 職業としての政治と職業としての学問。311以降、それがいったい何者なのかというのは観念ではなく、とてもリアルな問題なのではないだろうか。

    ビジョンを示してから実効策を検討するオバマのような政治家が日本ではほとんど皆無のように見える。その理由は何故なのか。職業としての学問が要請する倫理とは何なのか。残念ながら本書を読むだけではそれは具体的に見えてこなかったけれど、第一次大戦後のドイツでも同じ悩みはあるのだなあ、と少し安心しながら本書を読んだ。アメリカとの比較も、日本人の専売特許ではないのですね。

  • 11日(金)の地震発生時は、ビル4階の事務所にいた。
    その後、災害対策本部の担当になり、翌朝の生徒・学生の下校まで対応にあたった。
    余震・原発危機・停電も重なり、非定常時が続いている。
    震災後の1週間は本を読む気になれなかった。とにかく衣食住のことばかり気になり、それに係る情報収集と行動をとった。
    自らのこのブクログも8日ぶりに開いた。
    いつまでも、非常時だと思っていると効率が悪い。この状況を活用していかに学びの機会とするかが、次の段階に係ってくる。様々な価値観を再点検する必要がある。当然仕事のスタンスもかなり変わってくるはず。
    大学職員として未来の日本をつくる人材を輩出するための仕事をしなければならない。

    混迷を極めた今こそこの古典を読む。日常の取り戻しは読書から。
    職業としての政治、職業としての学問の何れも、私の仕事に大きく関係がある。最近の慣例やマニュアルが通じないので、先人の知恵を借りることが早道だ。

    ■職業としての政治
    ポリティックはコンテクスト次第で、いろいろな意味に使われる。為替政策、手形割引政策、労組の基本方針、教育政策、団体の基本精神、策略という意味をカバーする。何れも人々が自立的に指導する行為という点で共通する。

    「全ての国家は暴力を根拠としてい」て、暴力という手段に支えられた人間による人間の支配関係があり、為政者の主張する権威に服従することが必要。その根拠は、権威・カリスマ・合法性の3つがある。
    今回の震災で為政者による支配のプロセスがあらゆる場面で問われていると気付き始めた。

    マスコミからの情報の取り入れ方も今回の震災で気付きがあった。長時間マスコミから情報を取得し続けると、冷静に判断できなくなる。
    本書の「ジャーナリストと政治」では以下のよう記している。
    ジャーナリストは、いわばある種のパーリア(賤民)階級で、上流階級から倫理的に極めて低い社会的な評価が下された人々だという。
    もちろん優れたジャーナリストの誠実な仕事は素晴らしい結果を生むが、無責任なそれは恐ろしい結果を生む。軽蔑・臆病さのまじり合った感情を持って眺めるようになっている。
    ウェーバーのこの講演は1921年に行われた。ある意味現代でもこの状況は何も変わっていないかもしれない。様々な媒体やSNSが生まれて、情報を得る側の精査がより求められているのは間違いない。

    下に引用した一文をかみしめ、過度に期待することなく、繋がりのある人と励まし合い、毎日の仕事に専念することが一番だと思う。

    ■職業としての学問
    本書ではドイツの大学システムを念頭においている。その伝統が示すように、学問的な訓練というものは、貴族的な精神に基づいて行われるべきとウェーバーはいう。今日の大学の機能である「普通高等教育」とは相対する考え方といえよう。

    学問を扱う職場は「僥倖」の連続により成り立つ。研究成果の蓄積、新しい知見の発見、またそもそも教員・研究者として学問を生業にできるこことは、運によることが大きい。
    しかし、運だけでは何事も発見できず、日常の研究という厳しい仕事を土台にしなければ、「思いつき」も生まれない。仕事と情熱が同時に働くことにより思いつきが誘いだされる。独創的な思いつき=創造力=霊感はオフィスでもラボでも必要といっている。(pp182)

  • 「職業としての政治」は、30年以上前に読んだことがあって、強い印象をもった。

    なんとなく中山元さんの訳で、初めて読む「職業としての学問」とともに、読んでみた。

    「職業としての政治」については、驚いたことに、読んでいて覚えているところがほとんどなかった。わたしが覚えていたのは、政治という職業と倫理性の関係についての議論だけで、それは結論部分でようやく出てくる話し。

    結論を覚えているならいいかというと、当然、そういうわけではない。

    ここで、議論されているのは、政治というものもつ本質的なパワーというか暴力の問題(これがもちろん倫理の話につながるのだが)、そして歴史的、地理的な政治の形態、そのなかにおける官僚制の役割などがほとんどの分量をしめている。

    そうした議論を踏まえて、結論部に到達するわけで、なかなかに面白かったな。

    とは、いいつつ、やはり最も印象的なのは、最後のほうの部分。

    最初に読んだあとに、歴史を勉強して、第一次世界大戦におけるドイツの状態、ロシア革命、1918年のドイツ革命、スパルタクス団蜂起の流れを理解したうえで、このまさにスパルタクス団蜂起の直後になされたこの講演を読むと、その緊迫度、そしてウェーバーの視点の冷静さ、見通しの正しさがひしひしと伝わってくる。

    ウェーバー、恐るべし。

    「職業としての学問」も同時期になされた講演。職業は大きく違うのだけど、ウェーバーの主張の骨格は似ている。

    もっとも、「学問」のほうは、「政治」ほどの緊迫感はなく、晩年の大学者の述懐のような、当時の学問へのやや批判的な眼差しなどが印象的であった。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18358

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA89271012

  • 第一次世界大戦が終わった時期の、マックスウェーバーの講演を収録した作品。

    当時の状況をわかっていなかったので、理解するのが難しかった。

    期間を置いて再読したい。

    職業としての政治について
    →政治家の累計や各国の特徴や歴史を丁寧に説明。
     政治家には、信条だけではなく、自分が行ったことに対する責任を感じながら成熟すべき。

    職業としての学問
    →学者は価値判断と事実判断を区別し、事実判断に基づき語ることが大事であり、それによりがくせいの考え方が育っていく。

  • 「政治」とは、複数の国家ないしは集団の中で、権力の配分を求めて争われる営みである
    「国家」とは、正当な暴力の行使を独占することを要求し、それに成功している唯一の共同体。

    国家が存続するには、人々が権威に服従することと、支配するための物質的な財(行政スタッフ、行政手段)が必要

    支配の3類型
    伝統的な支配→支配の正当性の根拠が、過去の慣習
    合法的な支配→理性的に定められた規則
    カリスマ的な支配→天賦の資質
    革命の時代にはカリスマ的な支配が必要

    職業としての政治家の誕生(カリスマ的ではなく、君主に奉仕する形の政治家)→臨時的、副業的な政治家の誕生
    政治のために生きる政治家→自分の理想のために生活を捧げている者(本職の政治家)
    政治によって生きる政治家→政治的な活動から手を離せる政治家(臨時的・副業的政治家)

    政治家の五類型
    1.聖職者
    2.人文主義的教養者(君主の顧問)
    3.宮廷貴族
    4.ジェントリー(報酬を受け取らずに政治に従事した政治家)
    5.大学で教育を受けた政治家

    5番目のみは、語られた言葉や書き記された言葉を手段として、政治本来の活動を営む人々→本職としての政治家。現代的政治家。民衆政治家(デマゴーグ)。しかし、財政的な基盤がないため、様々な問題が生じる

    ①国民投票の産物なので、政党に縛られ、人気取り政策に走る(最たるものがナチス)
    ②人的スタッフ、報酬が必要

    ポピュリストは、権力獲得のため、扇動的になり、国民を誤った方向に導く可能性がある。また、自分の理念を裏切っても、スタッフに報酬を与えねばならない→国民を滅亡に導くことも

    ※※そのため、職業的な政治家は、情念ではなく、みずからの政治家としての仕事に対する倫理的姿勢を備えねばならない
    「情熱」「責任感」「判断力」が必要

    ×「心情倫理」→自分の信条の正しさを信じてやまず、自分の信じる理念に従って行動すること
    〇「責任倫理」→理念をかたりながらも、その理念に基づいた行動の結果に責任をとること

    ──────────────────────
    学者にも同様のことが言える
    (財の不安定さなど)
    自分の専門の分野で仕事をすることしか真理に到達できないという「信念」が必要だ。しかし、その信念に燃えながらも、自制と責任、客観的な醒めた目が必要である。

  • 20世紀を代表するドイツの社会学者、マックス・ウェーバー(1864-1920)の重要な講演2つを収録した書。難解だが、政治とは何か、政治家という存在が担うべき役割とは何か、今改めて考える上で参考になる古典的名著。

    職業としての政治
    職業としての学問

  • 東2法経図・開架 310.4A/W51s//K

  • 原題:Politik als Beruf / Wissenschaft als Beruf
    著者:Max Weber(1864-1920)
    翻訳:中山 元

    【版元による内容説明】
     マックス・ウェーバーは20世紀を代表するドイツの社会学者。著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、世俗内禁欲を生活倫理とするプロテスタンティズムが近代資本主義発展の原動力となったと分析。戦後日本を代表する丸山真男、大塚久雄らの学者に大きな影響を与えた。
     本書は、ウェーバーの残した重要な講演ふたつを収録した。第一次世界大戦で敗北したドイツ。全土が騒然たる革命の雰囲気に覆われていた1919年1月、ミュンヘンで『職業としての政治』の講演が行われた。政治とは何か、政治家という存在が担うべき役割とは何かを、血気にはやる学生を前に諄々と説いたウェーバー。
    「現実のうちで貢献しようとしているものと比較して、世界がどれほどに愚かで卑俗にみえたとしてもくじけることのない人、どんな事態に陥っても、『それでもわたしはやる』と断言できる人、そのような人だけが政治への『召命』[天職]をそなえているのです」
     世界的な激動期にあたり、政治の役割が従来以上に増してきた今、本書は万人必読の書といえる。
     『職業としての学問』も名高い講演として知られる。ウェーバーはこう説いた。
    「わたしたちはみずからの仕事に赴き、人間としても、職業においても、『日々求められること』にしたがう必要があるのです」
     訳者は、光文社古典新訳シリーズのカント『永久平和のために』、ルソー『人間不平等起源論』などの中山元氏。


    【目次】
    目次 [001]
    凡例 [006]

    職業としての政治 007
     講演のテーマについて
     政治/ポリティックという語
     国家とは何か
     支配の要件
     内的な正当性の三つの根拠
     支配に必要な二つの要素
     行政スタッフ
     行政手段
     国家の二つの類型
     近代国家の発展の歴史
     第一のカテゴリーの職業的な政治家
     「副業的な」政治家について
     職業的な政治家の類型
     政治と財産
     専門の官僚制度の確立
     議院内閣制の成立
     二種類の公務員
     企業の「主権者」
     職業的な政治家、その五つの階層
     弁護士と民主主義
     官僚と政治家の違い
     デマゴーグの由来
     ジャーナリストと政治
     ジャーナリストと職業的な政治家
     ジャーナリストの経歴と課題
     職業的な政治家としての政党の職員
     政党の支配構造
     イギリスの政治クラブと政党組織
     ドイツとフランスの初期の政党
     現代的な政党システムの登場
     指導者のカリスマ的な魅力
     新しい政党システムと名望家システムの対立
     イギリスの初期の政党組織
     政党システムの恩恵と効果
     イギリスの指導者の選出プロセス
     アメリカでの政党システムの役割
     猟官システムとボス政治の功罪
     ドイツの政治運営の三つの条件
     ドイツの職業的な政治家の機能
     新しい転換の兆し
     ポピュリスト的な指導者の〈代価〉
     政治家に必要な資質
     信念の必要性
     政治家のエートス(気風)
     敗戦の倫理問題をめぐって
     政治と倫理
     真理と政治
     信条倫理と責任倫理
     善き目的と悪しき手段
     目的は手段を正当化するか
     弁神論の問題と人生の不条理
     宗教と政治
     「装置」への報奨
     魂の救済と暴力による政治の対立
     真の人間とは
     一〇年後には
     政治家の資質 

    職業としての学問 005
     アメリカとの比較
     アメリカ化するドイツの大学
     教師の人事の背景
     研究と教育という二つの「顔」
     学者の情熱
     霊感の大切さ
     個性と体験という偶像
     学問と「進歩」
     世界の脱呪術化
     進歩の意味
     学問と真理
     概念の発見
     実験の採用
     近代の初頭における自然科学の意味
     学問の無前提性
     自然科学、医学、美学の問いと前提
     教師と政治
     価値判断と事実判断
     学問の無前提性についての宗教史の実例
     教師の倫理的な達成
     時代の宿命
     アメリカの学生の例
     教師と指導者の資質の違い
     学問の〈効用〉
     学問という職業の価値
     神学の前提とするもの
     知性の犠牲
     時代の宿命

    訳者あとがき(二〇〇九年一月一五日、九〇年前のローザ・ルクセンブルクの死を悼みながら  中山 元) [245-263]
     講演の背景
     政治家の類型と特質
     政治家の歴史的な発展
     政治家の直面する難問
     政治家のエートス
     信条倫理と責任倫理
     『職業としての学問』 

  • 「池上彰の経済教室」での池上彰氏おすすめの一冊。政治家としての心持ちのありようや、学問を学ぶ上でいろいろと関係する事柄を記した不朽の名作です。再読の価値あり。

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著者プロフィール

1864-1920年。西洋近代について考察したドイツの法学者・経済学者・社会学者。代表作は、本書に収められた講演(1919年公刊)のほか、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1920年)など。

「2018年 『仕事としての学問 仕事としての政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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