民主主義がアフリカ経済を殺す

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822247874

作品紹介・あらすじ

最貧のアフリカ諸国では深刻な危機がなんと民主主義によって増幅されている。『最底辺の10億人』の著者がアフリカ大陸における驚くべき逆説を剔抉する。

感想・レビュー・書評

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  • 「民主主義がアフリカ経済を殺す」読了。民主制に移行し平和になったはずのアフリカ諸国が、いまだに貧困にあえぎ、内戦に苦しんでいるのはなぜか?邦題はセンセーショナルですが、原著は"Wars, Guns, and Votes"。うん、全然違う。「戦争、銃、選挙」やったら確かに地味 w

    貧困国への選挙制度導入は社会の暴力リスクを高めてしまう、というのが著者の指摘。貧困国では部族的なつながりが強く経済的なつながりが弱いため、立候補者の支持層もそれぞれの部族に偏る。また当選後も自分の支持層にのみ利益供与し、対立部族から妬まれ内戦の泥沼。日本で言うたら、そこらへんの戦国武将適当にまとめて「はい、君達は今日から同じ国民!」言われてるようなもんで、まあ、そりゃまとまらんやろな、と。たまにカリスマ指導者は出てくるけど、それに期待するのも酷な話。本書では解決に向けた提案も提示されてます。

    あと、稀有な民主化の成功例としてタンザニアがあげられてました。施策の一つとして、学校で教える歴史を、部族ごとの歴史からタンザニアとしての歴史に変えたことにより、若年層に国家の意識が芽生えたとのこと。………国家ってなんやねん orz 今のところ「利害関係と価値観を共有できる集団」が国家なんかな、というのが自分の中で一番しっくりいく捉え方。そのうち宇宙人でも来れば、地球人として一致団結できる日が来るんやろうけど、生きてるうちにそんな日は来るかな~? w

  • 資料

  • 原始社会は戦争の日々であり、集団防衛のための予算は一番の優先だった。冷戦終結前はアメリカの国防費は9%になっていた。

    アフリカの独裁者は、選挙によって勝つ方法を見つけ出し、独裁者の地位にとどまり続けている。
    アフリカでは政治的暴力を増加させている。
    選挙で負けた独裁者は、インドネシアのスハルト大統領、残ピアのカウンダ大統領、ジンバブエのムガベ大統領。

  • ふむ

  • 原題:Wars, guns, and votes: democracy in dangerous places. (Harper, 2009)
    著者:Paul Collier
    訳者:甘糟 智子
    装丁:川上成夫

    【書誌情報】
    価格 2,376円(税込)
    ISBN 978-4-8222-4787-4
    発行日 2010年1月18日
    発行元 日経BP社
    ページ数 320頁
    判型 4-6
     ※正誤表アリ
    https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/10/P47870/


    【目次】
    目次 [001ー003]

    序章 最底辺の国々の恐るべき逆説 004

      第一部 現実の否定としてのデモクレイジー 019
    第一章 選挙と暴力 020
    第二章 民族間の権力闘争 070
    第三章 煮えたぎる釜のなかで――紛争後調停 102

      第ニ部 現前する暴力と対峙せよ 137
    第四章 銃――火に油を注ぐ武装 138
    第五章 戦争――破壊の政治経済学 160
    第六章 クーデター ――誘導装置のないミサイル 186
    第七章 破綻国家コートジボワール 206
    第八章 国づくりの過程と条件 222
    第九章 餌をもらうくらいなら死ぬほうがましか? 248
    第十章 現実の変革のさなかで 302

    謝辞 [310ー313]
    付録:最底辺の一〇億人の国々 [314]
    本書の基礎となった研究 [316ー318]

  • 邦題が過激だが、内容はオックスフォードのアフリカ研究センター長を務める経済学者が、計量的にアフリカ政府の機能の原因を立証しつつ、提言を行っている本。国民意識が育っていない国では民主主義選挙は「勝ち民族と負け民族」を作ってしまい内戦リスクを高める、富と権力を手にする大統領は主権に固執し、他国との主権共有や協力が進まず公共財提供の規模の経済が働かない、クーデターがクーデターを生む環境にあり政権が安定化しない、武器はお金が欲しい軍人の手によって容易に政府軍から反政府軍に流れている、などなど、データ分析に基づく一般的な言説の証明を的確に行っている。残念なのは最後の提言の箇所。政府に対してガバナンス基準を設置し、その見返りに安全保障や援助を提供するという発送に対し、ガバナンス基準の中身や履行方法が不明確であり、またその公共財を提供する上位者としての国際社会のパブリック性に期待が高すぎ、国際社会そのものがパワーポリティクスの側面があることが考慮されていない。

  • タイトルと違ってまともでいい本。

    最貧国において、アカウンタビリティー(説明責任)と安全保障がない場所で民主制だの選挙だのしても見せかけだけの投票ごっこになって、逆に抑圧的な独裁制は強化され、貧困、内戦、クーデターのリスクをさらに高めて益より害のほうが大きくなるぞ、民主主義に過剰な期待をするなよ、他に国際社会がやることあるよ、という内容。

    決してアフリカでは民主制は全然ダメで選挙なんて全て無意味、とか民主主義がホントにアフリカ経済をダメにしているという文字通りの内容では全然ないので誤解なきように。邦題が悪すぎ。

    民族的多様性が国民国家を作り出すことの弊害となっているしその多様性が内戦のリスクを高めているというのは頷ける。
    なにより豊かになれば内戦、クーデターのリスクは減るというのが実証研究から分かってきた。だから平和維持活動や派遣軍の出口戦略は、選挙の実施ではなく経済開発が重要なの。
    コリアーの面白い指摘は最貧国は主権が強過ぎるというもの。最貧国、小国でも主権がある。だから内政干渉できないという原則がある。であるがゆえに主権を隠れ蓑にして独裁者たちが援助国から援助金を軍事費に使いや私腹を肥やしているという構図がある。

    そこでコリアーからの提案。アカウンタビリティーと安全保障といった公共財を供給するために外部の国と主権を共有してはどうか。さらに議論が呼びそうだけど暴力を利用する方法。制御されたクーデターによって独裁者を排除したらいかが?と。刺激的な論考。

    世界の貧困解決や独裁性がなぜなくならないのか真剣に考えたい人は必読の本。

  • 独裁体制に対する擁護論は安全保障という基本問題に立ち返ると、いっそう強化されるように見える。
    経済復興こそ平和維持活動にとって唯一かつ真の出口戦略となる。
    帝国崩壊によって出現した国々の大半は小さすぎて、安全保障を満たせる規模の経済を越えられない。ここに国同士の合併によって安全保障の確立に適切な経済規模を超えうる可能性と、おそらく合併の結果生まれるいっそうの民族的多様性との間sで潜在的な葛藤が生まれる。

  • センセーショナルなタイトルの本です。ポール・コリアー氏は現在オックスフォード大学教授で、私が1980年代にオックスフォード大学に留学していたときの指導担当者。近年、アフリカ経済は注目を浴びていますが、その現実を冷静に経済学の観点から議論しています。
    続きはこちら→
    スミスの本棚特別編 コメンテーターが薦める「旅先で読みたい本」
    http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/special.html#book03

  • いわゆる「国際社会」の民主化アプローチがどのような状況下で、どの程度有効なのか。主に安全保障の観点から、統計とケーススタディーズで繰り広げられる考察。実に分かりやすい本だが、少々つっこむのを控えている印象。この本は関連した研究やデータへの導入書としての役割が大きいのではないかと思う。

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著者プロフィール

オックスフォードのセントアントニーズカレッジの経済学教授。世界銀行を経て、開発経済学の世界的な大家。著書The Bottom Billion(邦訳『最底辺の10億人』)は、ライオネル・ゲルバー賞、外交問題評議会のアーサー・ロス賞、コリン・プライズなどを受賞。移民問題を扱ったExodus: How Migration is Changing Our World(Oxford University Press、2013)(邦訳:『エクソダス――移民は世界をどう変えつつあるか』松本裕訳、みすず書房)も話題を呼んでいる。

「2023年 『難民 行き詰まる国際難民制度を超えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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