- Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822248420
作品紹介・あらすじ
本書は、さまざまな形をとって起きてきた金融危機を数字で綴る歴史の本である。私たちがこの本で伝えたいのは、「これはいつか来た道だ」という一言に尽きる。最近の金融狂騒曲がまったく新種のように見えるとしても、いやどの危機もかつての危機とは異なるように見えるとしても、歴史を遡り、また世界を見渡せば、たいていは過去の危機と驚くほど似通っていることに気づく。前例を知り類似性や共通性を知っておくことは、将来の危機発生リスクを抑えるうえでも、また不幸にも危機が発生した場合に賢明に対処するうえでも、世界の金融システムをよりよいものにする第一歩と言えよう。
感想・レビュー・書評
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膨大なデータから世の中の真理を見抜くという点で、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を彷彿とさせる。見抜いたのは何か。国家の会計における内在的論理、平たく言えば、金の貸し借りに関する挙動。
日本は長い歴史の中で、唯一対外債務デフォルトを1942年起こした。戦後インフレの際には、日本のインフレ率は最高で568%に達した、という事実がある。ソブリンデフォルトとは、政府が対外債務、国内債務またはその両方の返済を怠ることだが、借金を踏み倒すとどうなるのか。
信用がなくなる。つまり、国際資本市場にアクセスでき難くなる。資本市場にアクセスできれば、自国の農業生産が不作の年に外国から調達することができるし、景気後退のタイミングで更なる借り入れをすることもできる。こうした便益を考えれば、債務の履行を強制しなくても、きちんと返済しようとするものだと考えられる。つまり世界での借り手としての評判を気にしなければならない。
企業や個人が破産した場合は、債務者の資産の多くを取り上げ、将来の所得に対する先取得権を設定することが認められているが、国家の破産の場合には、国家の貴重な財宝を取り上げるような事は相当に制限される。国がデフォルトを起こす主な原因は、返済能力ではなく、返済の意思である。
国が廃業する事はなく、ソブリンデフォルトは単に金融の理由からだけではなく、政治的社会的に配慮した損得勘定に基づいて起こされることが多い。ルーマニアのチャウシェスクは1980年代の債務危機の際に、外国の銀行から借り入れた90億ドルの債務を国が貧しいにもかかわらず返済しようとした。そのため、ルーマニアの国民はほとんど暖房なしに冬を過ごし、工場は電力不足のため、操業短縮を強いられた。
フランスは少なくとも8回対外債務のデフォルトを起こしている。スペインは18世紀末までに6回、19世紀に入ってから8回を記録。ギリシャ、オーストリア、ポルトガル、イタリア、プロシア、エジプト、ロシア、トルコも慢性的なデフォルトの経験を持つ。
しかし、現代では、砲艦で脅して債務を回収すると言う事はできないし、費用便益分析をしても、巨額の支出とリスクに見合わないことがわかる。まして、借り入れがヨーロッパ、日本、アメリカに分散して行われているような状況でもあり、武力行使は行われない。
主要国の金融危機は、住宅価格サイクルが重要な役割を果たす。金融危機前に実質住宅価格が急上昇し、危機発生年及びその後の数年間は下落すると言うパターンが認められる。
通貨は、ほぼ不可逆的に数百年にわたって銀含有量を減らしてきた。不換紙幣へのマーチである。これは現代のインフレとあまり変わらない。
非常に示唆に富んだ本であり、論文である。勉強になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ラインハート=ロゴフ論文は誤りか?
2013.4.23.『エコノミスト』のサイトで、この本のデータが正しくないのでは?という論文が発表されて大騒ぎになった。
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このたび発表された論文の中で、マサチューセッツ大学アマースト校のトーマス・ハーンドン、マイケル・アッシュ、ロバート・ポリンの3氏は、ラインハート=ロゴフ論文における大戦後の分析結果の再現を試みた。
3氏はラインハートとロゴフ両氏の分析のミスを指摘し、これにより債務水準が高い場合の平均成長率が過小評価されたと論じている。両氏が使用したエクセルのスプレッドシートはコーディングに誤りがあり、複数の国が対象データから抜け落ちているというのだ。
ほかにも、ニュージーランドでは戦後の重要な数年が抜け落ちており、債務水準と成長率の両方が高かった時期のデータがカウントされていないという。
また、3氏は、ラインハート、ロゴフ両氏による平均成長率の計算法は典型的でないデータポイント(ニュージーランドがどん底の状態にあった1年間など)に過剰な比重が置かれていると指摘している。
これらを総合し、新たな論文では90%の閾値を超えた時の戦後の平均成長率はマイナス0.1%ではなく2.2%であるべきだと結論づけている。
国際通貨基金(IMF)と世界銀行が毎年春に開催している会合のために政策立案者が集まっていたワシントンで、この論文は大いに話題をさらった。ただし、2つの論文は想像されるほどの不協和音を生んではいない。
新しい論文への反応として、ラインハート氏とロゴフ氏は指摘されたコーディングのミスを認めている。また、「抜け落ち」と見られるデータについては、データセットが未完成なためだとしている。例えば、2010年と2012年に発表された改訂版の分析には新たなデータが追加されている。
」
この本って、それほど重要な本だったんだー。知らなかった。 -
金融危機による国家デフォルトにフォーカスしている。
公的債務増加、金利上昇、インフレなど、現在の経済が示しているいくつかは、深刻な金融危機が始まるサインと言えそう。一方で、金融危機の増幅装置としての銀行危機はまだ始まっていない(発覚していない)。これが表に出てくるかどうか、報道を見ていきたい。直近だと、20221027 スイスの銀行クレディ・スイスグループが、証券化商品グループの大部分をアポログローバルマネジメントなどに売却すると発表。7-9月で6000億円赤字。10-12月も赤字予想。 -
インフレ、デフォルト、銀行危機など、様々な経済的な危機について近代-現代にかけての非常に大規模なデータ収集を行った上で、「危機は繰り返す」ということを実証しようと試みる壮大な本です。
現代日本の積み上げられた国債に対して「日本の環境は特別だから大丈夫」という声が方々から聞こえてくる今だからこそ、読むべき本だとおもいました。
これほどの大量のデータを収集するために、著者は人生のどれほどの時間をかけたのだろう、このような研究をできる人にはただただ脱帽です。 -
ここ150年ぐらいの世界各国の金融危機をデータで俯瞰する内容。いつの時代も今回は違う、破綻しないと言われ続けているのね、と何度も頷ける。911前後はよくNBCの投資番組を見ていたので、グリーンスパン発言はよく覚えている。
日経書評には一般向けと書いてあったけど、半分がデータ集なので完全に学術書の部類だと思う。実際届いた時、このボリュームにはびっくりした。でも、10、11章あたりは週刊ポストか現代かと思うような書きぶりでかなり楽しめた。金融本にしては翻訳もうまい。 -
厚さ4.5cmに一見ビビるが、表やグラフ、脚注等も多いので、実態的には半分の分量。
1.先進国も、過去は度々デフォルトを起こしてきた。ましてや今でも、銀行危機はどの国でも起こりうる。
2.バブル崩壊や国家の危機というと、株価とか為替の上下に目が行きがちだが、住宅価格も大事な指標だと。
まだまだ他にもありますが…、過去から学ぶことは大事だが、多くの国から同じデータを一つでも比較する事の大変さが伝わった。経済もm(_ _)mm(_ _)m -
"600ページ近い分厚い本なので、実際に読み始めるまでに時間がかかりました。
この手の本はまとまった時間が取れないと、集中して内容に入れませんからね。
過去の歴史を知ることは非常に勉強になります。
ほとんどの国が破綻を経験しているという実態。
そして2000年以降の安定は、過去の歴史からみれば本当にまれな期間でしかないという実態。
これを理解して自らの投資戦略でも考えていかなければいけません。
今回は違う This time is Different !!
毎回絶頂期に言われるこの言葉の意味の深さを自分達もしっかりと意識しないといけません。。
ユーロの波乱を迎える2012年の今だからこそ、皆さんも読まなければいけない必読書です。 "