なぜメルケルは「転向」したのか

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822248901

作品紹介・あらすじ

2022年12月31日までに原発全廃。福島の原発事故で一気に方向転換したドイツ。その特異なリスク感覚をドイツ在住20年のジャーナリストが解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災による福島原発の事故後、ドイツ首相アンゲラ・メルケルは、原発擁護派から原発撤退へと方向転換をした。短期間で原発全廃を決断した背景には何があるのか。ドイツ在住の日本ジャーナリストが、日本とは異なるドイツの原子力に対するリスク意識、環境意識、歴史的背景等について解明する。


    第1章 甦るチェルノブイリの記憶
    第2章 ドイツ原子力四〇年戦争
    第3章 フクシマ後のリスク分析
    第4章 はじめにリスクありき 

  • 原発擁護派だったドイツのメルケル首相が原発全廃を決めた。ドイツ在住21年の著者が丹念に背景を紐解く。硬派な中身なのに表紙がアニメ絵なのがすごく謎。。。

    Merkel decided to abolish all nuclear power plants, though she was the proponent of nuclear power. Well worth reading!

  • メルケルの特徴は変わり身の速さ。風向きの変化を嗅ぎ取ってチャンスをつかむことに長けている。

    ドイツの反原発は挙国一致である。
    ドイツ人は地震が多い日本での震災と津波による原発事故の危険性が十分に配慮されていなかったことを驚いている。

    政府が保証したから、電力業界も脱原発を容認した。

  • 当初は原子力発電の推進派であったドイツのメルケル首相が、いかに福島原発の事故があった後とはいえ、なぜあれほどの短期間で原発全廃へと大転換したのか、または、できたのか。本書は、その経緯と背景を、ドイツ在住21年のジャーナリストがまとめたものである。
    脱原発に大きな役割を果たした「緑の党」のユニークな内容や、今日のドイツのアイデンティティのバックボーン、政治形態の違い、リスクに対する考え方がまるで異なるドイツ国民の特性など、興味深い内容が、大変わかりやすくまとめられている。エネルギー問題を考えるうえで、ドイツの存在は非常に大きい。14級で38字詰めと、文字も大きく、読みやすい構成なので、時間のある方には一読をお奨め。

  • 福島の問題があってからドイツは早々に原発を廃止できたのはなぜだろうと思って、読んでみた。そもそも、ドイツで原発について過去何十年間も議論されてきて、原発に対してこんなに神経質だったということを知らなかった。
    福島の問題への外人の過剰反応というのは、主にドイツのことを言ってたのかな?とも思った。
    でも、個人的には原発廃止を決めたドイツの選択は正しいと思うので、うらやましく感じた。
    気になった点は下記。
    ・金融危機と原子炉事故の共通点。どっちも企業はビジネスに失敗して巨大な損失を産んでも、国家が面倒を見てくれる。モラルハザード。
    ・ドイツ人がリスクに敏感な理由。今日のドイツで実際の脅威が少ないことの裏返し。ヴェーバー・フェヒナーの法則。人間が刺激の変化を感じ始める水準(閾値)は、すでに存在している刺激の一定の割合。

  • ドイツ人の悲観主義、リスクへのこだわりと敏感さが、原子力のリスクに対する見方を福島事故が根本的に変えた。日本人は、「気を見て森を見ない」民族なのか。

  • ドイツのメルケル首相・・・物理学者だったんだ。

    以下、本文より


    ドイツが原発全廃を決定した背景には「原子力のリスクは安全に制御できない」というドイツ人独特の悲観主義がある。

    ドイツ人が悲観的なのは、戦争など過去の災厄の記憶が人々の潜在意識の中に沈殿しているため、とする説がある。また、リスクに敏感な点については、今のドイツは脅威が少ないため、逆に些細なことで不安に陥るとの見方もある。

    ドイツ人は、リスクを見つけた場合、最悪の事態を想定し、リスクを最小限にするために積極的に行動する。

  • ドイツ発の情報を日本で調べるため、参考にしたいと思って購入しました。

  • ■原子力
    1.技術者の想定能力に限界があるのだから、多くの市民が被害を受ける可能性がある原子力発電所のリスク評価には、技術的な側面だけでなく、社会的な側面にも注目すべきだ。
    2.「ウェーバー・フェヒナーの法則」:危険や脅威が少ない環境での豊かな暮らしをしているために、ささいなことで不安に陥りやすくなる。

  • 現実的なメルケル首相の対応、1980年から活動する緑の党、German Angst (ドイツ人の不安)、といったキーワードから、ドイツが東日本大震災後に可及的速やかに原子力発電所の段階的廃止になぜかじを切ったのか、何が日本と違うのか、を分析というか歴史の振り返りと印象論から説明していく「エッセイ」です。どちらかというとドイツ人論に近い本でした。一部眉唾な論も含まれてはいましたが、概ね読み物としては面白く読むことができました。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。
著書に『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』『ドイツ人はなぜ、年「290万円」でも生活が豊かなのか』(ともに小社刊)、『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』(SB新書)、『パンデミックが露わにした「国のかたち」』(NHK出版新書)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。

「2023年 『ドイツ人はなぜ、年収アップと環境対策を両立できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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