模倣の経営学 偉大なる会社はマネから生まれる

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822248956

感想・レビュー・書評

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  • 各種の実例(他者の著書含む)をもとにした、模倣のススメ。単独で考えるよりも、既存・機知のものを適切に採り入れる姿勢は効率性の観点からも重要。現代ビジネスにはスピードも重要な要素である。ただ、事例が若干古いのが気になるところではある。

  • 本書のいう模倣とは、サルまねではなく、他社からの学びである。たとえば、トヨタのJITは、スーパーマーケットの販売方式を参考にしたものだそうである。つまり、ある業界の優れた方法をいったんモデル化もしくは抽象化して、自分の対象エリアに落とし込むという、超高度なプラクティスである。これが、できればいいんだけど・・・。最近、サル真似すらできなくなってきている気がする。

  • 「偉大なる会社はマネから生まれる」という副題にもあるように、本書では模倣で成功した幾つもの例を上げながら、マネの中からも本質をつかむことが重要だと主張している。
    読んでみて感じたのは、奇をてらっているわけでもなく極めて真っ当な考察であるということである。
    重要なポイントは、オリジナルとなる企業のどこを真似て、自社に如何に適用するのかというところ。
    だから例として上げられているのは必ずしも同業同士ではなく、全く異なる業界や市場間での模倣も多い。

    例えばトヨタ自動車のカンバン方式は、スーパーマーケットから模倣しているというのだ。
    スーパーマーケットは生産工程における前工程であり、顧客である後工程は必要な商品(部品)を必要な量だけ取りに行くというのがカンバンの基本的な構造に同じだと、トヨタのカンバン方式の提唱者大野耐一氏が述べているらしい。
    クロネコヤマトの宅急便は、吉野家を見習ったサービスだというのは意外だった。
    思い切ってメニューを絞り、利益率の高い小口輸送である個人の荷物しか扱わない会社になったかららしい。
    これら異なる業界間での模倣の仕方の例は、なるほどと思わせるものも多く面白い。

    もちろん同業界内における模倣も多く、LCCの元祖サウスウエストを見習った欧州のライアンエアやアジアのAirAsiaなどの話も出てくる。
    ただし同業界だとしても模倣した側が必ずしも同じ形態の会社になるとは限らない
    欧州のCafe文化を真似たスターバックスとドトールの違いは、実感としても理解できる。バリスタが作る美味しいコーヒーを座らずに毎日飲むという形態が、二社でこうも異なる形に模倣されるというのは目の付け所の違いや導入した市場の違いの影響なのだろう。

    そしてお手本となる会社から重要なポイントを参照するためのフレームワークとして、P-VARを提案している。
    P:Position、競合ポジション、顧客セグメント
    V:Value、価値提案
    A:Activity、鍵となる活動、成長&収益エンジン
    R:Resource、鍵となる経営資源、チャネル、顧客との関係性、パートナーシップ

    やはりいちばん参考になるのは、異業界の成功した例を模倣するための視点の置き方だろう。
    全く異なる業界でも成功例から業界特有の要素を削り落として本質を突き詰めれば、普遍的に自社にも適用出来ること事を抽出できる可能性が高まることは間違いない。
    ある意味、それこそ経営学の学者の方々が日夜取り組んでいること、そのものなのかもしれないが。

    少しだけ違和感を感じたのが、模倣の意味を広げすぎてしまっていると感じる部分である。
    社外・社内と正転反転の両模倣の二軸でモデリングを整理して、半メッm教師や事故否定まで含めて模倣の延長として説明している点である。
    ここまで模倣の軸で語る意味があるのか、正直言って理解できなかった。

    それにしても表紙にある英語題名「Good Imitation to Great Innovation」が「ビジョナリー・カンパニー2」の原題を模倣しているのは著者の洒落なんでしょうかね。

  • 他社から学んだ「次の成功へのヒント」を自社独自の強みに磨き上げること。守破離に通ずるが、模倣という表現は適切だろうか。

  • 製品レベルでの模倣はインターネットの発達によってペースが早まった。

    仕組みレベルのイノベーション。
    コカコーラは製品開発で遅れても、自動販売機網でシェア奪回。
    LPガス小売業がミネラルウオーターの宅配。
    遠い世界に優れたお手本を見つけられる可能性がある。

    ・正転模倣
    宅急便=UPS+吉野家+JALパック。
     車一台あたりの集荷数を増やし、メニューを絞り、
     [分かりやすい地域別均一料金と翌日配送]という価値提案。
     解決策:取次店制度。

    ドトール=フランスの立ち飲みカフェ。
     [一杯150円で安らぎと活力]という価値提案。
     解決策:セルフと自動化で回転率を上げ、コストを下げ、自社農園でおいしさ追求。

    スターバックス=イタリアのエスプレッソバー。
     [第三の場所]という提案価値。
     解決策:バリスタ。直営。雇用改善。

    ・反転模倣
    グラミン銀行=半面教師:既存の銀行
     ⇒貧困層、農村、女性、少額、無担保、訪問、未来 に目を向ける。
     [貧困層を助ける]という価値提案。

    ワンデーアキュビュー=半面教師:洗浄と耐久が必要なコンタクトレンズ。
     ⇒使い捨て医療器具
     [扱いを楽にする]という価値提案。
     解決策:スタビライズド・ソフト・モールディング製法。

    概念を捨てる。
    自己の失敗と向き合う。

    解決策モデリングの違い
     ゼロックス=大量消費+サービス網によるサポート
     キヤノン=カートリッジ交換によるセルフメインテナンス

  • 事業で成功している名の知れた企業が、意外にも他の成功している企業のビジネスモデルに時代や国民性に付合するように模倣することで成功しているというのを上手く解説している。スターバックスや、クロネコヤマトなどが、どの様に模倣したか、そのプロセスを知るのも面白い。
    思わず、自分の回りで、そんなネタが隠れていないかと思いを巡らしてしまいたくなります。

  • 模倣は独創の母である(小林秀雄)。
    ウォールマートのサムウォルトンは「私がやったことの大半は他人の真似である」と述べている。
    メタファーとは、隠喩のこと=別の世界に持っていくこと。
    なぞかけで、新しい発想を生み出す。
    ヤマトの宅急便は、吉野家の牛丼一筋から取り扱い荷物の絞り込み(利益率が高いものだけを扱う)を、ジャルパックから商品化をまねた。
    トヨタ生産システムは、アメリカのスーパーマーケットの仕組みから考えられた。=富山の薬売りや御用聞きの対極=必要なものしか運ばない。必要なものを取りに行く(届ける)。
    セブンイレブンは、アメリカから商標とロイヤリティーを売上高ではなく粗利益に対する比率で決めること、コンビニエンスストアの概念、の3つだけを取り入れて、日本的に換骨奪胎した。
    フランチャイズは、ノウハウを学んだ加盟店が大量に脱退する可能性がある。セブンイレブンは、本部とつながった情報システムを作り上げて適切な品揃えを構築し本部への求心力を維持した。
    GMはトヨタ生産システムをリーン生産方式としてまねようとしたが同じレベルには到達しなかった。

    競争戦略は、いかにして戦わないか、を考え抜くこと。=差別化=製品サービスの差別化と事業の仕組みの差別化、がある。
    UCCの事例=コーヒーといえばUCC。製品の差別化。しかし売上はコカ・コーラが勝っていた=自動販売機の数による。=インストールドベース。
    キャノンの消耗品から収益を上げるビジネスモデルもインストールドベースによるもの。
    遠い世界に優れたお手本を見出す。台湾の半導体ビジネスは、インドの露天商の高速な資本回転を見習ったもの。
    楽天市場はストック型のビジネスモデル、キーエンスは同じような部品を使いまわしながらカスタマイズするマスカスタマイズ型。

    実務では、ビジネスモデルは収益の上げ方、課金などお金の流れとしてとらえられる。学術的には収益の源泉の原理的な説明を含む。単純化して見えてきた共通点=業界を超えて参照できる。

    単純にまねる=LCCのサウスウエスト航空はヨーロッパのライアンエア、アジアのエアアジアに移植された。
    状況に合わせて作り変える=セブンイレブン、ドトールコーヒーなど。
    新しい発想を得る=トヨタがスーパーマーケットから、ヤマトが吉野家とジャルパックから、半導体がインドの露天商から。
    反面教師として模倣する=グラミン銀行。銀行マンとして実務に精通していないからできた。
    横展開=ジョンソン&ジョンソンの使い捨てコンタクトレンズのアキュビュー。精度を落として大量生産した。社内モデルであっても、外部の優れた企業のモデルだと言えば他の部署にも広がりやすい。
    自己否定=オークランドアスレチックス。出塁率をもとに統計データをとって選手を集めた。高卒の将来性には過大な評価をしない。学習棄却=過去の学習や常識を捨てて無垢な状態から学ぶことが必要。

    社外の成功=単純模倣、
    社外の失敗=反面教師
    社内の成功=横展開
    社内の失敗=自己否定
    代理学習の効果=ニュートン、ニトリなど
    成功より失敗から多く学べる。

    成功教師と反面教師がそろうことが望ましい=弁証法と同じ。二つの反した命題を掲げてより高い次元でその違いを融合する。グラミン銀行の例。

    ポジションを価値、活動、経営資源がささえる形=P-VAR。
    何をどのように倣うのかは人それぞれ。独自の視点で咀嚼する。

    ヨーロッパのカフェを模倣して、スターバックスとドトールができた。
    スターバックスは優れたコーヒー豆の焙煎業者で、それをこだわりの体験として売り出す仕組み。シュルツは、カフェを立ち上げたのち、古巣のスターバックスを買収した。顧客との結びつきを失わないため、フランチャイズにはしない。
    ドトールは、まず低価格を決めた。150円。一等地に出店する、スタッフの労働負担を少なくして笑顔で接客できるようセルフサービスのお店にした。
    模倣というのは、とても不可がかかる作業だが、その過程で能力が高まる。これが成功のカギ。

    模倣できそうでできないビジネス=KUMON。当初KUMONから分派した団体がいくつかあった。ちょうどの学習と自学自習。女性指導者。教えない学習。指導者たちによる自主研究会。教材が共通言語になっている。子供が分かる前に教えるのはNG。一斉教育では身につかない。

    劇的な再逆転=
    スイスの時計はクォーツ化で打撃を受けた。そこで逆転の発想でファッション性とブランド製を打ち出した。正確さがコモディティ化したため、機械式が希少になる。
    大型オートバイは、男の乗り物だった。そこへホンダがシティーコミューターとしてのスクーターで席巻した。そこでハーレーは、逆転の発想で、モノとしてではなくハーレーのある生活を売る。
    任天堂のファミコン。アタリ社がハードとソフトを分離。ハードの仕様をオープンにして多種多様なソフトを市場に投入させた。しかしソフトのレベルが低下。任天堂は仕組みは継承しつつ、ソフトの品質維持を第一に考えてクローズドな体制にした。生産量もコントロール。部分逆転の発想。
    ゼロックスのコピー機。それまではジアゾ式こコピーは、消耗品で儲ける仕組み。ゼロックスのコピー機は高い。そこでリースにして、枚数に課金した。サービスとサプライから収益を上げる直営販売方式=新しい収益モデル。
    キャノンのコピー機(ミニコピア、ファミリーコピア)。ゼロックスとは逆の発想。中小企業や個人。ドラムをトナーと一体のカセットカートリッジにした。壊れる前に交換する。メンテナンスが普通の人でできる。サービスマンはいらない。

    先行企業を単純にまねる。迅速であれば技術開発や市場開拓のリスクやコストを抑えつつ売上をあげられる。先行者が利益を独占する前に参入する。
    後発優位戦略。ソフトドリンクのコカ・コーラ。随一の自動販売機網によって後から参入しても高いシェアを得ることができる。パナソニックはパナショップで。マネシタ電気と呼ばれた。マイクロソフトはウインドウズで。
    同質化戦略。=負けないための模倣。とりあえず類似商品を出す。相対的にポジションを落とさないために。
    イノベーションのための模倣。新しい商品にあった仕組を作り出す。遠い世界のお手本か近い世界の反面教師。

    創造の基本は模倣であり、天才でも起業はできる。
    ユニクロの発想はたくさんの人が考えたが実行したのはユニクロだけ。
    1990年以降、廃業率が開業率を上回る。
    逃げ切りの世代はリスクを冒したがらない=新しい芽をつぶす。

    経営学の教科書よりも経営を成し遂げた本人の本を読む=『トヨタ生産方式』『小倉正雄経営学』『勝つか死ぬかの創業記』『スターバックス成功物が立ち』『ムハマドユヌス自伝』。
    他者が書いた本『セブンイレブン創業の軌跡』『寺子屋グローバリゼーション』『マネーボール』『破天荒』

  • タイトルにすべて込められている感じ。ただ、表面的な真似だけではどうしようもないが。

  • ケース実例が多く読み物としても面白い。

  • 模倣の大切さと、そこからどう発展させるか考える一冊。
    独自性は必要だが、すべて一から始めたものは、息が短いというくだりが刺さった。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『キャリアで語る経営組織〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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