HARD THINGS

制作 : 小澤隆生 
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822250850

作品紹介・あらすじ

「偉大な会社をつくり、育て、運営したいすべての人に、信じられないほど価値ある本」

マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックCEO)

「本書は、意志の力だけで会社を破滅の淵から救えるという証言」

ラリー・ペイジ(グーグルCEO) が絶賛!



目指すものが大きいほど、困難(HARD THINGS)も大きい

シリコンバレーのスター経営者に慕われる

最強投資家からのアドバイス

感想・レビュー・書評

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  • 単に企業の成功物語/CEOの自慢話、というでわけでなく、企業家/CEOにむけた真の指南書と思えた本。(いや、おれ企業家じゃないけど。)きっとすべての企業家は読むべきだと思ったけど、逆に自分はやっぱり企業家にはなれないのかなーとも思わされた本。(こんな大変な状況は乗り切れん気も。)とはいえ、普通のビジネスマンだとしても読んだらなにかしら発見はあるのではないかと。
    訳者のあとがきにあるように、まさしく「フェイスブック若き天才の野望」と双璧をなす本といっていい気がします。
    また、序文で小澤氏が書いているとおり「たいていの本は成功した話をあとから分析して紹介するものが多い、一方本書が素晴らしいのは、次々と深刻な困難に直面した著者が、うまくいかないときにどう考えたか/切り抜けたかを紹介しているところ」というのもその通りと感じた。

    p33 きみは事態の深刻さがわかっていない。この次は自分でインタビューを受けてみろ。くそったれが。

    p102 あらゆる人間のやり取りにおいて、必要なコミュニケーションの量は、信頼のレベルに反比例する。あなたを全面的に信頼していればあなたの行動について何の説明もコミュニケーションも必要ない。まったく信頼していなければ、いかなる会話・説明・推論もなんの影響も及ぼさない。なぜならあなたが真実をいっていると思っていないからだ。

    p158 経済的な事情を別として人が会社を辞める理由は2つ①マネージャーが嫌い②何も教えられていない

    p224 なぜ肩書は重要なのか①社員が望む。次の面接に臨んだとき、「セールスのヤツ」だったとは言いたくないだろう。②やがて社員同士でも誰が誰なのか知る必要が起きてくる

    p226 ピーターの法則。有能なメンバーは次第に昇進していく、しかし、遅かれ早かれ、メンバーは自分の能力の及ばないちいに達してしまう。無能レベルに達する

    p233 性格が本質的に反乱者。⇒常に反乱をおこしていあにと満足感が得られない⇒社員よりCEOのほうが能力を発揮する

    p259 組織の小さいうちは問題ないが、大きくなると困難になる①組織内コミュニケーション②共通認識③意思決定

    p262 組織デザインで第一に覚えておくべきルールは、すべての組織のデザインは悪いということだ。

    p279 最初の問題は、CEOになるためのトレーニングが存在しないこと。CEOのトレーニングは実際にCEOになる以外ない。マネージャーディレクターその他なんであれ管理職の経験は会社運営という職務に役に立たない。役立つ唯一の経験は会社を経営すること。

    p285 WFIO俺たちはやられた。この会社はおしまいだ。We're Fucked, It's Over

    p302 真に偉大なリーダーは、周囲に「この人は自分のことよりも部下のことを優先して考えている」と感じさせる雰囲気を作り出すものだ。

    P339 私は今の今でも、アーンスト&ヤングを憎み嫌っている

    p373 採用は強さを伸ばすために行うべきで、弱さを補うために行うべきではない

  • シリコンバレーのベンチャーキャピタリストが書いた、CEOやマネージャー、部長職がどう困難に立ち向かうべきか、その参考になる一冊です。

    著者のベン・ホロウィッツは現在はベンチャーキャピタリストですが、以前は上場会社のCEOとして厳しい環境の中でビジネスの舵を握った、事業側も経験している方。

    ベン・ホロウィッツに降りかかったタイトルにある「HARD THINGS(困難)」がこの1冊にてんこ盛りに収録されいて、そのときどう立ち向かったが書かれています。

    表紙にあるコピー「答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」とありますが、この本には答えはないです、基本的に。
    しかし、先人がどう立ち向かったかを知ることでとても参考になり、自分の頭で考えて行動するきっかけになると考えています。

  • 社長かCEOになった時に大いに役に立つ本。

    自分が将来そうなったら再読したいと思いました。
    ならんけど(笑)

    世に数多ある社長の成功本・自慢話ではなく
    吐き気と戦く苦難の連続をつづった内容が良い。

    一般people向けの内容として一つ上げると下記。
    「つらいときに役に立つかもしれない知識」
     ・ひとりで背負い込んではいけない
     ・長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない
     ・被害者意識を持つな

    管理職向けの内容として一つ上げると下記。
    「個人面談で役に立つ質問」
     ・この職場で働く上で一番不愉快な点は?
     ・この会社で一番頑張って貢献しているのは誰だと思う?
     ・われわれが本来やっていなければならないのに
      やっていないのはどんなことだろう?

    作者のパートナーがMosaic/Nectscapeを作った
    マーク・アンドリーセンというのも感慨深いです。
    学生の頃にそれらを使うともに、あのころ
    研究室のhttpサーバーを独力で立ち上げたなあ、、、
    と懐かしく思いました。

  • 視座をあげてくれる本。

  • 20200505
    シリコンバレーでIT企業のCEOを務め、現在はベンチャーキャピタリストとして活躍するホロウィッツ氏の経験を紹介した著作。CEO時代の壮絶極まるハードな場面に手に汗握る。その経験を活かし、CEOをどのように育てるかという視点でベンチャーキャピタルをやっている点が面白い。
    本著作としては、自身の経験としてITバブルの崩壊、売却の交渉、マスコミ対応、監査人からの裏切りなど企業を経営する事の大変さとダイナミックなワクワクさを伝えている。
    自分も含めて甘い考えで起業したいと思う輩が多い。しかし、これを読むと想像以上に悪いことばかり起きて、それに耐えて逆転を信じ進み続ける強い精神力がCEOには求められる。
    苦労の先に達成感は大きいだろうが、やはり経験が自分には不足している。今いるチームで、自分の役割や会社の成果を上げ続ける事で独り立ちできる精神力と実行力をいち早く身につけなくてはならない。

    //MEMO//
    日経新聞にホロウィッツの記事があったため、かつ、岩瀬氏が推薦していた図書。
    機関投資家のキャリアをシリコンバレーで築いており、自分の目標となる投資家としての生き方、判断軸、価値観を学びたい。

    Hard thingsは必ず起こる。
    それに対処するには、予知する事、対処を打つ事

    ITバブルの崩壊、資金調達難、取引先の倒産、プライベートでの家族の危機、身売りする時の社員への説明

    物事が上手くいかない事の方が多い。この時にどう立ち向かえるか。
    CEOはありのままに伝えることが重要
    ①信頼
    ②困難な問題に取り組む頭脳は多いほど良い
    ③悪いニュースは早く伝わり、良いニュースは遅く伝わる

    人、製品、利益
    →この順番で大切にする

    ・人
    ①機能教育
    ②マネジメント教育

    経営的負債をどう貯めずに運営するか、また長期では返済できるように仕組むか

    事業継続

    ・社内政治を抑える
    ①野心のある社員=会社のアウトプット→自身の成長
    ②人事評価や賞与の評価制度をはっきり打ち立てる

    ・肩書きによるインセンティブ設計

    ・企業文化の重要性
    例: Amazonのドアのデスク
    アンドリーセンホロウィッツの1分10ドル
    Facebookの壊すイノベーション

    ・リーダーの資質
    ①ビジョンをいきいきと描写できる能力
    ②正しい野心
    ③ビジョンを現実化する能力

    ・平時と戦時のCEO

    ・フィードバックする方法と能力

    ・戦略とストーリー、意思決定
    ・実行能力、目標設定

    ベンチャーキャピタル
    ・CEO特有のスキル=幹部社員の管理、会社の組織作り、販売チャネルの構築も運営
    ・CEOの人脈

  • 正直なところ、序盤はつまらなかった。
    色眼鏡で見ていたからだろう。これは作者の回顧録みたいなもの、回答のない困難に答えを出す方法を学ぶことを探していたからだ。
    実はそんな方法はないのだと気付いてからは、読むスピードが早まった気がする。

    気になったところ
    p88 自分へのメモ、やってないことは何か?を聞くのは良いアイデアだ。
    p133 われわれの会社が勝つ実力がないのなら、そもそもこの会社が存在する必要などあるのだろうか?
    p248 個人面談で役に立つ質問の例
    われわれがやり方を改善するとしたらどんな点をどうすればよいと思う?
    われわれの組織で最大の問題は何だと思う?またその理由は?
    この職場で働く上で一番不愉快な点は?
    この会社で一番頑張って貢献しているのは誰だと思う?誰を一番尊敬する?
    きみが私だとしたら、どんな改革をしたい?
    われわれの製品で一番気に入らない点は?
    われわれがチャンスを逃しているとしたら、それはどんな点だろう?
    われわれが本来やっていなければならないのに、やっていないのはどんなことだろう?
    この会社で働くのは楽しい?

    p277
    私が起業家として学んだもっとも重要なことは、何を正しくやるべきかに全力を集中し、これまでに何を間違えたか、今後何がうまくいかないかもしれないかについて無駄な心配をすることをやめるという点だろう。

  • 僕は起業家でもなんでもないヒラ社員であるが、それでも自分の会社経験と想像力をフルに働かせて読み続け、共感に次ぐ共感から冷や汗握り締めながらエキサイティングに読破。
    おそらく生ぬるい嘘なんてない、筆者の経験から学んだ経営の本質が明解な理由と共に綴られている。
    会社が存続する以上、CEOは感情を捨て吐き気や悪寒と共にドライに判断や意思決定をし、問題解決のため的確に行動し続けるという連続が永遠に続く中で、逆に大切なものとは結局、感情をもつ人間なのだという感も感じた。
    文章には急に音楽カルチャーなどのキーワードもでてきて、CEOや起業家たる人も我々と同じレイヤーの世界にいる人間なんだと妙に安心もするし、なかなかどおして読みやすい文体で面白かった。

  • おもしろかった。
    メジャーなCEOの、ありきたりのサクセスストーリーではなく、失敗を必死に切り抜けたときの記録。
    この人の場合、あるいは、多くのCEOには、次から次へと、困難が押し寄せるものなのだ。
    最高責任者っていうのは、当然のことながら、責任が重い。

  • CEOの苦悩が赤裸々に語られている本。

    答えがない難問と困難にどう立ち向かったか、が経験として語られています。
    世の中の起業の成功本とは裏腹に起業における苦悩がこれでもかと語られます。

    しかし、正直、起業に興味を持たない人にとっては、
    「ふーん」「それは大変だ」
    ってところにしか落ちないかも。
    なぜなら、その内容があまりにも壮絶。

    資金ショート
    上場する直前でのごたごた
    株価の急落
    社員の解雇
    とりわけ、人を正しく解雇する方法や
    さらには幹部を解雇するための準備、
    一緒に立ち上げた親友を降格させるとき、
    友達の会社から採用してよいか、
    などなど、つらい決断を迫られ、結果どう行動したかまで語られています

    一通り読み通すとほんとCEOのつらさがひしひしと感じられます。経営者ってほんと大変!

    そういった経営の大変さとはちょっと別に、本書で述べられていた
    「つらいときに役立つかもしれない知識」
    として

    一人で背負い込んではいけない
    単純なゲームではない
    長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない
    被害者意識をもつな
    良い手がないときに最善の手をうつ
    と紹介しています。

    うん、これなら使えるかも(笑)

  • 第1章 妻のフェリシア、パートナーのマーク・アンドリーセンと出会う
     実はジョエルと知り合った事情は、これまで誰にも話したことがない。しかしこの事件は私の人生を形づくる上で大きな役割を果たした私は脅されて怖がったが、だからといって正しいことをする根性がなかったわけではない。私がジョエルに話しかける言葉によって、私は英雄にも臆病者にもなった。もし私がロジャーに命じられた通りに「ニガー」と罵っていたら、もちろんジョエルと私は親友になっていなかった。
     この経験は何事であれ、表面で判断してはならないことを私に教えた。人でも物事でも、よく知る努力をしない限り、何も知ることはできない。知ることに近道はない。特に個人的な経験によって得られる知識に近道はない。努力なしの近道や手垢のついた常識に頼るくらいなら、何も知らないほうがよほどましだ。

    第2章 生き残ってやる

    第3章 直感を信じる
     私の経歴の中で早くに学んだ教訓は、大企業でプロジェクト全体が遅れる原因は、必ずひとりの人間に帰着するということだった。エンジニアが決断を待って立ち往生しているかもしれないし、マネジャーが重要な購買の権限が自分にはないと思っているかもしれない。そういう小さな、一見些細なためらいが、致命的な遅れの原因になりかねない。

    第4章 物事がうまくいかなくなるとき
    「成功するCEOの秘訣は何か」とよく聞かれるが、残念ながら秘訣はない。ただし、際立ったスキルがひとつあるとすれば、良い手がないときに集中して最善の手を打つ能力だ。逃げた死んだりしてしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとして最大の違いを見せられるときである。本章では、辞めたり吐いたりすることなく、困難を乗り切るための知恵をいくつか授けよう。
     多くの経営書は、物事を正しく処理して失敗しないために何をすべきかに焦点を絞るが、こここでは大失敗したあとに何をすべきかについて考えよう。良いニュースは、私自身もほかのCEOも、大失敗の経験を豊富に持っていることだ。

    悪戦苦闘
    ■つらいときに役に立つかもしれない知識
     苦闘を乗り越えるための答えはないが、私の助けになったことをいくつか紹介しょう。
    ・ひとりで背負い込んではいけない。自分の困難は、仲間をもっと苦しめると思いがちだ。しかし、真実は逆だ。責任のもっともある人が、失うことをもっとも重く受け止めるものだ。重荷をすべて分かち合えないとしても、分けられる重荷はすべて分け合おう。最大数の頭脳を集めよ。オプスウェアで競合に負け続けていたとき、私は全社員を呼び、「オレたちはケツを蹴られていて、出血を止めなければ死んでいく」と話した。誰もまばたきひとつしなかった。チームは持ち直し、勝てる製品をつくって、私のあわれなケツを救ってくれた。
    ・単純なゲームではない。苦闘は戦略が必要なチェスだ。ITビジネスは、とてつもなく複雑になってきた。テクノロジーが動くとライバルが動き、市場が動き、人が動く。その結果、スタートレックの3次元チェスのように常に打つ手はある。売上200万ドル、社員340人の会社を上場して、翌年7500万ドルを売り上げるという方法はどうだろうか。私の打っ手がまさにそうだった。2001年、IT企業が上場するには史上最悪の時期だと誰もが考えていたとき、私はそうした。6週間分の現金しか残っていなかった。打つ手は必ずある。
    ・長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない。テクノロジーゲームでは、明日は今日とまったく違う。明日まで生き延びれば、今日はないと思えた答えが見つかるかもしれない。
    ・被害者意識を持つな。困難は、おそらくすべてあなたの責任だろう。人を雇ったのも、決断したのもあなただ。あなたは、リスクがあることを知っていた。誰でも過ちを犯す。どのCEOも、無数の過ちを犯す。自分を評価して、「不可」を付けたところで慰めにもならない。
    ・良い手がないときに最善の手を打つ。偉大になりたいならこれこそが挑戦だ。偉大になりたくないのなら、あなたは会社を立ち上げるべきではなかった。

    CEOはありのままを語るべき人を正しく解雇する方法/
    幹部を解雇する準備/
    親友を降格させるとき/
    敗者が口にするウソ

    鉛の弾丸を大量に使う
     実存する脅威に直面することほど、ビジネスで怖いものはないかもしれない。あまりの恐ろしさに、社員の多くは向かい合うことを避けるためなら何でもやるようになる。あらゆる代替案、あらゆる逃げ道、あらゆる言い訳を探して、一回の戦いに生死を賭けることを拒もうとする。私はこれを、スタートアップとの会話でよく聞く。

    やるべきことに集中する
     自分の惨めさを念入りに説明するために使うすべての心的エネルギーは、CEOが今の惨状から抜け出すため、一見不可能な方法を探すために使うほうがはるかに得策だ。やればよかっと思うことには一切時間を使わず、すべての時間をこれからきみがするかもしれないことに集中しろ。結局は、誰も気にしないんだから。CEOはひたすら会社を経営するしかない。


    第5章 人、製品、利益を大切にする―この順番で
     かつてネットスケープのCEOとして私のボスだったジム・バークスデールがよくこう言っていた、「われわれは、人、製品、利益を大切にする。この順番に」。単純だが奥深い言葉だ。「人を大切にする」ことは、3つの中でも頭抜けて難しいが、それができなければあとのふたつは意味を持たない。人を大切にすることは、自分の会社を働きやすい場所にするという意味だ。ほとんどの職場は、良い場所とはかけ離れている。組織が大きくなるにつれ、大切な仕事は見過ごされるようになり、熱心に仕事をする人々は、秀でた政治家たちに追い越されていき、官僚的プロセスは創造性の芽を摘み、あらゆる楽しみを奪う。


    働きやすい場所をつくる/
    なぜ部下を教育すべきなのか/
    友達の会社から採用してもよいか/
    大企業の幹部が小さな会社で活躍できない理由/
    幹部の採用未経験の仕事でも適任者を見つける/
    社員がマネジャーを誤解するとき/
    経営的負債/
    経営の品質管理


    第6章 事業継続に必須な要素
    社内政治を最小限に
    社内政治を抑えるテクニック
     CEO時代に私は、社内政治を抑制するためにいくつか有用なテクニックを身に着けた。

    1 第一は、「正しい野心を持った人材を採用する」ことだ。会社をアメリカ上院みたいな政治の場にしたければ、間違った野心を持つ人間を雇うのがてっとり早い。長年インテルを率いたアンディ・グローブによれば、「正しい野心家」というのは「会社の勝利を第の目標とし、その副産物として自分の成功を目指す」ような人物だという。それに反して「悪い野心家」は、「会社の業績がどうあろうと自分個人の成功が第一」というタイプだ。
    2 社内政治につながりそうな問題について、あらかじめ厳格なルールづくりをする。ある種の分野はどうしても社内政治につながりやすい。たとえば―
    ・実績評価と給与査定
    ・会社組織のデザインと責任分野
    ・昇進

    正しい野心/
    肩書と昇進/
     またザッカーバーグは、肩書は実際の職務と社内への影響力を正確に反映しなければならないと考えている。会社が急成長を続ける場合、組織がどう構成されているのかを常に明確にしておくことが非常に重要だ。ところが、副社長や最高XX責任者が何十人もいたのでは、職責が不明確になるのは避けられず、混乱が生じる。
     さらにザッカーバーグは、ビジネス系社員はエンジニアリング系社員に比べて肩書がインフレ気味になることに気づいた。ザッカーバーグも対外的交渉の際にはインフレの肩書が有効な場合があることを認める。しかし彼は、エンジニアをはじめ製品を実際につくる社員こそ会社のコアと考えており、無用な管理階層はできるだけ少なくとしようと努めている。

    優秀な人材が最悪の社員になる場合/
    経験ある大人/
    個人面談/
    自分自身の企業文化を構築する/
    会社を急速に拡大(スケーリング)させる秘訣/
    ・組織のデザイン
     どんな組織化も必要悪であるから、悪が最小であるような選択肢を探す必要がある。この場合、組織デザインを社内コミュニケーションのアーキテクチャとして考えるとよい。特定の社員間のコミュニケーションをスムーズにしたいと思えば、彼らをひとりのマネジャーの下に所属させるのが、一番間違いない方法だ。逆に組織図で離れた位置にあればあるほど、そこに所属する社員間のコミュニケーションは疎遠になりがちだ。
     また同時に、組織デザインは会社が外部とどのようにコミュニケーションをするかも決める。たとえば、製品ごとのセールス担当者のコミュニケーションを最大限にしようとして製品別組織にすれば確かに狙った効果は上がるかもしれない。しかし同時に、複数の製品を利用している顧客は、それぞれ別のセールス担当者とコミュニケーションをとらねばならなくなる。メリットの裏には必ずデメリットがあることを念頭に置き、組織デザインをしなければならない。

    1 どの部分にもっとも強いコミュニケーションが必要か。まず一番重要な知識をリストアップし、その知識を誰が共有しなければならないかを検討する。たとえば、ある製品のアーキテクチャはエンジニアリング、品質管理、製品マネジメント、マーケティング、セールスの各部門に理解されていなければならない。
    2 どんな意思決定が必要なのかを検討する。機能、アーキテクチャ、サポート方法の選定のように、繰り返し頻繁に行われる意思決定を洗い出す。関連ある問題についてはひとりの管理職がなるべく多くの意思決定を行えるように組織をデザインする。
    3 最も重要度の高い意思決定とコミュニケーションの経路を優先する。製品マネジャーに重要なのは、製品アーキテクチャの理解が、マーケットの理解か。エンジニアに重要なのは、顧客の理解が、アーキテクチャの理解か。ただしこうした優先順位は、状況によってたやすく変わることを念頭に置かねばならない。状況が変われば再組織化が必要となる。
    4 それぞれの部門を誰が管理するかを決める。これは4番目のステップであり、最初のステップではないことに注意する必要がある。組織づくりは実際に業務をこなす社員がもっとも効率よく働けるようにすることが目的であって、管理職が働きやすくすることが目的ではない。組織づくりで一番大きな誤りはこの点で生じやすい。組織の上のほうにいる人間の個人的な野心や都合を、組織の下にいる人間の作業実態やコミュニケーションの経路より優先させてしまうというミスだ。誰を組織の長にするかを優先順位の後のほうにすることで、マネジャー層から不満が出るかもしれないが、やがて彼らはそれに慣れる。
    5 優先しなかったコミュニケーション経路を認識する。優先しなかったコミュニケーション経路がどれかを認識するのは、あるコミュニケーション経路を優先するべく選択するのと同じくらい重要だ。あるコミュニケーション経路の優先順位を下げたとしても、その経路が不要になったわけではない。もしその経路を完全に無視してしまうと、やがて必ずトラブルとなって跳ね返ってくる。
    6 あるコミュニケーション経路を優先しなかったことから生じる問題を最小限とするよう手を打つ。こうした問題は部門間コミュニケーションの問題として浮上することが多い。そうした問題を処理するプロセスを事前に設定しておく。

    成長期待の誤り


    第7章 やるべきことに全力で集中する
    CEOとしてもっとも困難なスキル/
    恐怖と勇気は紙一重/
    「ワン」型CEOと「ツー」型CEO
     ジム・コリンズはベストセラーとなった「ビジョナリー・カンパニー2」(日経BP社)の中で、膨大なリサーチと総合的な分析の結果、CEOの後任の選択に関して、社外からの採用よりも社内からの昇進のほうが圧倒的に好成績であると結論づけている。その主たる原因は知識だ。その企業に独特のテクノロジー、それ以前の決断、企業文化、人事その他に関する知識を得るのは、CEOとして大企業を経営するスキルを学ぶよりはるかに難しい。しかしコリンズはなぜ、社外からの採用が失敗しがちなのか、本当に詳しくは説明していない。
     そこで、私がこの場を借りて説明してみよう。組織を運営するには2種類の本質的に重要なスキルが必要だ。ひとつは、何をすべきかを知ることであり、もうひとつは、そのなすべきことを実際に会社に実行させることだ。偉大なCEOとなるには、このスキルが両方とも必要だ。しかしたいていのCEOは、どちらか一方を得意とする傾向がある。私は会社の向かうべき方針を決めるのを得意とするCEOを「ワン」と呼び、決められた方針に沿って会社のパフォーマンスを最高にするのを得意とするCEOを「ツー」と呼んでいる。

    リーダーに続け/
     理想的なCEOのタイプというものは存在しない。スティーブ・ジョブズ、ビル・キャンベル、アンディ・グローブはいずれも偉大なCEOだが、彼らのスタイルにはほとんど共通点がない。偉大なCEOに共通して必要とされる唯一の資質は、おそらくリーダーシップだろう。それではCEOという職務においてリーダーシップとは何だろう?偉大なリーダーは生まれながらのものだろうか?それとも努力によって後天的になるものだろうか?かつて米国最高裁のポッター・スチュワート判事はポルノグラフィについて「見ればわかる」と定義した。多くの人々にとって、リーダーシップの定義もこれに近いだろう。ここではリーダーに従おうとする人々の数、質、多様性という側面から一般化してみる。人々がリーダーに従いたくなる要因にはどんなものがあるだろうか。私は次の3つの資質が重要だと考える。
    ・ビジョンをいきいきと描写できる能力→スティーブ・ジョブス属性
    ・正しい野心→ビル・キャンベル属性
    ・ビジョンを現実化する能力→アンディ・グローブ属性

    平時のCEOと戦時のCEO/
    自身をCEOとして鍛える/
    CEOを評価する


    第8章 起業家のための第法則―困難な問題を解決する法則はない
    責任追及と創造性のパラドックス/
     テクノロジー・ビジネスでは、事前に予想ができることは非常に少ない。凡庸な製品と魔術的に素晴らしい製品との差は、往々にして、社員にあまりに厳しく責任を求める会社運営と、社員が創造性を発揮するためなら必要なリスクを取ることを許す経営との差にある。社員の約束に責任を持たせることは重要だが、重要なことはほかにもたくさんある。

    対立部門の責任者を入れ替える/
    最高を維持する/
     会社への忠誠心も能力も高いエグゼクティブを解雇しなければならないという状況が発生する。そのときにどう伝えたらよいのか。その幹部社員はこれまで大変な努力をしてきた。すばらしい実績も上げている。しかし市場環境は激変中で、その幹部が変化について行けないようなら、来年は解雇しなければならないかもしれない。
     私は部下の幹部社員に職務評価を伝えるとき、よくこう表現した。「きみは現在いい仕事をしている。しかし計画では社員数は来年2倍になり、きみの職は今とはまったく違ったものになる。そこで今後はきみの職務評価は、新たな基準で実施される。念のために言っておくが、これはきみ個人の問題ではなく、私を含めて社員全員に新たな基準が適用される」
     社員が2倍になれば、全幹部の職務内容が変わるという点を明確にすることが重要だ。全員が新たな職に就くことになるのだ。今までうまく行っていたやり方が新しい職でもうまくいくという保証はまったくない。それどころか、状況の変化に対応できず、漫然と旧来のやり方を続けることが、エグゼクティブが失敗するもっともありふれた原因だ。

    会社を売却すべきか


    第9章 わが人生の始まりの終わり
     苦闘を愛せ
     今、私は日々起業家と接しているが、一番伝えたいのはこの教えだ。自分の独特の性格を愛せ。 生い立ちを愛せ。直感を愛せ。成功の鍵はそこにしかない。私は彼らに前途に待ち受ける困難さを伝えることはできるが、困難に直面したときに何をすべきかは、彼が自ら判断する以外ない。私にできるのは、それを見出すための手助けだけだ。私はCEOでいる間、一度も心の平和を得られなかったが、運が良ければ時にはそれも得られるだろう。
     しかし、世界中の助言と後知恵を集めても困難な物事は困難なままだ。最後に私は、困難に立ち向かうすべての人々に「幸多かれ、夢の実現あれ」という言葉を贈りたい。

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著者プロフィール

ベン・ホロウィッツは次世代のテクノロジー企業のリーダーとなる起業家に投資するベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の共同創業者兼ゼネラル・パートナー。ニューヨーク・タイムズのベストセラー『HARD THINGS』(日経BP)の著者でもある。アンドリーセン・ホロウィッツを立ち上げる前はオプスウェア(旧ラウドクラウド)のCEO兼共同創業者を務めた。ラウドクラウドは2007年にヒューレット・パッカードから16億ドルで買収されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でコンピューターサイエンスの修士号を取得。またコロンビア大学でコンピューターサイエンスの学士号を取得している。妻と3人の子供と共にサンフランシスコ・ベイエリアで暮らしている。

「2020年 『Who You Are(フーユーアー)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ベン・ホロウィッツの作品

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