池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇

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  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822274375

感想・レビュー・書評

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  • 教養という漠然としたワードに対して定義づけをし、それが現実世界の諸問題にどう役立てられるのか?という観点で論じられており、アカデミック過ぎずに学べました。

  • 文句なしに面白い。まず目次の見せ方が良い。3名の先生方を相手に一限目、二限目…と授業のようにまとめられており、最後は「修学旅行」と題して米国トップ大学について触れる。目次だけでここまでワクワクすることは初めてだ。対談形式だからこそお目にかかれる池上彰氏の切り返しや、話題の掘り下げ方が巧みで勉強になる。先生方の中でも、特に桑子敏雄氏と上田紀行氏の話が興味深く楽しめる。米国の大学と日本の大学との対比も衝撃的である。もし娘がいるならば、是非ともウェルズリーに入れたくなった。

    以下、本書より抜粋。
    「僕は、どんなにつまらないことにも相応の意味があると思っています。なぜならば、「つまらない」ものを経験しないと、人間、何が面白いかもわからないからです。たとえば映画を10本観て、そのうち8本がつまらないから、2本が自分の好みに合うということがわかる。「つまらない」に出会う経験を惜しんではなりません。それは、「面白い」に出会うために必須の道なのです。」

    「なぜそれぞれが賛成、反対の意見を持つに至ったのか。その意見を持った理由をちゃんと掘り下げる。そしてそれぞれの意見=インタレストの対立構造そのものを露わにした上で克服する。それが合意形成なんです。」

    「意見の理由だけではなく、意見のないことの理由も、コンフリクト・アセスメントではとても大事なことです。」

    「本当にいいスピーチは、3つの要素が欠かせません。1つがエートス。もう1つがパッション。そしてもう1つがロゴスです。どれが欠けてもダメなんです。」

    「まず、エートス。本質、ですね。ここがずれていたら、そもそもスピーチにならない。まず話すべき対象のエートスをきっちり自分自身で理解する。でも、それだけじゃダメ。なぜあなたがこの話をするのか、自分自身のパッション、情熱であり感情、ですね。それが盛り込まれていない話は、人を引きつけない。だから、必ず自分の体験を通じた感動をちゃんと盛り込む。そして、ロゴス=理論。いくらパッション=感情を盛り込んでも、話そのものに論理性を欠いていれば、その話はその場限りの効用しかありません。だから必ず何らかの客観的な事実やデータを添えて、パッションで表現した部分に呼応するかたちで「データ的に見ても論理的にみてもこうなのです」とダメを押す。すると話の説得力が格段に増すわけです。」

  • 教養という言葉にひかれて購入。
    前に下鴨アンティークを読んだ時、近代、古典の作者や詩の内容にほとんどピンと来なかったことで、教養が足りないな、と反省したので思わず。

    教養、と題しているが、リベラルアーツに関する記述が多い。
    東工大に設置されたリベラルアーツセンターに教授として招かれた池上さんが、センター長を始め他のメンバーと対談し、教養とは何か、その日本教育の現状、学生に必要なことは何かを語る。
    (アメリカの一流大学に留学、赴任した経験のある教授自身の体験談も多い)

    教養とは
    与えられた前提を疑う能力。
    新しいルールを創造できる能力。
    すぐに役に立たないから、一生役に立つ。
    専門分野以外の勉強をする。
    つまるところ、人を知ること。
    四の五の言わずに本をたくさん読む、
    人間を学ぶには歴史を学べ。

    様々な分野の知の体系を学ぶことで世界を、自然を、人を知る。すると、世の理が見えてくる。
    そうなって初めてこれまでにない新しい何かを生み出すことが可能となる。

    教養とはまた別の話題だけど、
    合理主義者の勝者が一番負けている。
    システムの奴隷、という言葉にすごく納得してしまった。
    バブルがはじけた今の日本には地獄の満員電車で通勤し続けても「いつかクラウン」はやってこない。
    でも働き方、働かせ方、教育のシステムは変わっていない。
    仕事一筋のお父さんは仕事を失った瞬間、社会からも家庭からも無価値の烙印を押される。
    会社というシステムのみに依存することがどれだけ危ういことか。
    他の複線を持つことが大事か考えさせられた。
    なるべく早く家庭を持つという言葉はちょっと耳が痛いけど(笑)
    超高齢化社会で、日本人は介護とか、病気とか暗いけど、強制的に複線を持たされることに遠からずなってくる。

    自分以外の人のために人生を使うことの価値を問い直すことも必要かもしれない。

  • 本書は、「教養」に対する考えを持った池上さんをはじめとする教授方による、「教養」に関する話を、生物学や、文化人類学と異なる側面から対話形式により書かれたものである。文系と理系で垣根を作らず、理解しようと努めること、合理主義に陥らず、無駄だと思われることも、興味があれば、進んで学ぶ姿勢を持つこと、何をするにも目的は「幸せ」のためであることなど、多くのことを学べる。
    本書を読破して感じたことは、一点目に、私はイメージ重視で生きていること。もっと論理的思考を身につけ、世界を単純化させて理解することに努めたいという欲が生まれた。
    二点目に、私にとっての「幸せ」はなんであるか。と、自身に説いて真っ先に浮かぶのは、信頼し合える人がいることだ。そのために私はどう進むべきか、じっくり考えていきたい。
    三点目に、やはり、世界の情勢を知りたい、と思ってしまった。先日某ラジオ放送で、イスラム国の紛争に関する議論が交わされていたのだが、恥ずかしながら根本のない私には異国語の会話のように思え、全く耳に入って来なかった。歴史の歩みや、実際に異国の生活はどのようなものであるか肌で感じたいと思える一冊となった。
    四点目として、一見して、特定の学問を毛嫌いしてはならないと、強く感じた。
    これからは興味のある学問に関する書籍に挑戦していきたい。そして、海外の暮らしぶりに触れてみたい。

  • 大学の教養学部時代に、この本に書いてある視点・視野をい持っておけば、よかった。
    後悔先に立たずである。
    点数至上主義の中にどっぷり浸かってきたんだ、と思い知らされた。いまからでも、ますます本を読み、教養を蓄えていきたい。

  • 題名に教養のススメとあり、しかし漠然と今まで教養とは何か?わかっていなかった。

    教養とは人を知ること。つまらないを知り何がおもしろいかを知る。
    歴史を知ることも、哲学を知ることも、生物学を知ることも人を知ることにつながるらしい。

    米国一流大学を視察し、日本の大学と比較した話が一番印象に残った。

    米国では、大学4年間は幅広い分野を勉強し、教養を大切だと考える。急いで専門的、職業的な勉強をするよりも、時間をかけて知識や広い視野を身につけ可能性や方向性を探り、自分を磨くことを求める。専攻も、文系・理系・芸術系という分けかたをしない。入学時に決めなくてもよいし、在学中に変更することも、異なる2つの分野も専攻できる。プレゼンやレポートが多い。自分の考えを分かりやすく相手に伝えるプレゼンを専門の講師の元で学ぶ。1人で生きていける力を身につけることを大切にし、専門課程が必要ならそれぞれの大学院へすすむ。

    一方、日本の大学では社会の即戦力になるよう無駄を省いた専門科目を教える。結果、東日本大震災原発事故の会見で東電の技術者は専門用語ばかりのわかりずらい説明だった。理系出身でも皆にわかりやすく説明するための文系的能力が必要だったのだ。

    専門課程だけで視野が狭く入学時の編差値重視の日本の教育と、徹底的に教養を大切に幅広く教える米国では、世界で活躍するグローバルリーダーの数に差がでるのもなるほどなーと思った。

    ダムの話。
    下流側住民は洪水を防いで欲しくて建設賛成、上流住民は自分の街がダムに沈むともちろん反対、対立する両者の考えからまた違う考えを新たに生む→合意形成の話 哲学の先生が仲立ちをした。まず対立した意見がそこにいたるまでの背景をそれぞれ理解する。単純な理由や憶測による理由など様々な理由が出てくる。そのひとつひとつを丁寧に整理する。人を知る哲学者ならではの話でなるほどなーと思った。

    読書は興味以外に視野を広げ多角的な思考が身に付く。教養の基礎になると思った。教養は、一生をかけて身につけていけると思った。。


  • 教養ってなんだろう?と思っていたモヤが晴れた気がしました。

    教養とは“人を知ること”というのが印象的でした。
    歴史を知ることも、哲学を知ることも、生物学を知ることも、全て人を知ることにつながっていて、結局私たちは人の中で生きている。人の行動や感情というのは、時代が変わっても同じだったりすることも多い。

    自分は実用書やビジネス書も読んだりするが、書いてあることは大抵共通していることも多くて、テクニックがかかれていることが多いと思う。
    ただ、こういった書籍は今の時代あったものになっていたりするので今は使える道具かもしれないが、世の中の状況が変わればこの道具が通用しなくなるかもしれないと思った。しかし、この道具を作った原理というのが、ここでいう教養なのだと考えると、教養を学ぶことで、自分で状況に合わせて道具を作り変えることができるようになるんじゃないかなと思いました。
    実用書は読みやすいのですが、教養となる歴史書や哲学書をまずは読んでみたいなと思いました。

    もう一つ、教養を学ぶときは自分の専門から遠いところから学ぶといいと書いてありました。
    理由は、複眼的思考を身に付けられるから。
    理系は理論的・合理的だけど文系は感情・イメージ先行型である。
    開発や研究をしていると、数値にこだわりたくなるが、実際に大事なことの中に人肌感覚もある。こういった感覚を大切にするためにも教養は大切なのかもしれないと思いました。

    まずは歴史を勉強します!



  • 上田紀行さん
    ・日本的な会社は宗教の役割を果たしてきた
    ・合理主義の単線化した社会
    ・自分の人生が置き換え可能に感じる

    本川達雄さん
    ・論理(理系の言葉)とイメージ(文系の言葉)の両方の理解が一致したとき、初めて人は本当に理解したと感じる。
    ・古代ギリシャは人間の奴隷を使い自由を手にした。その余暇を教養を生むことに使った。
    ・現代は機械という奴隷を使い仕事をさせているにも関わらず、さらに機械を増やすことに精を出し、奴隷のように必死で働いている。
    ・うるう秒は機械への影響が大きいからやめようという議論まででている。
    ・科学には価値がない。りんごが落ちるのは重力があるからだが、なぜ重力があるのか万有引力の法則は答えてくれない。応えてくれるのは宗教であり、キリスト教では神の創造物は愛であり、内在する愛が引き合う、と説明してくれる。
    ・生物学は価値がある。なぜなら、生物は生き続けるもので、いまの生物には「生き残る」方法・理由を問うことが生物学だから。
    ・生物のエネルギー消費量は体重の3/4乗に比例する。大きい生物・組織ほど働かない組織・人が増える。会社と同じ笑
    ・現実でもさまざまな大きさの生物がサバイバルしているように、会社の規模を小さくすれば良いというものではなく、大きさに合った戦略をとっているかどうかである。

  • 教養って奥が深え。マリアナ海峡より深え。

    こんな感想書いてる時点で教養無いのバレバレで草

  • リベラルアーツとは何か、なぜリベラルアーツが大切なのか、という点を各人の経験を対談形式で分かりやすく書かれていた。
    哲学や歴史を学んでみたいと思えた一冊。
    おすすめされていた本も読んでみたい。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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