ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822281113

作品紹介・あらすじ

本書は、時代に合った企業へと変化する能力を身につけるための処方箋である。これから、効率と柔軟性のジレンマの本質を追求していく。効率を高めるほど、変化するのはむずかしくなる。本書は管理者に、少しだけ効率を落とし、大幅に効果を高める方法を教える。あらゆる変化に欠かせない「ゆとり」とはなにかを紹介。そして、やみくもに効率を追いかけ、あらゆるゆとりを削るのではなく、ゆとりを上手に使う方法を提案する。

感想・レビュー・書評

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  • 知識労働者の扱い方、企業のスケジュールの在り方を管理職と平社員の目線で書いた本。

    「ゆとりが欲しい?何を甘えてるんだ。そんな余裕は無い」
    というのが、日本企業にありがちな反応だと思うが、スケジュールを過密することが、必ずしも利益に繋がる訳ではない、という根拠が、ユニークな言葉で綴られていた。

    効率≠効果である、というのは日頃認識しているつもりでも、頭の中で曖昧に描いているだけで終わってしまっていた。

    ゆとりを持たせることが、企業に取っての効果的な利益と、適切なリスク管理に繋がるということを教えてくれる一冊。

    実際にどうやって現場で実践させるか…という問題はまた別だが。

  • 「ピープルウェア」に続くデマルコ氏のソフトウェア開発プロジェクトにおける問題提起。
    効率至上主義が現場、プロジェクトに与える影響。リスクを取ることで成功を目指し、リスクを回避するのではなく安全速度でリスクに備えることの提言。人は急がせても考えるスピードは上がらない。ゆとりを置くことの様々なメリット。
    これを実際に実践していくのは幾つのも障害と難関が待ち受けていると思うが、自分の属する環境はもちろん、これがソフトウェア開発業界全体に伝搬していくことを考えなくてはいけないのだろう。

  • 長期的な組織の存続を考えた場合、外的なビジネス環境の変化に組織が柔軟に対応できなければなりません。
    そのためには潤滑油としての「ゆとり」が必要不可欠であり、本来は変革の担い手である中間管理職(一見ムダの象徴とみなされる)がその鍵を握っています。

    コミュニケーション、動機付け、目標管理のあり方、リーダーシップ、リスク管理など、出版後15年近く経過してなお学ぶところが多いです。

    以下は本書のポイントをまとめたメモです。(ネタバレあり)
    --------------------------
    ・ゆとりは変化の潤滑油
    ・人材は完全に代替可能ではない:仕事の切り替えに伴うロス
     (労働者は分割できない)
    ・知識労働者:やりがいは報酬と同じくらい重要
    ・情報は組織階層図の線のみを通ってはいけない
     (健全な組織は線のないところを情報が流れる)
    ・管理のゆとり:管理者は権限を一手に握ってはいけない

    ゆとりのメリット
     ・対応が速くなる
     ・柔軟性
     ・人材を維持しやすくなる
     ・投資する余地が増える

    組織が敏捷であること・変化を受け入れる健全な能力があること:
     個人に成長の機会を与える

    研究開発費を節約しても将来的な利益にはならない
     →ゆとりは一種の投資

    ・人間はプレッシャーをかけられても考える速度を早めることはできない

    ・間違った管理の法則
     ①うまくいかないことがあったら、もっとやれ。
     ②自分自身がユーティリティ・プレーヤーになれ。

    ・管理が難しいのは仕事量が多いからではない。
     習得する技術が難しいからである。

    ・恐怖とストレスの文化がもたらす悪影響。

    ・上層部から押し付けられるプロセス標準化は権限の搾取
     (プロセスは現場が所有するのが理想的)

    ・効率よりも効果(進むべき方向の正しさ)を重視すべきである

    ・目標管理の停滞(定常的な状態が前提)
     →絶えず変化のある組織はプロジェクトが中核
     →単純な数値目標で表せるものではない
     →外部から与えられた目標は外的動機付けであり、
      顧客を満足させる内的動機付けが軽視される

    ・ビジョンがない企業体は唯一の意味のある自己定義である現状にしがみつく

    ・リーダーシップ:自分の課題に他の人たちを参加させる能力
     →長期的な利益のためにはリーダーシップが必要
     →本物のリーダーシップは組織図とは関係ない
     →リーダーシップは一部のエリートだけのものではない

    ・信頼を得るには信頼に足ることを示す
     ↑その前に相手に信頼を与える(成功するためのお膳立て)

    ・中間管理職:再生、変化の請負人(ゆとり)
     →協力しあうこと
     →安全だと感じていること(ある程度の失敗は許される環境)

    ・リスク軽減のコストが悪とみなされる
     →安全速度、リスクの重心を見極める

  •  きつきつの時にこそゆとりをもった方針で計画することが重要である、効率より効果が重要である、と示す。その通りであると思う。が、ではどうやってそうしていくのか?というところがつらい。マネージャクラスがこの認識を持つことがあるのか?という疑問がまずある。そして、再びいけいけどんどん的風潮があらわれている職場で、果たしてこの主張が受け入れられることはあるのだろうか?「それこそ、効果あるの?」とか平気で突っ込まれかねない。
     しかし挑戦したいところ。個人レベルでできることではない点が苦しいが・・・
     ということを考えた。チーム全体のことを考える余裕がある人が読んでもらえると良い(今、自分にないところがトホホ・・)。

  • プロジェクト管理における「ゆとり」。てっきりスケジュールにどれくらいの余裕をとるのが適当か、という話かと思っていたら、良い意味で裏切られた。スケジュールもそうなんだけど、もっと広い意味でゆとりが必要で、ゆとりがあるからこそ緊急の事態にも対応できるし、本当の意味で効率的な組織ができる。■つまらない事務処理まで忙しい管理職にやらせ、事務職が増えても、これまでなかった事務を無理矢理掘り起こして管理者につきつけてくるどこかの会社に読ませてやりたい。

  • 自分にはあまりに内容が濃かったため、ブログで数回に分けて書きました。
    http://edgeofguitar.blog40.fc2.com/?q=%A4%E6%A4%C8%A4%EA%A4%CE%CB%A1%C2%A7

  • この本では、従来の「管理」に関して疑問が投げかけられている。
    特に印象に残っているのは簡潔なこの下りである。

    間違った管理の第1の法則 「うまくいかないことがあったらもっとやれ」
    → 「うまくいってないのは、一生懸命やってないからだ」と部下に発破をかける。

    間違った管理の第2の法則 「自分自身のユーティリティプレーヤーになれ」
    → 「部下は手持ちの仕事がいっぱいで、この仕事、だれにもふれないぞ。
       だから自分でやってしまおう」

    そもそも、「管理者」は「管理」するのが職務であるため、
    「管理以外」の仕事=部下にふれない仕事をやるのはおかしい、という主張である。

    確かに、こういう管理者いますね。いるいる。
    そもそも、ソフトウェア開発において、うまくいかないこと=さぼっている、ということではないのですが、
    生産物の数値が上がらない=さぼっているっぽく指摘されること、あります。(第1の法則)

    これを読むと、「ゆとり」の存在が重要であることがわかる。(何を「ゆとり」と呼ぶか、というのも重要ですが)

  • ひとことで言えば「業務にゆとりが必要だ」と主張している本。
    この本の主張によれば、日本の企業における業務はほぼ過密すぎることになる。
    管理職~平社員の目線で書かれており、読みやすい。
    マネジメントする側はゆとりを組み込むことの意義を知るために、また
    マネジメントされる側は業務に取り組む姿勢を見直すために、それぞれ役立つと思う。
    なお、忙しすぎてうつ病になりそうな人などを勇気付けてくれる本かもしれない。

  • 当たり前のことを当たり前に書いてるけど、「ゆとり」を実践できてない企業って多いとおもう。リーダークラス以上にはオススメしたい一冊。

  • 学習には管理視点での再生が必要。
    知識労働の組織論。
    オーバーヘッドとコミュニケーションパスに話は理屈とはいえ目から鱗だった。
    アシスタントポジションがAIに置き換わる未来が想像できた。
    孤立は学習できない。変化と成長する余地もない。
    余地を持ち作り上げるのがマネージャーの役割に思う。
    標準化も大事だがプロセスはチームの資産と捉えて常に流動的な態度でいたい。
    タイムをとる監督視点がマネージャーか。
    そのためにはリスク管理できる変化を捉えるツールが必要と。

    業界の古典だけに今も学べることが多く目標管理の悲劇が合理的に伝わった。

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