百姓が時代を創る

  • 七つ森書館
5.00
  • (3)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822808594

作品紹介・あらすじ

農民作家の雄と生涯一ジャーナリストが語り尽くしてから3年、グローバリズムは「農業恐慌」と「新しい貧困」をもたらした。農に吹く新しい風を論じ「環境問題、原油高、食品偽装、子どもの教育など、農業抜きでは解決できません」と食糧問題の根っこを考える!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とてもおもしろい。
    現代の世界を圧巻するグローバリゼーション、
    それに伴う様々な社会問題は、
    高度経済成長以前の日本人の基本的な生活形態であった百姓への回帰、
    それにより幾分解消できるのかもしれない。
    ロシアのダーチャに学ぶべき点は多いと言える。
    高度経済成長下、農村から若い人材が流出したのは、その世代の人間が、農を労働と捉えてことにあった。
    その結果、都市人口は膨れ上がり、昭和30年台に1800万であった日本全国の世帯数は、現在4600万世帯となる。
    核家族が増加したことで礼儀作法は衰退、また資本家は労働賃金を極力抑えるために、国策として農作物の低価格化を実現。
    1995年当時2万円台前半を推移していた米一俵の取引額は現在1万円をきるところにまできており、日本の「農家」「農業」は壊滅的な状態に陥っている。
    現在は海外の農村に日本の種を売り込み、低賃金、単一栽培で食糧の確保を行っているが、
    俯瞰してみれば、行動経済成長下、日本でおきた都市への人口流出は間違いなく中国やタイと言った発展途上国でも起きるであろう。
    つまり食物を輸入によって確保できる時代も続いて数十年ということであるり、またそれが仮に持続したとしても、世界の環境、生態系を破壊することに加担しているに過ぎない。


    『生産者が受け取る米価の値下がり。WTOが1995年に発足。地球上を自由競争で覆うグローバル化の波が激しさを増す中で、日本ではミニマムアクセス米輸入開始に伴い、新しい食糧法が発足。』

    『1995年当時、好い田んぼは10アール(1アールは10×10メートル)で250万から300万であった。今では80万』

    『農民にとっての最後の砦である農地で農地法から耕作者主義を取り払い。外部資本の農業への参入をじゆうかしようという見当が政府内部にある。農業の主体の移行。農民から資本へ』

    『年収200万円の勤労者が1000万人を超え、就業人口の5分の1を占める』

    『日本人がFTAやEPAで日本の労働市場を開放させても、日本への出稼ぎで若者や働き盛りの人が農村からごっそりぬける。そのふるさとの行方はどうなるのか』

    『金さえあれば少量が手に入る時代の終焉』

    『日本の農業は小農でなければならない』

    『中国の農業は続かない。殺されても米はつくらないといって郷から離れる中国の若者。世界中で農業はもうかっていない。日本人のために儲からない農業を続けて食べ物を安定的に届ける奇特な農民は世界中からいなくなる』

    『日本の農業の担い手は67パーセントが高齢者。』

    『物とかねが地域の中で循環しなくなる。から商店街がつぶれる』

    『マスコミの論調は早く株式会社が農地を所有できるようにして、農業の担い手にすべきだというもの。子の論調を突き詰めていくと効率的な農業生産さえあれば農民はいらないということ。』

    『労働者階級にいかに安い食糧を豊富に与えられるかが労働政策になったのが高度経済成長。農村から都会へと若い担い手が流出する中で住宅難が団地で解決した。そこに住むのは核家族。賃金は労働者の再生産費であるから資本家が賃金を低く抑えるには食費を抑えるのが手っとり早かった。そこで農産物価格を低く抑え込むために労働生産効率を上げ、農業の産業化へと向かった。』

    『村の中では個人主義は育たない。田圃はじぶんのものでも水は自分のものでない』

    『昭和30年までは結婚して農村人になる女性は村中紹介して回ってみんなの同意を得る必要があった。一種の運命共同体』

    『昔村にいたのは何でもできる大人。全体性を持った人間、百姓』

    『百姓仕事を労働と捉えてはならない。昔の百姓は労働は食え気とは別の意識体系を有していた』

    『社会のシステムから外れたら生きていけない人間を生み出す教育』

    『人さま、国家のために百姓はやらない』

    『ヨーロッパの自給政策。自分で食うものをもたないと戦争のにおいを送ることになるということで、隣を警戒させる』

    『伊万里市のはちがめプラン』

    『住民からはじまり、行政はあとからついてくる』

    『会社で3日働き、2日は自分のくうものをつくり、2日はやすむ』

    『ロシアのダーチャ。都市住民の90パーセントが郊外に掘立小屋付き農地をもっていて、これをダーチャという。ロシア就職のジャガイモはここでつくられている。経済破綻してもみんな食い物を持っているからびくともしなかった。平均して600平方メートル、180坪の土地の利用権が与えられている。』

  •  言わずと知れた九州の農民作家・山下惣一さんと農業ジャーナリスト・大野和興さんの対談。そうそうそれが言いたかったと思うことを代弁してくれています。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

◎山下 惣一(やました・そういち)1935年佐賀県唐津市生まれ。農業に従事するかたわら創作活動を続ける。1969年『海鳴り』で第13回日本農民文学賞受賞、79年『減反神社』で第27回地上文学賞を受賞。同作は第85回直木賞候補作となる。著書に『ひこばえの歌』『日本人は「食なき国」を望むのか』(家の光協会)、『農の明日へ』(創森社)など多数。生活者大学校教頭、アジア農民交流センター・TPPに反対する人々の運動の共同代表、小農学会の顧問も務めた。2021年2月に「老農は死なず消えゆくのみ」と断筆を宣言。2022年7月10日に肺がんのため逝去。

「2023年 『山下惣一 百姓の遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山下惣一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×