決断できる日本へ―3・11後の政治経済学 (-)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822812546

作品紹介・あらすじ

問題は、3・11にあるのではない。3・11という未曾有の災害に見舞われながらも、それに対処できない日本という国の仕組みや、そうしたシステムを支えるわれわれ日本人のメンタリティ(「変われない日本」「決断できない日本」という掛け声にも通じる)にあるのではないか。本書では、2011年3月11日の東日本大震災以降、激動する日本を体感しつつ、著者の世界観や歴史観を書き下ろす。

感想・レビュー・書評

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  •  3.11後の日本の政治や経済について筆者の考えがよく伝わってくる。震災からまもなく2年になるが、復興が進んでいるとは言えない状況である。民主党から自民党へと政権が変わり、東電の当時の状況や映像が公開されているが、なぜあの時正しい決断が下せなかったのか憤りを覚える。官邸と東電と現場の様子を見ていると、システム的にいかに機能していなかったがよくわかる。そして、原子力の利権に群がる「原子力ムラ」の住民たちの無責任さには情けなさを感じた。
     印象的だったのが、著者は書の中で、日本人の持つ「和」への危惧を示している。「和」というのは、平穏な時にはよい状態だが、緊急時や混沌の中では、決断制にかけ責任をたらい回しにするためうまくいかない。そうした日本人のメンタリティが、災害や変動に対処できない状態を生み、しいては、官僚国家、天下り、前例横並び主義の日本にしてしまったのではないかという指摘である.確かに決断できるリーダーがいないという日本の危機的状況は否めない。かといって、日本人が古来よりもつ文化やアイデンティティを捨ててまで、グローバルな社会に適応していかなければならないかといえば、そこまでは言えないと思う。現に、大震災があったのに暴動や略奪がなかったことが世界に日本の美徳を証明したはずだ。
     経済においても、TPPへの参加が迫られているが、日本は自国の利益に合った決断を下せるのだろうか。グローバルな世界の中で、一国として立ち向かっていくために、日本は新たな岐路に立たされているのかもしれない。

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著者プロフィール

1954年生まれ。国際金融研究家・著述家。経済学博士。大阪と東京での39年の大学教員生活をへて現在に至る。海外ではシカゴ連邦準備銀行やタイNIDA等で客員研究員、西ミシガン大学や中国人民大学等で客員教授、国内では、NHKやJBIC(国際協力銀行)で調査主査を務める。主な著書に、『ジャパンマネーの内幕』(岩波書店、第32回エコノミスト賞)、『金融グローバリズム』(編著、東京大学出版会)、『FRB ドルの守護神』(PHP新書)、『トライアングル資本主義』(東洋経済新報社)、『ドル支配は続くか』『ハイエナ資本主義』、『日本が外資に喰われる』(以上、ちくま新書)他。

「2022年 『世界マネーの内幕 国際政治経済学の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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