- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822814960
作品紹介・あらすじ
育土・ボカシ肥・自然観察を大増補!
有機農業40年の経験を積んだ農学博士の集大成。うまくいくコツが解明されます。
感想・レビュー・書評
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本書の著者である西村和雄氏は京都大学の農学博士でNPO法人有機農業技術会議の元理事長。アカデミックなバックグラウンドのある方なので、本書は単なる栽培ノウハウ集ではないが、学術的な理解を期待する読者にとってはやや物足りないかもしれない。もともと本書は「ぐうたら農法のすすめ」というエッセイ集を改題して出版されたものなので、自分のような家庭菜園ビギナーがターゲット読者層となるだろう。プロの農家ならよく知っている内容なのかもしれないが、土や野菜の特性についてはかなり勉強になった。
現在、世界中で有機農法が注目されつつあるようだが、日本のプロ農家の間ではまだ認知度は高くないようだ。慣行農法に慣れた農家が有機農法に切り替えるのも容易ではないからだろう。科学的な研究も十分ではないようだ。一方、こういったプロ農家が高齢化で徐々に減少する中で、有機農法に関心を持つ若い新規就農者が少しづつ増え始めている。就農とまではいかなくても自分のような家庭菜園愛好家も増えているようだ。「食」は生きるために欠かせないもの。食を支える農業の在り方を考えるうえでも、本書は有用だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結局のところ「有機農法」が誰がためにあるかというと、やっぱり「作り手本人」のためにあるのであって、前提として、それ自体を売りにした商いで生計を立てようとすること自体が、もともとの理念とは相反する。
結びつくワードは「反消費的/生産的」「非都市/里山」「少量多品目」「自給自足」「おすそわけ」といったあたりか。
「有機農業はロウリスク=ロウリターンを基本にしています。多品目少数栽培を原則として、圃場のすべてをモザイク状に分割してまで、いろんな作物を栽培すること。それが日本を含めたモンスーン地帯、すなわち降水量の多い高温多湿でリスクが多い環境にありながら、極力被害を避けるコツ」p.318
これは同じく有機農業のパイオニア・尾崎零さんもさかんに同じことを言っていて、あくまで「低い環境負荷でも“豊かに”生き延びる」ことが有機農業の大前提。
金銭的なリターンを追い求めるのであれば、現代の資本主義社会においては農業に手を伸ばす必要は限りなく「ゼロ」に近い。けれど、その他に価値を見出すのであればその意義は大きい。
植物と向き合うことは、当然失敗もたくさんあるのだけれど、逆に「毎日の小さな成功体験」の積み重ねでもあって、これはとにかく楽しい。大規模化しないのであればなおさらに。
現実的に考えるのであれば、経済圏の中で価値創出して金銭を稼ぐ「もうひとつの職能」は必須。それでも食いっぱぐれるリスクを低減できるのは心理的な安定をもたらしてくれるに違いない。
たしかに「半農半X」「自産自消」は現代を生き抜くための、かなり現実的なコンセプトのひとつだと確信しつつある。 -
科学2割